12/20/2022

[gov] 日銀がゼロ金利放棄

 ついにこの日が来ました。

日銀が長期金利の上限を0.25%上げ、事実上の利上げを行ったのです。

形式的というかレトリックとしては目標金利自体は据え置きで、許容する変動幅を従来の0.25%から0.5%に変更した、という言い方ではあります。が、周知の通り長い間苛烈な金利上昇圧力に晒され、0.25%を超えては介入で戻し、を繰り返していた長期金利の現状からすれば、その上昇の許容は実質的に利上げに他ならない、というわけですね。

つい先日、発行済の日本国債の実に50%超を保有し、先日の0.25%を僅かに超えた金利上昇の時点で1兆円近い評価損が生じていた日銀のバランスシートの崩壊は必至です。試算では0.5%で既に引当金の額を超え、債務超過に陥るとされます。満期保有が前提とはいえ、中央銀行が甚だしい債務超過に陥るという事実の与える影響は小さいものである筈がありません。多岐にわたって甚大な影響、それも悪い方向で、が出るでしょう。

どうするんでしょうね。増資とかするつもりでしょうか。するとしたら財源は国債になるんでしょうけど、少し金利が上がったところで他国債と比べれば著しく低金利な日本国債の買い手が日銀以外にほぼいない現状、日銀の自己資本の増資のための債権を日銀自身が買うとかいうわけのわからないことになってしまうわけで、実質的に無意味な話な筈なのですが。いやはや滅茶苦茶ですね。もっとも、これまでゼロ金利を続けていた事自体が滅茶苦茶だったのだから、その末路が滅茶苦茶なものになる事もまた当然ではあるのですが。

年の瀬になって、俄に風雲急を告げる日銀、ひいては日本の金融。下手をすれば無事に年を超えられない人が出かねない激流に晒される方面の方々に置かれましては、可能ならば自衛を、出来なければ諦めて諸々手仕舞い等されますよう。

※9月時点での評価損は引当金の額債務は超えていなかったとの事。修正しました。

11/26/2022

[note] Ubuntu22.10へのアップグレードでオーディオの不具合に遭遇

した件についてメモ。

しばらくぶりのUbuntuのアップグレード。今回は22.04LTSから22.10への移行になります。コードネームはKinetic Kudu。Kuduはレイヨウの一種でヤギとか牛の親戚ですね。ともあれいつもの通り、リリースからしばらく待って、特に大きな不具合は報告されていないらしいと判断してから実行したのです。結果としてこれが間違いだったわけですが。。。

アップグレード自体は特に問題もなく完了しました。が、いつもの通り日本語入力やらブラウザやら一通り動作確認をしていたところ、オーディオ周りに不具合が発生している事が判明してしまったのですね。

具体的には、動画の閲覧や音楽ファイルを再生する際、ブラウザやmplayer等が止まるのです。アプリ自体が完全にフリーズするのではなく、再生前の初期化が終わらないような感じで、そこから先に進まなくなるのです。不可解なのは、pulseaudioのコントロールパネルを開くと再生されたりされなかったり挙動が一貫しない点です。ブラウザ(firefox)で動画サイトを閲覧する場合には、動画を閉じてもサウンドデバイスがリリースされないらしく、pulseaudioのパネルにどんどんfirefoxのエントリが増えていって、処理が(恐らくは)スタックする事象も起こりました。

日常の利用に甚大な支障をきたすであろう致命的な不具合です。これはいかん、とすぐさま対処方法を調査する事に。しかし、同様の不具合の報告はなく、わずかに22.10にアップグレードした場合にbluetoothの再生デバイスが動作しなくなる、という報告が見られた位でした。

一ヶ月経っているのにこれだけ報告がないという事はおま環案件の可能性が高いかも、と愕然としつつ、対処しないわけにもいかない、という事で、22.10でのオーディオ周りの変更点から調査を再開。すると、長らくlinuxの標準オーディオサーバとして採用され続けて来たpulseaudioが廃止され、pipewireに置き換えられるという大変更がなされていた事をここで初めて認識しました。もしかしなくてもこれが原因であることは明白です。事前に知っていればもうちょっと警戒したのですが、と言っても後の祭り。リリースノートとかはちゃんと読みましょう。。。

ただ、pipewireに置き換えられた、と言っても、現状linux上では大半のアプリ等がpulseaudioを前提として構築されていますから、例によってpulseaudioのラッパーを被せる形で導入されているわけで、本来は従来と同様に動作するし、ユーザーが気にする必要はなかった筈です。それが不具合を起こしている、という事は、このラッパー周りかそれと応答するpipewireのインタフェース部分あたりに不具合があるという事か、というところまでは容易に推測出来ました。

しかし、設定ファイル等も確認してみても、特段の問題点も見つかりません。そもそも設定ファイルとかいじれるところが殆ど無いのですね。仕方がない、こういう時は再インストールだ、という事でpipewireを入れ直してみました。具体的には下記の通り。

まず、上記bluetooth関連不具合の報告中にあったライブラリの内、22.10のデフォルトでは入っていなかったpipewire-audio-client-librariesを入れます。

$ sudo apt install pipewire-audio-client-libraries 

次いで、サービス類の設定をやり直し。

$ systemctl --user --now disable pulseaudio.{socket,service}
$ systemctl --user mask pulseaudio
$ systemctl --user --now enable pipewire{,-pulse}.{socket,service}

オーディオサーバーの状態表示コマンド $ pactl info  で以下のようになっていればOK。

サーバー名: PulseAudio (on PipeWire 0.3.58)

もしなっていなければ、pipewireモジュールの入れ直しからやり直しになるでしょう。むしろ中途半端に設定の書き換えからするより、最初からやり直した方がいいのかもしれませんね。

ともかく、私の環境だとこれである程度改善したのです。ただ、残念ながらまだ不具合は残っていました。何かというと、何故かpulseaudioのコントロールパネルを開くまで再生が停止するのです。パネルを開くと再生が即始まる。わけがわかりません。オーディオサーバの方で何か応答が止まる部分があって、それがパネルを開く際に解除されるのでしょうけれども、それが何かも不明。PCを再起動しても駄目。意味不明な現象を前に、ここでああでもないこうでもないと迷走することしばし、最終的に、pipewireを再起動すると治りました。下記コマンド。

$ systemctl --user restart pipewire

これで、再生毎にpulseaudioのパネルを開く必要もなく、pulseaudioのエントリが無限増殖する事もなく、以前と同様にオーディオが動作しました。いつも通りに動くってありがたい事なのですね。。。

しかし久しぶりですこの新機能特有のわけのわからないバグり方とその治り方。こういう、不具合の原因もわからないけれど再起動したら治りました、だと、根本的には全く治っていないものとしか思えないし、これからしばらくオーディオ絡みで同様の不具合に悩まされるのだろうかと思うとげんなりせざるを得ないのですが、もう考えても仕方ないし、諦めましょう。

ともかくも、ひとまずはこれでおしまい。お疲れ様でした。

10/21/2022

[pol] Liz Truss英首相辞任、濁流に呑まれる英国

英国首相のLiz Trussが辞任を表明しましたというか、させられたというか。就任からわずか45日の事です。もちろん前代未聞。正確には保守党の党首を辞任すると言ったのですが、与党党首が首相になる事が事実上決まっているため首相を辞めるのと同義なのですね。なお、既に新国王チャールズ三世にも伝達済みだそうで、既に撤回は不可能です。

まあまあ衝撃的ではあるのですが、と言っても、そういう事もあるだろうなと。というのも、元々、Trussの党首就任は、党首としてやっていくのに最も必要な筈の、保守党内の議員の十分な支持が得られないままに決まったものでした。なのに何故首相になれたのかというと、保守党の党首選挙は、議員による予選を経て、最終候補2名による決選投票で決定する仕組みを取っているのですが、この決選投票は議員以外の全党員も含めて各自1票を持つので、議員の支持で劣っていても、一般党員の支持があれば当選出来るのです。要するに保守党の党首というのは、党内における大統領のようなものなのですね。ちなみに議員の支持は決選投票で敗れたRishi Sunakの方にありました。

なものだから、Trussは最初から与党内をまとめられない、死に体の少数派党首だったわけです。その影響か、Trussに近い者を中心に選任された大臣は、非主流派の経験に乏しい未熟な議員ばかりでした。財務相に任命したKwasi Kwartengも含めて。

その未熟さとそれに伴う実行力の無さはすぐに露呈します。Kwartengは経産相としての経験はありましたが、財務に関しては素人でした。後先を考えず、恐らくはその乏しい政権への支持を増やすために、単なる経済対策として大規模な減税、その財源としての国債の増発等を安易に打ち出し、ポンドの大暴落はじめ多数の住宅ローンの提供停止等の経済的な大混乱を引き起こして、減税等の撤回とあわせて辞任に追い込まれます。その被害は甚大で、Kwartengの後を継いだJeremy Huntにも、もはや出来る事はありませんでした。当たり前の話ですが、撤回後も経済周りの状況は改善していません。

これにより、保守党員のみとはいえ一般市民の支持によって選ばれた筈のTrussはその市民からの支持を急速かつ決定的に失います。元々議員の支持を得ていなかった事と併せ、もはや首相としても党首としても、その基盤たる信認を失ってしまったのです。直近での英国国民からの支持率は10%を大きく割り込んでいたとか。いやはや。現実は非情ですね。まあ、党員以外はそもそもTrussの選任に関与すらしていないのだから、冷淡なのも当然ではあるのですが。

一応、保守党の規約では、党首は就任(もしくは信任投票)から1年は任期が保証されているので、自ら辞任しない限りは原則在任し続ける事も可能ではあるのですが・・・さすがにここまでの不支持となると、次の選挙での保守党の壊滅的敗北は避けられないだろうわけで、それに危機感を覚えたのでしょう、ほぼ周りの全員が辞任を要求する状況になっていましたし、自らの政治家としてのキャリアを党諸共に終わらせかねない状況を前に、抗い続ける事は殆ど不可能だったという事なのでしょう。本来味方である筈の大臣が、その辞任の際にTrussに責任を問う捨て台詞を吐く位でしたからね。。。その振る舞いは流石にどうかと思わなくもないですが。

さて。Trussはもう終わったとして。次は誰?という話になるわけですけれども、これはもう殆ど決まっています。余程の事が無い限り、前回の決選投票で敗れたRishi Sunakになる見込みですね。元々議員の支持はあるのだし。一応、前首相のJohnsonの名前なんかも挙がってはいますが、Sunakが余程の失言をして、就任前から駄目とでもならない限りいきなり再登板というのはない、と言われています。

ただ、Sunakも別にそんな評価が高いわけでもないんですよね。MBA取得から富豪の娘と結婚してGoldman Sachsに勤務してさらに財をなし長者番付にも載り、政治家に転身した若い経済畑の人物、という時点で、通常政治家に期待されるべき安心感や信頼感は皆無。実際普通の政治家としてのキャリアはほぼなし。割と無謀な類の博打な感しかしません。増税派である事は無論、決選投票で敗れたところからしても、一般市民からはむしろ反感を買う可能性が高いでしょう。Johnson政権時に財務相の職を放り出し、政権崩壊の端緒になった事から、信用ならない裏切り者と見る向きが内外にある点も小さくない懸念材料です。

とはいえ、ここまで保守党自体の支持もボロボロになってしまった現状、未熟な人物から普通の政治家レベルの人物に代わったところで立て直せそうな気は全くしないし、だからこそJohnsonに代わる者として尖った人物が推されているという事なのかもしれませんけれども。さてどうなることやら。

10/13/2022

[gov] 誰からも望まれないマイナンバーカード

マイナンバーカード取得・使用の強制化が打ち出されたわけですが。

率直に言って、うまく行くとは思えません。理由は色々と思い浮かびますが、何よりも根本的かつ致命的な点は、利用者たる国民のおよそ全てが望んでおらず、そもそも制度へのニーズが皆無な事です。平たく言えば、これはいいね、使いたいね、と言う人がいないのです。肯定的なのはほぼ評論家の類だけですね。お仕事ご苦労様。

