12/24/2014

[law] 警察と市民が殺し合う米国

先日NYで起きた警官の射殺事件は明らかに決定的でした。警察側からすれば、黒人市民は全て警官の命を脅かすテロリスト、という事になったわけです。黒人側から見た警官のそれと同じように。結果、双方の疑心暗鬼は際限なく深まり、そして、黒人市民もまた無力ではなく、銃を所持している以上、その対立は感情的なものに止まらず、従来なら起こり得なかった筈の致命的な衝突すなわち、市民と警察とが互いに際限なく殺し合いを続ける、という最悪の形で現実化するだろう事も、殆ど避け難いものに思われるところです。

ただ、当然ながら両者の関係は対称的ではなく、元より警察側に著しく偏ったものにつき、その威力がさらに強化され、防衛のためと称して誤用あるいは濫用される結果、死者はこれからも主として黒人市民側に発生し続けるのでしょう。そして、それより遥に少ないながら、警察側にも死者が発生し、それがさらなる殺人の増加を導くのだろうと予想されるのです。しかもそれが分かっていながら、その是正はなされません。結果として、既にその兆候は複数現れているようです。Missouri州Berkeleyではまたしても十代の黒人青年が警察官に射殺されました。

本来守るべき市民を、その担い手である筈の警察が積極的に殺しているわけです。これは到底個別独立の突発的な事件と評価する事は出来ず、すなわち社会の秩序、法の公平や正義といった、社会の拠って立つべき基盤もまた、致命的に破壊されていると言えるでしょう。他人事ではありますが、その救い難い愚かな社会の有り様には、侮蔑の念を禁じ得ません。

尤も、殺し合うのも当人達の勝手ではあります。ただ、長きに渡って、justiceのため安全のため、と綺麗事を並べ立て、米国民を守る、として散々対立する他国の権利、またその市民の人命・人権を蹂躙して来た当人達が、いざ自分たちの事になればそんな事は知ったことかと言わんばかりに自らの犯罪を正当化し、自国の、それも弱者たる市民を平然として殺して責任も問わない。それも、大統領自らも加担するのですから。いっそ滅んでしまえばいいのですそんな国。

Police shoot dead black teen in Missouri

[関連記事 [law] NYPDの警官2人が襲撃され死亡、容疑者自殺]
[関連記事 [law] 米Missouri州Fergusonの白人警官による黒人少年射殺事件、不起訴決定で即暴動]
[関連記事 [law] 米ミズーリ州の警官による黒人少年射殺、被害者を貶め正当化を図る警察]
[関連記事 [law] 米ミズーリの警官による黒人少年射殺事件、人権蹂躙国家としての米国]

12/21/2014

[law] NYPDの警官2人が襲撃され死亡、容疑者自殺

ついに起こってしまいましたか。。。New York、Brooklynでパトカーに乗って勤務中の警官2人が銃を持った男に襲撃され、共に死亡したそうです。

被害者の警官は Wenjian LiuとRafael Ramos、それぞれ勤続7年と2年。容疑者は28歳の黒人Ismaaiyl Brinsley、襲撃後に頭を撃って自殺した、とのこと。

犯人が事前に発信していた諸々のメッセージを考慮するまでもなく、原因の一端が警察、警官による人種差別的殺人への報復にあるだろう事に疑いの余地は殆どないでしょう。ここ数ヶ月、Fergusonの件を発端に、NYでも警官が丸腰の黒人を死亡させておきながら当該警官らは裁判にすらかからない、という、到底妥当とは考えられない事案が続き、即デモと暴動を発生させていた事は周知の通りです。しかも大統領含め誰一人としてそれを正そうとするどころか被害者の反発を非難するだけという、緩和が絶望的に思える程に悪化する人種対立の最中にあって、もはや多くの黒人については敵対感情にまで至っていただろうそれを考慮すれば、この種の私刑が発生するのも時間の問題だったと言えるでしょう。

すなわち本件は、犯罪性の強い行為、少なくとも多くの市民はそう捉えている事案を人種と地位に基づく特権により恣意的に不問にし、その結果発生した深刻な対立状況をただ威力をもって抑止するのみで実質的に漫然と放置した米司法ならびに政府の失敗あるいは自業自得と言う他ないものなわけです。

といって、あれだけの殺人を犯しながら単なる身内の擁護と責任逃れに終始して来た米司法が法制等の本質的転換に踏み込むとは考え辛く、おそらくはこの期に及んでも現状のまま、せいぜいが警官の装備や体制の強化をするだけで終わり、実質的な放置もしくはさらなる悪化が継続されるものと思われるわけですが。結果、その報いも余計に増える事になるのでしょう。その救い難い愚かさ加減には呆れるばかりなのです。他人事ですけど。

Two Police Officers Fatally Shot in Brooklyn; Suspect Is Found Dead

Officer’s Errant Shot Kills Unarmed Brooklyn Man

Grand Jury Declines To Indict NYPD Officer In Chokehold Death Of Eric Garner

[関連記事 [law] 米Missouri州Fergusonの白人警官による黒人少年射殺事件、不起訴決定で即暴動]

12/20/2014

[IT biz] Sony Picturesハッキング、愚かで哀れなソニーと無責任なオバマ

ソニーの映画事業子会社Sony Picturesがハッキングされた件、そろそろ全容が明らかになってきた感じということで、少しまとめと所感を。

被害の内容は同社内部情報のおよそ全て。未公開映画の元データや脚本、他社との交渉記録、従業員や出演者等のssnを含む個人情報までがほぼ完全に流出したとの事。犯行はGuardian Of Peace(GOP)なるどこぞの政党と同じ頭文字のグループが声明を出しているものの、詳細は不明。ただ、その公開中止要求の対象たる映画The Interviewの内容が北朝鮮指導者の金正恩の暗殺を扱っている事から、北朝鮮の機関である事が確実視されています。正直、それだけで決めつけるのはあまりに短慮に過ぎるように思われるのですが、それはともかく。

