6/20/2015

[law] 殺人犯手記出版、公然たる不法行為の異常

神戸児童連続殺人事件の犯人による自伝出版の件、てっきり速攻回収されるものだと思っていたんですが、物議は醸しつつも何となくそのまま販売継続中なようで。どういう事なんだろう、と少し首をひねっている次第なのです。

というのも、殺人等被害者遺族の精神面については過去の判例等からして法的な救済・保護が与えられるべきものと認められているのでありまして。しかるに、この種の書籍の出版は往々にして遺族に多大な精神的苦痛を与えるものであるし、実際に本件被害者遺族は出版前後を通じて明確に被害を訴え、併せて回収も求めているのですから、既に不法行為である事は疑いようのないところなわけです。出版社は公益性を主張して正当化を図っているようですが、遺族に苦痛を受忍させるに足るものとは到底認められないでしょう。実際に遺族側が裁判に訴えれば、出版の差し止めと賠償は無論として、回収等の遡及的な被害回復措置の強制までも認められる可能性は非常に高い、というか殆ど確実なように思われるところです。

なんですが、出版元の太田出版は遺族の意向を完全に無視して出版を強行し、非難を受けても逆に逆撫でするかのような反論コメントを出して当然のように継続、あまつさえ重版しようとしているんだとか。 話題性が高いのは事実だし、炎上商法として見れば今のところは成功している、と言えばそうなんでしょうけれども、それにしてもここままで明確に違法性を帯びているものを公然と強行するのはどうなんだろうと。その異常性には正直引きますし、恐怖を感じさえします。

法的には無論、社会的にも大多数からは到底容認され得ないだろうし、このまま行けば普通に起こされるだろう訴訟の結果、莫大な賠償や回収を強いられて、差し引きすればむしろマイナスになる可能性とか考えないんでしょうか。それも込みで博打を打ったか、もしくは目先の売上が目的か、はたまた単なる愉快犯か。いずれにしても論外と言わざるを得ません。それ以前に法規範を軽視する、というよりはむしろ積極的に犯し、今なお苦しむ遺族を害して恥じない殺人犯及びその共謀たる出版社の振る舞いと、それを容認する声も聞こえてくる社会の現状には、深い失望を覚えずにはいられないのです。このような不法状態が一刻も早く是正され、被害者遺族に早急かつ十分な保護・救済がなされるよう願う次第です。

本件は成年の犯行であれば当然に死刑に処せられていただろう犯人が、少年法の規定によって免ぜられた帰結でもあるところ、被害者遺族に対して被害を一方的に受忍させた挙句のこの始末。その到底正当化し得ない不均衡・不正義を前にして、近年特に高まる一方の少年法への非難がより一層勢いを増す事も殆ど必然の結果と言えるでしょう。いっそ、死刑相当の凶悪犯については保護規定を撤廃する等の改正が提起されればとも思うわけなのですが、さて。

神戸連続児童殺傷事件、元少年の手記に広がる波紋

6/19/2015

[biz law] トヨタ初の女性常務役員Julie Hamp、就任2ヶ月で麻薬密輸入し逮捕

トヨタの広報トップ、いや正確にはNo.2か。彼女が薬物密輸で逮捕された件、またとんでもない話で驚きました。

容疑者はJulie Hamp、トヨタ公式によれば、元々はGMのVice Presidentを長らく務めた後、同じくVPとしてPepsicoへ移籍して数年後に米トヨタのVP及びCCOを経由し、この春にトヨタ本体の常務役員として渉外・広報本部の副本部長に就任していた、とのこと。常務役員というのは法的な意味での役員というわけではなく、あくまでトヨタ社内での役職に過ぎないながら、実質的に執行役と同レベルすなわち各部門のトップに位置づけられる上級職に当たります。以前から政府が批判まみれでゴリ押ししようとしているところの女性の役員登用の推進、その政策を象徴する人事としてニュースにもなっていました。個人の名前まで覚えていた人は殆どいないでしょうけれども。