当たり前の話ですが、制度の普及の是非を決めるのは政府ではなく利用者です。どんな優れた(と提供する側が思っている)製品であろうと、サービスであろうと、その受け手が自然と利用するに足るだけのニーズやメリットがなければ利用されません。例外がないわけではありませんが、それはそのサービス等に代替手段がなく、かつ必要不可欠な場合だけなわけで、マイナンバーカードにはそのどちらにも当てはまらないのです。

そんな状態でカードを強制的に取得させて、さあ使え、と言ったところで無意味です。それに、従来の保険証は使えません、これからはマイナンバーカードだけです、と言うのは簡単ですが、実際にそのような運用を実現するための条件は明らかに非現実的なのであって。全員がカードを取得するところからして無理ですからね。紛失時の再発行に数ヶ月かかるというのも論外ですし。その間は車に乗れない、病院にも行けない。身分証明も出来ない。生活が立ち行かなくなる人も出るでしょう。

にも関わらず、カード非所持者の問題はじめ、往診時や僻地での医療時、また必ず想定して然るべきシステムダウンや通信障害の際等、マイナンバーカードの利用が不可能な状況については代替手段すら用意していない、というのでは話になりません。まさか全部保険なしにしろと?車にも乗るなと?今の制度なら対応出来ているのに?出直してこいと言う他ありませんね。

医療機関等の側にとっても、カードの取り扱い自体に高度な注意が必要となる上に、個人情報云々や患者からのクレーム等、諸々のリスクが激増し、かつ対応のためシステムの導入・運用・更新に多額のコストがかかる本制度など百害あって一利なしです。得をするのはITベンダーだけですね。

それでも、マイナンバーカードを使う事に多くの人が利点を見出し、歓迎しているというのならまだ見込みもあろう話ではあるのですが、肝心のそれが無い、というかむしろ個人情報保護の面を中心に否定的というのだから、これで制度として成立すると考える方がどうかしているというものです。ほんと日本政府は馬鹿ですね。

9/26/2022

[pol] 地獄へと加速するロシア

隣国ウクライナへの侵略の失敗が確実になりつつあるロシアですが、現実を受け入れて戦争の終わらせ方を模索する、などという理性的な行動に移る事は当然なく、それどころか無謀な戦力追加を試みているそうで。

直近では30万人とも120万人とも言われる予備役の徴兵を決定し、逃亡や降伏への罰則を大幅に加重して脅しをかけた上で対象者を強制的に連行しようとしているとの事。

大本営発表が通用した時代は遥か遠くに過ぎ去りました。個々人がそれぞれに戦況をつぶさに知りうる現代にあって、当然ながらその悲惨な状況を知っている徴兵対象者は、死地へ送られる事を回避すべく、ある者は逃亡を試み、ある者はわざと負傷する事で対象から外れようとし、逮捕される事がわかっていても抗議のデモを決行する者さえ少なくないとか。徴兵事務所が襲撃される事件すら起こっているそうです。そこまで行くとほとんどパルチザンですね。

無論、それらの行為に対する取り締まりは苛烈に行われているようですが、取り締まり及び逮捕者の管理に多数の官憲を動員しているのを見ると、本末転倒にしか見えません。まずその官憲を戦場に送るべきでは、と。

それはともかく、徴兵です。今の時代に。あの状況で。なんというか・・・わけがわかりません。その是非は論ずるまでもありませんが、それ以前に、戦闘に消極的どころか拒絶の意思が明確な者を戦地に無理やり連れて行ってどうしようというのでしょうか。まさか戦力になると本気で思っているのでしょうか。死にたくない、と怯えて逃げ惑う、無駄飯食らいの足手まといの類になるならまだましな方で、逃げるためにその支給された武器を上官等に向けかねないでしょうに。

ましてウクライナはもうすぐ冬。元より補給線は寸断され、物資も足りない。砲火に晒されずともそこに留まるだけで兵は死ぬ、文字通りの地獄になる事は明らかです。そこに無理やり放り込まれる哀れな素人たち。戦闘など出来る筈もなく、しかし食料や武装等の消費はその分増える。戦況の改善どころか、部隊をまともに維持する事も出来ないでしょう。

このまま行けば、第二次世界大戦でかつてソ連へと侵攻したナチスが見た地獄、かのスターリングラードをロシア自身が今度は逆の立場で繰り返す事になる、そういう未来が見えるのは私だけではないでしょう。ロシア軍の中にもその最悪の、しかし間近に迫った結末を恐れる者がいない筈はありません。生きて帰る事が出来るのかも不明で、運良く生還出来たとしても得られるものは何もない。地獄へ向かっている事は明らかなのに、止まる事が出来ないどころかむしろ加速しようとする。まさしく阿呆の所業です。もうどうにもなりませんね。

9/23/2022

[note] 自転車のブレーキ交換修理

愛車のブレーキの交換等をやりました。その記録です。

対象の自転車はフラットハンドルのクロスバイク型です。が、材質やコンポーネントのランクは最低、すなわち実質はママチャリと同じ、いわゆるルック車というやつですね。前カゴも泥除けもあり、変速機はついていますが、後輪側に6段のものだけ。フレームの剛性等スポーツ車にあってしかるべきあれこれは無きに等しい、紛うことなき安物。でも街乗りする分には問題なく、むしろ安物だけあって盗難に遭う心配等もあまりせずに済むので、かれこれ10年以上に渡って愛用し続けて来ました。

それなりに大事にして来たつもりですが、それでも流石にこれだけ長く乗っていると、故障が生ずるのも避けられないわけで、今回はそれがブレーキだったということですね。実のところ、大分前から後輪側がブレーキを強く効かせた時にキーキーと甲高く不愉快な音で鳴くようになってしまっていて、何とかしたいなあと思っていたところに、加えて前輪側のブレーキワイヤーが切れかけてしまい、この際だから両方交換するかとなったわけです。作業内容は、前輪側がワイヤーとブレーキシューの交換、後輪側がブレーキユニットの交換です。後輪側のワイヤーは特に問題なかったのでそのまま。

ちなみにというかこれは余談ですが、音が鳴る原因について少し触れておきます。後輪のブレーキはバンドブレーキと言って、その名の通りバンド状のゴムで車輪に固定されたドラムを締め付けてそこに生ずる摩擦力により車輪を制動する仕組みになっています。このゴムバンドがゴムなので経年劣化により硬化・摩耗してしまい、摩擦時に滑るようになってしまうのですね。これはゴムバンドを使っている以上避けられない構造的な事象なわけで、これを解消するにあたり、単に新品に交換するだけだと、またしばらくすれば再発する事は必至です。であれば、音が出ない、あるいは出にくい構造のものに交換した方がよい、という事になります。

ただ、交換先のブレーキには、当然ながら物理的に元のバンドブレーキと互換性がなければなりません。スポーツ車で一般に使われるリムにシューを当てるようなタイプは無論駄目ですし、そもそもの目的からして鳴きが出にくいタイプでなければなりません。そうなると、選択肢としては事実上サーボブレーキ一択になります。

サーボブレーキは、バンドブレーキを最初に開発した唐沢製作所がその欠点を改善した互換品として開発したもので、開発元自らが用意した互換品だけあって見た目の構造はバンドブレーキと同じですが、その中の構造がバンドブレーキとは逆、すなわちドラムの内側から円環状のブレーキシューを押し付けるタイプのブレーキです。バイクではおなじみなタイプのブレーキですね。

名称中のサーボ、というのは、ブレーキシューとドラムが接触する際に生じる摩擦力がフィードバックとなって、ブレーキシューがさらにドラムに押し付けられてより制動力が増すという点でサーボ的な動作をする、というところからつけられています。本来のサーボの定義であるところの出力値と目標値との差に応じてフィードバック制御をかける挙動とはいささか異なるように思いますが、それはともかく、制動力と耐久性の双方に優れる方式で、摩擦音も低め。ただ、バイクに乗る人ならば分かるでしょうけれども、ブレーキシューが摩耗すればキーキー音が鳴るようになる事もあります。あくまで摩耗しにくい、摩耗しても高音は鳴りにくい、というだけの話ですね。自転車であれば、必要な摩擦力がバイクよりは格段に小さい分、摩耗もしにくいでしょうから、そこまで心配はしなくてもいいのかもしれませんけれども。

斯様に素性良さげなサーボブレーキですが、実はあまり普及していません。価格ではバンドブレーキの方が安いためコスト優先の低価格帯ではバンドブレーキが採用され、一方で高級車にはサーボブレーキ以上に鳴きが生じにくく、かつ密閉性も高く雨風等環境の影響を受けにくいローラーブレーキが主流だからです。特に電動アシスト自転車はモーターを回生ブレーキとして利用する(事を想定する)構造と相性のいいローラーブレーキ一択ですね。そしてローラーブレーキとバンド/サーボの両者間には構造的な互換性がありません。というわけで、サーボブレーキはほとんどバンドブレーキからの交換にしか使われていないのですね。その割には部品一式で1500円〜2000円程度と安い事もあって、今回のようなバンドブレーキからの変更・交換に際しては事実上唯一の選択肢と言ってよいというわけなのです。

なお、ローラーブレーキへの変更は不可能ではないのですが、あまり現実的ではありません。というのも、ローラーブレーキは車輪のハブ内にブレーキシュー等が埋め込まれる形式なので、ホイールも交換する必要があるのです。ということはギヤやらタイヤチューブやらあれこれ移植もしなければならないということで、費用も手間も跳ね上がりますから、元々安物の自転車のブレーキのためだけにそこまでするというのは流石に割に合わないというか本末転倒というかなので、それなら本体ごと買い替えた方がいいでしょう。

前置きはここまで。作業開始です。後輪に手をつける前に、前輪を片付けます。簡単なので。前輪については、ワイヤー交換とついでにブレーキシューを交換。これは至極簡単なので詳細は省きますが、調整が二度手間にならないよう、先にシューを交換しておいてから元のワイヤーを取り外し、交換用のワイヤーとその保護チューブをそれぞれ元と同じ長さになるように切断して取り付けるだけです。後はワイヤーの固定位置を調整しておしまい。ちなみに、下図のような感じになっていました。図は交換の途中、ワイヤーを取り外すところです。半分ぐらい切れていますね。所要時間は15分程度でしょうか。

しかるのちに本命であるところの後輪ブレーキの交換です。 下図が元の状態。黒いキャップの下にシャフトとボルトがあります。元に戻す際に必要となるシャフトに留められている部品の順番は、外側から順に[キャップ]-[ボルト(15mm)]-[ワッシャ]-[泥除け]-[スタンド]です。

反対側は下図。こちらの順番は、同じく外側から[キャップ]-[ボルト]-[ワッシャ]-[泥除け]-[変速機ガード]です。

それぞれ順番をメモしてから、車体を逆さまにして両側ともキャップを取り、レンチ(15mm)でボルトを外し、泥除けやスタンド、変速機ガード等を順次外します。言うまでも無い事ですが部品はなくさないように管理します。


 
同時に、ブレーキユニットのワイヤーとユニットをフレームに固定しているボルトを外します。この機種ではワイヤー一箇所とフレーム側二箇所ですね。ワイヤー固定部は10mmのレンチ、フレーム側はプラスドライバーで外します。

これで車輪がフリーになったので、引き抜きます。この時、変速機が干渉しにくいよう、シフトは一番外側(ギヤ比が重い方、この場合は6速)にしておきます。チェーンや変速機ユニットを少し引っ張りながらやると抜きやすいでしょう。

