5/31/2023

[biz] 日野自動車がトヨタ離脱、三菱ふそうに吸収

日野自動車がトヨタから見捨てられたとか。現実は非情です。

エンジンの型式指定取得に際しての検査不正が発覚、多数のエンジンについて型式指定が取り消され、複数車種につき事実上販売が不可能になってしまっていた日野自動車ですが、トヨタグループから切り離される事になってしまいました。

分離後は三菱ふそうと一緒になるんだそうで。状況から言って、事実上の三菱ふそうによる日野自動車の吸収になる事は明白です。不正発覚前なら想像も出来なかったような話ですね。

問題の型式指定については、その後主力の大型車関連につき再申請を行い、販売再開にこぎつけた車種も出ていたのですが、23年4月時点でまだ以前の1/4は販売出来ない状態だったそうです。完全な回復まではまだ時間がかかる事は明らかでしたが、それを待つ余裕はない、という事だったのでしょう。

それも当然というか、商用車なのだから、当然顧客は事業者なわけで、事業上必要な時に供給出来ないメーカーからは当然顧客は離れるでしょうし、さらに一度離れた顧客が戻ってくることもほぼ無いでしょう。結局のところ、信用を失ったメーカーは顧客に見放される、というだけの事です。そして、そんな状況に陥った日野自動車には、もはや自力で事業を維持出来る見込みが十分持てなかったという事なのでしょう。元々単価が高い一方で顧客数は少ない業界ですからね。リプレースのサイクルも長めですし。

それにしても、相手が三菱ふそうですか・・・。大半の人がそうでしょうけど、どうしても不祥事がちらつきます。4社しかない国内大型トラック業界内の序列的にも下位なのだし、負け組連合な感は否めません。それでも台数で言えばこれから首位になるんでしょうけど、信用とか企業としての評価は最低、ですか。どうなるのやら。

もっとも、まだ三菱ふそうの親会社であるところのダイムラーとトヨタを含む4社間で覚書を交わした段階で、時期等の具体的な条件はこれから決めるという話ですから、二転三転するかもしれませんけどね。内外の反発も半端ではないでしょうし。

[biz] 日野自動車、全車販売不能・・・まさか廃業? 

[biz] らくらくホン消滅

だそうで。南無。

シニア向けフィーチャーフォンの先駆けとしてかつて富士通から発売されたらくらくホンですが、その後のフィーチャーフォン自体の消滅に伴うスマホへの移行を経て、海外メーカーによる国産スマホメーカーの駆逐に伴い著しい不採算に陥り、テレビ関連事業等と同様、あえなく富士通から分離売却されていました。

事業売却の前後を通じて、ドコモ及びau向けに端末を供給し続けてはいたものの、その後も皆無に等しいブランド力から予想された通り事業規模が縮小していました。そしてついに事業会社であるところのFCNT株式会社が、中間持株会社のREINOWAホールディングスおよび端末製造を担う兄弟会社ジャパン・イーエム・ソリューションズと共に民事再生を申請するに至ったわけです。

なんだかんだで発売から20年以上。大きな文字とアイコンを基本にした見やすいUIを採用し、あえて機能を限定して操作性及び可用性を上げるその設計思想はフィーチャーフォンの一つの到達点であった事は間違いありません。しかし、基本メールと通話だけできればよかった時代が遠く過ぎ去り、たとえシニアであってもキャッシュレス決済や各種SNS等、人それぞれに多種多様な機能の利用がなされ、しかもそれらが頻繁に入れ替わるような現状にあっては、その方法では広く利用者のニーズに応える事は困難というより不可能になっていた事は明白でした。

一方で、らくらくホン等で採用されたものと類似のUIはandroid系のスマホの一部では一つのモードとして採用されており、望む人はそれに切り替えれば良い、という形に落ち着いたようです。いつまで残るのかも怪しいですが、もはやそちら方面のニーズにはそれで十分なのでしょう。その意味で、ハードウェアとしてのらくらくホンは既に使命を終えたと言えるでしょう。端末事業については事業の引き取り手も今の所ない模様ですし、本当に終わりという事になりそうです。どれくらい残っていたのかも不明ですが、もしいたなら、開発者の方々にはお疲れ様でした。