で、社外秘どころか関係者外秘の絶対に外部に漏れてはいけないあれこれを全部握られてしまったSony Pictures社はその要求を受け入れ、当該映画は公開中止となってしまいました。損失は少なくとも数億ドルに上るものと見られています。数年分の利益が吹っ飛ぶわけですけど、少なくとも短期的には映画一本丸々損失になった上に、ジェームスボンドシリーズ次回作とか計画中の案件までお釈迦になった、とあってはそれも仕方ないでしょう。むしろ各方面への賠償等を考えたらそれで済むのかと疑問に思う位です。Picturesの事業存続が危ぶまれるのは当然として、ソニー本体にとっては数少ない黒字部門の一つが爆死してしまったわけで、本気で早晩金融専業ともなりかねない勢いです。どうするんでしょう、といってどうしようもないし、なるようにしかならないんでしょうけど。

ところで、そのハッキングの手口について、内通者の手引きによる内部からのものらしい、との噂が流れています。今のところ真偽不明ではありますが、尋常でない流出の範囲・規模や態様からしてありそうではあるし、本当だとすればそれはもう仕方ないのではないかと思うわけです。実際、その手のソーシャルハッキングを防ぎうるフィジカルセキュリティまで完備してる所なんて、政府、軍や金融関係の一部、あと大手のデータセンター位のものでしょうから。 民間会社なんて狙われた時点で詰みだと言っていいでしょう。誠にご愁傷様です。

なんですが、政府関係とかセキュリティー専門家とかの外野の反応は、同情どころか非難の大合唱。オバマ米大統領なんかは某番組のインタビューで、テロに屈した云々的に公な非難を加えたそうで。そんな無茶な、と思うわけです。現時点で早々と北朝鮮の犯行と決めつけているのもアレですし、仮にそうだとしても、テロリストの要求に応じればエスカレートするだけだ、というのはそうなんでしょうけど、何ら対抗する術を持たない一民間会社にどうしろって言うんでしょう。実際問題として、下手に逆らえば、事業的には無論の事、個人情報もがっちり把握された関係者について物理的な危険すら生じるわけです。それを保護もせず、損失を補償する気もない癖に一方的に非難だけを加えるとは。。。米政府もつい最近クラッキングされたとかいう話もあるし、実際迷惑なのはその通りなのでしょうけれども、そもそもそういう外敵の攻撃から市民を守るのはお前らの仕事だろうと、あまりの自己中心かつ無責任ぶりには驚愕せざるを得ません。そりゃ支持率も地に堕ちようというものです。

ただ一方で、ソニーをして単に不運な被害者と言う事も出来ないわけで。よりによって北朝鮮の、それも現在の指導者を題材に作品を出した時点で国を挙げての反発を買うだろう事を予想出来なかった筈はないし、その反発が一民間会社に向けられる事の意味、その帰結を甘く見ていたというのなら、それは救いようもない愚行なのであって、まだ人命が失われていないだけマシだと考えるべきなのですから。その動機にしても、センセーショナルな作品を売り出す事で利益を得ようとしただけに思われますし、特に汲むべきものもないでしょう。タブーに突っ込む時はそれなりの覚悟と備えが必要なわけで、それを怠ったソニーの自業自得とも言えます。そうでないと言うのなら、それなりに攻撃を防ぐか、要求を無視して公開を続けたか、いずれにせよこのような結果には至っていなかったでしょうから。

まだしばらく後を引くだろう本件、いずれの関係者も見るに堪えない惨憺たる有様で、もうどうにでもなればいいんじゃないの?と、うんざりするとともに、冷やかな思いを抱くだけなのです。

How The Hackers Broke Into Sony And Why It Could Happen To Any Company

んで結局、オバマの殆ど脅迫同然の要請に従う形で公開、当然のように北朝鮮は反発、と。勿論その辺はソニーの勝手ですから、それならそれでいいんでしょう。一連の報道による広告効果は半端ではないし、流出済みである点を差し引いても興行収入は相当に見込めるでしょうから。ただ、一般論として、一私企業に過ぎないソニーが、当然ながら非合法の強行措置を全く辞さない類の国家相手に正面から喧嘩を売っておいて、このまま炎上マーケティング大成功、で終わるとはとても考えられないわけで。さてどうなることやら。そういうリスクより目先の利益を取っただけの話だし、何があろうと同情する事もないんでしょうけどね。

評判を聞く限りでは、作品とも言えない駄作との評が大半のようなのですが、色々と愛国心やらに駆られて見てしまった人にはご愁傷様。なお個人的には、この手の悪趣味な映画には全く興味が沸かないので見てませんし、これからも見るつもりはありません。

Sony Streams ‘The Interview’ on YouTube, Google Play and Xbox

12/04/2014

[biz law] リコールを拒否するタカタ、その主張の非論理性

タカタ製欠陥エアバッグ大量リコールの件、米での公聴会におけるタカタの振る舞いがもう酷すぎて見てられません。どうにかならんのでしょうか。

件の会でのタカタの言い分、その骨子は概ね以下の3点に集約されるようです。

1.原因について
 (主張)主たる要因は高温高湿の環境であり、それ以外では発生しない 
 (理由)米南部州やプエルトリコ等、高温・高湿地域でのみ発生確認のため

2.欠陥品の判別について
 2-1.種別
   (主張)助手席用部品のみ対象。運転手席用の部品は対象外
   (理由)助手席用の部品でのみ発生確認のため

 2-2.構造別
   (主張)設計及び構造自体に問題は存在しない
   (理由)製造過程の問題(溶接不足等)の発生が確認されたため

で、まあ・・・。どれも具体的な原因や因果関係が明らかでないし、なぜその理由でその結論が導けるのかというような主張なわけです。が、これをもって、現在実施しているところの、南部地域登録車の助手席用部品に限定したリコールは必要十分、として米議会はじめ社会側が求めている全米における全車全部品のリコールを拒絶しているのですね。一々突っ込むのもアレですが、あまりにその影響が大きすぎるのもあって無視するわけにも行きませんから、以下、一応メモがてらに以下、各主張の問題点を指摘しておきます。

まず1.については、南部地域でしか発生していない一事をもって気候が主要因である等とは言えるわけもない上に、仮に高温・高湿が主要因だと仮定しても、それ以外の地域でも局所的に高温・高湿になる場合はいくらでもあるのであって。それに今現在地域外にあるからと言って、今後引越しや売買によって南部に移動する可能性も普通にあるわけです。そもそもリコール対象を製造側の条件ではなく販売・登録地域で区別するという発想自体が意味不明と言うべきでしょう。