引き抜けました。ブレーキユニットはナットで留められているので、ナットをスパナ等で外してから取り外します。
ちなみに取り外したバンドブレーキの内側はこんな感じ。まだそれほど摩耗しているわけではなく、ブレーキとしての機能自体には問題なさそうですが、それでも音がひどい、というのはやはり元々の構造上の問題なのでしょう。ともあれ長い間お疲れ様でした。
ブレーキ本体を外した車輪側には、まだドラムが残っています。このドラムはサーボブレーキのドラムと似ているもののサイズ等が異なるのでこれも交換しなければならないのですが、これを外すのが最難関。長年ブレーキの制動力を受け続けて来ただけあって、締め込まれ方が半端ではなく、例えば手で回そうとしてもびくともしません。
当然というか、このドラムの取り外しには、専用の工具が存在します。HOZANのC-349という、バイク用のY字ホルダーと同様の形状の工具です。通称ドラム抜き。一般のY字ホルダーとの違いはその剛性と柄の長さ。Y字ホルダーの方が一般に安価なので、それで試してみる人も多いようですが、剛性が足りず工具のほうが壊れてしまう事も多いそうです。南無。経験上、この種の専用工具は代用品で済ませようとすると碌な事にならないので、私は最初から大人しくこの工具を使うことにしました。4000円強。もしかしなくてもこの作業での一番の出費です。とほほ。ともかく、それを下図のような感じでドラムの穴にセットします。
で、車輪を立てて、体重をかけてぐいっと。やはり固いですが、流石に専用だけあって工具が負ける事はありません。容赦なくぐいぐいと力を強める事しばし、ようやく回ります。
回りだしたら後は手でも問題ないので、くるくると回します。
取れました。
取り付けに移ります。サーボブレーキ一式が下図。
ドラムを取り付けて、

 本体を取り付けます。ちなみに本体の内側は下図のようになっています。半月状のブレーキシューが外側についた部品が2つ、Cの字というかパックマンのような形になるように配置されていて、その片方が軸に留められています。軸の反対側、パックマンの口にあたる部分に挟まっている台形状の金属部品はワイヤーを引くと回転するようになっていて、これが回る事でパックマンの口が拡がって円の半径が大きくなり、外側のブレーキシューがドラムに押し付けられて摩擦力を生ずる、というわけです。まんまバイクのものと同じですね。自転車の部品としてはかなり重たいのが欠点ですが、その分制動力も耐久性も高い事は間違いありません。
これを車輪に取り付けます。ナットを忘れずに。
本体に戻します。チェーンを外側のギヤにかけてから押し込みます。この時、ブレーキユニットが所定の向きになるように調整しておくとよいでしょう。後から回そうとするとフレームに干渉する場合があり、そうなるとフレームに傷がついたり、やり直す羽目になったりしますので。
外した際と逆の順番で変速機ガードや泥除け、スタンド等をシャフトに差し込み、ボルトで留めます。後の調整時に緩めるのでここでは軽くで。
ブレーキユニットをフレームに留め、ブレーキワイヤーを取り付けます。こちらも後で調整するのでどちらも仮留めで。ワイヤーにはスプリングを通すのを忘れずに。通した後でワイヤーの後端にはピンをカシメておきます。

最後に調整。調整するのは2点、車輪の向きと、ブレーキの効き具合です。まず車輪の向きについて、後側からフレームと車輪が綺麗に並行になるように合わせて車輪のボルトを固定します。車輪を回してみたりして、フレームの向きとズレがないか確認し、ズレていれば合うように調整し、よければボルトを締め込みます。

次いでブレーキの調整。ブレーキの調整は2段階になります。1段目は、車輪を回転させながらブレーキユニットのネジ(緑色のシールがはられている部分から出ているネジ)をドライバーで回して、シューシュー摩擦音が鳴るポイントを探り、そこから少し緩めて音がしなくなるところに設定します。2段目はワイヤーの調整。一旦ワイヤーをフリーにし、ワイヤーがピンと張る位置でワイヤーを固定します。実際にブレーキレバーを引いてみて、緩すぎずきつすぎずの良い感じになっていればOK。でなければワイヤーの固定位置を少しずらしてまた固定、を繰り返して合わせます。一発で綺麗に出来る事は稀でしょうけれども、一番大事なところですので、横着せずに満足行くまで根気よく合わせます。

下図は取り外したバンドブレーキの部品です。サーボブレーキに問題が生じた時は戻せるよう、本体も含めて一応取っておくのがよいでしょう。
調整が終われば出来上がり。作業完了お疲れ。試しに乗ってみると良好な効き具合です。急な坂を降りる際に強くブレーキをかけても甲高い音が鳴ることもありません。やはり音は大事ですよね。

以下は感想です。

作業自体は適切な工具(特にドラム外し)を準備していれば特に困難なところはありません。所要時間はおよそ1時間前後でしょうか。ドラム外し用の工具が高価で、しかも他の作業等に流用する事も難しい、というのがネックになるので、誰にでもおすすめ出来るものではないのですが、自転車やバイクをいじるのが好きな人であればとても楽しい一時になる事は間違いありません。私はとても楽しかったです。愛車が鳴かなくなる実利もあり、準備等がそれなりに必要な分、作業後の達成感等は小さくはないでしょうから、余裕があればチャレンジしてみるのも一興ではないでしょうか。それでは今回はこの辺で。

9/15/2022

[law] 東京五輪の贈収賄事件、その軽々しさに引く

東京五輪でのスポンサー選定に関する贈収賄の件、順調に摘発が進んでいますね。普段は立件が難しいだとか色々意味不明な言い訳をして摘発をしないのが常だった検察にしては珍しい話で驚きました。贈賄は3年、受託収賄は5年の公訴時効が迫る中、急がなければ起訴出来なくなる、という事情はあるにしても、ここまでの積極的な姿勢は長らく見なかったレベルである事は間違いありません。

その姿勢の変化の理由は、やはり検察・警察を含めた司法組織の弱体化を強力に進めた安倍元首相の暗殺、それにより後ろ盾を失った向きからの圧力が緩んだか、あるいは検察の側でもう横槍が入らないだろうという見込みが得られたからなのではないかと推測されるわけですが、果たして。そのあたりの事の真偽はそのうち明らかになるのでしょう。

現時点で、収賄側は五輪組織委元理事かつ元電通の高橋治之容疑者、贈賄側はAOKI会長の青木拡憲容疑者に同副会長青木寶久容疑者、同執行役上田雄久容疑者、KADOKAWA会長の角川歴彦容疑者、同元専務の芳原世幸容疑者、同担当室長の馬庭教二容疑者が逮捕されている他、広告代理店の大広と駐車場大手のパーク24の2社には家宅捜索、さらに参考人として当時の五輪組織委員長だった森喜朗元首相を含めた多数の関係者に聴取を行っているそうです。その他にも、同様の容疑がかかっている60社以上のスポンサー企業についても捜査が進められているとの事。その中心にいる筈の電通本体の名前が聞こえてこないのは腑に落ちない気もしますが、それはともかく。

本件は既に大変な規模になっています。が、五輪の規模、性質から見て、現時点での検挙対象が氷山の一角であり、同様の犯罪に手を染めていた者が他にも多数いるだろう事は疑いようのない所でもあるわけで。まだ始まったばかりと言っても良さそうで、時効が成立するまではまだまだ摘発が続くだろう事も必至。規模・範囲の大きさ広さに加えて厳しい時間制限もあるという事で、摘発する検察も大変でしょうけれども、長らく役立たず同然であった鬱憤を晴らす意味も込めて、是非とも頑張ってもらいたいところですね。

ところで、そもそもの話、贈収賄は著しく公益を損なう重罪なのです。少なくとも、やってはいけない事である事は誰もが知っている事で、通常の倫理があれば忌避して当然の行いです。にも関わらず、これだけの、それなり以上に社会的な地位もある面々が大勢、軽々しく(としか思えない)手を染めている様は一種異様な感がありますね。五輪が商業化しているにしても、だからと言って贈収賄だ、とは普通ならないわけで。

名前の上がっているメンツを見ても、高々数億円の協賛金を値切らなければ払えない、という事もないだろうし、罪を犯す必要性というか必然性もそんなに高くないと思うのですが。無論、数億円は安くはありませんが、犯罪に手を染めてまでして得られる利益としては釣り合わないと思うのですよ。でもこぞって軽々にやっている。そこがどうにも気持ち悪いのです。皆が皆、その辺りの倫理観やらもとっくに失くしてしまっていたというだけの事なんでしょうけれども・・・。正直ドン引きです。これも現在の日本の偽らざる有様という事なんでしょうかね。なんとも無残な話です。

KADOKAWA会長を逮捕 五輪組織委元理事に贈賄容疑 東京地検

9/03/2022

[note] ubuntu 22.04LTS へのアップグレードで snap がネックになった話

久方ぶりのubuntuアップグレードの話です。20.04LTSから22.04LTSへ。server版です。22.04LTSはJammy Jellyfish、運の良いクラゲさんですね。デスクトップ版は既に複数アップグレード済みですが、LTSの最新版が出てから暫く経ち、サーバーの方もそろそろいいだろう、という事で。

何はともあれまずバックアップ。partclone等を使ってドライブをまるごとイメージ化します。しかるのちに、アップグレード。なお、serverはLTS版のみを採用するのが普通だと想いますが、そのニーズに対応して、LTS版からLTS版へは、中間をすっ飛ばしてアップグレードする事が出来ます。/etc/update-manager/release-upgrades中のPromptをltsにしておけばOK。確認後、do-release-upgrade です。

で・・・警告からエラー発生、のち中断してそのまま起動不可に。ぐえー。いくつかのパッケージのインストールに失敗していました。何に失敗したのかというと、悪名高きsnapです。 snapはcanonicalが開発、導入したaptに代わるバッケージ管理システムで、Firefoxやchromium等のブラウザ中心にaptからの移行が進められています。ubuntuでは21.10から既に採用されているのですが、LTS版としては22.04が初という事になるわけですね。

問題は、snap関連は通常のubuntuとは別のサーバで管理がなされていて、snapd自体から各種パッケージまで、そのインストール等をするには、専用のサーバにアクセスする必要があるのです。で、私のサーバーではホワイトリスト的なアクセス制御設定をしていて、アップデートの際にはその都度リポジトリのサーバーにアクセス許可を出すやり方を取っているのですが、新規に追加されたsnap関連サーバは当然含まれておらず、従ってアクセスできない、という事で失敗してしまったのです。

無論、snap関連サーバにアクセス許可を出せばいいだけの話なわけですが。ここで許可を出すべきサーバを調べるのに一苦労です。ほとんど情報がない。まあ、クライアント運用する場合はそもそも細かいアクセス制御なんてしないだろうし、そんな情報を必要とする人自体少ない、という事なんでしょうけれども。サーバーの管理には必要な情報だと思うんですけどね。。。

ともかく、四苦八苦する事数時間。結果から言えば下記ページに記載されているサーバにアクセス許可を出せばよい事がわかりました。

https://snapcraft.io/docs/network-requirements

具体的には、

public.apps.ubuntu.com 

storage.snapcraftcontent.com 

canonical-lgw01.cdn.snapcraftcontent.com 

canonical-lcy01.cdn.snapcraftcontent.com

canonical-lcy02.cdn.snapcraftcontent.com

canonical-bos01.cdn.snapcraftcontent.com

cloudfront.cdn.snapcraftcontent.com

です。なお、必要なポートは全て443。リスト中、deprecatedとしつつも記載されているfastlyから始まるサーバーも一応追加してみましたが、既に存在しないようです。ので除外。

これらにアクセス許可を出します。例えば、私はiptablesを使用しているので、それぞれ

$ sudo iptables  -I INPUT -p tcp -s [各サーバー] -j ACCEPT

等としてやるわけですね。今後も繰り返し必要になる筈なので、スクリプトにして。

で、バックアップから失敗前の状態に戻し、上記アクセス許可を出してから再実行。

すると、今度はsnap関連でエラーを吐くこともなく問題なく進みます。時折各種変更済みの設定ファイルを保持するか聞かれるのに全てN(保持)と応答することしばし。無事完了しました。おつかれー。

<付記>

ちなみに、今回の件でsnap関連の情報を漁っている時に少し気になった事がありまして。何かというと、snapの評判ってすごい悪いんですね。あらゆる意味で。

私のようにサーバー運用をしている身からすると完全に余計な手間が増えただけなのだから当然なのですが、そもそもアップデートすると環境との不整合からクラッシュするようになったり、パッケージ管理システムとして不完全なところが多々あって、ユーザーのみならず、当の開発・管理の側からも非難轟々なんだそうで。

