7/14/2022

[law] アレンジ品はだいたい商標法違反になる

つい先日、有名服飾ブランドの布製品を材料にした加工品を"アレンジ品"や"リメーク品"等と称してフリマサイト等で販売していた業者が逮捕されていましたね。容疑は商標法違反。被疑者は違法とは知らなかった旨を主張しているそうですが、まあダメでしょう。

というのも、販売時には、商品名中にブランド名を掲げ、それぞれの商品もロゴが認識出来る状態だったという事なので、容疑自体は否定のしようもありません。違法とは知らなかったという主張も、ブランドからの事前の警告を無視して販売を継続したとの事ですから、苦し紛れの嘘の類であろうと思われますし、なかなかに悪質なケースですね。有罪は免れないでしょう。

この場合、刑事面の訴追に併せ、権利者からの民事での損害賠償請求も当然されるでしょうけれども、その額は商標法38条の推定規定に基づき、本来の権利者のブランドで当該商品が販売されていれば得られたであろう売上額という事になります。アレンジ品の場合はその商品自体は元のブランドでは販売されていない事も多いでしょうから、その場合は仮に販売されていればそれくらいだろう額ということで、類似品の価格がその算定の根拠になります。それが販売数分。とりわけ有名ブランドの場合は大変な額になってしまいます。それこそフリマサイト等で得た売上の何倍にもなるでしょう。悪いことはするもんじゃありませんね。くわばらくわばら。

さて。法的な処理は概ね以上の通りで疑問の余地はほぼないのですが。 そもそも商標法違反ってどういう事、という疑問を持つ人もいるかもしれません。いわゆるパチもん、偽物、模造品の類がアウトなのは明らかですし疑問に思う事もないでしょうけれども、アレンジ品等は元々が正規品なのだから嘘ではないしいいんじゃないの、とかそういう感じに思うだろうわけですね。

実際、正規品をそのまま転売する分には別に問題はありません。(中古品を販売するには古物商登録は必要ですが、それはまた別の話。)ですが、加工がなされた時点で、もはやそれは正規品ではなく別物なのです。別物である以上、商標権を持たない者が商標を付する事は出来ません。その意味で、偽物と同じという事なのですね。相当に手を加えていてもダメ、というより、手を加えているからこそブランドの名前やロゴを付けてはダメなのです。

今回逮捕された件では、商品名中のブランド名の顕名と、商品の布地の模様中のロゴが無権利商標につきアウトという事になります。逆に言えば、商品名に掲げず、布地の模様も認識出来ない状態なら大丈夫だったかもしれませんが、それならそもそもコストをかけてブランド品を材料にする意味がないわけで。結局のところ、ブランドの名前やロゴを掲げられるのは他者の手の加わっていない正規品だけで、それ以外に商標を冠すればアレンジ品だろうが完全な偽物だろうが等しく全て商標法違反という事です。

ともあれ。単なる偽物とは違う云々、違反業者の方にも色々不満もあろうかとは思いますが、この種の権利関係の規律は、曖昧にすると権利侵害で溢れかえって収拾がつかなくなる事もあって刑法並に厳格な運用がなされるものですから、逮捕された後で納得出来ないとかゴネたところでどうにもなりません。損害賠償額も洒落になりませんし、程度によらず、他人の看板で商売をしようとするのは最初からすっぱり諦める他ないでしょう。

なのですが。。。変造品、加工品についての類似の事件は昔からしばしば起こります。 有名なところでは、PS2(ゲーム機)のファームウェア書き換え品が同様に商標法違反で摘発された件とか。きっとこれからも起こるのでしょう。しかし法律を知っていれば避けられる話です。本件は著作権や商標権について基本とも言えるだろう部類の話でもあるし、商売をする上でのリテラシーの一環として最低限覚えておくべきでしょう。転ばぬ先の杖、です。 

「エルメス」正規品のマーク切り抜いて加工 1800点、インスタで販売か 女2人、容疑で逮捕