次に2-1.は、それこそ構造的な原因が判然としない以上は区別のしようもない筈なわけで。理由が分からない以上交換しても無意味、というのはそれはその通りなのかもしれませんが、一方で助手席用と運転席用を区別する理由も無い結論になる筈だし、そもそも既に部分的にせよリコールに踏み切った以上、具体的かつ合理的な説明もなしに対象を限定出来る筈もありません。今更何を言ってんだって話です。

最後に2-2.はもう、何をか言わんや。 そもそも殆どのリコールを起こさしめる原因は、設計の問題ではなく製造上の欠陥によって発生するものでしょうに。製造上の欠陥の可能性を認めるのなら、その可能性が完全に否定出来るロット以外は全てリスクがあるし、当然リコールの対象になる筈です。少なくとも対象を特定地域に限定するポリシーとは全く整合しません。まさか問題のロットは南部でしか使われていない、なんて訳もないでしょうし。支離滅裂です。

かように、仮説とすら言えない戦慄すべき代物なわけです。清水副社長は公聴会でこれらの主張を並べ立てた挙句、「現状のリコールを拡大する科学的理由はない」と臆面もなく言い放ったそうですが、常識的にはむしろリコールを限定する理由はない、と理解するべき話でしょう。この逆転ぶりは尋常ではありません。結論から理由をでっち上げたか、でなければ適当な思い込みや願望をそのまま事実とすり替えた詭弁の産物か。仮に、公聴会に出席して件の主張を繰り広げたところの清水副社長以下タカタ側が事実その通りに考えていた、と好意的に捉えたとしても、それは数少ない確認された問題事例から適当に思いつきで抽出した共通点をそのまま事実と断定したものとしか解釈のしようもないわけで。いずれにしろ、論理的とも科学的とも到底言えません。タカタの経営陣、法務、担当含め、全関係者の正気を疑わざるを得ない酷さなわけです。お前ら本当にメーカーかと。

そして当然のように米国全体から激烈な怒りを買って大炎上中なわけです。'Defiant Takata'(聞く耳を持たないタカタ)とか言われちゃって、ここまで広く社会の敵と見做されてしまうと、仮に本件を乗り切ったとしてももう再起不能だろうし、何処かに買収されて消滅するしか無くなってしまったんじゃないでしょうか。

もっとも、全リコールに応じたら応じたで、その場合には全米に止まらず、日本や欧州も含め全世界の全製品までもが対象になるだろう結果、その空前とも言うべき巨大な負担にタカタが耐えられないのかもしれませんし、どちらにせよタカタの行き着く先に大差は無いのかもしれません。ただ、最も優先されるべきは利用者の安全であって、その点からすればタカタの振る舞いは残念としか言えないのです。こうして不毛な対立を続け、本来なされるべきリコールが実施されないでいる間に新たな犠牲が出ないとも限らないのですから。10年以上に渡って隠蔽を続けた悪意の塊のようなタカタに今更言ってもしょうがないのでしょうけれどもね。

Honda Decides to Expand Airbag Recall as a Defiant Takata Resists

焦点:タカタのエアバッグ問題、影落とす海外工場の安全管理

[関連記事 [biz law] ホンダの米における重大事故6割隠蔽発覚]

11/25/2014

[law] 米Missouri州Fergusonの白人警官による黒人少年射殺事件、不起訴決定で即暴動

まさかの不起訴。米Missouri州Fergusonで起こった黒人少年Michael Brownの射殺事件で、州裁判所での審理に付されていた犯人の白人警官Darren Wilsonですが、法の裁きを受けるどころか、起訴すらされないという決定がなされたそうです。

正直信じられません。いや、白人+権力至上主義に染まり、今なお人種差別の塊のような米国支配層を代弁する司法、それを象徴するところの白人が多数を占める大陪審の人種構成からすればむしろ当然の決定と言えなくもないのですけれども、流石にこれだけ嫌疑が強く、かつセンシティブな案件で、いくら法の規程があると言っても少数人の独断で無罪にするとか、それで市民の納得が得られよう筈もないし、暴動が起こるだろう事も火を見るより明らかなわけで。内戦がしたくてわざとやってるんじゃないかと、正気を疑わざるを得ないのです。

ともあれこれで、Wilsonはもちろんの事、地元警察の関係者を含め、相当な範囲が黒人民衆から決定的に敵対視されてしまったでしょうし、あるいは法の裁きが無いならと、私刑的な行為に及ぶ人も相当に生じ得る結果、死者の発生も避けられないでしょう。つくづく馬鹿な事をしたものです。他国の事とはいえ、救えませんね。

Ferguson Grand Jury Will Not Indict The Cop Who Shot Michael Brown

んで戒厳令ですか。本来なら即介入して事態の収拾に当たるべきオバマ大統領も日和ってるというか関心が無いと言わんばかりのおざなりな対応に終始するとあっては、もうどうにもならないんじゃないでしょうか。

[関連記事 [law] 米ミズーリ州の警官による黒人少年射殺、被害者を貶め正当化を図る警察]
[関連記事 [law] 米ミズーリの警官による黒人少年射殺事件、人権蹂躙国家としての米国]

[biz law] ホンダの米における重大事故6割隠蔽発覚

これほどとは。公表されたホンダの米における重大事故報告漏れの件数が、実に2003年からの11年で1729件とか。タカタ製エアバッグ関連8件を含め、本来報告すべき事件のうち6割が漏れていたというのですが・・・それはもう漏れとは言えないだろうというか、組織的隠蔽の結果としか解釈しようがない規模なわけで、まさかあのホンダが、と、尋常ならざる衝撃が広がっているようです。

いやほんと、GMの事を言えないどころか悪質さではそれをも上回る話なわけですが、どうなっちゃうんでしょう。多分にタカタの件で追跡調査してみたら芋づる式に、って話なんでしょうけど、蔓の先が大きすぎて当局も困惑してるんじゃないかと。タカタもタカタで、10年ほど前に障害を把握しておきながら意図的に隠蔽した嫌疑がかかって最高に追い込まれてる最中なわけだし、只でさえ最悪レベルの案件が連鎖併発した本件、そのあまりのヤバさ加減に戦慄が走ります。