そういえば、デスクトップでsnap版のfirefoxやchromiumを既に使ってはいるのですが、当初は頻繁にアップデートしろしろとメッセージが出て鬱陶しかったのが最近は出なくなったように思います。これはアップデート時のリスクから、そもそもアップデートを提供しにくくなった、という事なのでしょうか。だとしたら本末転倒ですね。

それはともかく、確かに現状snapが導入されてプラスになった点、またこれから期待できる部分があるかというと、少なくともユーザー側から見れば皆無だし、管理システムが併存している以上、ベンダ側からしても管理すべきシステムが複雑化しただけでしかないのでは、と。これでは悪評が出るのもむべなるかな。

もっとも、これまで、Canonicalが独自の機能やらアプリやらの開発に手を出していい結果になったためしがないので、その辺のsnapに関する悪評を聞いても正直またか、と思うだけではあるのですが。改めて余計な事はしないで頂きたいと願いつつも、きっと懲りないんだろうなあと。ほんと残念な企業ですね。 もう諦めてますが。

8/30/2022

[pol] 未治験の新ワクチン接種という狂気

もう何も対策もせず、事実上蔓延するに任せているだけになったコロナウィルスですが。その無策ぶりと矛盾するように、またワクチンを打たせるんだそうで。多い人だと1年強で実に5回目の接種、という事になります。その回数には箍が外れた感はありますが、それは今回の主題ではないのでおいておいて。

理由は今まさに蔓延のまっただ中にあるオミクロン派生株への抑制・予防とのことですが、正直今更なんの意味が、と思わざるを得ません。というのも、一部の高齢者や医療関係者等の高リスクとされる人を除き、3回目以降接種をしていない人も増加しており、その割合はおよそ4割弱にものぼります。4回目については、全体のデータは国から出ていませんが、自治体の公表している接種回数データからすると、概ね接種率は2割程度であろうと推測されます。これは対象者が高齢者にほぼ限定されていた事によるものでしょう。4回目時点で未接種者が8割です。つまり、5回目の接種をする可能性がある者は2割程度しかいないのです。

元々、3回目の時点で副作用と効果を比較して以降の接種を取りやめた人が多数出ていた事、さらに4回目の接種はそもそも蔓延防止を目的とはしておらず、感染後の重症化防止のみを目的としていた事とを併せ、ワクチンによる蔓延防止は既に目的から外されていました。 一方で、ワクチン以外の蔓延防止対策を取っていたかというと真逆で、蔓延を促進する政策のみを取り続けています。要するに、もはや蔓延については予防自体考えてもいないのですね。緊急性も何もあったものではありません。加えて、重症化予防は従来ワクチンでも十分だと公表していました。すなわち、基本的に接種は不要、必要な場合も従来ワクチンで問題ない、と、少なくとも厚労省は判断していたわけです。これを反映して、上記の通り接種は一部の人にしかしていないのですね。

で、件の新しいワクチンですが。従来のワクチンとオミクロン系株用の新成分の混合だそうで、8月末現在開発中だそうです。開発中、ということは、治験の結果を云々する以前に、そもそも治験をしていないという事です。実際、ファイザー社らによると治験はこれからだとか。効果があるのか、副作用がないのか、それすらも確かめてもいないという事ですね。そんなもの、薬でもなんでもありません。その一般人への投与は治験ですらない、ただの人体実験です。

もっとも、例え人体実験だとしても、一刻の猶予もない程の緊急性と必要性があり、かつそれ以外に手段がないというのならばまだ考慮の余地はあるでしょう。初回の接種にはある程度それらの要素がありました。ですが、今回についてはどれもない。

必要性の根拠となるべき目的については、蔓延防止は既にその中になく、高リスク者の重症化予防だけであり、それについては前記の通り従来のワクチンで十分との判断がなされていた筈です。また、未治験である以上、そもそも新ワクチンの(旧ワクチンと比較しての)有効性については、製薬会社がそう主張しているだけで、その正誤すら定かではありません。

あらゆる意味で、合理性がないのです。今回の新ワクチン接種の話には。率直に言って狂気の沙汰だと思います。

なのですが・・・高齢者の方々の相当割合が、それでも接種してしまうのでしょうね。必要だ、接種しないと危ないぞ、という政府の出鱈目な話を鵜呑みにして。その接種自体が危険に満ちている上に、無意味かもしれない、という事実に気づくこともなく。全く以て遺憾な事です。

オミクロン株対応ワクチンの接種開始、9月に前倒しへ 政府が調整

[pol] コロナワクチンを薬扱いする非科学的姿勢を反省  

8/22/2022

[biz] 日野自動車、全車販売不能・・・まさか廃業?

だそうで。

3月ごろに中大型車用エンジンで試験時の不正が発覚し、前代未聞の型式指定取り消しを食らって中大型車の事業が事実上廃業状態にあった日野自動車ですが、案の定というか、小型トラックでも同様の不正が発覚してしまいました。めでたく販売停止です。なお、OEM先のトヨタでも該当する車種は販売停止。えらいこっちゃ、です。

本件はまだ発覚したばかりにつき、国交省が大型車と同様に型式指定の取り消し処分を下すかどうかは不明ですが、当然ながらその可能性は極めて高いものと予想されます。そうなった場合、日野自動車はその生産・販売するほぼ全車種が事実上販売出来なくなる事になるわけで、もしかしなくても廃業するしかなくなるわけですね。

仮に廃業せずに再生を目指すとして、これから型式指定を再取得するにも、そもそもの性能自体が未達である以上、開発からやり直しになるわけで、何年かかるのかすらわからない、と。もう笑うしかありません。まあ、トヨタが見捨てなければ資金的には問題ないんでしょうけれども。

本件、3月の発覚以降様々なところで同社の硬直的で非合理的な、ぶっちゃけ大手メーカーにありがちな「無理な事を無理と言えない、言わせない」企業体質が原因であろうという話が多数流れています。それが事実であれば、この惨状も、ただ目の前の検査を乗り切れさえすればいい、という技術者、生産者としての最低限の倫理さえも捨て去った詐欺師たちには必然の結果だったのでしょう。

それにしても、いくら眼の前の事しか考えられなくなるといっても、この手の不正は一度でも行えば雪だるま式に膨らんでいくものなのであって。開発の当事者であれば、いずれこうなるのも時間の問題だという事くらいは流石にわかりそうなものですが、その程度の事も考えられなかったのでしょうか。救いがたい話です。

日野、主力の小型トラックでもエンジン性能試験の不正…大半の車種が販売不可能に

<追記>

その後、立ち入り検査等を経て、一部機種では生産再開の許可が下りた模様です。全面的な生産停止は避けられた、ということで、一応廃業は回避できそう・・・なのでしょうか。と言うのも、大型等の既に指定が取り消されたエンジンについては何も救済はなされず、少なくとも数年生産出来ない事に変わりはありませんし、今回新たに4機種で性能不適合につき指定取消となり、生産不可能となった範囲は広がってしまいました。さらに今後の検査で不適合となった機種については同様に指定を取り消す旨も明示されましたので、状況としてはあまり変わってはいないのかもしれないのですね。

7/31/2022

[law] 統一教会と自民党の癒着について

長年、公然の秘密であった元祖反社会的組織たる統一教会と自民党の癒着。その自民党側の中核的存在であった安倍元首相の殺害事件、その犯人の動機を通じて否応なく世間の注目が寄せられ、その悲惨な実情が曝け出されつつあります。それに伴い、両者にその他のあらゆる方面から非難が寄せられると共に、両者の側からはそれを封じようとする動きが起こり、混沌とした状況になりつつあるわけですが。

そもそも統一教会とは何ぞや、というと、韓国で1950年代に発生し、日本を中心に海外にも広がったキリスト教をベースにしたカルト宗教というのが正しいのでしょう。サタンが云々、地獄に落ちる云々の無根拠にして荒唐無稽かつ意味不明な言葉で迷信深い信者の恐怖を煽り、その対策や救済と称して壺等を提示し、その対価として常軌を逸した寄付を要求する、要するに悪質な霊感商法の元祖的な存在です。実際に1980年代には日本国内で社会問題化し、宗教系の反社会的組織としての評価を確立しました。オウム真理教と違い破防法等の指定を受けていないのは、テロ等のあからさまな暴力行為には手を出さない、という一点のみによります。とはいえ、一般人にとってはその被る経済的・精神的・社会的な意味での危害・被害とその危険性の点ではオウムも統一教会も大差ない認識であろう事は間違いないでしょう。つまり、暴力団・半グレ・マルチ商法・特殊詐欺等と同類の組織と言えるわけです。

自民党と統一教会の関係、その歴史的な経緯の詳細については各所で解説がなされていますから、ここでは省略します。一言で言えば、安倍元首相の祖父である岸信介元首相の時代から30年以上に渡り互助関係を築いて来た、という事です。自民党の所属議員は、統一教会の式典や機関誌等に顔を出し、ある種の広告塔として、教会に対し権威や正当性を与える事で信者の獲得すなわち収入の維持・増加をもたらし、教会側はその見返りとして、日本人信者の票の取りまとめを行って来た事はよく知られているところです。他にも、議員等はあからさまでない形で様々な口利き等を行って来たとも言われていますね。

要するに、反社たる統一教会と、日本政府すなわち国家権力とほぼ同義である自民党及びその所属議員が、長年に渡り、恒常的に癒着していた、それはもはや疑いようのない事実であるわけです。そもそもこの事がここに至るまで公の非難すら免れて来たという事自体、日本政府には政教分離以前に基本的な最低限の倫理のかけらもないという事を証明していると言えるでしょう。

政教分離。そう、カルトかつ反社とは言え、統一教会は宗教団体なのです。 言うまでもなく、宗教活動及びそれを行う団体には、憲法上の強固な保護が与えられています。具体的には憲法20条の前段ですね。「信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。」例えその思想が終末的だろうと、反社会的であろうと、本部が外国で運営主体が外国人で占められていようと、それが宗教活動である限り、原則として自由が保障されています。それがマインドコントロールによるものであっても、信者本人がその信じるところに従って自発的に行う限りは、侵されるべきではない、というのが基本なのです。

実際、その教義やそれに伴う寄付が如何に客観的に見て不当であろうと、当人が正当と信じ込んでしまっている場合、それを制限する権利は他人にはありません。だからこそ、統一教会の活動が反社的である事はわかっていても、その存在は容認されて来たし、安倍元首相殺害犯の母親のように第三者から見ての被害者も依然として無くならず、二次的・三次的な被害も生じ続けているわけです。

ところが、今回問題になっている、自民党との癒着については話が別です。統一教会が宗教団体としてその保護を享受している以上、政教分離の制約も同時に受ける事になるわけで、自民党との協力関係は、これに抵触してしまうのです。具体的には、憲法20条後段の、「いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。」ですね。宗教の(絶対的な)価値観は民主主義にそぐわず、他の権利を侵害するおそれが大きい事等から設けられている規定です。

ここで言う特権とは、典型的には玉串料や香典等の公金の交付を意味しますが、当然ながら金銭的なものには限られません。有形と無形とを問わず、およそ便益と言えるものが該当します。各種の口利き等は勿論、反社会性を理由に差し止められていた名称変更を容認した事等も当然該当するでしょう。自民党は与党です。政治上の権力主体そのものでもあります。その活動は、個人的かつ私的なものを除き、政治上の権力行使にも該当するでしょう。つまり、統一教会が自民党及びその議員と公的・組織的に協力関係にある以上、そこに当然に発生する諸々の利益・便益は、原則として違憲行為に該当するわけです。本件の違法性はほとんどそこに集約されるように思われます。

通常、政治絡みでこの種の違法行為が明るみになった場合、対価もない一方的かつ単なる儀礼的なものとしたり、議員個人の私的な宗教的行為として切り捨てたりして収拾を図るものですが、自民党も統一教会も、これまでの関係が長く深すぎました。積み重なった事実の山を前に、今更関係自体を無かったことにしたり、組織的な関係を否定する事は到底出来ないだろう以上、開き直る他ないのです。だから、現防衛相の岸信夫や自民党総務会長の福田達夫らは、「協力してもらうのは当然の事」 だとか「何が問題かわからない」等と言うしかないのですね。まさしく言うに事欠いて、というやつです。

