12/24/2014

[law] 警察と市民が殺し合う米国

先日NYで起きた警官の射殺事件は明らかに決定的でした。警察側からすれば、黒人市民は全て警官の命を脅かすテロリスト、という事になったわけです。黒人側から見た警官のそれと同じように。結果、双方の疑心暗鬼は際限なく深まり、そして、黒人市民もまた無力ではなく、銃を所持している以上、その対立は感情的なものに止まらず、従来なら起こり得なかった筈の致命的な衝突すなわち、市民と警察とが互いに際限なく殺し合いを続ける、という最悪の形で現実化するだろう事も、殆ど避け難いものに思われるところです。

ただ、当然ながら両者の関係は対称的ではなく、元より警察側に著しく偏ったものにつき、その威力がさらに強化され、防衛のためと称して誤用あるいは濫用される結果、死者はこれからも主として黒人市民側に発生し続けるのでしょう。そして、それより遥に少ないながら、警察側にも死者が発生し、それがさらなる殺人の増加を導くのだろうと予想されるのです。しかもそれが分かっていながら、その是正はなされません。結果として、既にその兆候は複数現れているようです。Missouri州Berkeleyではまたしても十代の黒人青年が警察官に射殺されました。

本来守るべき市民を、その担い手である筈の警察が積極的に殺しているわけです。これは到底個別独立の突発的な事件と評価する事は出来ず、すなわち社会の秩序、法の公平や正義といった、社会の拠って立つべき基盤もまた、致命的に破壊されていると言えるでしょう。他人事ではありますが、その救い難い愚かな社会の有り様には、侮蔑の念を禁じ得ません。

尤も、殺し合うのも当人達の勝手ではあります。ただ、長きに渡って、justiceのため安全のため、と綺麗事を並べ立て、米国民を守る、として散々対立する他国の権利、またその市民の人命・人権を蹂躙して来た当人達が、いざ自分たちの事になればそんな事は知ったことかと言わんばかりに自らの犯罪を正当化し、自国の、それも弱者たる市民を平然として殺して責任も問わない。それも、大統領自らも加担するのですから。いっそ滅んでしまえばいいのですそんな国。

Police shoot dead black teen in Missouri

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12/21/2014

[law] NYPDの警官2人が襲撃され死亡、容疑者自殺

ついに起こってしまいましたか。。。New York、Brooklynでパトカーに乗って勤務中の警官2人が銃を持った男に襲撃され、共に死亡したそうです。

被害者の警官は Wenjian LiuとRafael Ramos、それぞれ勤続7年と2年。容疑者は28歳の黒人Ismaaiyl Brinsley、襲撃後に頭を撃って自殺した、とのこと。

犯人が事前に発信していた諸々のメッセージを考慮するまでもなく、原因の一端が警察、警官による人種差別的殺人への報復にあるだろう事に疑いの余地は殆どないでしょう。ここ数ヶ月、Fergusonの件を発端に、NYでも警官が丸腰の黒人を死亡させておきながら当該警官らは裁判にすらかからない、という、到底妥当とは考えられない事案が続き、即デモと暴動を発生させていた事は周知の通りです。しかも大統領含め誰一人としてそれを正そうとするどころか被害者の反発を非難するだけという、緩和が絶望的に思える程に悪化する人種対立の最中にあって、もはや多くの黒人については敵対感情にまで至っていただろうそれを考慮すれば、この種の私刑が発生するのも時間の問題だったと言えるでしょう。

すなわち本件は、犯罪性の強い行為、少なくとも多くの市民はそう捉えている事案を人種と地位に基づく特権により恣意的に不問にし、その結果発生した深刻な対立状況をただ威力をもって抑止するのみで実質的に漫然と放置した米司法ならびに政府の失敗あるいは自業自得と言う他ないものなわけです。

といって、あれだけの殺人を犯しながら単なる身内の擁護と責任逃れに終始して来た米司法が法制等の本質的転換に踏み込むとは考え辛く、おそらくはこの期に及んでも現状のまま、せいぜいが警官の装備や体制の強化をするだけで終わり、実質的な放置もしくはさらなる悪化が継続されるものと思われるわけですが。結果、その報いも余計に増える事になるのでしょう。その救い難い愚かさ加減には呆れるばかりなのです。他人事ですけど。

Two Police Officers Fatally Shot in Brooklyn; Suspect Is Found Dead

Officer’s Errant Shot Kills Unarmed Brooklyn Man

Grand Jury Declines To Indict NYPD Officer In Chokehold Death Of Eric Garner

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12/20/2014

[IT biz] Sony Picturesハッキング、愚かで哀れなソニーと無責任なオバマ

ソニーの映画事業子会社Sony Picturesがハッキングされた件、そろそろ全容が明らかになってきた感じということで、少しまとめと所感を。

被害の内容は同社内部情報のおよそ全て。未公開映画の元データや脚本、他社との交渉記録、従業員や出演者等のssnを含む個人情報までがほぼ完全に流出したとの事。犯行はGuardian Of Peace(GOP)なるどこぞの政党と同じ頭文字のグループが声明を出しているものの、詳細は不明。ただ、その公開中止要求の対象たる映画The Interviewの内容が北朝鮮指導者の金正恩の暗殺を扱っている事から、北朝鮮の機関である事が確実視されています。正直、それだけで決めつけるのはあまりに短慮に過ぎるように思われるのですが、それはともかく。

