10/21/2022

[pol] Liz Truss英首相辞任、濁流に呑まれる英国

英国首相のLiz Trussが辞任を表明しましたというか、させられたというか。就任からわずか45日の事です。もちろん前代未聞。正確には保守党の党首を辞任すると言ったのですが、与党党首が首相になる事が事実上決まっているため首相を辞めるのと同義なのですね。なお、既に新国王チャールズ三世にも伝達済みだそうで、既に撤回は不可能です。

まあまあ衝撃的ではあるのですが、と言っても、そういう事もあるだろうなと。というのも、元々、Trussの党首就任は、党首としてやっていくのに最も必要な筈の、保守党内の議員の十分な支持が得られないままに決まったものでした。なのに何故首相になれたのかというと、保守党の党首選挙は、議員による予選を経て、最終候補2名による決選投票で決定する仕組みを取っているのですが、この決選投票は議員以外の全党員も含めて各自1票を持つので、議員の支持で劣っていても、一般党員の支持があれば当選出来るのです。要するに保守党の党首というのは、党内における大統領のようなものなのですね。ちなみに議員の支持は決選投票で敗れたRishi Sunakの方にありました。

なものだから、Trussは最初から与党内をまとめられない、死に体の少数派党首だったわけです。その影響か、Trussに近い者を中心に選任された大臣は、非主流派の経験に乏しい未熟な議員ばかりでした。財務相に任命したKwasi Kwartengも含めて。

その未熟さとそれに伴う実行力の無さはすぐに露呈します。Kwartengは経産相としての経験はありましたが、財務に関しては素人でした。後先を考えず、恐らくはその乏しい政権への支持を増やすために、単なる経済対策として大規模な減税、その財源としての国債の増発等を安易に打ち出し、ポンドの大暴落はじめ多数の住宅ローンの提供停止等の経済的な大混乱を引き起こして、減税等の撤回とあわせて辞任に追い込まれます。その被害は甚大で、Kwartengの後を継いだJeremy Huntにも、もはや出来る事はありませんでした。当たり前の話ですが、撤回後も経済周りの状況は改善していません。

これにより、保守党員のみとはいえ一般市民の支持によって選ばれた筈のTrussはその市民からの支持を急速かつ決定的に失います。元々議員の支持を得ていなかった事と併せ、もはや首相としても党首としても、その基盤たる信認を失ってしまったのです。直近での英国国民からの支持率は10%を大きく割り込んでいたとか。いやはや。現実は非情ですね。まあ、党員以外はそもそもTrussの選任に関与すらしていないのだから、冷淡なのも当然ではあるのですが。

一応、保守党の規約では、党首は就任(もしくは信任投票)から1年は任期が保証されているので、自ら辞任しない限りは原則在任し続ける事も可能ではあるのですが・・・さすがにここまでの不支持となると、次の選挙での保守党の壊滅的敗北は避けられないだろうわけで、それに危機感を覚えたのでしょう、ほぼ周りの全員が辞任を要求する状況になっていましたし、自らの政治家としてのキャリアを党諸共に終わらせかねない状況を前に、抗い続ける事は殆ど不可能だったという事なのでしょう。本来味方である筈の大臣が、その辞任の際にTrussに責任を問う捨て台詞を吐く位でしたからね。。。その振る舞いは流石にどうかと思わなくもないですが。

さて。Trussはもう終わったとして。次は誰?という話になるわけですけれども、これはもう殆ど決まっています。余程の事が無い限り、前回の決選投票で敗れたRishi Sunakになる見込みですね。元々議員の支持はあるのだし。一応、前首相のJohnsonの名前なんかも挙がってはいますが、Sunakが余程の失言をして、就任前から駄目とでもならない限りいきなり再登板というのはない、と言われています。

ただ、Sunakも別にそんな評価が高いわけでもないんですよね。MBA取得から富豪の娘と結婚してGoldman Sachsに勤務してさらに財をなし長者番付にも載り、政治家に転身した若い経済畑の人物、という時点で、通常政治家に期待されるべき安心感や信頼感は皆無。実際普通の政治家としてのキャリアはほぼなし。割と無謀な類の博打な感しかしません。増税派である事は無論、決選投票で敗れたところからしても、一般市民からはむしろ反感を買う可能性が高いでしょう。Johnson政権時に財務相の職を放り出し、政権崩壊の端緒になった事から、信用ならない裏切り者と見る向きが内外にある点も小さくない懸念材料です。

とはいえ、ここまで保守党自体の支持もボロボロになってしまった現状、未熟な人物から普通の政治家レベルの人物に代わったところで立て直せそうな気は全くしないし、だからこそJohnsonに代わる者として尖った人物が推されているという事なのかもしれませんけれども。さてどうなることやら。

10/13/2022

[gov] 誰からも望まれないマイナンバーカード

マイナンバーカード取得・使用の強制化が打ち出されたわけですが。

率直に言って、うまく行くとは思えません。理由は色々と思い浮かびますが、何よりも根本的かつ致命的な点は、利用者たる国民のおよそ全てが望んでおらず、そもそも制度へのニーズが皆無な事です。平たく言えば、これはいいね、使いたいね、と言う人がいないのです。肯定的なのはほぼ評論家の類だけですね。お仕事ご苦労様。

当たり前の話ですが、制度の普及の是非を決めるのは政府ではなく利用者です。どんな優れた(と提供する側が思っている)製品であろうと、サービスであろうと、その受け手が自然と利用するに足るだけのニーズやメリットがなければ利用されません。例外がないわけではありませんが、それはそのサービス等に代替手段がなく、かつ必要不可欠な場合だけなわけで、マイナンバーカードにはそのどちらにも当てはまらないのです。

そんな状態でカードを強制的に取得させて、さあ使え、と言ったところで無意味です。それに、従来の保険証は使えません、これからはマイナンバーカードだけです、と言うのは簡単ですが、実際にそのような運用を実現するための条件は明らかに非現実的なのであって。全員がカードを取得するところからして無理ですからね。紛失時の再発行に数ヶ月かかるというのも論外ですし。その間は車に乗れない、病院にも行けない。身分証明も出来ない。生活が立ち行かなくなる人も出るでしょう。

にも関わらず、カード非所持者の問題はじめ、往診時や僻地での医療時、また必ず想定して然るべきシステムダウンや通信障害の際等、マイナンバーカードの利用が不可能な状況については代替手段すら用意していない、というのでは話になりません。まさか全部保険なしにしろと?車にも乗るなと?今の制度なら対応出来ているのに?出直してこいと言う他ありませんね。

医療機関等の側にとっても、カードの取り扱い自体に高度な注意が必要となる上に、個人情報云々や患者からのクレーム等、諸々のリスクが激増し、かつ対応のためシステムの導入・運用・更新に多額のコストがかかる本制度など百害あって一利なしです。得をするのはITベンダーだけですね。

それでも、マイナンバーカードを使う事に多くの人が利点を見出し、歓迎しているというのならまだ見込みもあろう話ではあるのですが、肝心のそれが無い、というかむしろ個人情報保護の面を中心に否定的というのだから、これで制度として成立すると考える方がどうかしているというものです。ほんと日本政府は馬鹿ですね。