なお、今回破綻したFCNTでは、かつて富士通で製造されていた他の携帯端末事業も引き継いでおり、その中には当然通常のスマホブランドであるところのArrowsも含まれていましたが、こちらも同じく終了という事になります。また、富士通時代の末期には一足先に見切りを付けた東芝から携帯端末事業(REGZA phone等)を引き継いでもいましたが、これも同じく終了。東芝から富士通への売却がされた当時は、むしろこんなに長引くとは思いませんでした。当たり前ですが、事業を終わらせるのも大変だという事ですね。

ところで、FCNTの持株会社のREINOWAホールディングス以下が倒産したわけですけれども、そのさらに親会社のポラリスについてはどうなんでしょうか。結構な損失を被っている筈なんですが・・・。REINOWA近辺については全然情報がなくて、どれくらいの影響があるのかよくわからないんですよね。

周辺の情報から推測すると、まず富士通からポラリスへの売却額は譲渡した70%持分に対して当時300億とか言われていて、その後全株式売却もしたので総額はおよそ450億程度で、その株が全部0になった筈です。一方ポラリス傘下のファンドの総額は公式HPで見る分には1900億とかなので、FCNT関連は少なく見積もって1/4位の比率があった筈なのです。そんなに吹っ飛んでも大丈夫なものなのでしょうか。さて。

5/14/2023

[note] Ubuntu23.04にアップグレード

半年に1度のUbuntu更新の時期がやってきました。

今回のバージョンは23.04でコードネームLunar Lobster、月のロブスターさんです。いつものようにupdate-managerから。今回からインストーラ等がsnapパッケージ化された新バージョンに変更されているそうですが、アップグレードについては関係ないらしく、特に変更もなく、もちろん問題もありません。いつものように待つこと数時間、特にエラーもなく終了。

問題らしい問題はただ一点だけ、初回ログイン時にPicom(Xコンポジター)がクラッシュした旨エラーが表示された位でした。何かゴミが残ったんでしょうか?それ以外は特に問題なし。日本語入力も問題なし。一番気になっていたところの、22.10で悩まされていたサウンド関連の問題も、とりあえず解消されたっぽいです。一安心ですね。

<関連記事>

[note] Ubuntu22.10へのアップグレードでオーディオの不具合に遭遇

<追記>

Picomのクラッシュメッセージはその後も毎回表示されます。軽く調べたところでは、同様の事象が複数報告されていて、既にバグ認定もされており、現在対処中だそうです。やれやれ。

<さらに追記>

Picomのクラッシュメッセージが鬱陶しいので対処しました。公式はいつものように次バージョンまで放置を決め込んでいる模様ですし。

そもそもPicomとはなんぞや、というと、ウィンドウの透過等のエフェクト類を処理するcompositorで、要するに見た目部分の処理モジュールです。もともとLubuntuを使用していて余計な処理は減らしたい身としてはこの手のモジュールは一利もなしなので、無効化してしまう事にしました。

修正点は2点。 

1点目はメニューから。[設定]-[LXQt設定]-[セッション]でLXQtセッションの設定ウィンドウを開き、[基本設定]中の[LXQtモジュール]の中から[Picom (Xコンポジター)]のチェックを外し、さらに[停止]ボタンも押して止めます。

2点目はコンソールから。autostartに移動します。

$ cd /etc/xdg/xdg-Lubuntu/autostart/

このフォルダ中にあるlxqt-picom.desktopをpicom.desktopにリネーム。

$ sudo mv lxqt-picom.desktop picom.desktop

以上の後、再起動すればクラッシュメッセージは出なくなりました。なお、1点目の変更のみ行い、2点目のリネームをしない場合も試してみましたが、その場合もクラッシュメッセージは出たので、単純に多重起動でバッティングしているとかいう訳ではないようです。 なんなんでしょうね。