統一教会も自民党も、こうなってはやることは唯一つ。メディアを中心とした口封じです。スポンサー企業等にも働きかけをしているだろう事は疑いようがありません。安倍元総理の国葬の手配を電通に任せる、というのも、メディア対策の一環なのでしょう。実際、複数のメディアでは統一教会の名前は出さないようにしていたりするそうですし、それなりに効果もあるのかもしれませんね。

とはいえ、何せ30年以上公然の秘密とされ、延々と燻り続けて来て、ついに炎上したのが本件です。メディアの一部を一時的に抑えたとしても、そのまま風化するとは到底考えられません。果たして統一教会と自民党、両者がこの長年の癒着の報いを受ける事になるのか、受けるとすればどのような形で受けることになるのか、これから長く醜い争いが続きそうで、いささかげんなりする次第なのです。

ただ、ようやく訪れた統一教会の害を社会から取り除けるかもしれない機会です。ぜひとも排除までたどり着いてもらいたいものだ、とは思います。

7/26/2022

[biz] 大阪王将ナメクジ事件

大阪王将の仙台中田店の元従業員が同店の衛生管理不備等をTwitterで告発した件ですが。

にわかには信じがたいというか、信じたくないというか。凄まじいですねこれ。 

概要をまとめると、@bunkaizyaotoha曰く、

・日常的な清掃は殆ど行っておらず、厨房内は衛生環境が劣悪。ゴキブリはおろかナメクジまで湧く。調理器具や食材にまでナメクジがついていることも。飼っている猫が厨房まで出入りし、店員は猫に触れた手で調理。

・ガスコンロ不具合(ガス漏れ?)放置。コック付近から一日に一度は火を吹く。

・店長によるパワハラが日常化。レジの不足金額につき店員・バイト等に補填強要。未成年バイトに深夜労働。本社に伝えてもノーアクション。

・料理をレシピ通りに作らない。焼き飯に使うべき調味料をそもそも発注していない。チリソースを作らずケチャップで代用。黒焦げの料理を作り直さずそのまま提供。

・ベトナム人従業員の入国管理局への届け出につき雇用理由詐称。

・コロナ補助金不正受給。対策は何らしていないにも関わらず受給。検査時以外は換気どころか換気扇すら回さず。検温・距離確保等も行わず。

などなど。蛞蝓以外は、それぞれ飲食店でまあ普通にあるだろうなという内容ではあるのですが、それが全部乗せになっていると流石に引きます。告発者の一連のツイートを読む限り、その大半は実体験に基づくものだろうという印象を受けますし、真実味も十分過ぎるほどありますね。しかもこれ、誇張なしっぽいのがまた。。。

当然ながら同店は即休業、保健所の検査も入ったそうです。保健所の検査では蛞蝓は確認出来なかったものの、指摘・指導はなされたとの事ですから、直前に掃除はして、それでも長年放置された環境を隠しきれなかった程度には酷かったのだろうとは推測されるところです。保健所もお疲れ様ですね。

今後大阪王将ならびに同店(を営業しているフランチャイズの有限会社ファイブエム商事)がどうなるのかは現時点ではわかりません。とはいえ、これだけ写真付きで悪評が広まってしまった以上、少なくともこの店はもう営業出来ないんじゃないでしょうか。勿論、他店舗も含めた大阪王将のブランドイメージの毀損は甚だしいわけで、業績への著しい悪影響が出るだろう事も必至です。

そう、同社の営業にそれだけの影響が出るわけですから、当然ながら告発者の側には営業(業務)妨害の容疑がかかってしまうおそれがあり、後々同社から損害賠償を請求される可能性があるわけですが。これに対し、告発者@bunkaizyaotoha氏はどうなろうと引かない構えを示しています。

正直無茶をするなあ、と思わざるを得ない一方で、上記の告発内容が虚偽ではなかった場合、その、飲食業者として論外と言うべき悲惨な実情を明らかにする事には公衆衛生保全の観点から公益性が無いとも言い難いものと思われるわけで。廃業するならともかく、同社がこれからも営業を続けようというなら、告発者を非難出来るかというと、これは難しいでしょう。逆ギレと見做されるだろう事必至ですからね。自業自得と思って泣き寝入りする他ないのではないでしょうか。そもそもまっとうに営業していればこんな事にはならなかったのですし。いやはや。

【追記】「ナメクジ退治とゴキブリ退治やりたくない」大阪王将の元店員を名乗る人の衛生事情の告発により株価急落の大事件に発展中

7/21/2022

[note] コロナの蔓延は社会として許容した筈では?

一応第7波という事になってるんですかね。

通常ウィルス系伝染病の類は蔓延しにくい筈の真夏にあって、一日に確認された感染者数が過去最多を景気よく更新する旨の報道が飛び交っているようですが。今更何を騒いでいるのかと不思議でなりません。

日本は、ここ数ヶ月、経済活動の再開を掲げ、政策としてほぼ全ての規制を解除し、営業自粛等への補償も廃止、海外からの入国も再開、ワクチンもごく一部の高リスク者以外への接種は不要とし、自粛推奨を含めておよそ全ての蔓延防止策を廃止し、屋外中心とはいえマスクの非着用を推奨さえしてきました。最初から対策を取らなかった・取れなかった海外各国で、一日に数十万人の感染者が生じる様をよく見ていながら。旅行補助も実施しましたっけ。

これはもう日本はコロナの蔓延を許容したのだ、あるいは蔓延の抑制を諦めたのだと、そう理解する他ない状況でした。

もちろん、私もそう理解して、そう政策として決めたのなら仕方ないのだろうと思っていました。国家財政はただでさえ火の車です。経済活動を抑制し続け、かつ巨額の補償金を出し続る余力は既にありません。当然、他の国でそうであったように、一日に数十万人規模の感染者が生じ続けて、医療リソースは圧迫されるようになるだろうし、自宅療養という名の放置される患者が増大する結果、その幾らかは死ぬ事もあるだろうし、病院にかかる事が出来ず苦しむ・死ぬ他の病気等の患者も生じるだろうけれど、経済的な困窮と天秤にかけ、それも必要な犠牲として許容したのだろうと。そうでなければ、あのような政策が取れる筈がないでしょう?

しかもそれらが選挙で圧倒的多数の投票をもって信認されたのはほんの10日程前の事。

要するに、今の状況、そしてこれから生じるだろう状況は、ほぼ完全に予想されていました。その上で、合理性の名の下に、あえて上記のような政策を取ってきたのです。そしてそれは国民の大多数の支持を得ました。ならば、コロナがどれだけ蔓延しようと、それで医療機関が忙殺されようと、報道は淡々と事実を告げ、政府や国民は、ああそうなの、と聞き流し、普段どおりの生活を続けていて然るべき筈です。例え、自らや親しい人がコロナに罹患し、さらに運悪く発症して苦しみ、あるいは生命の危機に陥ったとしても、仕方ない、で済ませなければならないのです。

なのに、大変な事になったといわんばかりに騒がしい人が沢山いるのは何故なのでしょう。

全く以て理解し難い話です。 まさか、こうなるとは思わなかった、とでも言うつもりでしょうか?ご冗談を。

[IT] Teamsダウン、テレワーク死亡

OneDriveとかOffice365とかも全部使えないんだそうで、「何も出来ない」「帰っていい?」等と阿鼻叫喚です。

原因は速報によるとサービス更新時のミス(バグ?)でストレージへの接続が切れた事だそうで、全部止まったわけではないものの、トラフィックが処理しきれずダウンした、という事だそうですが、困ったものです。Slackの改悪直後でおそらく移行するユーザが増えているタイミングだっただろう事も要因になったのかもしれません。

今更言うまでもない話ですが、Teams関連はテレビ会議機能の充実性を武器にトップシェアを獲得しており、テレワークは勿論、普段の業務上でも最も利用者・企業の多い巨大サービスです。それがほぼ全停止。場合によっては業務データにアクセスすら出来ない状態というわけですね。業務に支障、というより不可能になってしまうケースも多々あるだろうわけで、損害は幾らになるのか、考えるのも恐ろしいです。損害賠償請求したら通ると思うんですが、どうなんでしょうね?一度どこか訴訟を起こしてくれないかなと思う次第です。

いや、私は使ってないから他人事なんですけれども。何があろうと絶対にその時に遂行出来なければならない、でなければ顧客に大損害が生じて責任問題になるといった類の業務がしばしばあるんですが、そういう時にこの種の障害は許容出来ないというわけで、原則クラウド系には依存出来ないのです。なので、基本部分は昔ながらの自前サーバ等で完結させて、クラウド系は補助的にしか使っていません。そもそもメインはLinuxでWindowsはサブ、数少ないWindows利用時にもMicrosoftアカウントすら普段は使いません。というわけで高みの見物。

そういう、いわば部外者的な立場なわけですが。この手の障害が起きる度にいつも思うんですが、チャットだとかテレビ会議とか、その性質上オンラインでなければならないアプリがクラウド系に依存するのは仕方ないにしても、Officeアプリみたいなオフラインでも何も問題ない部分まで依存させてしまうのは止めたほうがいいと思うんですよね。

MicrosoftやGoogle等のベンダ側としては、クラウド型の方が一般に収入が増えるし管理も容易になるしでいいことづくめなのだからそうしたい、というのは理解出来ますが、その、自社の利益を目的に顧客にリスクを押し付け、実際にこのように甚大な損害を生じさせ、しかもその責任は負わない、というのはあまりに無責任に過ぎると言わざるを得ないわけで。ベンダ側が無責任である以上、ユーザ側は自衛を図らねばなりません。本来不要な対応であるにも関わらず。

今更無理だとは思いますが、業務システム基盤のデファクトとして広く用いられているソフトウェアのベンダとしての責任を多少なりと果たしてもらいたいものです。そのためにも、一度痛い目を見てもらってもいいのではないでしょうか。

「Microsoft Teams」で障害 ~OfficeやSharePointなどの関連サービスにも影響拡大

7/16/2022

[note] ある政治家の死

政治家が死んだ。

あの人か、ご愁傷さま、といつものように軽く冥福を祈る。

ただ名前を知っているだけの、知己でもない赤の他人だ。政治家、一世を風靡した芸能人、業界の有名経営者、読んだことのある小説の作者、いつか見たことのあるVtuber、講義を受けた事があるだけの教授、言葉を交わした事もないかつての同級生。どれも何一つ変わらない。所詮は他人事だ。

人は死ぬ。毎日、およそ数十万人が地球上で死んでいる。名を知っている程度の人に限っても、淡々と絶え間なく次々に死んでいく。いちいち気に留めてもいられない。そこに倫理や道徳の類が割って入る余地もない。時間は有限であり、日々の営みを放り出し、ただ死者を悼むために時間を割くような贅沢は、お互いに親しい知己であったような相手でもなければ行えない。

当たり前の話だ。そうしなければ、四六時中死者を悼んでいなくてはならなくなるだろう。葬儀のために大半を費やす人生など悪い冗談だ。

だというのに。たまに出るのだ。延々と、声高に、わざと人の耳に目に入るように、追悼を叫ぶ輩が。あんな素晴らしい人が亡くなったのに、あなたは悼まないの?と言わんばかりに。

やめろ。うるさい。私には関係ない。迷惑だ。

もう終わった話の筈なのに、これみよがしで芝居じみた大げさな嘆きを聞く度に、不快な感情が喚起され続ける。不愉快極まりない。

死んだ政治家に罪はない。だが、この不快感の一因には違いない。彼に対しても負の感情が芽生えていく。

分かっているのだ。彼の死を悼む人が多いほど、その葬送が大規模になるほど、長期に渡るほど、彼の所属していた政党、その意思を継ぐと称する有象無象、またその支持者等が、感情に流される有権者の同情による支持という政治的な利を得る事、まさにそのために彼らが中心となってこの鬱陶しい声を拡大しようとしている事は。侮蔑を禁じ得ない。だがそのように感情を持つ事自体煩わしい。