で、社外秘どころか関係者外秘の絶対に外部に漏れてはいけないあれこれを全部握られてしまったSony Pictures社はその要求を受け入れ、当該映画は公開中止となってしまいました。損失は少なくとも数億ドルに上るものと見られています。数年分の利益が吹っ飛ぶわけですけど、少なくとも短期的には映画一本丸々損失になった上に、ジェームスボンドシリーズ次回作とか計画中の案件までお釈迦になった、とあってはそれも仕方ないでしょう。むしろ各方面への賠償等を考えたらそれで済むのかと疑問に思う位です。Picturesの事業存続が危ぶまれるのは当然として、ソニー本体にとっては数少ない黒字部門の一つが爆死してしまったわけで、本気で早晩金融専業ともなりかねない勢いです。どうするんでしょう、といってどうしようもないし、なるようにしかならないんでしょうけど。

ところで、そのハッキングの手口について、内通者の手引きによる内部からのものらしい、との噂が流れています。今のところ真偽不明ではありますが、尋常でない流出の範囲・規模や態様からしてありそうではあるし、本当だとすればそれはもう仕方ないのではないかと思うわけです。実際、その手のソーシャルハッキングを防ぎうるフィジカルセキュリティまで完備してる所なんて、政府、軍や金融関係の一部、あと大手のデータセンター位のものでしょうから。 民間会社なんて狙われた時点で詰みだと言っていいでしょう。誠にご愁傷様です。

なんですが、政府関係とかセキュリティー専門家とかの外野の反応は、同情どころか非難の大合唱。オバマ米大統領なんかは某番組のインタビューで、テロに屈した云々的に公な非難を加えたそうで。そんな無茶な、と思うわけです。現時点で早々と北朝鮮の犯行と決めつけているのもアレですし、仮にそうだとしても、テロリストの要求に応じればエスカレートするだけだ、というのはそうなんでしょうけど、何ら対抗する術を持たない一民間会社にどうしろって言うんでしょう。実際問題として、下手に逆らえば、事業的には無論の事、個人情報もがっちり把握された関係者について物理的な危険すら生じるわけです。それを保護もせず、損失を補償する気もない癖に一方的に非難だけを加えるとは。。。米政府もつい最近クラッキングされたとかいう話もあるし、実際迷惑なのはその通りなのでしょうけれども、そもそもそういう外敵の攻撃から市民を守るのはお前らの仕事だろうと、あまりの自己中心かつ無責任ぶりには驚愕せざるを得ません。そりゃ支持率も地に堕ちようというものです。

ただ一方で、ソニーをして単に不運な被害者と言う事も出来ないわけで。よりによって北朝鮮の、それも現在の指導者を題材に作品を出した時点で国を挙げての反発を買うだろう事を予想出来なかった筈はないし、その反発が一民間会社に向けられる事の意味、その帰結を甘く見ていたというのなら、それは救いようもない愚行なのであって、まだ人命が失われていないだけマシだと考えるべきなのですから。その動機にしても、センセーショナルな作品を売り出す事で利益を得ようとしただけに思われますし、特に汲むべきものもないでしょう。タブーに突っ込む時はそれなりの覚悟と備えが必要なわけで、それを怠ったソニーの自業自得とも言えます。そうでないと言うのなら、それなりに攻撃を防ぐか、要求を無視して公開を続けたか、いずれにせよこのような結果には至っていなかったでしょうから。

まだしばらく後を引くだろう本件、いずれの関係者も見るに堪えない惨憺たる有様で、もうどうにでもなればいいんじゃないの?と、うんざりするとともに、冷やかな思いを抱くだけなのです。

How The Hackers Broke Into Sony And Why It Could Happen To Any Company

んで結局、オバマの殆ど脅迫同然の要請に従う形で公開、当然のように北朝鮮は反発、と。勿論その辺はソニーの勝手ですから、それならそれでいいんでしょう。一連の報道による広告効果は半端ではないし、流出済みである点を差し引いても興行収入は相当に見込めるでしょうから。ただ、一般論として、一私企業に過ぎないソニーが、当然ながら非合法の強行措置を全く辞さない類の国家相手に正面から喧嘩を売っておいて、このまま炎上マーケティング大成功、で終わるとはとても考えられないわけで。さてどうなることやら。そういうリスクより目先の利益を取っただけの話だし、何があろうと同情する事もないんでしょうけどね。

評判を聞く限りでは、作品とも言えない駄作との評が大半のようなのですが、色々と愛国心やらに駆られて見てしまった人にはご愁傷様。なお個人的には、この手の悪趣味な映画には全く興味が沸かないので見てませんし、これからも見るつもりはありません。