容疑は麻薬取締法違反、具体的には違法薬物の密輸入。成田の税関で引っかかりました。問題の薬物は、鎮痛薬等として規制されているOxycodoneの錠剤。原料はケシ類で、当然ながら幻覚作用や依存性といった麻薬一般の副作用も引き起こす危険な薬剤です。モルヒネと似たようなものと言えばいいでしょうか。従って、その所持・利用には相当の理由と、それに基づく公的な許認可が必要になる代物です。逆に言えば、予め許可を得れば処方もされ得るし、輸入も可能なのですけれども、そういった手続きを取らずに密かに輸入しようとしたところ、税関検査で露見して御用、というわけです。そうそう検査なんてされない、と高を括ってでもいたんでしょうか。

ともあれ、許可無く輸入した時点で、紛うこと無き違法行為につき逮捕は当然の成り行きと言えるでしょう。ただ、その先は少し考慮が必要です。この種の麻薬系の薬物の規制の程度は国ごとに結構違いもあって、本件輸入元であるところの米国は特にここ最近薬物の合法化が進められている事もありますから、その有責性の軽重は個別具体的に事情を考慮する必要があるわけで、氏の受けるべき非難等の程度は一概には判じ難い面もあるわけです。例えば、米国在住時には普通に処方を受けていて、日本でも別途処方を受けていたけれども、米国に保管していたストックを使い切るために取り寄せたところ、その際に事前の許可が必要な事を知らなかったか失念していた、といった事情なら、それ程悪質性は高くないものと評価され得るでしょう。

なので、逮捕の報に驚きつつも、詳細が続報されるのを待っていたのですが・・・果たしてその実は、本人にそのような強度の鎮痛剤を服用すべき健康上の事情はなく、かつ輸入に際しても品名に薬剤とは記載せず、全く関係ないネックレス等として、中身もそれらで薬を隠すようにしていたというのです。それが事実であれば、その目的、手段共に、典型的かつ最も悪質な類の、確信的な不正利用目的での麻薬密輸入としか理解し得ないものであり、従って当然にその他の麻薬犯罪と同じ程度の非難と刑罰が課せられるべき酷い犯罪と評価するしかないのです。もう色々と考えていたのが馬鹿馬鹿しくなる位の話で、全く以って時間の無駄でした。勝手に考えておいて言うのも何ですが、遺憾な限りです。

しかし、なんなんでしょうこの人。仮にも大企業グループの役員を歴任して来ておいて、何故にこんな稚拙かつ悪質な犯罪を犯しうるのか、いささか理解し難く思われてなりません。しかも広報担当でしょう?各国の法や習慣、社会の性向等に明るく、親和性も高い人物が就いて当然な筈なのですが、何がどうしてこんな(日本社会に対して)反社会的な人が据えられてしまったのでしょう。本当に件の女性登用のノルマ達成だけを目的とした人事だったという事なのでしょうか。確かに、経歴とか見た目とか女性であるとか、外見さえ良ければそれでいいと割り切った結果だとすれば、成る程そうかと理解出来なくもないところです。そう思って見てみれば、本部長ではなく副本部長というのにもお飾りっぽさが漂っていて見えて、整合する気もします。だとしたら、形式的に過ぎた、実質面で不適切な人事の自業自得として、案外この結果も必然と言えなくもないのかもしれませんね。

いや、女性閣僚の不祥事の件の際には、まさか民間ではそんな自殺に等しい愚かな真似はしないだろうと思っていたのですが。真っ先にかような人事を平然とやらかすとは。。。あのトヨタが、と意外に思うべきか、それともやはり日本を代表する企業、悪い面でも象徴的だ、と呆れるべきなのか。少なくとも愕然とせざるを得ないのです。この様子だと、他所も推して知るべしでしょうし、下の方は何をかいわんや、もっと酷い事になってそうです。いやはや。ご愁傷さまといううか、阿呆ですねえ。全く以って笑えませんが。

あと、まさかの上にもまさかとは思いますが、その薬、交際等の業務に利用していたなんて事は・・・流石にないですよね?本件の異常ぶり、というか、本件を平然とやってしまう位の人物なのだから、と有り得ないと言い切れないあたりが恐ろしい。ここから芋蔓式に、とかなったりしたらとか考えるともう。。。くわばらくわばら。まあでもいい機会なのかもしれませんし、司法関係者にはこの際徹底的にやって頂きたく思う次第です。