ともあれ、少なくともタカタ絡みの件については、自動車メーカー各社の中では最も採用率が高く、その疑惑の中心にあったホンダも、今回の隠蔽発覚によってめでたく完全にグルだったものと認定され、以降はセットで追及を受ける事になるんでしょう。タカタやホンダ、その他メーカー各社が受けるだろうあれこれについては自業自得ですが、質も量もヤバすぎで、影響を受ける範囲も相当なものでしょうし、とばっちりを食らう向きには誠にご愁傷様であります。

しかしホンダ。去年までは何の問題もないかのような風だったし、利益も激増を続けて順風満帆にしか見えなかったのに、フィット・ヴェゼルのリコール連発からこっちの急転直下ぶりは何というか・・・非常にアレです。むしろ、あの華々しい成功ぶりは元々こういう隠蔽による取り繕いの産物に過ぎなかった、という事なんでしょうか。とても残念です。

ホンダ、米当局に重大事故報告漏れ 03年以降1729件

Investigation of Honda Centers on Failure to Report Deaths From Takata Airbags
Takata Offers Its Rebuttal to Report of Secret Airbag Tests

[関連記事 [biz] Fit3HVが3度目のリコール、出荷停止]
[関連記事 [biz law] GMのリコール隠蔽、追加発覚97万台]

11/18/2014

[IT] 顔認証による入出国実証実験結果の出鱈目さに脱力

先日成田・羽田で実施された出入国の実証実験の結果、誤認識率0.26%、ね。。。定義が不明な以上正確な評価は出来ませんが、仮にEERとか、言葉通りに認証システムの実力に近いものだとすれば、従来の顔認証技術の限界どころか、現在標準的に実用されている指紋や静脈すら超える凄まじい値です。あらゆる本人確認の方式を顔認証で統一する事すら可能にする、革命的な性能と言えるでしょう。

勿論、そんな話を真に受けられるわけはないし、逆に嘘と確信させられてしまうわけですが。案件継続のアピールのために盛ったにしても程があるでしょう、と。大方、判定の基準を甘くすればいくらでも作為的に下げ得るFRR(誤排除率)だけを言ってるんでしょう。生体認証一般において、その方式の精度の測定・評価においては、FRRとトレードオフになるFAR(誤受入率)と合わせて見なければ意味をなさないところ、定義も不明な数値を一つだけ出されても、むしろ誤魔化しや詭弁の類かとの疑念が深まるだけ、それもこんな通常の評価ならありえない数字を出されても、困惑するしかないのですよ。

推測ながら、おそらく本実験では、なりすまし等の不正のチェックは全くやってないのではないでしょうか。テストの対象が日本人で、かつ実験参加に同意した人だけなのだから、その時点で不正すなわちパスポート内の画像と参加者が異なる可能性は極めて低く、逆に言えば本人性は殆ど保証されたデータセットになっている事は間違いありません。当然、実際になりすましが行われる場合に想定されるような変装等の類はそもそもデータに含まれておらず、従ってなりすましのチェックは事実上なされ得ないものと推測されるのですね。

そして、参加各社はその事を当然知っていたでしょうから、今回の実験において不正の検出は不要として、本人と他人を判定する基準を極めて甘く、本来であれば当然想定されるべきなりすましがあったとしても検出し得ない程度まで緩めた判定ソフトを投入した可能性が強く示唆されるところです。とすればその結果、本人を他人と誤認識する率は極限まで下がる事になりますから、件の異常に良い誤認識率と辻褄が合うのですね。

というかそうとしか考えられません。なりすましを十分に防止可能なレベルで他人受け入れが少なく、かつ本人を弾く確率が1%未満というのは、前述の通り、もう指紋や虹彩、静脈やら、その他の顔認証とは比較にならないほど情報すなわち個人的特徴が多く変動も極めて小さい高精度な部位による認証のそれと同等か超えてすらいるわけで。仮に本当にそこまで出来るなら、入出国どころかATMとか一般の入退出とかセキュリティ用途も含め、あらゆる本人確認の殆どが顔認証で代替可能になるのですし、少しでも顔認証含め実際の生体認証に触れた経験のある人なら、もう失笑するしかないような話なわけです。んなわけないだろ阿呆か、と。

ところで、そこまで緩めてなお本人排除が残った事については、意外に思うべきか、それともそれはやり過ぎによる発覚を恐れた結果と考えるべきか。発覚を恐れたにしては行き過ぎに思われますが、まあその辺はやり直しが効かないとか、参加5社間の競争とか、色々と歯止めが効き難かった部分もあるんでしょうか。

兎も角、この辺の作為、倫理的には勿論不適切な類の話だし、国際規格等で定められている精度評価の基準等に照らしても完全に不正な筈なのですが、法務省はその辺分かっているのかいないのか。もっとも、今回の実験を行うと決めた時点で既にNECやらは後に引けない状態だった筈、今更この程度の作為をやったところで大した違いもなかっただろうし、法務省側がどうあれ、業界ぐるみで丸め込む位はどうとでもしたでしょうけれども。何せ、10年以上に渡る巨大案件の存続がかかってたんですから。

ともあれ、元々出来レースの本件の進捗にその辺の実態は何ら関係しませんから、何処からも公的な指摘・追求がなければ、これで当該計画は17年度までは継続し、さらに実際のシステム構築も含めてさらに多額の予算がつぎ込まれる見込みとなりました。こういう不正でその場をしのいでも、実際に運用されるようになれば、身も蓋も容赦もない現実に晒されるわけで、不可避的に発生するだろう本当の不正や、複雑なシステムによる人手も含めた運用コストの増加によるデメリット等が顕在化するだろう事も明白なのですが、その予想される破綻も含めて、もうどうにもならないのでしょう。遺憾な限りです。

出入国審査に顔認証導入へ=17年度にも、実験で精度向上-法務省

[関連記事 [IT] 顔認証による出入国審査実証実験再開]
[関連記事 [IT] 顔認証による入出国自動化に性懲りもなく復活の試み]
[関連記事 [IT] 顔認証による入出国自動化、廃案]

で、下記公式の結果報告書を読んでみたわけですが。

日本人出帰国審査における顔認証技術に係る 実証実験結果(報告)