Sony Streams ‘The Interview’ on YouTube, Google Play and Xbox

12/04/2014

[biz law] リコールを拒否するタカタ、その主張の非論理性

タカタ製欠陥エアバッグ大量リコールの件、米での公聴会におけるタカタの振る舞いがもう酷すぎて見てられません。どうにかならんのでしょうか。

件の会でのタカタの言い分、その骨子は概ね以下の3点に集約されるようです。

1.原因について
 (主張)主たる要因は高温高湿の環境であり、それ以外では発生しない 
 (理由)米南部州やプエルトリコ等、高温・高湿地域でのみ発生確認のため

2.欠陥品の判別について
 2-1.種別
   (主張)助手席用部品のみ対象。運転手席用の部品は対象外
   (理由)助手席用の部品でのみ発生確認のため

 2-2.構造別
   (主張)設計及び構造自体に問題は存在しない
   (理由)製造過程の問題(溶接不足等)の発生が確認されたため

で、まあ・・・。どれも具体的な原因や因果関係が明らかでないし、なぜその理由でその結論が導けるのかというような主張なわけです。が、これをもって、現在実施しているところの、南部地域登録車の助手席用部品に限定したリコールは必要十分、として米議会はじめ社会側が求めている全米における全車全部品のリコールを拒絶しているのですね。一々突っ込むのもアレですが、あまりにその影響が大きすぎるのもあって無視するわけにも行きませんから、以下、一応メモがてらに以下、各主張の問題点を指摘しておきます。

まず1.については、南部地域でしか発生していない一事をもって気候が主要因である等とは言えるわけもない上に、仮に高温・高湿が主要因だと仮定しても、それ以外の地域でも局所的に高温・高湿になる場合はいくらでもあるのであって。それに今現在地域外にあるからと言って、今後引越しや売買によって南部に移動する可能性も普通にあるわけです。そもそもリコール対象を製造側の条件ではなく販売・登録地域で区別するという発想自体が意味不明と言うべきでしょう。

次に2-1.は、それこそ構造的な原因が判然としない以上は区別のしようもない筈なわけで。理由が分からない以上交換しても無意味、というのはそれはその通りなのかもしれませんが、一方で助手席用と運転席用を区別する理由も無い結論になる筈だし、そもそも既に部分的にせよリコールに踏み切った以上、具体的かつ合理的な説明もなしに対象を限定出来る筈もありません。今更何を言ってんだって話です。

最後に2-2.はもう、何をか言わんや。 そもそも殆どのリコールを起こさしめる原因は、設計の問題ではなく製造上の欠陥によって発生するものでしょうに。製造上の欠陥の可能性を認めるのなら、その可能性が完全に否定出来るロット以外は全てリスクがあるし、当然リコールの対象になる筈です。少なくとも対象を特定地域に限定するポリシーとは全く整合しません。まさか問題のロットは南部でしか使われていない、なんて訳もないでしょうし。支離滅裂です。

かように、仮説とすら言えない戦慄すべき代物なわけです。清水副社長は公聴会でこれらの主張を並べ立てた挙句、「現状のリコールを拡大する科学的理由はない」と臆面もなく言い放ったそうですが、常識的にはむしろリコールを限定する理由はない、と理解するべき話でしょう。この逆転ぶりは尋常ではありません。結論から理由をでっち上げたか、でなければ適当な思い込みや願望をそのまま事実とすり替えた詭弁の産物か。仮に、公聴会に出席して件の主張を繰り広げたところの清水副社長以下タカタ側が事実その通りに考えていた、と好意的に捉えたとしても、それは数少ない確認された問題事例から適当に思いつきで抽出した共通点をそのまま事実と断定したものとしか解釈のしようもないわけで。いずれにしろ、論理的とも科学的とも到底言えません。タカタの経営陣、法務、担当含め、全関係者の正気を疑わざるを得ない酷さなわけです。お前ら本当にメーカーかと。

そして当然のように米国全体から激烈な怒りを買って大炎上中なわけです。'Defiant Takata'(聞く耳を持たないタカタ)とか言われちゃって、ここまで広く社会の敵と見做されてしまうと、仮に本件を乗り切ったとしてももう再起不能だろうし、何処かに買収されて消滅するしか無くなってしまったんじゃないでしょうか。

もっとも、全リコールに応じたら応じたで、その場合には全米に止まらず、日本や欧州も含め全世界の全製品までもが対象になるだろう結果、その空前とも言うべき巨大な負担にタカタが耐えられないのかもしれませんし、どちらにせよタカタの行き着く先に大差は無いのかもしれません。ただ、最も優先されるべきは利用者の安全であって、その点からすればタカタの振る舞いは残念としか言えないのです。こうして不毛な対立を続け、本来なされるべきリコールが実施されないでいる間に新たな犠牲が出ないとも限らないのですから。10年以上に渡って隠蔽を続けた悪意の塊のようなタカタに今更言ってもしょうがないのでしょうけれどもね。

Honda Decides to Expand Airbag Recall as a Defiant Takata Resists

焦点:タカタのエアバッグ問題、影落とす海外工場の安全管理

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