6/26/2017

[biz] ついに破産したタカタ、その周辺をとりまく奇異

ようやく、というべきでしょうか。自動車部品メーカー大手のタカタが民事再生法の適用申請を行ない、破産しました。お騒がせ、と言うにはあまりにあまりだった同社を巡る一連の事案も、これで一応の一区切りです。というわけで少し思うところなど適当に。

同社製エアバッグの欠陥による死者の発覚から、ここに至るまでの経緯は周知の通り本当に酷いものでした。その規模の大きさ、被害の深刻さから、米国で早々に社会問題化し、官庁や議会が総出でした追求を受けてなお頑なに自身の責任を認めようとせず、その後も被害の生じるに任せて何ら自発的な対策を取ることすらなくとも恥じるところを全く見せなかった、あまりに無責任かつ非合理的で不可解なその態度は正しく見るに耐えないものという他無く、その態度から必然的に生じた米国社会との対立、それが決定的になった時点で、誰が見てももう詰んでいる、と言うところまで至ってから早数年。その間の事態の予想に違わぬ悪化ぶりからすれば、むしろあれだけ先行きの見込みも皆無な中、よくここまで延命させられたものだと、その意味では少しばかり感心せざるを得ないわけです。無論碌でもない話ではあるのですが。

未だその原因たるエアバッグのリコールすら完了の目処も立たない現状、同社が破産して債務の整理・清算がなされたからといって何が終わるわけでもないのですけれども、メーカーはじめ本件を通じて損害を被った向きには同社の資産をもって可能な範囲ながら賠償がなされるだろうし、それには十分ではなくとも一定の意味はあるものと言えるでしょう。逆に言えば、それすらタカタは怠ってきている、というより拒否してきたという話でもあるのですが。。。ともあれ、こうなった以上は、速やかにメーカー各社はタカタから賠償を取り、それを以ってユーザーへの補償等が速やかに拡充されるよう願いたいところです。あと、これで踏ん切りも付くでしょうから、他社品への切替えも進められるでしょうか。

ところで、もう終わった話だし瑣末な事でもあるのですが、、、下落を続けていた同社の株価が突然ストップ高になっていたそうですが、あれは何だったのでしょうね?ちょっと理解が及ばなくて困惑してしまいました。というのも、今回タカタが不可避とされ、この程申請された民事再生法、その適用は、言うまでもない話でしょうが要するに破産であって、同社が大幅な債務超過にある以上、株主資産もまた当然マイナスであり、株主責任の有限性により追加の徴収こそ無いものの債権者への清算後に株主に分配される残余財産は無く、株は文字通り紙屑にしかならない、というか今は振替なのでただの記録にしかならない事は明らかなわけです。それもすぐに。ですので、その取引価格がその直前に急上昇する、などという事は合理的に考えれば本来あり得ない話と言えるでしょう。

きっかけはメーカー各社が資金面の支援を行う、という報道がなされた事によるわけですが、この点から、幾つか仮説は立てられます。 例えば、圧倒的多数を占めていただろうショートポジションの向きが一斉に利確を図って一時的に需給が逼迫しただとか、あるいは、件の支援により再生法の申請を回避する可能性を生じさせたと、要するに単に勘違いした向きが多数出た、という仮説も成り立つでしょう。本当のところはよくわかりませんけれども、何はともあれ、理屈の通じない世界の出来事には違いなく、その意味では恐ろしい話です。やはりこの種の不安定な局面では、下手に市場に関わるべきではないですね。くわばらくわばら。

また、その原因たるメーカー各社の支援というのも、この局面での資金は当然回収される可能性はなく、従って通常回収を図る筈のところに逆にみすみす損失を追加する話ではあって、一義的には奇妙な話ではあります。メーカー各社とも、実際問題として同社の部品を使用している以上、今供給が途絶えられると困る、という面はあるのでしょうけれども、それにしても近年は冷酷とも言える程にドライな関係にある事が多い下請けとの関係にあって、異様とも言える厚遇ぶりには、やはり違和感を感じずにはいられないのです。どういう事なんでしょうね?これから始まる切り売りの中で美味しいところを持って行くための準備とかそういう事でしょうか?まあ、本件の処理に使える資金が増えるのは社会的には歓迎すべき事ではあるのだろうし、そんな思惑は放っておけばいい話なのかもしれませんが、どうにも気持ち悪いですね。

ともあれ、色々と腑に落ちない本件もようやくこれから本番です。何もかもが一筋縄ではいかないだろう事は明らかですが、さてどうなることやら。

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6/20/2017

[pol] まさかの悪い所取り、豊洲・築地併存決定でさらに積み上がる損失

東京中央卸売市場の件、小池知事がようやく方針を発表したそうですが。意味が分からなくて困ってしまいました。

結論としては、豊洲への移転は実行し、しかし築地は存続させ、将来的には築地へ戻す、というものです。何を言っているんだ、と。いや、事前に散々報道されてはいたので、実際驚いたわけではないのですが、まさか本当に、と思わずにはいられなかったのです。いやほんと、なんでこうなっちゃったんでしょう。

もとより本件の焦点は、移転した場合に生じる損失と、移転しない場合に生じる損失のいずれを取るか、という点にありました。すなわち、その深刻な土壌汚染及びそれにより不可避的に生じるだろう流通への悪影響と、豊洲の整備等に費やした巨額の投資の減損をはじめとした金銭的損失との、どちらを許容するかが主要な問題だったわけです。少なくとも、大多数はそのように認識していたでしょう。

しかるに、今回の案によれば、一旦豊洲へ移転する以上、前者の移転により生ずる損失は当然発生しますし、後者の金銭的損失についても、明らかに余剰となる築地を併存させるための維持・整備費、及び将来的な再移転時の費用に転じる形で生じる、というか、これから相当期間併存させる分、むしろ単に移転を取りやめた場合よりも損失は増えてしまいます。要するに、両選択肢の悪い所取りをしたような事になっているわけです。多額の損失を生じさせてまで移転を延期した結果がこれ、というのは、いくら何でも酷すぎるものと言わざるを得ません。頭おかしいんじゃないの?