目を塞ぐ。耳を塞ぐ。見えていても、聞こえていても、そこにないものとして。そうする以外にこの不快感を抑える術がない。後は時間が解決してくれるだろう。

そしてまた、今日も人は死んでいく。いつものように。私を煩わせずに。

※死亡者数修正 数千万/日 -> 数十万/日

7/14/2022

[biz] 暗号資産取引大手の米Celsiusが破綻

したそうで、Chapter11を申請したとの事。同社は暗号資産の貸出を主力業務としつつ、預かった・貸し出した暗号資産の売買も行い、自らが同社の名前と同じコインCelsiusを発行したりもする、暗号資産銀行とでも称すべき業者の中でも特に有力なプレイヤーでした。

と言っても、だいぶ前から大損こいて複数の州当局の調査も入っていましたし、もうダメなのは明らかでしたから驚きはないのですが。とは言え仮にも大手の一角ではあり、利用客は少し前の段階で100万以上、資産・負債共に入り組んでいて分かりづらいのですがその負債の規模はおよそ数十億ドルから100億ドルほどもあると言われていましたから、結構な大型破産案件ではあって、その影響は小さいものではないでしょう。

現在は口座は凍結され、引き出しも停止しています。もっとも、本来顧客の資産である筈の暗号資産を預かり運用するという銀行と類似した業態でありながら、銀行とは異なり自己資産との区別もなされておらず、一緒くたに運用されていたようですから、凍結というより、引き出しに応じようにも(本来留保されている筈の)暗号資産そのもの自体が存在しない、という事なのでしょう。利用者保護の法規制がなされていないのだから、それもある意味当然の結果と言えるんでしょうけれど、困ったものです。

破綻の理由は、価値が一瞬で0になったLuna絡みで先に破綻した暗号資産ファンドのThree Arrows Capitalへのエクスポージャーが主たる原因らしいので、ここ最近の暗号資産バブル崩壊、その連鎖倒産の一環という事になるのでしょう。他にも大小様々な業者が同様に破綻している上、同社レベルの破綻も加わればさらに連鎖して破綻する業者が出るだろう事は必至、暗号資産の黒い季節はまだまだ続きそうです。

ただ、実体ある資産・信用の裏付けがない以上、いずれこのような事態になる可能性が高い事は当然ながら分かり切っていた話で。巻き込まれた業者も顧客もみんな自業自得という他ないし、株式市場等への直接的な影響はさほどないだろう事もあって、救済云々を考える必要がなく、どこまでも他人事として見ていられるのは救いと言えるでしょうか。

Celsius Files for Bankruptcy as Users Worry Their Money is Gone Forever

[law] アレンジ品はだいたい商標法違反になる

つい先日、有名服飾ブランドの布製品を材料にした加工品を"アレンジ品"や"リメーク品"等と称してフリマサイト等で販売していた業者が逮捕されていましたね。容疑は商標法違反。被疑者は違法とは知らなかった旨を主張しているそうですが、まあダメでしょう。

というのも、販売時には、商品名中にブランド名を掲げ、それぞれの商品もロゴが認識出来る状態だったという事なので、容疑自体は否定のしようもありません。違法とは知らなかったという主張も、ブランドからの事前の警告を無視して販売を継続したとの事ですから、苦し紛れの嘘の類であろうと思われますし、なかなかに悪質なケースですね。有罪は免れないでしょう。

この場合、刑事面の訴追に併せ、権利者からの民事での損害賠償請求も当然されるでしょうけれども、その額は商標法38条の推定規定に基づき、本来の権利者のブランドで当該商品が販売されていれば得られたであろう売上額という事になります。アレンジ品の場合はその商品自体は元のブランドでは販売されていない事も多いでしょうから、その場合は仮に販売されていればそれくらいだろう額ということで、類似品の価格がその算定の根拠になります。それが販売数分。とりわけ有名ブランドの場合は大変な額になってしまいます。それこそフリマサイト等で得た売上の何倍にもなるでしょう。悪いことはするもんじゃありませんね。くわばらくわばら。

さて。法的な処理は概ね以上の通りで疑問の余地はほぼないのですが。 そもそも商標法違反ってどういう事、という疑問を持つ人もいるかもしれません。いわゆるパチもん、偽物、模造品の類がアウトなのは明らかですし疑問に思う事もないでしょうけれども、アレンジ品等は元々が正規品なのだから嘘ではないしいいんじゃないの、とかそういう感じに思うだろうわけですね。

実際、正規品をそのまま転売する分には別に問題はありません。(中古品を販売するには古物商登録は必要ですが、それはまた別の話。)ですが、加工がなされた時点で、もはやそれは正規品ではなく別物なのです。別物である以上、商標権を持たない者が商標を付する事は出来ません。その意味で、偽物と同じという事なのですね。相当に手を加えていてもダメ、というより、手を加えているからこそブランドの名前やロゴを付けてはダメなのです。

今回逮捕された件では、商品名中のブランド名の顕名と、商品の布地の模様中のロゴが無権利商標につきアウトという事になります。逆に言えば、商品名に掲げず、布地の模様も認識出来ない状態なら大丈夫だったかもしれませんが、それならそもそもコストをかけてブランド品を材料にする意味がないわけで。結局のところ、ブランドの名前やロゴを掲げられるのは他者の手の加わっていない正規品だけで、それ以外に商標を冠すればアレンジ品だろうが完全な偽物だろうが等しく全て商標法違反という事です。

ともあれ。単なる偽物とは違う云々、違反業者の方にも色々不満もあろうかとは思いますが、この種の権利関係の規律は、曖昧にすると権利侵害で溢れかえって収拾がつかなくなる事もあって刑法並に厳格な運用がなされるものですから、逮捕された後で納得出来ないとかゴネたところでどうにもなりません。損害賠償額も洒落になりませんし、程度によらず、他人の看板で商売をしようとするのは最初からすっぱり諦める他ないでしょう。

なのですが。。。変造品、加工品についての類似の事件は昔からしばしば起こります。 有名なところでは、PS2(ゲーム機)のファームウェア書き換え品が同様に商標法違反で摘発された件とか。きっとこれからも起こるのでしょう。しかし法律を知っていれば避けられる話です。本件は著作権や商標権について基本とも言えるだろう部類の話でもあるし、商売をする上でのリテラシーの一環として最低限覚えておくべきでしょう。転ばぬ先の杖、です。 

「エルメス」正規品のマーク切り抜いて加工 1800点、インスタで販売か 女2人、容疑で逮捕

7/12/2022

[note] AmazonのPrime Dayが普段の価格とほぼ同じっていうよく知られた話

ずっと言われている事で、今更も今更な話ですが。年に一度、とか謳う癖に、全然安くないんですよね。今回それを再認識する事になったのです。ああやっぱり、って。

というのも、ここ数ヶ月、特にAndroidのタブレットデバイスとかミニPCとかで買い替えを検討していた事もあって、その辺の製品の値動きを毎日観察してたんです。なので具体的な数字の動きが見えたのです。で、ため息をつくしかなくなったという。

前提として、今のAmazonって、ほぼ全ての製品が、何かしらの割引を行っている(と称する表示を掲げる)のが常なんですね。常に行う割引とは何ぞや、という疑問は措いておくとして、実際そういう表示になっています。と言っても、いつも同じ表示だと割安感が出ないとかで訴求力が落ちたりするんでしょう、普通の割引の他にもクーポン等いくつかの割引の仕方があって、その組み合わせを切り替え、見た目を変えながら同じ商品を殆ど同じ値段で売り続けているわけです。

基本は本体価格の割引+クーポン(定額or%)の組み合わせが一番多く、タイムセールと称して本体価格の割引にまとめる(減額したクーポンを組み合わせる事もある)のとの切り替えがよく見られます。一応、タイムセール表示の時には数%程度安く設定するものが多いようで、これが基本的に普段の安値というか、それ以外で買う人はまずいないだろうので事実上標準の売値という事になります。

タイムセールの期間は商品によってまちまちですが、注目していた数機種(T610、SC9863A、T310等の安価なSOCを積んだ低価格帯のAndroidタブレット)では、およそ月の半分位は同一の価格になっていました。やはり限定特価というより、事実上の通常価格と言うべきものですね。それ以外の価格の時は売れる事が想定されていないだろうのですから。もちろんプライム会員である必要はありません。誰でもその価格で購入出来ます。

で、Prime dayです。その名の通り、Prime会員しか参加できない、Amazon曰く「年に一度のビッグセール」との事です。顧客には、いつもやっている誰でも買えるタイムセールとは違う、さぞ破格の安値になっているのだろう、との印象を与える事は間違いないだろう広告を打っているわけです。

そのビッグセール中のタブレットたちですが、以下のような感じです。左が先月から今月頭までのタイムセール価格(クーポン等はあれば適用後)、右が今回の価格。

TECLAST TLA007 15,120円 → 15,120円

ALLDOCUBE Smile X 15,120円 → 15,120円

ALLDOCUBE Smile 1 12,349円 → 12,041円

Blackview Tab 6 12,999円 → 12,799円

上2機種は全く同じ価格。下2機種は値下がりしてはいますが、「ビッグセール」と言う表現から受ける印象とはあまりにもかけ離れた、わずかな差と言うべきものです。付け加えれば、商品のページでは"参考価格"と称して、Smile 1は16,900円、Tab 6は15,999円を表示しているのです。そんな価格で販売した事は無きに等しいにも関わらず。二重の意味で、優良誤認のおそれがない、とは到底言えないでしょう。もちろん、上2機種に至っては論外です。

本件がさらに悪質なのは、常態化しているタイムセールを、Prime dayの数日前から当日までは行わず、あえて普段より高い価格を付けている点です。常に詳細な価格をウォッチするか、価格変動を記録しているサイトを参照でもしない限り、これが普段の価格だと気づけないようにしているのです。※なお、Keepaのような価格トラッカーは、クーポンの反映が出来ない等で正確性に欠けるところがあるため、誤認の防止には不十分です。

当然ながら、ここで挙げた例はほんの一部で、同様の表示は大多数の商品で広く行われています。中華系セラー等の販売委託品はほぼ全部ですね。例外は、Amazonの自社販売品の中のさらにほんの一部で、おそらくセール全体がタイムセールと全く同じではない、だから優良誤認ではない、とエクスキューズをつけるために渋々設定しているのだろうという程度に過ぎません。 結果、前々から目を付けていた商品が、Prime dayで破格の特価になるという事は殆ど起こらない状態になっているのです。Amazonのセールの度に、欲しい物リストに入れておいた品が全然安くなってない、という嘆きをよく目にしますが、それも当然というわけですね。

何故このような状況になっているのか、と言えば、想像する事はそう困難ではありません。Amazonの商品の多数を占めるところの、しかし販売委託を行っているに過ぎない外部のセラーからすれば、Prime dayだからと言って自社が赤字、とまでは行かずとも、利益が極端に減るような値引きに協力する積極的な理由はないだろうし、かと言って販売の機会を逸したくもないという事情はあるでしょう。普段の表示にしても、もとよりあまり割高な価格を掲げれば見向きもされず、さりとて際限なく(実質的な)値引きを続けるわけにも行かないだろうし、こういう価格設定やその表示を選ぶ事も理解出来なくもないところです。

ですが、だからと言って、誇大広告が正当化される筈もありません。紛うことなき違法行為、顧客への裏切りに他ならないのですから。まあ、中華系の業者であれば、日本人の顧客なんて人とも思っていなくても不思議はないし、そもそも彼らの文化として、優良誤認自体悪いことと思ってもいない(騙される方が悪いとか思っている)のだろうとは推測出来ますが、ここは日本ですからね。国内法に従って頂かなくては困るのです。

その辺りの倫理面の認識は、おそらくはAmazonも似たようなものでしょう。否、顧客はおろか、数多の外部委託業者、さらには自社の従業員ですら人として認識していないとしか思えない、単なる事業上のリソース扱いをして憚らない同社の事ですから、裁判沙汰のち敗訴して大損失、とでもならない限りは、特に問題と認識する事もないのでしょう。

斯くして、かくもあからさまな違法行為は、公然と続けられるのです。数多のユーザ、顧客の怒りと嘆きを生みながら。馬鹿馬鹿しいですね本当に。

ちなみに、件のタブレットの購入については、結局目を付けてたものとは別の、数時間だけ破格の安値になっていた別機種を購入しました。もちろんPrime dayとかは関係なし。ある意味当然の結果なのでした。