ビニールで箱梱包、麻薬小分け=内容物は「ネックレス」申告-トヨタ常務密輸事件

それで、本件を受けたトヨタのコメントの白々しい事。法を犯す意思がなかったと信じているだとか、この状況で何を世迷言を、と呆れる他ないわけです。むしろ何故そう思えるのか、相応の具体的な根拠とか理由があるなら是非聞かせて頂きたいものです。まさか他の役員や社員も同じ穴の狢だから、とかいうんじゃないでしょうね。

トヨタ社長「仲間を信じ、捜査に協力」 役員逮捕

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6/07/2015

[note] Ubuntuサーバに外付けHDD追加後、再起動時にエラーで止まる不具合への対処

最近、サーバにデータストレージ用に外付けHDDを増設したところ、その初期設定中にちょっとしたトラブルに遭ったのでメモ。なおサーバのOSはUbuntu(15.04,64bit)です。

と言っても、おそらくは遭遇する可能性自体そんなに高くないだろう事象なんですけれども。何かというと、初期化やマウントの設定等の後、再起動時に当該ドライブが見つからず、エラーを吐いて止まってしまうようになったのです。

その内容を説明する前に。エラーに至るまでの初期化等の手順は、大まかに以下の通りです。

1.稼働中のubuntuサーバにHDDをUSBで接続し、自動マウントされたものを即アンマウント
2.ドライブ内の初期パーティションを全て削除し、[Linux Filesystem]形式のパーティションを作成
3.作成したパーティションをext4でフォーマット($sudo mkfs.ext4 /dev/sd*1)
4.マウントポイントを作成し、手動でマウント
5./etc/fstab にUUID指定でオートマウント設定記述追加

以上の作業の後、再起動したわけですが、"Error: no medium found at /dev/sd*1"とか言う感じのメッセージと共に緊急モードへのログインプロンプトが出て止まるのです。Ctrl-Dで再実行、等ともあったのですが、試しに再実行してみても、同様のエラーメッセージが出て元に戻るばかり。再起動してみても変化もなく、仕方ない、と諦めてそこからログインして確認したところ、当然ながら追加したドライブはマウントされていないものの、ハードの認識はされています。従って、ドライブに問題があるのではなく、ファイルシステム側でマウントに際してドライブを見失っているだけ、という事になるのですが。。。これは妙な事になった、と首をひねった次第なのです。

というのは、上記5.にある通り、起動時マウントの設定はマウント先ドライブのUUIDを指定して行っているのだから、ドライブが認識されている以上、本来なら見失うなどという事は起こりえない筈なのです。どういうことなのかと。フォーラムのログを漁ってみても、今ひとつコレという情報も見当たりません。と右往左往することしばし、埒も明かず。

何らかの不具合な事は明らかながら、既知の事例が見当たらず、原因もわからない以上は自分で試行錯誤するしかないわけで。面倒な事になった、とため息を吐きつつ、workaroundの検討をする羽目になったのでした。経過の詳細は省きますが、fstabの設定を元に戻したり、その他のストレージ類を付け外して干渉の有無をチェックしたりと、色々と確認してみたのです。

その結果ですけれども。問題は解決し、正常に起動し、当初の意図通りマウントもされるようにはなりました。やれやれです。原因は、多分に推測が入るのですけれども、おそらくは上記手順の内、1.がまずかったのだろうという結論というか推論に至ったのです。具体的には以下の通り。

まず、上記1.のように既にリムーバブルドライブが接続されているところにリムーバブルドライブを追加する場合、既存ドライブより後ろのアルファベットがドライブレターとして割り当てられます(/dev/sd*の*の所)。

その状態で上記2.から5.までの作業を行うと、システム側に、そのドライブがそのドライブレターでマウントされた旨記録され、その後の再起動時にその記録を参照・照合して再マウントしようとしているようなのですね。(チェックをしているだけなのかもしれませんが、外からは同じように見えるでしょうしその辺は判然としません)

