10/07/2013

[pol] 自民TPP担当が関税全撤廃容認、の意味不明

自民TPP担当の西川公也がこれまで聖域としてきたコメ等の農業生産品5品目の関税撤廃容認を公表し、甘利TPP担当相も賛同した件、さすがにどうかと思うんです。

TPPが自由経済圏の確立を図るものである以上、関税の維持は明らかに矛盾するし、とりわけ農産物は要と言っても良い重要品目、その除外自体無理があり過ぎる事は明らかでした。いわんやもう既に殆ど決まって後数ヶ月で合意、なんてタイミングでのこのこ入って行ってひっくり返せる筈もない事も分かり切っていた話です。そんな状況にあって、西川氏はじめ自民の推進派としては早く妥協を打ち出したくて仕方なかったんだろうとは思いますけれども、党として国民に対し完全な裏切りを働いた形になってしまったわけで。

推進派の唱える経済的な利や意義はそれなりに理解出来なくもありません。しかし、元より本件を巡る利害対立は苛烈なのであって。まずはその目的すなわち国内農業分野の構造的問題の改善等、合理性の周知を図り、しかし壊滅的打撃を被るだろう部分への補償の仕組みもあらかじめ構築し、そうやって相当の時間と手間をかけて環境を作ったならばようやく合意もありうるかなという話だったところにこれでは、逆に全てぶち壊しになるし、不信も格段に強まるでしょうから、今後の説得までもが極めて困難になってしまうのではないかと懸念もされるところです。

大体、交渉参加してからまだ2箇月、少なくとも公の場ではまだ交渉らしい交渉すら殆どしていないこの段階で合意困難とか言われても、納得出来る人が居る筈もありません。いくら出来レースと言っても最低限の建前は必要です。こんな稚拙な進め方では、推進派も付いていけない向きが相当に出るだろうし、言い訳もまともに出来ず、むしろ困るのではないでしょうか。農業関係者には文字通り死活問題なわけで、そこでこんな無茶をしては死人が出ても不思議ではありませんけれども、当人達にその自覚も無さそうで、しかるにその無自覚無思慮加減からすれば今後の成り行きはより一層酷いものになるだろう事を思うと、憂鬱にならざるを得ないのです。

付け加えると、今回の交渉では、米国不在もあって年内の合意自体が事実上不可能な状態だったし、そもそも米国のいない所で何をしても無駄、従ってこの発言自体する理由はなかった筈なんですよね。文字通り百害あって一利なしな感じで、非常に残念です。

TPP:農産物「重要5項目」も検討対象 政府・自民方針
農産5品目で関税撤廃検討 自民TPP対策委員長 

それで政府としては追認ですか。菅官房長官曰く守るべきものは守る、だそうですが、その守るべきものの象徴かつ筆頭が本件の農産5品目だったわけで。もはや自分で何を言ってるのか分かっていないだろう支離滅裂な論理破綻ぶりで、これまた残念です。このまま突き進んじゃうんでしょうか。衆参両院押さえてるから行こうと思えば行けるし推進派の面々はそのつもりなんでしょうけど、事の重大性からして数年後とか先の事を考えるとそんなやり方は幾ら何でも拙劣に過ぎると思われるところですが。後になって、今思えば拙速だった、とか後悔しても取り返しはつかないのですよ。

官房長官、TPP交渉「守るべきもの守ることに変わりない」