7/09/2022

[biz] Elon MuskがTwitter買収を撤回

したそうで。まあ、それ自体は大方の予想通りではあるんですが、その際の言い分がね。。。Twitter関係者をはじめ、振り回される人たちはご愁傷様です。

事の次第を大まかにまとめると、次の通り。

まず2022年4月に突然MuskがTwitter社の株式を9%取得し大株主になった事を公表し、それと併せて残りの91%についても買い付けて100%買収する旨を発表したところから始まります。その際の買い付け価格は1株あたり$54。当時の株価からしてもプレミアムの付いた価格で、総額で440億ドルにもなる超大型買収案件でした。

本件は大きな反響を呼びます。と言っても、どちらかと言うと困惑の面が大きかったでしょうか。というのも、周知の通りTeslaをはじめMuskの手掛ける事業はどれもTwitterのようなITメディアのプラットフォーム事業とは関係が薄く、いわゆるシナジー的なメリットを見出し難い不自然なものに見えたからです。実際、Musk自身も買収する事による事業的な利益についてはほとんど何も語っていません。

一方で、当時は特にウクライナでの戦争等に絡んだMuskの過激な発言に起因してMuskへのバッシングがネット上で多数見られ、これに激しく反発するMusk自身の言動も相俟って、そのバッシング等の主たる場でもあったTwitterを半ば衝動的に攻撃しようとしたように見えもしました。実際、買収にあたってMuskがTwitterにまず要求した事は、スパムやボット等のまさにMuskを攻撃していたアカウントの情報だったのです。その上、Twitterの事業自体について建設的なやり取りがなされていた形跡は現在に至るまでおよそ認められません。

もちろん、Twitter側は経営陣から個々の従業員まで、全社を挙げて激しく反発しました。もっとも経営陣は立場的に好条件のオファーを撥ね付ける事は困難ですから、建前上は買収交渉の契約を結び、折衝を重ねてはいました。とはいえ、Muskの真意がTwitter(とそのユーザ)を害する事にある事はほとんど明らかでしたから、Muskの事は信頼せず、用心深く事に当たっていたであろう事は疑いようがありません。従業員については何をかいわんや。公然とMuskへの非難を表明する社員は数知れず、大筋での合意以降は退職者も続出したと聞きます。

そんな状況が外部からもはっきりとわかる位でしたから、これはそのうち破談するんじゃないか、と大方の向きは思っていたわけです。

で、資金の払込等をする前に情報を寄越せとMuskが無茶な要求をし、ふざけるなこれ以上は買収が終わってからだ、とTwitter側が撥ね付ける押し問答をしていたりして、一向に話が進まない間に、暗号資産のバブル崩壊に端を発する形で株式の大幅な価格下落が起きてしまいました。Tesla株をはじめ、買収の資金源であるところのMuskの資産の大半を占める株の価値も大幅に毀損し、一方でTwitter社の株価はさらに数10%も下落し、Muskの提示した買い付け価格の半額近くまで下がってしまうに至り、誰もがMuskが買収を取り下げるだろう、と確信するようになっていたのです。だからこそ買い付け価格からの乖離が定着したとも言えるわけですが。ついでに金利も上がり、資金の借り入れコストも爆上げ。

そんなわけで、誰もが思っていたとおり、果たしてMuskは買収の撤回を宣言するに至りました。なので、それ自体は特に驚く事はありません。

問題は、その後始末です。具体的には、買収交渉の合意の中に、撤回時の違約金10億ドルが設定されていたところ、その履行の有無が問題になります。買収を実行していれば生じたであろうのれん代という名の損失に比べれば1桁小さいとは言え、結構な大金です。Muskが支払いを渋るだろう事もまた予想されていましたが、その通りにゴネはじめました。その理由が、この期に及んで、スパムやボットの比率に関するデータ開示が不十分で、交渉契約に定められた協力義務に違反していた、すなわち解除はTwitter側の義務不履行に基づくものだからMuskに責任はなく、違約金の支払い義務もない、とするものでした。

何を言ってんだろう、と思うわけですが。。。ユーザの情報も多数含むようなまさに営業上の機密に属する情報を、信用も出来ない相手に契約が完了する前から全部出せるわけもないし、そもそもそのような情報が買収時の判断、すなわちTwitter社の事業評価に際して必要なわけもありません。語るに落ちたというか、始めからそれらの情報がおそらくは個人的な報復のために欲しかっただけで、買収する気もなかったであろう事はほとんど明らかなように思われる有様ですね。

Twitter社はもちろん激おこです。ふざけるなそんな理由は通らん、契約通り買収を実行するか違約金を払うかしろ、と至極当然の返答を返しました。Muskももう後には引けませんから、裁判沙汰になる事は確実な状況です。

もっとも、どう見てもMuskの言い分が常軌を逸していて正当性のかけらも見えませんから、実際に裁判になれば適当なところで和解に持ち込んで多少減額した違約金で手打ち、とかその辺りに落ち着きそうではあるのですが、展開も終わりも見え見えなだけに、何から何まで全くの無駄手間という事になるわけです。Twitter側はひどい目に遭っただけ。

本件に限らずMuskは暗号資産関連での相場操縦も公然と行ったり、詐欺まがいの風説流布も頻繁に繰り返しますし、迷惑この上ないわけで、いい加減痛い目を見てもらいたいと思う次第なのですが、さて。

Elon Musk pulls out of $44bn deal to buy Twitter

 


7/06/2022

[note] 現金利用者を公然と中傷する人たち

の言動が極めて不快です。今に始まったものではありませんが、なんとかならないものでしょうか?本当に。

キャッシュレス決済が日本国内でポイント付与等の政策的な後押しを受けて大々的な普及を始めてから早数年。代表格であろうPaypayのサービス開始からだと大体4年位でしょうか。現状としては、利用率は小売での決済のうち3割程度の利用と、コンビニ等で普及はしたものの、現金決済の置き換えはおろか、多数を占めるにも至っていません。

要因は様々ですが、まず第一に、当初から言われ続けて来ている事ながら、決済手段の乱立が未だに解決されていない点が挙げられます。キャッシュレス決済と一口に言ってもQR、プリペイド、クレジット、デビット等、決済方法や業者が多数乱立競合し、改廃も頻繁なため、純粋にシステム面で各店舗等で全てに対応するのが困難です。また各小売業者がポイント等で顧客の自社への誘引を図る際にも競合してしまう事もあって、店舗側・顧客側双方で多数の決済手段を並列的に準備し、決済の際にもそれぞれにアプリ等を準備しておかなければなりません。これに対し、現金は原則共通で利用可能なため、本来キャッシュレス決済の利点である筈の利便性の観点からむしろ現金でいいと考える消費者が少なからず生じており、この点が最も主たる要因と言えるでしょう。また、ネット上の通信を前提とする決済は障害発生時に利用不能になるというデメリットについても、当然無視できない店舗も人も多いでしょう。ネットが繋がらないから決済出来ない、では当たり前ですが困るのです。

実際、一般家庭において、日常的に最も決済の機会の多いであろう食料品スーパーでは、支払いのみをセルフで行う、いわゆるセミセルフレジが主流で、そこではキャッシュレス決済と現金決済が併存する形式になっています。コンビニですら(セミ)セルフレジの導入が進んでいます。少なくとも、現金決済が排除される必要性も必然性もないし、将来的にそうなる見込みもありません。結局のところ、キャッシュレス決済を利用したい人、現金を利用したい人、個々の利用者の要望に従い、決済手段を使い分けられるようになっています。可能である限り、求められる選択肢を自由に取る事が出来るようになる、それは社会システムとして極めて自然な成り行きと言うべきでしょう。

なのですが、キャッシュレス決済は便利、現金決済は不便で不合理、とする排他的な極論を主張し、執拗なまでに現金決済を批判する人が絶えません。のみならず、現金決済の利用者を嘲るものも少なくありません。便利な方法を知ろうともしない、理解することもできない、愚かだ、等として。決済手段の選択など、言うまでもなく個々人・店舗の自由に属する事柄です。手段間の優劣を論ずるのもまた自由ですが、その見解にそぐわない行動を取っている赤の他人のそれをして嘲笑するなど論外です。全く以て正当性を欠き、到底許されない誹謗中傷と言う他ないでしょう。

そもそも、キャッシュレス決済が利用可能になっただけで、現金決済が何かしら変質して有害なものになったわけでもなく、本来的にそれを批判する必要はないのです。であるにも関わらず、それを行う者がいるとすれば、それにはそれなりの理由がある筈です。現金決済の排除すなわちキャッシュレス決済の利用拡大が利益となる事業者自身、またそのステークホルダー、通ぶりたい自称評論家、現金のやり取りを嫌う店員、他者にマウントを取りたいナルシスト、自分の意見に従わない者を敵視する全体主義者、差別主義者、etc。いずれにせよ、他者の事情、権利を省みず、理不尽な非難を加えて憚らないその態度からすれば、自己中心的な動機によるものである可能性は極めて高いでしょう。それを、「時代の変化への適応」をダシにしてあたかも正当な論評であるかのように装いつつ、公然と発信する、その振る舞いは卑劣という他ありません。

百歩譲って、そのような理不尽な言動もまたその人の人格の発露であり、避けられないものとして許容せざるを得ないとしても、そのような誹謗中傷を公の場でさらけ出すような真似は止めて頂きたいと、心からそう思う次第なのです。

7/03/2022

[note] Peter Brook passed.

 現代演劇の巨人Peter Brookがこの世を去ったそうです。「なにもない空間」よ永遠なれ。

6/09/2022

[pol] 何もしない出来ない日銀黒田と自民党、支え続ける日本国民の自業自得

ついに、というべきか。つまるところ、無謀な賭けに負けたツケが回ってきた、という事なんでしょうかね。

景気低迷の打破を掲げ、日銀がタブーを破って始めたゼロ金利及び金融緩和政策ですが、追従した欧米各国では予想通りに急激なインフレを発生させ、それを抑制するために終了する運びとなりました。日銀だけを置き去りにする形で。

大きく離れた金利差から、底が抜けたかのように円の価値が相対的に下がり、ここ数ヶ月で10%を大きく超える程に下落しています。輸入品は海外でのインフレに加えて為替レートの下落によって急激に価格が上昇し、石油関連は言うに及ばず、輸入材料を主原料とする食料品等も数十パーセントの急激なインフレに見舞われています。

経済が成長し需要が高まった結果の価格上昇ではなく、単にコストが上がった事によるインフレですから、消費が大きく下押しされる事は間違いありません。言うなれば、消費税が上がって30%や40%になったようなものです。それも緩和策や還元も建前すらも何もなしで。変化が急激である事も併せて、国内経済に与える悪影響は計り知れないものがあると言えるでしょう。実際、消費者の怨嗟の声はそこかしこに溢れています。

当然、日本政府や日銀としてはインフレと円安を抑制する政策を緊急で行うべきところの筈・・・なのですが、何もしません。何もしない言い訳だけを繰り返しています。

無策の理由は色々ありますが、結局のところは、対策を行う上で必須となる政策転換、すなわちゼロ金利政策と金融緩和、その両方ともの解除、それが出来ないからです。

ゼロ金利の解除については、海外各国と比較しても突出して積み上がった国債の残高に、毎年さらに積み重ねられる新規発行の赤字国債。金利がプラスに転じた瞬間、財政が崩壊するだろう事は火を見るより明らかです。それは社会保障の喪失を意味します。

また、金融緩和を廃止すればどうなるか。株式市場に注ぎ込まれ続けていた資金が逆回転を始め、暴落する事も間違いありません。日銀、年金、郵貯等の公的機関から個人の各種積立資産まで、あらゆる金融資産が株式への依存度を際限なく高め続けてきた中、株式価格の下落が国内金融システムの崩壊をもたらす可能性は極めて高くなっています。仮にシステムの崩壊は免れたとしても、株価の大幅な下落によって生活が立ち行かなくなる個人、また資金に窮する法人は恐ろしいほど生じるでしょう。

それらの致命的な結果が生じることがわかっているから、インフレ・円安を抑制しなければならないこの状況下でも、何らの手立てを取ることも出来ないのです。

付け加えると、これは想像に過ぎませんが、口先介入すらほぼ皆無なあたりからして、今の窮状はいわゆるアベノミクスが招いたものであり、その主犯の一人たる日銀総裁の黒田氏が未だにその失敗を認められないとか、そういう多分に責任逃れとか面子的な事情もあるのではないでしょうか。もう一方の主犯たる自民党の面々については言うに及ばず、です。

残念ながら、ここ十年の失策を認めて全面的撤回する事を前提とした対策など、その戦犯自身に期待できる筈もなし。現在のインフレ・円安について、彼らは無力どころか有害な存在であり、対応の責任者としては最悪だと言わざるを得ません。

あまつさえ、次の選挙では、彼らが信任される可能性が高いんだとか。もうどうにもなりません。お先真っ暗というやつです。結局のところ、積極的にせよ消極的にせよ、彼らを信任し続ける国民の自業自得という事になるのでしょう。なら仕方ない、と言うのも業腹な話ではあるのですが。。。ほんと何考えてるんでしょうか。何も考えてないんでしょうね。いつもの事ではあるのですが、バカバカしい話です。

5/24/2022

[law] 誤振込の返還金3500万は何故にどこから?