ともあれ、この件はこれでおしまい。やれやれです。

5/13/2023

[law] 生成系AIに手を出す前に

 AI関連が色々騒がしいこの頃ですが。法の統制が追いつくはずもなく、無秩序に拡大する利用に一旦ストップがかかる流れになったようですね。

Chat-GPTにしろ、各種の画像生成ツールにしろ、法的な面は無論、実用上も問題だらけの現状では致し方ないところというべきでしょうか。

一般にこの文脈でAIと呼ばれるプログラムは、その全てが機械学習に基づくものです。数理モデルと学習データ及びその学習方式(数理モデルのパラメータ決定方法)の組み合わせからなるという事ですが、情報量的に見て出力されるデータに対しモデルの構造や学習方式の影響する割合は相対的に小さく、実質的な情報の大部分は基本的に学習データに依存します。それこそが最近の生成系AIの特性であるところの多様で情報量の多い出力を裏付けているのです。当然ながら、旧来の、構造が固定された比較的少数のパラメータをフィッティングさせるようなモデルを用いるものは含まれません。

そのため、学習データが正しければ、その出力も原則として正しいものである可能性は高くなりますが、逆に学習データに抜けや誤りがあれば、出力にもそれが反映されてしまいます。学習データ内に矛盾があれば、その出力も矛盾に満ちたものになるわけです。

また、学習データに個人情報や機密情報等、センシティブな情報が含まれる場合も、出力にそれらの情報が含まれてしまいます。これを避けるためには学習データとその出力プログラムの双方で正確に区別・管理出来るような仕組みを導入しておかなければなりませんが、その実現は容易ではないでしょう。膨大な学習データを全て人力でチェックしてマーキング等をしなければなりませんし、そんな手間をかけるだけのメリットを見出す事は難しいでしょう。かと言ってその手間を惜しめば、あっという間に情報漏洩で大損害、に留まらず、法的にも個人情報保護法違反やら不正競争防止法違反やらに問われてしまうだろうわけです。

画像生成等についても同様ですが、この場合にはさらに厄介な問題が生じます。著作権です。画像生成の場合、学習データは既存の画像という事になりますが、著作権者が放棄した、というのでもない限り、それらの画像には原則として著作権が付随しています。

言うまでもない事ですが、日本国内の著作権法においては、著作権者以外による著作物の扱いには様々な制限がかかります。もちろん著作権法上では生成AIに関して直接の規定はまだ存在しませんし、判例もありませんが、だからと言って著作権法の適用外になるわけもありません。いずれ訴訟も起こるでしょうし、法改正もなされるでしょうけれども、その時になって巨額の賠償責任を負うことのないように備えておく必要はあるでしょう。

例として、画像生成の場合について考えてみます。画像生成AIで生成されるものは画像データです。その点で、著作権法上では"絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物"か、"写真の著作物"(著作権法10条4,8)に準じて扱われるべきものです。そして、出力される画像は、学習データに用いた画像を変形・翻案したものと言えるでしょう。すなわち、学習データ画像の二次著作物に準じて扱うべきものと言えるだろうわけです。

であれば、まず前提として、原著作権すなわち学習データ画像の著作権は出力画像に及んでいる事になります。従って、学習データ画像の著作権者の同意がない限り、複製や公表等は出来ない事になるわけです。同意のないままそれらの公表・頒布等を行えば、著作権法違反にあたるものとして扱われる可能性が極めて高いと言えるでしょう。

また、原著作権者には、同一性保持権(著作権法20条)が認められています。そもそも同意なしの改変・翻案等は許されていません。つまり、学習データ画像の著作権者の同意なく画像生成を行った時点で著作権法違反にあたる可能性がある、と言えるわけです。なお、AIに学習データを入力する事自体は、技術開発や情報解析として認められており問題ありません。(著作権法30条の4)画像が生成・出力された場合にその著作権が問題になるという事です。