で、再起動の際、ドライブレターに変更が無ければ特にそれが問題になる事は無い筈なのですが、外付けドライブの場合、ドライブの検出順に割り振られる結果、再起動前と異なるドライブレターが割り振られてしまう事があります。※実際、私の場合は再起動前後で変わっていました。

すると、ファイルシステム中の記録と齟齬を起こし、ドライブ自体は検出されているにも関わらず、マウント対象とは認識出来ずにエラーとなってしまう、という事になっているようなのですね。

あくまで推測ですが、再起動前のドライブレターがエラーメッセージに出る以上、そう解釈する他無いように思われます。そうだとすれば、なんという間抜けな、というか。そもそもそういうエラーを避けるためにドライブをUUIDで指定してる筈なのに、それじゃ意味が無いと思うのですよ。この結論に至り、解決法を見出すまでに何回も再起動をさせられ、時間を浪費する羽目になった身としては、文句の一つ位は言う権利もあるだろうとも。なお、本件事象は、ext4だからなのかとか、具体的に何処のプロセスでの事なのかといった詳細は未検証につき不明です。

ともあれ。本件不具合の原因は、再起動の前後でのドライブレターの齟齬にある、とすれば、それを回避するには、その齟齬を無くせばいいわけです。その方法は色々あると思いますが、例えば以下の手順を踏めばいいでしょう。

f1./etc/fstabの記述を追加前の状態に戻し、再起動(各種ドライブは接続)
f2./etc/fstabに記述追加
f3.fstabに基づいて再マウント($sudo mount -a)

こうすれば、起動時のドライブレターでマウントされた状態が記録される事になります。これで解決。もっとも逆に言えば、最初に接続したあと、各種設定を行う(上記1.の)前に再起動をしておけばf1と同じ状態になるのですから、そうする方がスマートと言えるだろう話なのですけれども。後から言っても仕方のない事ではありますし、今回はあくまでトラブルとその解決方法の報告、という事でこれでおしまい。やれやれです。

6/05/2015

[biz] 新製品が相次ぐ音声操作端末に見る機能と技術の齟齬、コンセプトの破綻

何と言うこともない話なんですが。最近、音声に特化した据え置き型端末の新製品が立て続けに目に止まりまして。あれです。ホームコントローラとかパーソナルアシスタント等と称される、部屋に設置しておいて、音声で会話したり天気予報を検索したり、オーディオや各種家電を操作したりする類の端末です。どれも中身が技術的に殆ど同じような感じで、今は音声関連技術のトレンド的に一種の製品化ラッシュが起きやすいタイミングにあるのかなと、ちょっと気になった次第なのです。

特に目を引いたのが、米AKAStudy社のMusio。人型のロボット然とした外観の製品で、中身はAndroidOSを採用したスマホ類とほぼ同じ。人型と言っても機械的な動作は一切せず、ただ顔にあたる部分にモニタが入っていて、表情等を変化させる機能がついています。有り体に言えば、タブレットを人形の顔部分に突っ込んだものとほぼ等価ですね。価格はCPU等のグレードや機能の有無により、$159(basic)から$599(genius)まで。これに開発キットやアドオンボード等のオプションが色々設定されているようです。

機能は概ねその中身から当然に予想される通りで、概ね文単位の簡単な音声入力を認識し、Siriライクな応答を返す会話ロボットとしての機能を持ち、その延長として各種家電の制御や外食等のレコメンデーション機能等が実装されています。

これらの機能は、デモ映像を見る限り、それなりに動作はしているようです。一昔前までの音声認識ロボットと言えば、機能面の謳い文句は似たようなものながら、その実は特定の予め登録された個々人の音声による、少数のコマンドにしか応答しない、しかもその精度も著しく低いという、はっきり言ってお粗末で話にならない詐欺そのものの代物だったわけですが、それを思えば隔世の感がありますね。