特別給付金誤振込の件、なんかいきなり8割位戻ってきたそうで。

主たる出金先の決済代行業者3社の内、特に金額の大きかった1社からそのほとんどが返還されたのだとか。

無論それ自体は喜ばしい事なのです。ただ、田口容疑者は全額ギャンブルで費消したとしていたので、何故に、また何処から返還されたのかが当然ながら疑問になるところであります。

考えられるのは2通り。一つは田口容疑者が虚偽を述べており、実際には費消しておらず、出金先の口座に資金が残っていたケース。もう一つは、田口容疑者の言は正しく、費消はされていたが、費消先のオンラインカジノ業者や、経由した決済代行業者等が任意に利益を放棄して返還したケースです。

前者なら、当事者にも対象にもほぼ変更はなく、田口容疑者の情状に悪質さが加味されて量刑が重くなるだけの話です。 問題は後者の場合で、まさか代位弁済で田口容疑者に求償、なんて目論見なわけはないでしょうし、カジノサイトの収益性が高いと言っても3500万という額は通常の業者が善意で自腹を切るにはいささか大きすぎるでしょう。そうせざるを得なかった理由が別にあると考えるべきところです。

そうだとして、その理由は色々思い当たるところはありますが、仮定に推測を重ねる事になるので具体的に記載することは控えたいと想います。ただ、オンラインカジノは不正の横行する詐欺サイトばかりである事は周知の事実、そもそも国内では違法な業である事もあり、司法の手が入れば業者自身は無論、出資者や顧客も含めそれこそ芋づる式に膨大な範囲で検挙が相次ぐだろう事もほぼ疑いようのないところですから、それを避けるために自腹を切ったのかなと思わざるを得ないわけです。他にも海外送金につき、金商法関係や、マネロン規制云々の絡みも。

さて事の真偽や如何に。

<追記>

さらに残額の内、800万程も確保したとか。確保という表現が曖昧な感じですが、供託されたとかそんな感じなんでしょうか。

誤送金、3500万円返還 決済代行業者から―山口・阿武町 

[law] 誤振込金の使い込みを犯罪と認識しない輩が多すぎて 

5/21/2022

[biz] Samsung製冷蔵庫の前面プリントサービス10万

米でSamsungが新型冷蔵庫のオプションとして前面パネルの写真プリントサービスを導入するんだとか。自分や家族の写真をドアに印刷したりできるというわけです。

そんな需要が・・・あるのかないのかで言えばあるんでしょうけど、問題は価格です。パネル一枚、つまりドアや引き出しの部分毎に$250とか。当該機種だと上側左右と下部(引き出し2個がセット?)の3枚分、つまり全面にプリントしようと思うと$750、約10万円になるというのです。

そこそこの冷蔵庫本体が買える値段ですね。。。いくら米国の冷蔵庫が基本大型で比較的高額だと言ってもこれはちょっと高すぎるんじゃないでしょうか。この手のカスタマイズにコストがかかるのは仕方ないのですが、所詮は塗装を変えるだけの話、後から変更も出来ません。それが液晶パネルを数枚埋め込むのと大して変わらないコストというのは、いささか不釣り合いな気がします。夫婦の写真なんかが定番だろうと思うのですが、離婚したら捨てるんでしょうか。そこまで行かずとも、喧嘩とかしたら冷蔵庫が八つ当たりで酷いことになりそうです。

それでも大雑把で派手好き、かつ後先なんて考えない人の多いアメリカであれば注文が見込めると判断したんでしょうかね。普通に考えれば、かつて大手メーカーの新製品によく見られたところの、いわゆる売り手側が価格を釣り上げるために無理やり入れた、顧客にとっては価値の乏しい付加価値の類にしか見えませんが。もしそうであれば、Samsungもかつての日本国内の電機メーカーと同様に衰退の道を進んでいるという事になろうわけですが、はてさて。

Samsung Wants to Wallpaper Your Next Fridge With Custom Art and Photos 

5/19/2022

[law] 誤振込金の使い込みを犯罪と認識しない輩が多すぎて

今更ながら愕然としたのです。

山口県阿武町で、住民税非課税世帯463世帯分のコロナ対策臨時特別給付金計4630万円を対象者のうち一名の口座に全額誤って振り込んでしまった件です。

詳細は至るところで報じられているので省略。額は大きいですが、よくある誤振込案件です。通常は対象口座の名義人が返還請求に応じ、誤振込を行った担当者なりが内部的に処分を受けて終わりになるような話です。

が、本件では、当該口座の名義人が町の返還要請を無視して全額引き出し、本人曰くギャンブルに費消してしまったとして返還を拒否してしまいました。法的には、自分の金ではないと知っていながら引き出したり振替を指示したりした時点で、銀行に対して詐欺を働いた事になります。本来その権利はないのに、権利があるかのように振る舞って銀行に支払い等を行わせた事が詐欺にあたるというわけです。本件では移動の際にデビッドカード決済を使用したようですから、刑法246条の2の電子計算機使用詐欺に該当します。

なお、この種のATM等の機械を経由した引き出しについては、従来は機械に対する欺網はありえないとして詐欺ではなく窃盗とされていましたが、246条の2が新設されてからは通常の詐欺と同等に扱われるようになっています。

その後の報道に流れた本人であるところの田口翔容疑者の発言の中に、何故自分が責められるのかわからない、といった主旨のものがあるあたりからして、振り込んだ方が悪い、自分は悪くない、とある程度本気で思っていたのかもしれません。少なくとも、自分が何をしたのか、法的にどれほど重い罪を犯してしまったのか、十分には理解していなかったように思われます。実際、誤振込からの使い込みというのもありふれた話ではありますし、法的には店舗のレジでのスキャン漏れ等を申告せず料金の支払いを免れるのも同様で、大抵の場合はいちいち罪に問われたりもしません。しかし、それはあくまで告発等がないために発覚していないに過ぎないのです。

そして、これほどの高額の公金の詐取に対してそんな自分勝手な話が通る筈もなく。当然ながら町からは返還請求の民事訴訟を起こされる運びとなり、加えて刑事的にも詐欺で逮捕されてしまったのでした。当然至極の帰結という他はありません。

・・・なのですが、SNS等におけるこの件に関する意見を見ると、田口容疑者は悪くない、ミスをした町の方が悪い、という主旨の書き込みが多数見られるのです。もし同様の状況になったら同じ事をするだろうという、田口容疑者と同質の、犯罪者予備軍のそれです。 

本来言うまでもない事ですが、詐欺罪というのは重罪です。自分のものではない財貨、すなわち他人の財産を、そうと知って、さも正当な権利があるかのように欺きまでして奪うのですから当然です。しかも今回の給付金で言えば、実質的な被害者である本来の受給者は住民税非課税世帯で、すなわちその大半が低所得者であり生活困窮者です。田口容疑者が詐取したその10万円が、人生を左右した可能性も低くはないでしょう。

それなのに、その手続きでミスをした町の担当者が悪い、他の受給者の人生がどうなろうと知ったことかと考慮もせずに詐取し、あまつさえギャンブルに投じても恥じない。その、反社会性の権化のような容疑者のふるまいを聞いて、それに共感し、自分も同様にするだろうという、倫理以前に最低限の人間性のかけらもないような輩が、これほどまでに多数いて、それを公然と発信する。

絶望する他ありません。もうこの社会は終わりなのではないだろうかと、救い難いのではないだろうかと、心底から思わされてしまうのです。

 4630万円誤送金の「給付金でもめていて」…24歳、勤務先のホームセンターを先月退職

2/26/2022

[pol] Putin's Russia is nation of total evil. Why not cut off?

Shame on Scholz. Shame on Biden.

They are passively supporting Russia's helpless crime, by declining to put even economical sanctions.

Apparently, physical conflict of USA and Russia must be catastrophic. So, to stop Russia's invasion, we have no choice but to kill Russia's ability to continue the war. Then, destroying financial resources by cutting off any economical transaction is most critical, maybe the only part to be effective. But they refused to do it.

Gas import? Aluminium price? How can you choose them in exchange of human life?

Helpless idiots.

Russia should not be cut off from SWIFT at the moment - Germany's Scholz

y ago U.S., EU unlikely to cut Russia off SWIFT for now -Biden

2/08/2022

[biz] 東芝、血迷う?

何がしたいのかわからないというか。不祥事から数年、世間からはすっかり忘れられていた東芝ですが、また意味不明なムーブをして注目されているようで。

大雑把に言えば、どん詰りの大企業につきものの事業再編というか不採算事業の切り離しをしようとしているだけなのですが、その手段に何故か会社自体の分割、それも当初は(キオクシアの)持株、インフラ、デバイスのほぼ同レベルでの3分割で各会社の株を現株主に割り当てるというほとんど例のない案を出してきて、当然のように株主からの猛反発を食らい、じゃあデバイスだけを切り離す2分割ではどうか、と修正案を出してきたところなわけです。改めて見直しても意味がわかりませんね・・・。そういう問題じゃない、と株主も頭が痛いでしょうねこれは。

言うまでもなく、不採算事業の切り離しには通常子会社化からの株式売却が用いられます。株主ごと会社を完全に分割してしまう事はまずありません。理由は色々ありますが、要するに実行における障害が多い上に、それをクリアすること、つまりはステークホルダーを納得させるだけの理由を見出すことが困難だからです。

で、今回東芝が挙げた主な理由が、迅速な意思決定云々なのですね。これだけでもお前は何を言っているんだって話ですが、その上2分割に修正した理由は分割による上場維持etc経営リスクの低減という。当然2分割でも少なからずそういうリスクはあるわけですが、それと引き換えに得られるものが迅速な意思決定。全く釣り合っていません。

多分に、社内の派閥というか元メモリ組(の残り)とデバイス組とインフラ組が拮抗していて、通常の子会社化を経る形の再編が困難だという事情があって、苦肉の策として対等な形での分割を目指す事になったんじゃないかとは思うのですが、そんな内輪の事情なんて株主にすら関係ないわけで。ただでさえシビアな株主が増えている昨今、リスクしかない会社分割に賛同が得られる筈もなかったのです。

そんな当たり前の事もわからなくなっているのが今の東芝の偽らざる実情なのだと、否応なしにわからされてしまう今回の騒動、振り回される株主はじめステークホルダーの方々は大変ですね。もっとも、発端となった一連の不祥事からの体たらくを見てなお関わっているのだから、ある意味自業自得でもあるのでしょう。まあご愁傷さまです。

というか、そもそも原発とフラッシュメモリの二枚看板を両方失った時点で未来がない事は分かりきっていましたし、今更あがいたところであまり意味はない、つまり今回の騒動もほぼ無意味なのがなおさら虚しいですね。やれやれです。

東芝グループ経営戦略(2022/2/7)

株主価値向上に向けた東芝の変革 (2021/11/12)

東芝グループの戦略的再編について(2021/11/12)