ところで、私的利用ならいいのでしょうか?私的利用の場合は一般に複製権(著作権法30条)、すなわち著作権者の許可なく複製する事が認められていますが、翻案や改変については認められてはいません。実際、ゲームの改造等で私的利用のために改変等をした場合に違法と認められたケースもありますし、私的な作業であっても違法のおそれがないとは言えないでしょう。ただ、実際には複製に準じて問題なしとされる事の方が多いだろうとは思われますが。

斯様に、画像生成一つとっても、少し考えただけで様々な違法の恐れがあるわけです。文章や映像、プログラム等その他のメディアもおよそ殆どが生成AIの対象に含まれていますが、それぞれに同様の、あるいは特有の問題が山積みになっています。結局のところ、安易に手を出していいものではありません。少なくとも金銭のやりとりが絡むような場面ではとても危なくて使えないでしょう。モラルの問題ではなく、法的なリスクの観点から、一旦ストップがかかるのも致し方なし、と言わざるを得ないのではないでしょうか。

5/11/2023

[note] androidタブレットのメモリ容量詐称急増にうんざり

世間的にはオワコン扱いなタブレットですが。個人的には、比較的安価な、主に中華製のAndroidタブレットを長らく愛用していまして。これが、大体2〜3年程度で高確率でバッテリーが膨張するかヘタるかするので、結構頻繁に買い替えが必要になるのです。なのでそれに備えて、定期的にその主たる購入窓口になっているAmazonで現行機種について価格等をチェックしているのですけれども。なんか最近、メモリ容量を水増し表示する業者が激増してるんですね。これがとても迷惑です。

どういう事かというと、まず前提として、タブレットに限らず計算機には1次記憶すなわち揮発性の読み書きが高速なRAM(DRAMやSRAM)と、2次記憶すなわち不揮発性のストレージ(SSDやHDD)がデータを記憶する装置として備えられています。で、計算機のスペックを表示する際には、通常1次記憶のDRAM容量とストレージ容量を区別し、それぞれの容量を併記する方式が標準とされています。この内、アプリ実行時に問題になるのは基本的に前者のDRAM容量の部分なので、こちらの数字がタブレットの仕様として最も重要な点にあたり、従ってチェックの際にはこれを主に見るわけです。何GB未満は足切り、とかそんな感じで。多い方がいい事は言うまでもありません。

例: DRAM4GB,SSD64GBの場合は、4GB+64GB や 4GB RAM + 64GB ROM等 

※なお、SSD等もRAMですから、ROM(Read Only Memory)表示は誤りなのですが、2次記憶媒体を示す表示としてよく使われてしまっています。まあ分かるから別にいいじゃないかという事なんでしょうけれど、困ったものですね。

なのですが、最近になって、実装されているDRAMの容量より大きい容量を表示、記載する品が激増しているのです。本来4GBなのに8GBとしていたり、8GBなのに14GBと表示するだとかです。

これはどういう事かというと、仮想メモリを使っているのですね。この記事を読みに来ているような人には説明不要でしょうけれども、仮想メモリというのは、プログラムの実行の際にメモリ容量が足りなくなった場合に2次記憶の領域(の一部)を1次記憶として使うものです。swapも仮想メモリの一種ですね。元々メモリが少なかった時代にプログラムが1次記憶に入り切らないような事態になっても破綻しないようにするための苦肉の策として導入された機能ですが、メモリ容量が何桁も増えた今になっても、それと競うように肥大化したプログラムに対するフェイルセーフ的な意味で生き残っているものです。

当然ながら、DRAMと仮想メモリの割当先であるフラッシュメモリとではその読み書きのスピードは桁違いに違います。とても同じように扱えるものではありません。用途にもよりますが、大抵の場合、仮想メモリ領域を使用するようになった途端、ほとんどフリーズする状態になってしまうでしょう。同一視など狂気の沙汰です。仮にそのつもりで使えば地獄を見るでしょう。つまり、仮想メモリをメモリ容量に加えてはいけないのです。少なくとも端末の性能表示としては虚偽表示にあたります。