ですが一方で、まだとても実用に耐えるとは言えないとも思うのです。理由は色々と思い浮かびますが、何よりも致命的だろうのはそのレスポンスの悪さ。音声を発し終えてから、各種応答をするまでに数秒以上のラグが生じるのです。その上、認識に失敗して誤った応答をする事も少なくないようです。これはちょっと。。。音声入力の終わりを検出して、それを認識し、その内容に応じた処理を行って、応答音声を作成する、とここまでやって初めて応答が開始出来るわけで、そのラグにもある程度致し方ない面がある事は理解出来なくもありません。ですが、それはあくまで作る側の事情に過ぎず、ユーザが使えるか否かとは関係ない話なわけで。それでも我慢強く使うという人もいないわけではないかもしれませんが、大多数がそうだとはとても考えられません。残念ながらこれでは一般向けの会話ロボットとしては成立しないでしょう。

会話ロボとしては使えないだろう以上、それでも売るというのなら、その他の機能すなわち家電コントローラやネット用の端末として利用するしかないでしょう。しかし、こちらにも看過し難い問題があります。精度の低さです。このため、努めてゆっくり話しかけ、応答まで何秒も待つ必要があるのですが、その挙句にやり直しを強いられる事もしばしば。これでは思うように操作出来ず、多くの人に取って我慢ならない欠陥品との烙印を押されるだろう事は確実です。また、デモでは殆ど確認出来なかったものの、その構造から推測される不安点もあります。雑音等、周囲に他の音がある場合にエラーが増える可能性が極めて高く、通常の利用シーンでこれが問題になる可能性が非常に高いものと思われるのです。

如何にも置物らしい外観を持ち、音声により接触せずに操作出来る事を売りにするこの種の端末を、タブレットのように一々持ち歩いたりする人はおそらくいないでしょう。通常、室内の何処か、棚の中等に設置され、その室内中の任意の場所から操作されるべきものと捉えられる筈です。しかし、室内で人が発する声は、必ずしも端末へのコマンドばかりではありません。むしろコマンドの方が少ないだろう事は明らかです。然るに、ある程度離れた場所から、また様々な方向から届く声の中から、どうやってその端末へのコマンドを選別するのか。まさか端末を置いた部屋では電話も独り言もするな、とでも言うつもりでしょうか。そして、ここでさらに問題になるのは、そもそも当然ながら室内は無音ではないという事です。客人等、複数人が居れば会話もなされますし、テレビや各種オーディオから音声が飛び交って当然の環境なわけです。この中から、端末へのコマンドをどう判別するのでしょうか。

これは従来から音声入力を操作に用いるデバイスでは問題になって来た点で、例えばGoogle Glassでは、操作者からの距離で環境音との区別を図り、かつ入力前に"Ok,Google"とトリガーを発声する仕様にして本人の発する声の中からコマンドを判別する仕様となっていましたが、それでも誤認識は解消出来なかったそうです。今のところ、音声のみによる操作を採用したデバイスで、この問題を十分に解決する方法を発見し得たという話は聞きません。必ず、音声以外の情報による補助、離れた位置からの音声は除外し、マイクアレイ等によって方向を限定し、さらに画面等のタッチによるトリガーを加える等、何重もの限定処理を加えてなお誤りを排除し得ない、というのが現状と言います。要するに、任意の位置から任意のタイミングで発せられる音声には対応出来ないというわけです。ここ最近のデバイスも、おそらく例外ではないのでしょう。

これはすなわち、そういうコントローラやネット端末としても、そのコンセプトに沿った使用には到底耐えないだろうという事になるわけです。そりゃそうです。何らかのコマンドを入力しようとする度にその場の全員が声を潜め、テレビやBGMを全てミュートにしなければならないコントローラなど、誰が使うというのでしょう。しかもそれがラグまみれのうすのろで、声を発する度に無音の状態を何秒も待たされるというのですから論外です。従来通り、ボタン等の確実に動作するリモコンやスマホを取り上げて操作する方がよほどスムーズかつ確実で、合理的なわけですから。

もし、周りでどのような声や音が飛び交おうとも、その全てを適切に認識し、自身へのコマンドや呼びかけを適切に拾い、応答を返す事が出来るというのならば、遅延は酷くとも全く使えないという事もないのでしょう。しかし、実際の所それは技術的にあまりに困難である事は明らか、watsonレベルのデータベースとプロセッサが当たるならまだしも、一般向け程度の端末にそのような処理能力があろう筈もないわけで。

