10/17/2013

[biz law] イオンがPB食品偽装批難記事の文藝春秋提訴

先頃、米類を用いた食品等の産地偽装が発覚したイオン、当然に全方位から袋叩きなわけですけれども、とりわけ苛烈な批難記事を掲載した週刊文春に対し、その売り場からの撤去に止まらず、名誉毀損として文藝春秋社を相手取り民事訴訟を提起したそうで。

本件、元々の偽装自体は委託先がやった事と言っても、それを自社ブランドの製品として販売した以上、消費者に対する製造販売における一義的な責任はイオンにあります。かつ、中国における土壌汚染とそれによる農産物の汚染が無視できない程度に深刻である事も周知の事実なのですから、「猛毒」との表現には一般的な表現としてはいささか誇張が過ぎる部分はあるにせよ、全体的に見て記事が事実無根とは到底言えないし、従って今回のイオンの対応は逆ギレと言う他ないように思われるところです。

誤解を与える、と言うのなら、中国産の食品を国産表示する方が余程悪質です。こちらは紛う方なき詐欺、その規模も尋常ではなく、社会的な害悪としては文春の記事など比較になりません。一般に消費者が国産と銘打たれた食品を選択する理由の大半は、その安全性の高さすなわち汚染可能性の低さによっており、逆に外国産、とりわけ中国産は汚染可能性が高いものと認識されていて、その表示は消費者の選択に決定的な影響がある事も明らかなところ、本件イオンの行為は、消費者を決定的に欺き、そこから膨大な利益を得たものなわけで。

国産だから安全、と信じて製品を購入した結果、忌避した筈の外国産食品を食べさせられた消費者は、一様に自分たちの健康を害されたと認識するでしょうし、裏切られたと怒りもするでしょうから、本件記事のような事はむしろ当然に思うところでしょう。その意味でも批難記事は正当性を帯びます。本件イオンの偽装行為は、消費者に対する詐欺のみならず、傷害にも該当するものと考えられますから、治療費なり慰謝料なり損害賠償もなされてしかるべきところです。それを一切せずに、責任回避に終始した挙句、消費者の代弁として批難を加えたメディアに逆ギレ訴訟を起こすなど、全く以て論外な対応と言わざるを得ません。このような有様では、信頼回復など望むべくもないでしょう。

無論、中国産米が全て猛毒であるわけはありません。大半は特段の有害性もないのでしょう。しかし本件においてそのような部分は問題ではなく、危険性が否定出来ないものを、安全であると称して消費者を欺き販売した事が問題なのです。食の安全にシビアな人にとっては、その種のリスクがある時点で、「猛毒」に他ならない、そう認識するものなのですし、そのような判断基準を持つことも当然の権利なのですから。そういった消費者の権利を軽んじる、というより殆ど真っ向から対立する今回のイオンの判断、振る舞いには、そんなことでよく小売業をやっていられるものだと、極めて強く疑問に思う次第なのです。それとも、成功故の傲慢という事なんでしょうか。だとすれば、将来は決して明るいものにはなり得ないだろう、とそう残念にも思わざるを得ないところですが。

流通大手イオンが文藝春秋を提訴