加えて、仮想メモリとしてSSDを使用すれば、当然膨大なデータの書き込み負荷がSSDにかかります。言うまでもなく、SSDは書き込み回数に制限があります。数万回以上の書き換えに耐え得るSLCならまだしも、現在の主流はMLCですらないTLCで、下手すればQLCやそれ以上の、耐久性が著しく低い構造のフラッシュメモリが使われている事も珍しくありません。安価な中華タブのSSDに耐性の高いものが使われているわけはなく、書き換え耐性は1セル当たり概ね千回程度でしょう。その上PCに搭載されているものに比べてタブレットのSSDは容量にあまり余裕がない事が多く、数十GBの空き容量がせいぜいでしょうし、実質的な書き換え容量は10TBWにも満たない事が多いのではないでしょうか。そうと仮定すれば、毎日数GB程度仮想メモリ領域が使用されただけで、3年もすればそれだけでSSDが壊れてしまう事になります。つまり、タブレットの寿命が著しく縮まってしまうのです。

つまるところ、仮想メモリを有効にして販売する事は、処理性能面と耐用年数面の両方で優良誤認を惹起する違法なものと言わざるを得ないのです。禁止されるべきです。今すぐ。

仮想メモリの性質を理解している人なら分かるからいい、というものでもありません。実メモリのサイズを逐一確認しなければならないのは極めて面倒で、手間もストレスもかかります。 只でさえAmazonの検索画面は見づらいのに、そんな事までやってられませんよ。正直見る気が失せます。Amazonには一刻も早い対処を求める次第です。まあしばらくは買い換える予定はないので、次にタブレットが壊れるまでにしてもらえればいいんですけれども。

ちなみに、本記事を書くに際して、Amazonでの検索結果を集計してみました。検索ワードは"Android タブレット"で、ソート方法は標準の"おすすめ"、でブラウザのCookie等はクリア済で検索しました。

結果、検索結果に表示された48件の内、商品の見出しとサムネ画像のいずれかで仮想メモリをメモリ容量に加えて表示していたものは16件、全体の1/3にも上っていました。 さらに16件の内、メモリの内訳すなわちDDRメモリの容量と仮想メモリの部分の容量を表記していたものは5件に過ぎませんでした。残りの11件は、仮想メモリを容量に入れている事すら隠していたのです。1件を除き、各商品の本文(商品の説明)中には流石に内訳の記載がありましたが、そこまで確認する人はどれくらいいるのでしょう?

なお、16件の販売業者名と件数の内訳は以下の通りです。 見事に全部中華系です。公式っぽい名前のセラーもいますね。中華タブなので当然ではあるのですが、やはり中華業者にモラルを期待する方が馬鹿だと言うことなのでしょう。今更な話ですが、残念です。速やかに排除される事を願います。

Teclast Authorized Store  3件

Mobile Global JP 2件

Headwolf Official Store 1件

Bvhandy-JP 1件

Blackview日本公式ショップ 5件

OSphone shop-JP 1件

Nanma Direct 1件

Tbshop-JP 2件

[note] AmazonのPrime Dayが普段の価格とほぼ同じっていうよく知られた話

5/02/2023

[biz] 貧すれば鈍す。Softbank、PayPayサービス改悪

QRコード決済国内最大手のPayPayが大幅にサービスを改悪したそうですね。

具体的には、口座への振り込みに際し、他社のクレジットカードを使用する場合等に多額の手数料を取るようになるんだそうです。

手数料の割合は、概ねクレジットカード決済の手数料と同レベルで、ポイントの還元率等より遥かに高く、利用すればするほどユーザは損をする事になりますから、事実上他社クレジットカードの利用拒否という事になりますね。決済手数料の転嫁は信販会社との関係では規約違反な筈で、信販会社から契約を打ち切られてもおかしくない筈ですが、いいんでしょうか?まあPayPay側としては打ち切られてもいい、という判断なんでしょうけれども。

何にせよ、今回の施策は、自社サービスへの誘導による増収と、誘導に乗らないユーザの締め出し又は搾取、すなわちコストの削減が目的である事は疑いようがないところです。赤字を減らそうというだけの話で、その意図自体には特におかしな点はありません。