一応本報告では認証方式評価の基本に沿ってFAR値別のFRRという形で評価されていますが、FAR0.001%、すなわち他人を誤って本人と判定する割合が10万回に1回程度になるよう厳しく判定した場合に本人を誤って他人と判定してしまう確率がA社は0.26%、D社は0.56%。やはり実際の場面ではありえないと言わざるを得ない結果です。というか、何故FAR0%の値が掲載されてないんでしょうか。特に変装等によるなりすましが無いだろうデータセット程度なら、当然誤認はゼロに設定されて然るべきところでしょうし、少なくとも参考としては必須でしょうに。やりすぎと思って自重したんでしょうか。だとしたら今更な気もするんですけれども。

ちなみにその他3社の結果は、C社が6.88%、D社が9.59%、E社が22.56%。上位2社に比べて大きく劣るC社とD社ですら、指紋認証その他に比肩する高レベルにある事になるわけですが、当然そんな筈はありません。E社だけは大きく劣っていますが、むしろこれ位の方がリアルに近いと思われるところです。この現実と建前が逆転したようなというか、もはやファンタジーとも言うべきあまりのクレイジーさに戦慄を禁じ得ません。

11/14/2014

[IT biz] Googleの決済サービスwallet一部廃止

毎度お馴染み、Googleによる突然のサービス廃止宣言がやって参りました。今回の犠牲者はオンライン決済のGoogle wallet。2015年3月に一部APIを廃止するとの事。これまでその度に数多のユーザー、デベロッパーを絶望のどん底に叩き落として来た同措置ですが、今回はその中でも飛びきりと言っていいでしょう。何せ、同社のサービスを介して金銭をやり取りする際に事実上利用が必須な基盤部分なわけですから。関係者はみんなまとめて大混乱必至です。

無論、対象が決済機能という事で、全廃止などすればそれはGoogleが事業を放棄するに等しいわけで、廃止対象は限定的ではあります。具体的には音楽やゲーム上の課金アイテム等、デジタル商品の決済APIのみが廃止。例外的に、Google Playで配信されるアプリがその中で決済をする分には引き続きサポートされるとの事なので、Google専用アプリに関しては影響が無い事にもなっています。しかし、マルチ対応のアプリでは、iOS等、Android用以外でGoogle Walletによる決済が不可能になるわけで、その点修正を強いられる時点で広範囲に甚大な影響がある事は間違いないし、少なくとも歓迎する向きは皆無でしょう。

ただ、理由は想像がつくのですよね。送配等引き渡しが必要となる都合上、自然とある程度利用者の限定・確認もなされる実物の販売と違い、取引の全プロセスがオンライン上で完結するために詐称が容易な電子データの販売は不正の温床そのものでしたし、GoogleにしろAppleにしろYahooにしろ、NSAの件からこっち、何から何までザルな事が周知され、不正利用も頻発して信用が地に落ちた現状の基盤を使い続けるのは無理がある事は明白、全面改修を考えなければならない状況にあるわけで、その後継導入の前準備といったところかな、と。実際Appleが先日リリースしたApple Payの仕様を見ても、事実上iPhone6系に利用が限定されている点からして旧システムを切り捨てる意図が見えますし。勿論あっちはあわよくば囲い込み、との思惑もあるんでしょうけれど、既存の膨大な顧客を切り捨てるデメリットを考えれば、それよりもセキュアな決済システムの確立を優先した結果と解釈するのが妥当に見えるのです。色々とちぐはぐで、傍目には全く上手く行ってない、どころか崩壊気味なのがなんとも微妙ですが。まあ意図だけはあるらしい、という事で。

勿論その辺は憶測に過ぎないし、昨今報じられるFBIの意向なんかがうっかり重視されて、むしろ後継ではトレーサビリティの確保とか言ってバックドアが仕込まれる可能性もありえないではないのですけれども。この期に及んでGoogleの良心に期待出来よう筈もありませんしね。

ともあれ。本件にしろ、Apple Payにしろ、不安定な上に四分五裂する決済サービスの乱立にはデベロッパーもユーザーにとっても、どう転んでも結局は迷惑な話で終わりそうで、誠に遺憾な限りです。汎用性は皆無でかつ継続性は絶望的、とくれば、現状ではどちらも利用に値しないと言っていいんじゃないでしょうか。さしあたりPaypalで統一してもいいように思える位ですね。もっともPaypalにしても事業自体の立場が不安定だし、ローカライズが微妙とか色々問題もあるわけですが。そういったあれこれは今に始まった話ではありませんが、ますます面倒になる一方に見えるこの状況、本当に困ったものです。

ところで、ようやく国内でもChrome Bookが販売されるようになったそうですね。海外に比べて値段が為替レート以上に超割高なのはさておき、Chrome Bookの作り自体は悪くないと思うのですけれども、その寄って立つ筈の各種Google提供の基盤サービスが本件の如き体たらくでは、とても安心して使えないし、嗜好品以上の何かにはなり得ないと思うのです。なのにWindows系OSのPCと同カテゴリの商品として売り出されているあたり、全く以て不合理に見えるのですが、その辺どう考えてるんでしょうか、Googleは。何も考えておらず適当やってるだけで、上手く行かなければあっさり廃止すればいい、とかいうつもりなんでしょうか。であれば何という迷惑な。もはやそういう時代は過ぎたように思うんですが。。。言うだけ無駄ですかね。

Google Wallet for digital goods Retirement
Google Wallet won't let you buy digital goods past March 2015

[関連記事 [IT biz] Appleの製品・サービスに相次ぐ致命的脆弱性]
[関連記事 [biz] 内在する不備と矛盾、普及に躓くApple Pay]

[関連記事 [biz] 大手小売チェーンに相次ぐ顧客情報漏洩、不信の行く先]

11/05/2014

[pol] 米中間選挙、野党共和党が上下両院の過半数確保し完勝、の不合理

米国の中間選挙は事前の予想通り野党共和党の圧勝に終わったそうですね。国会においては従来から支配していた下院の勢力を伸ばしつつ、新たに上院の過半数も獲得、地方においても複数州で新たに知事職の奪取に成功する、という、文字通りの完勝です。

まさに予想通りの結果ということで、今更本選挙の分析をする必要は無いでしょう。結局のところ、その理由はオバマ大統領が華々しい成功を示す事が出来なかったために国民の失望を買って支持を落とした事に帰着されるのですから。

