5/18/2016

[biz law] 計測の体を成していない方法を適切と強弁するスズキに戦慄

スズキの燃費偽装の件ですが。先頃行われた鈴木会長等の釈明会見で判明した驚愕の事実の数々には唖然とさせられてしまいました。

一番驚いたのは、問題の抵抗値の計測について、そもそも計測になっていない、でっち上げと言ってもいいような測り方をして、しかもその方法を恥ずかしげもなく、さも適切であるかのように強弁していた点です。テストコースが風が強くて計測が難しかっただとか、5%の誤差だから問題ないだとか、ホントにプロのメーカーなの?と疑わざるを得ないあまりの非常識ぶりに戦慄しました。

本来言うまでもない話の筈ですが、環境条件の厳密な管理設定は計測の大前提であり、基本中の基本です。逆に言えば、そこに僅かにでも綻びがあれば、それは計測とは言えず、せいぜい目安値程度のものに過ぎない無意味な作業でしかありません。外部的な変動要因を十分無視し得る程度まで排除し、変動を排除不能な内部要因のみに限定した上で、その内部的変動誤差を統計的に十分な精度が得られるまでサンプルを集めて除去し、それでようやく初めて計測値と呼べるのです。しかるに、無風状態を前提にしているのに海岸沿いで風があって計測が困難だったとか、何を言っているのかと。サンプルの計測すら出来ていないという事なわけです。話になりません。

そんな杜撰と言うのも馬鹿馬鹿しいような方法で取ってきた数値を恥ずかしげもなく持ちだした挙句、誤差5%以内だから問題ないだとか、寝言は死んでから言えというのです。自分が何を言っているのか理解していないとしか思えません。

それに、5%の誤差が適切という物言い自体があり得ません。本来計測というのは、まず許容可能な誤差範囲を設定し、その設定した条件を満たすよう計測方法及びサンプル数を設計して行うものです。しかるに鈴木会長の言に従えば、スズキは高々5%の精度しか期待できないような方法かつサンプル数しか用いておらず、かつそれで十分と考えている、という事になるわけです。自動車販売事業における5%のズレ、それがマイナスに振れた場合に引き起こす損失の大きさを誰よりもよく知っている筈の当人の口から、そんな言葉を聞く事になろうとは。。。開発部門が%単位で目標未達、しかもちゃんと計測すればもう少し高いかも知れないが誤差5%だから分からない、なんて報告を上げてきたとして、じゃあそれで、と了承して、あまつさえそのまま市場に投入してしまうメーカーが何処にあるというのでしょう。5%どころか、1%だって許容出来ないでしょうに。

手間を惜しんだ、というのは間違いないでしょう。環境条件の設定と、サンプル数の確保は共にとてもリソースのかかる大変な作業であって、出来れば省略したくなるだろう事は理解出来ます。しかしそもそも簡略化にすらなっていないでっち上げ同然の数値で適切と言い張る姿には、手間を惜しんだという理由では到底説明が付けられない決定的な齟齬があるように見えます。率直に言って、そんな理由ではなく、計測値のでっち上げを取り繕うために無理やりそういうストーリーを作り上げたんだろうな、と考える方が余程自然に思えるわけです。何となくそれらしい説明だけど実はほとんど作り話、というのは大企業の外向けの説明でよくある話ですね。特に理由が後付という辺りが。客観的には虚偽に他ならないわけですが、一般に追求を受ける事もなく横行する業界・社内にあって、当人達にとって既に罪の意識すらなく、むしろ当然のものとなってしまっているのでしょう。

ともあれ。見るからに破綻した説明で、呆れ返った人が沢山出ただろう会見だったわけですけれども。それだけスズキが自動車販売業と日本の法を舐めているという事なのか、それとも本当に理解しておらず、それで問題ないと思っているのか。おそらくは前者なんでしょうけど、いずれにせよ論外と言う他ありません。そんな話を聞かされて、誰が納得など出来るでしょう。

素直に非を認めれば、そのまま生産・販売共にほとんど不可能になって、従って国内事業が三菱自同様終わってしまうのですから、どれほど見苦しかろうとも保身に走ろうとするのも分からないではないですが、それにしても今回の破綻した物言いと、そこで曝け出されたスズキのメーカーとしての最低限のモラルも感じさせない終わりっぷりには、心の底から失望しました。 残念です。他も似たりよったりなんでしょうか。

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