おそらくはむしろ逆、すなわちそういう処理能力の低さ、精度の悪さが拭い難いものであるが故に、頻繁に誤りがあっても許されうる用途として"会話"を主機能に出しているのではないかとも思うのです。そう考えると、何とも残念というか姑息というか。本来、会話というのは十分な知性、言い換えれば認識の精度や速度といった能力が基礎としてあって初めて成立するものであって、簡単な文を機械的に認識し、応答を返すだけで成立するとはとても考えられないのですが。。。要するに、製品のコンセプトが矛盾を来し、もはや破綻していると思うのです。

なお、中のハードはじめ技術的には殆ど同じと言えるだろうAmazonのEchoは会話を排し、というか外観からしてロボットというより音声認識機能を付けたスピーカーというべき代物で、機能面もネットショッピング等コントローラ端末に特化しているため大分毛色が違いますが、それはそれでやはり音声認識等の速度・精度面で難がある事には変わりなし。特に誤認識率の高さについては、そんな不安定なものを買い物に使うのは怖いと思う人は多かろうし、こちらもコンセプト自体に齟齬があるんじゃないかなとも思うのですが、Amazonはどう考えているのでしょうね。

あと、何かタカラトミーが20000位で似たような機能の会話ロボを子供向けに投入するって話も聞こえてきましたが、価格からして、おそらくMusio以上のものでは有り得ないでしょう。 子供向けにしては高い価格と、その酷く舐めた感のある嘘満載の機能・性能が広く受け入れられるとはとても想像出来ないのですが、果たしてどうなるやら。

そんな感じで、一見洗練されているように見えなくもないものの、どれもやはり技術的にまだ実用になっているとはとても言えず、コンセプトが破綻しているだろうものばかりでがっかり、なのです。Siriに始まったボイスアプリがスマホ上でそれなりに定着した事を受け、これを使って次のビジネスを生み出したい、という意図はよく分かるのですけれども、作ればいいってものではないでしょうと。こういうシーズ先行でニーズ無視、かつ過大広告で失敗した例は数しれず、とりわけロボットで言えばペットロボは、失望の果てに跡形もなく消えました。汎用技術を基盤に採用している分安価になったものの、基本的な性質は同じもののように見える本件、結果も同じになるのか否か。さて。

Adorable AI-powered robot Musio just wants to be your friend
タカラトミー、会話ロボを家庭へ ドコモと連携

6/02/2015

[IT] 年金情報流出125万件、故意すら感じさせる国と公務員の無能

年金がやってくれました。被保険者計125万人分の個人情報流出とのことです。

本件流出情報の具体的事実は各所で十分に報じられていますから省略。原因は日本年金機構の職員が、ウィルス付きのメール、おそらくはその添付ファイルを誤って開いたために感染し、さらにそのPCから発せられたウィルスメールを受け取った別の職員がこれまた誤って開いて二次感染、これにより年金番号や氏名、住所等が記載されたファイルが流出したとのこと。

いやまあ、もはや云々するのもアレな話なんですけれども。わかっていましたけれどもね。そもそも情報を取り扱っているのがリテラシーの概念自体持っていないような人達である以上、一度攻撃を受ければ、容易くこういう事態に至り得るだろうという事は。新種のウィルスにつきアンチウィルスソフトが反応しなかったとか言い訳をしているそうですが、聞くに堪えません。

そもそも、そんな情報をメール操作のような一般業務を取り扱うPC、もしくはそれと常時接続しているようなサーバに置いているというのも論外ですし、さらにそれをオープンなネットワークに晒しているというのも滅茶苦茶です。その上、パスワードの設定すらしていなかったというのにはもう。。。言葉もないわけです。閲覧の制限すらもないというのですから。管理云々以前に、そもそも組織的に流出させる意図があったとしか思えませんね。