ただ、外野から見ていると違和感も感じます。特に、オバマ大統領の実績、それに対する評価については、全体を通して具体的に何が悪かった、というべき失政も無いように見えるわけで。ここまで低い評価を受けている事には、今ひとつ合理性を見出せないのです。経済的危機からわずか数年、ここまでよく回復させたなと感心する位だし、対テロ政策についても、あの泥沼から抜け出し、一定の距離感を保つところまで漕ぎ着けた時点で相当なものだとも思うのですが、米国民はもうそんな過去の事は忘れてしまったのでしょうか。それとも覚えているけれども、全く満足していないという事なんでしょうか。

直近の政策に対する低評価が直接の原因、という見方もそれなりにあるようですが、それは具体的に言えばISISへの対応が手ぬるいとか、エボラへの対策が不十分だとか、ウクライナを巡るロシアへの対応が弱腰だとか、それぞれの問題への対処の難度からしていささか理不尽に見えるものばかりです。むしろ、色々と思慮の浅めな人が多い共和党が仮に対処したとして、より有意に上手い対処を彼らが成し得たとは到底思えないわけで。

かろうじて政権の失点と断言出来る事と言えば、ヘルスケア関連の失態位でしょうけれども、これは現時点で概ね問題は解消されていたし、問題になっていなかったというか、今回の選挙においては忘れられていたような感じでしたしね。NSAの件はいわずもがな。その手の権力拡張・行使に積極的な共和党ならもっと派手にやっていただろうし、その分露見した後の反動も大きくなっていたでしょう。予算案を巡る行政停止やらは、野党との責任がイーブンですから、これもやはり野党との相対的な評価の優劣には影響しない筈です。

そもそも過去を振り返って見れば、一連の戦争にしろ経済の危機にしろ、現政権が直面した主要な問題は概ねブッシュ政権時代の負の遺産に他ならないわけで。その後始末をこなした実績を無視し、上記のような誰であろうと即座の解決は不可能に思える事案の進捗が今ひとつだからと言って、よりによって共和党に回帰するというのは、流石に理屈に合わないと思うのです。元の木阿弥になってもいい、という事なのか、それともやはり単に忘れているのか。

共和党自体、以前から内部分裂して寄せ集め状態だし、その活動も単に現政権に難癖を付けているだけで、諸々の問題に対して自らが行っている批判、それらに耐えうるだけの具体的な政策の立案・実施を期待し得るかというと、評価以前に立案すら覚束ず、恐らくは不可能だろうという状態なのですから。その辺、日本で言えば少し前の民主党政権の醜態やらがフラッシュバックしたりして、どうにも危うく見えて仕方がないのです。

無論、どのような選択をしようと、それは米国民の自由だし権利なわけで、外野がとやかく言う筋合いもありません。ただ、現政権はその実績の割にあまりに報われないように見えて、同情を禁じ得なく思うのです。

実際問題としても、米国が機能不全に陥ったり、迷走したりすると他国への影響も半端ないので、大統領も共和党も、少なくとも次の大統領選までは程々にして頂きたいものですが。。。難しいでしょうかねやっぱり。

Riding Wave of Discontent, G.O.P. Takes Senate


[IT biz] Appleの製品・サービスに相次ぐ致命的脆弱性

広範囲にセキュリティ上の深刻な被害を及ぼしたBash脆弱性の件も未だ完全には終息していないところに、同レベルの脆弱性が指摘されたそうです。対象は"Yosemite"ことOSXの最新版10.10。旧バージョンについては調査中とのこと。通称は"Rootpipe"で、その名の通り認証プロセスをすっ飛ばしてルート権限を取得出来る、最悪レベルの脆弱性ですね。

発見者のスウェーデン人技術者Emil Kvarnhammarが、寛容にも公表を控える旨のAppleからの要求を受け入れたために、来年(2015)1月中旬までは一応模倣による攻撃は抑制される見込みではあります。が、数多いる攻撃者の強力な解析力の前には気休めにしかならないでしょう。むしろ、bashの件の直後につき同様の致命的な脆弱性を探していた向きは少なくなかっただろうし、その大半にAppleに事前報告する理由も益も無い事を考えれば、既に知っていた者がいても全く不自然ではないわけです。仮にEmilが第一発見者だとしても、こういう脆弱性がある、という事実が知れた時点で当たりもついて発見は容易でしょうし。

ともあれ。このレベルの脆弱性を連発した、というのでは流石に擁護しようがないし、Apple製品のセキュリティ周りは以前のMS以上に終わっている、と評価せざるを得ません。

で、それだけでも酷い話なんですが・・・問題のYosemite、密かにユーザーのデータをiCloudに自動アップロードもするんだそうで。バックアップ機能の一つに、編集中の各種データを自動セーブしておく機能があって、従来はオプション扱いだったのがYosemiteになって密かにデフォルトでONになる設定に変更されたんだとか。何でこのタイミングでそんな事するの、と。

元よりこの種の機能は脆弱性に直結する可能性が非常に高いところ、このようにユーザーの管理外で常時有効に設定されているような場合は、それだけ攻撃に晒されやすくかつ事実上管理がなされないためにとりわけ極めて危険なわけです。bashやRootpipeの件を別にしても、iCloud自体が大量の情報流出をやらかして、プライベート写真を流された芸能人らが訴訟も起こしているところにこれ、もうユーザーの情報を保護する気が無い、というよりわざと漏らそうとしてるとしか思えません。

もっとも、その辺の杜撰なやり方自体は別段目新しいものではなく、むしろAppleとしては一貫しているとは思うのですが・・・そんな事でこの先やっていけるんでしょうか。というより、やってほしくないと思わされてしまうのです。

周知の通り、これまでAppleは、少なくともセキュリティ関連については一貫して傲慢な振る舞いを続けて来ました。深刻な脆弱性を把握しても悉く漫然と放置し、時折まとめて、充分なのかも定かでない大量のパッチをリリースするだけ。懸念の声には、"問題ない"とだけ返答して後は無視するのが通例だったわけです。

これまでは、その立ち位置自体が比較的マイナーで、またMSがあまりに酷かったために、その影に隠れる事でAppleのあれこれも見過ごされて来ましたが、ここ数年で状況は変わりました。OSXのシェアも拡大し、クラウドサービスのプッシュも進み、iOSやiCloud等のプロダクト・サービス間の連携を強めつつコンシューマ向けITサービス全般におけるシェアを確立した結果、その社会に対する責任は以前とは比較にならないほど大きくなりましたし、他社を引き合いにした責任回避も許されないポジションに立ってしまっている、と言えるでしょう。