ただ、この種の、純粋にユーザにとって不利益にしかならない、しかも無視出来ない程大きな変更というのは、当然ながらユーザの強い反発を招き、他社サービスへの乗り換え・流出の動機になり、サービス自体の縮小、引いては売上・利益の低下を招いてしまいます。下手をすれば消滅すら有り得ます。そうなってしまえば元も子もありません。なので、通常は流出が起こらない状況、すなわち他に選択肢がないレベルでのサービスの寡占に成功した場合にのみ行われるものです。

しかるに、PayPayはQRコード決済の中ではトップシェアではありますが、キャッシュレス決済全体で見ると、クレジットや交通系、またそれらをまとめたスマホ等でのタッチ決済等も一定の支持を得ており、それらを圧倒する程の地位は築いていません。さらに決済手段全体で見れば、当然現金とも競合する状況にあります。

それら競合との比較で見れば、元より利便性ではタッチ決済には及ばず、汎用性では現金に及びません。普及度合いについても、QRコード決済の強みであるところの店舗側での導入コストの低さから利用可能な店舗の数では優位ではあるものの、現金以外はPayPayだけしか使えないような店舗はごく一部にとどまり、そもそもPayPayが使えない店舗も少なくはありません。通用性の面では現金とは比べるべくもないという事です。というか、規格乱立の弊害で、現金以外には一本化すら困難なのが現状です。実際問題、PayPayをよく使うユーザですら、現金や他の決済手段と併用している人が大半でしょう。

つまるところ、寡占というには程遠く、ユーザは自由に他の決済手段への切り替えが可能な状況にあります。

こんな状況で、今回のような強烈なインパクトのある改悪をすれば、当然にユーザの流出を招く事は火を見るより明らかで、それはPayPayの側もわかっている筈です。にも関わらず今回の改悪に踏み切った、という事は、そうせざるを得ない程、財務状況が悪いという事でしょう。ある程度ユーザの流出を招いたとしても、コストを削減しなければならない程に追い詰められているのではないでしょうか。

周知の通り、PayPayはこれまで無理をしてきました。持ち出しで大規模な還元サービスを乱発し、現状のシェアの確立と引き換えに積み上げた負債は数千億レベルで、毎年の決算を見ても営業損失が売上高を上回る惨状です。利益剰余金が年間売上を上回るというのは、いくら成長中の事業と言っても限度があるというべきでしょう。普通は株主が許さないし、むしろなぜ継続出来ているのか不思議な位です。

加えて、PayPayの莫大な損失を補填し続けて来た親会社のSoftbankグループは、周知の通りここ数年投資に失敗して、こちらはこちらで二年連続で兆単位の空前の損失を計上する体たらく。グループ各社に財務体質の改善を指示している事は容易に想像されます。とりわけ赤字事業への風当たりは強烈でしょうし、おそらくは、PayPayには年600億規模の損失は容認出来ないと強く通告されたのではないでしょうか。数年以内に黒字化しろとか言われたかもしれませんね。いやまあむしろ当たり前の話ではあるんですが。Softbankにしてみれば、成長が見込める数少ない事業なのですし、藁にもすがりたいだろうこの状況下では希望を持ちたくもなるでしょう。だからといって無理が通るわけではないのですが・・・。ユーザは信者でもボランティアでもないのです。

こういったPayPayの置かれた状況を鑑みるに、結局のところ、今回の改悪は、ユーザの流出と目先の財務の間で進退窮まった結果、前者を取った、という事ではないかと推測されるわけです。貧すれば鈍す。寡占する前にこんな事をしても、焼け石に水か、下手すれば油を注ぐような事になりかねないでしょうに。PayPayとしては背に腹は代えられない、という事なのでしょうけれども、客観的に見た場合、決済サービスにとってはむしろユーザの方が重要なように思えますし、単に目先の金を取ったという方が適切なのかもしれませんね。だとしたら、もうPayPayは終わりが近いのかもしれない、と半ば確信をもって想像せざるを得ない次第なのです。