年金の基盤システムへの不正アクセスは確認されていない、とか一応の予防線的な付言もあったようですが、そもそも物理的にもソフト的にも閲覧制限が無く、権限も管理されていない情報に対して、何を以って適正もしくは不正と判断するというのでしょう。一々真面目に考えるのも馬鹿らしくなりますが、確認されていない、ではなく、確認出来ない、であるのは疑いようの無いところであって。むしろ、125万件以外が流出しなかったと判断し得る根拠は全く無い、とも言えるでしょう。

要するに話になっていません。一から十まで。これから導入される予定のIT企業向け税金横流し事業ことマイナンバー制度にも懸念が生じるとする意見もあるようですが、今更何をと。国の機関、またその人員には、そもそも管理する能力も意思も無い事は最初から明らかのだから、流出防止策など考えるだけ無駄というものです。

取りうる対応としては2つしかありません。当然に流出が起こる前提で、流出しても問題ない制度設計にするか、そもそも情報を持たせないか、です。要するに管理しよう、させようとするだけ無駄なのだから、最初から管理させないのです。誠に遺憾ながら、それより他に取りうる手段はないでしょう。あるなら知りたいというか、それすらもうどうでもいいような最悪の気分です。ああ馬鹿らしい。

年金情報流出:内規違反 55万件にパスワード設定されず

[biz] IntelがFPGA大手ALTERAを買収

Intelが珍しく大型買収とのことです。FPGA大手のALTERAを16.7Billion(約2兆)で。

このところ、クラウド等サーバ用の大規模高速処理向けにシフトし、汎用と特化の間で確固たる強みを有していた同社の価値が低くない事は明らかではありましたが、それにしても年間売上の約10倍、利益比約30倍というのは驚きの高評価です。昔はメディア処理用のボードとか、そこかしこでALTERAロゴの入った大きな銀色のチップが見られたものですが、その種の需要は衰え、個人の目に止まる頻度は激減していました。しかし、似たような位置づけにあった各社がそうであるように衰退したのではなく、むしろ時代に適応する事に成功していたと言うべきなのでしょうか。にしても回収出来るんでしょうかね。それなりの成算あっての事なんでしょうけれども、とそれはともかく。

従来のPC向け需要が急激な減退期に入ったIntelが似たような感じでクラウド等大手向けビジネスの強化をますます強める中、両社の方向性がマッチしたと判断されたのでしょう。IntelはFPGAを取り込んで事業を大幅に拡大しつつ既存ビジネスとの連携による強化を図ると同時に、ALTERAのFPGA事業はIntelの圧倒的な製造プロセス技術を導入する事で飛躍的な性能強化及び生産性の向上が得られる、というわけです。メリットは明らかな上、重複の懸念はあまりなく、敵対性等の今後に不安を残す要素も殆ど見受けられませんし、ステークホルダーにも規制当局にも概ねすんなり受け入れられるのではないでしょうか。実際そんな雰囲気ですし。

しかし本件、IntelがFPGAを本格的に取り込みに掛かったという事で、ARMに食われつつあるとはいえ今なお圧倒的なシェアを誇る高性能CPUをはじめとしたPCの基本アーキテクチャに加え、付加価値と将来的なものを含め需要の極めて高いエキスパートシステム的な部分も自前で賄えるとなると、関連業界内のパワーバランス的にも相当なインパクトがある筈なわけで。それがこうもあっさり受け入れられる空気になっているというのは、独禁法絡みで一々大騒ぎになっていた以前と比べると隔世の感があります。

それでもやはり波紋は大きいでしょう。FPGAの一方の雄Xilinxはこれにどう対抗するのか。普通に考えれば到底太刀打ち出来ないだろうと思われるわけなのですが、上手く居場所を確保出来るのか。AMDやARM陣営はただ静観するのか。また、今回の買収、それによるIntelの事業強化の恩恵を受けつつ、一方で競合の懸念もあるだろうIBMあたりはどう動くのか。非常に興味深いところですが、そのビジネスの性質上、外野からは個別具体的な経過は見えず、結果になるまで分からないのが少し残念な気がします。むーん。

ちなみに買収額は、直近の株価に10%程のプレミアムを付けた金額とのこと。普通それ位は付けますよね。改めて思い起こしてもスタバの件は無茶苦茶でした。

Intel Agrees to Buy Altera for $16.7 Billion

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