それを理解しているのかいないのか。相次ぐ致命的な脆弱性の発覚、また情報漏洩の発生、そしてそれに対する対応の絶望的なまでの杜撰さ、緩慢さ。不合理な施策にサービス・機能間の不整合。Apple payの投入には、法人周りも含めた社会基盤的なカテゴリーへの進出を目指す意図が明白に見られる同社ですけれども、現状を鑑みるに、そもそもそのポジションに立つ資格に欠けるものと言わざるを得ないわけで。むしろ、適当好き勝手余計やって引っ掻き回した挙句にあっさり投げ出されたりしては堪らないし、それは御免蒙りたいところなのです。

Serious security flaw in OS X Yosemite 'Rootpipe'

Apple's OS X Yosemite slurps UNSAVED docs into iCloud

Report: Apple Knew of Security Problems Long Before iCloud Breach

[関連記事 [IT] bashに最悪の脆弱性発覚]

[関連記事 [biz] 内在する不備と矛盾、普及に躓くApple Pay]

[関連記事 [biz] iPhone6で不採用のSapphire GlassメーカーGT Advanced倒産]

11/01/2014

[biz] 内在する不備と矛盾、普及に躓くApple Pay

案の定と言うか。Appleが今秋の目玉として売り出した小売向け決済サービスApple Payですが、小売大手を中心に導入・対応を拒否するグループが続出して立ち往生しつつあるようです。

これは意外な話とは言えない、どころか、ある意味当然の話に思われるところです。というのも、これまでAppleが成功を収めて来た商品、サービスは基本オリジナルのものだったところ、Apple Payはその逆、というか最後発なのですから。同様の決済サービスを先行して展開している小売各社とは競合して拒絶されるのも当たり前だし、大半の利用者もよほどの利点が無ければわざわざ移行しようとはしないでしょう。Appleと言えども、それなりの実力・規模もある競合を相手取って、それも一からのシェア奪取ですから、むしろ失敗する方が普通なのです。

加えて、Apple Payは原則として最新版のiPhoneからしか使えない、すなわち利用者が著しく限定される欠点があるのですし、小売業者にとってはあまりに中途半端、わざわざシステムを改修してまで対応させる理由に乏しいだろう事も明らかなわけで。Apple watchも対応する予定ではありますが、それにしたところで状況はほとんど変わらないものと思われるところです。

元々、従来の小売決済サービスを巡っては、手数料等の負担コストに対する業者と利用者双方の不満が強かった事に加え、類似サービスの乱立による弊害も目立つようになり、またクレジットカードや小売チェーンのシステム周りで深刻な顧客情報の漏洩が相次ぐなど、決済システム全体に色々と問題が積み上がり、改革の要求が高まっていたところです。Apple Payが宣伝文句に謳うように、決済に関する余分なコストを下げつつ利便性とセキュリティを改善するような統一的なサービスの出現が望まれてはいるのでしょうし、それが実際に生まれ、普及するのであれば、競争はあるにせよ、概ね歓迎される事でしょう。

が、実際のところ、Apple Payがその要件を満たしているかというと、そうではないというか、むしろ満たしている点がないのですね。手数料面では、ある程度自腹を切って普及を図る必要のある当面はともかくとして、Appleのこれまでのサービスの運営のやり方から見て将来支配的なシェアを握った後にはそれこそ過剰な位にまで上げてくるだろう事は確実に思われるし、iPhoneユーザ限定につき決済サービスのデファクトになる事は元より不可能、セキュリティ面でもiCloudで盛大にやらかして信用を失ったところでもあります。

そもそもAppleは、事業構造からしてもロイヤリティの高いユーザだけにフォーカスしてそれ以外はさっぱり切り捨てて来たわけです。決済システムのような、誰もが使うような一般向けのユニバーサルなサービスには本質的に向いてない、というより真逆な性質の会社な筈なんですよね。

結局、AppleはやはりAppleで閉じてるというか、Appleのエコシステム圏内限定のサービスとしてしか成立しようもないように思われるわけで、決済システムもその例外ではないのだろうと。最初からそれは想定されていて、閉じた範囲内の運用でも十分に規模もニーズもあり、多数のユーザーの常用が見込まれて採算も合う、というのならいいんでしょうけど、、、Apple watchの宣伝の仕方とか、諸々からしてどう見てもそうじゃない風なのがなんとも。

携帯決済が十分に普及しきった日本国内には関係ない話、混乱するのも欧米限定の話だろうとは思うんですが、もしSoftbankあたりが暴走したりして、このノリで国内も引っ掻き回されるような事になったら、とか思うだけでうんざりします。Samsung程ではなくとも、色々と頭打ちになりつつある事に加えて後方からの突き上げが厳しいのもあって焦燥感は相当にあるんでしょうけど、無理なものは無理なわけですから、乱心するのも程々にして頂きたいものです。

Apple Pay Is Disabled by Rite Aid and CVS as a Rival Makes Plans

[関連記事 [biz] iPhone6で不採用のSapphire GlassメーカーGT Advanced倒産]
[関連記事 [IT] iWatch発表。無難な仕様、しかし使い勝手が良くない懸念あり] 

10/31/2014

[pol] 追加緩和決定、無謀の果てに浮かび上がる破滅

ここで追加緩和ですか・・・。増税、またそれに付随するコスト主導型の物価高から来る需要縮小を主要因にした経済低迷には何ら効果がある筈もなく、そもそも只でさえ資金は行き場がない程に余っているところ、得られる効果はぶっちゃけ株・債権の価格吊り上げ位のもの、実体経済に対してはおよそ無意味だと思われるわけで。名目はデフレ対策だそうですが、今更何寝言を言ってんのかって話です。GPIFのリスク資産運用比率引き上げの件同様、このままだと増税を見送らざるを得なくなるから、さしあたり今だけでも底上げしようって事なんでしょうけれども。

FRBの緩和終了とまさに真逆の対照的な決定ですが、これでいよいよ円の底が抜けるのかどうか。そこまで行かずとも貿易赤字がさらに膨らみ、輸入に依存するあれこれがさらに値上がりもして国内需要はそれだけ縮小もするだろうし、国内経済は無論、中長期的な安定とか均衡とか、先の事はまとめて完全に捨てた恰好になりました。従って、現状の問題を解決するどころかさらに悪化させる可能性の方が高いようにも思われる、控えめに言っても悪手だろう決定なわけです。