大体、将来再移転した後には豊洲を別用途に転用する、というのであれば、今そうすべきところだろう、と。わざわざ巨額の費用が生じる移転を何度も繰り返したり、その間設備を余剰に保持して損失を積み上げるなど論外です。

本気で意味がわからないし、知事の意図も理解しづらいわけなのですが。。。これはあれですかね、作ったものを使わずに損失処理するのがもったいなくて出来ない、という話なんでしょうか。それとも、移転延期に伴う批判等や、豊洲への移転を中止した場合に東京都に生じるだろう損害賠償等の責任を回避したい、という話なんでしょうか。いずれにせよ、目先の損害に目が眩み、知事や東京都の保身のためだけに全体的な損失を積み上げる最悪の判断と断ぜざるを得ません。いやあ、酷いですね。

そもそも、高度に汚染されている事が分かっている場所を市場にする、という時点で現実と風評とを問わず、流通等に相当な被害が生じるだろう事も確実なのですし。。。あらゆる意味で誰も救われないものと言うべきその判断に、まさかここまで愚かとは、と呆れざるを得ないのです。

検査の改竄疑惑についても未だ説明すらされないままですし、なすべき事をせず、取り繕いややり過ごしを重ねた結果、既に事は破綻していて、それが都議選を前に無理にでもまとめざるを得なくなった事で表面化したのが本件、と解する事も可能でしょうか。何にせよ、無残なものです。

どう見ても都民ファーストとは言えないだろう愚行ぶりでもあるわけですが、さて都議選はどうなるのでしょうね?只でさえ実績もなく、有象無象の寄せ集め集団に過ぎない同集団が、それでも単に代表たる都知事のイメージだけを頼りに何となく支持を得る事になるのか、流石に幻滅されてあえなく散るのか。維新の顛末も記憶に新しいところ、未だ具体性すら覚束なかった同会がようやく実体を備えたと思ったらこれ、という話でもあるので、常識的に考えれば駄目だこれは、と見切られても不思議ではないように思われるところですが、さて。

小池都知事、豊洲移転を表明 築地も再開発

[過去記事 [law] 過去の検査結果改竄疑惑の高まる豊洲汚染]
[関連記事 [law] 東京中央卸売市場の豊洲移転頓挫に]

6/09/2017

[pol] May首相自滅、立ち往生してしまった英国

周知の通り、英国の総選挙(下院)が実施されました。結果は、与党Conservative(保守党)の明らかな敗北。第1党は維持し、かつLabour(労働党)をはじめとする野党勢力にしても一枚岩ではなく全野党の連立は困難と思われ、従って政権交代が起こる程ではないだろうことから、必ずしも壊滅的な大敗とまでは評価されないものの、単独過半数を失い、今後は連立なり個別案件での妥協なり、政権運営につき強い制約を受けるだろうところとなりました。

よりによってBrexitの手続の最中、国家の先行きを左右する重大な意思決定を山ほど行わなければならないこのタイミングにあってのこの議会・政府の機能不全をもたらすだろう変化は、誰にとっても好ましい事ではないでしょうけれど、致し方のないところなのでしょう。今回の選挙は、現首相のTheresa Mayが前首相のDavid Cameronの辞任後に議会によって選任されたものであり、しかも元々は本命ではなく他の有力候補が自滅したために消去法的に選出された首相であったところ、国民の信任を得てその政治基盤を確立すべく打って出たのが裏目に出た格好なわけですが、その元々の経緯やいわゆるHard Brexitを指向する若干荒っぽい政治方針からすれば、ある程度の反発が生じていたとしてもそれは自然な結果とも言えるところなのでしょうし。というか、元々からしてギリギリ過半数だったのだから、このような結果になりうる事は十分に予想出来た筈なのですが、May首相は一体どういうつもりだったのでしょうね?Brexitの国民投票実施を決断し、それが裏目に出たために失脚を余儀なくされたCameronの二の舞とも言えるような話でもありますし、それが頭をよぎらなかったわけは無い筈なのですが。謎です。ともあれ、既に終わった事です。さて、これが英国、EU、ひいては世界に対し、どのような帰結をもたらすのでしょうか?単にどうにもならなくなるだけかもしれませんし、特段の変化もないのかもしれませんけど。

ところで、2大政党の陰に隠れて、SNP(スコットランド国民党)が半減近い大敗を喫しています。 SNPはBrexit反対の急先鋒であるところ、その敗北によってEU残留派の伸張が相当に相殺・抑制された側面もあるわけなのです。この点、英国民としてはBrexitへの信任はいまだ不十分なものの、それ以上にScotlandの独立には否定的であると解釈すべきでしょうか?なかなかに複雑というか、面倒な事になってるというか、ますます混沌を深めるUKは一体何処へ行くのでしょうか。

UK election 2017: Conservatives lose majority