元より、単に都合のいい願望を抱いて安直にも不備だらけで実績もない手に賭けて一発逆転の大博打に出たら案の定外れでした、けど取り返しは付きません、ってだけの話です。賭けに負けた時点でどう転んでも先が無い事には変わりない、とはいえ、そう死に急ぐ事もなかろうと思うし、早めに負け分の清算をした方が損失は抑えられるだろうとも思うんですけれども、膨れ上がる諸々を前にもう取り繕う事すら出来なくなったって事なんでしょうか。現実として日銀には他に取りうる手がないわけですが。

ともあれ、これで一応株価は上昇し、当面はいくつかの指標を名目上底上げ出来る可能性は高まりました。この一事を以って、過去の事実、現在の実体、予想される先行き、その全てに目を瞑りつつ、景気に回復傾向が見られる、だとか強弁してさらに増税を重ねるんでしょう。そしてまた、ここ最近繰り広げられたところの、物価上昇と需要縮小、それが規模を拡大して再生されるわけです。

その辺の見通しについては、絶望的、と言っていいんでしょう。とはいえ、一番肝心な、というか結局は全てが集約されるところの各種基幹産業はじめ実体経済の成長については、勇ましい掛け声とは真逆に、その実現を図るどころか逆に大きく縮減させる措置しか実施してこなかったのだから、現状もむしろ当然の帰結と言うべきものとしか思えないわけで。今更あれこれ騒ぐ話でもないし、実際のところ、この惨状を見ても何も感じなくなってしまいました。本当の絶望は無関心に転じる、ということなんでしょうか。何にせよ、どうしようもないのですから、どう捉え、どう振る舞おうとも何の問題もないでしょう。どうとでもなればいいのです。例え、その先に待つものが破滅であろうとも。

日銀、追加緩和を決定 資金供給10兆~20兆円拡大 賛成5、反対4で決定


[関連記事 [biz] 消費税増税。税抜き表示が最悪に不便かつ不快]

[関連記事 [biz law] 賃金上昇が中小に波及・継続するとかいう寝言]

[関連記事 [law] 消費税倍増法の衆院可決に]

10/30/2014

[law] 最高裁にて政務調査費に伴う全領収書の提出義務対象認定

地方議会に始まり、このところ閣僚ら有力国会議員にも政治資金周りの不正が相次いで発覚し、あっちもこっちも終わっている感しかしない国内政界。もとより既に希望も何も感じられず、絶望のち無関心を決め込んでいた身としては、いっそ全員死んでしまえ、位の冷めた感想とも言えない虚無的な侮蔑を抱くだけでした。どうせ大半は諸々の法的な保護を盾に詭弁を弄し続け、殆ど具体的な責任の追求も応報もないままに議員や首長であり続けるのだろう、と思っていたのです。いや、今もなお思っています。

が、このタイミングで最高裁が、政務調査費における小額領収書の提出・開示義務を認める判決を出したとか。急いで本文を確認してみると、その主旨は、当該領収書類の提出義務は、政治家の調査研究活動の自由をある程度犠牲にしてでも使途や支出先等の透明性を確保し、不正を防止する事を優先したものであり、従ってそれらの領収書類は(開示対象外となる)”専ら文書の所持者の用に供するための文書”にはあたらず、開示対象となる、としています。そして、法令上は提出の対象外となっている一万円以下の小額領収書は、その額の小ささから、高額領収書よりも更に政治活動として秘匿する必要性に乏しく、またその提出除外規定についても、議員や議長の、写し作成等事務処理上の負担に配慮して提出を免除されているに過ぎないものにつき、本来は開示・提出の対象である、というのです。

正直、驚きました。本判決は岡山県の県議会を対象とするものですが、地方自治法の規定を解釈するものでもあるし、その判旨は一般的かつ明確です。従って、政務調査費に関する領収書について同様の規定を設けている他の自治体や国政には当然に適用されるだろうし、それ以外の公金の支出、用途や支出先の透明性を求められる類の支出のうち、特に保護されているもの以外のおよそ全てにあてはまるだろうものなわけです。議員周りは無論として、一般公務員の諸々についても対象に含まれる得るだろう、ということで、その影響の範囲は凄いことになるのだろうな、と。他にも、判決の主旨からして、政治資金の収支報告や小額献金も普通に当てはまり得る帰結として、今後は細かい領収書類の全てが開示を求められる可能性も示唆されるわけですし。

無論、仮にも公金を支出し、また公的立場の人間や組織が金銭を受け取るからには、額の多寡によらず全て適切である事が絶対に必要で、その証明は当然なされていて然るべきものなのですから、本来であれば当然の話と言えるわけです。が、残念ながらというか、この種の公金の出入に関してその証明を免除する類の例外は、特に小額の場合に広く認められているところ、おそらくはその全てが不正の温床になる、というかなっているだろう事は、兵庫県議会の件だけを見てもその辺は推して知るべしだし、というか過去の例には暇無く、また挙げるまでもなくほとんど周知の事実とも言える惨状なわけで。既にどっぷり手を染めてしまった多くの議員や公務員諸氏は、真っ青になるどころの話じゃないでしょうね。だからって自業自得だしもうどうしようもないわけですが。

ともあれ、流石に最高裁で明確な判断がなされた以上、自治体も公的機関も、およそ公的な組織には運用の方は速やかに転換して合わせる以外の選択肢はなく、潔く条例改正するなり、そうなると破滅するやっちまってた人たちが抵抗して即訴訟を起こされたり居直ったり、とかいう残念な事も起こりうるのでしょう。

事実、このところのあれこれの当事者は、国会議員であれ県会議員であれ、皆見苦しくも開き直ったり逃亡したり、およそ考えうる最悪な振る舞いしかしていないわけですし。何か国会では与党も野党も皆クロだからって首相周りは開き直ってしまったようで、何とも象徴的なのはとりわけ残念なわけですが。。。それが許されると思ってるのか、そうするしかないのか。いずれにせよ正気ではありませんし、到底受け入れられる筈もありません。それならそれで、今回の判決の後押しもある事ですし、隅から隅まで存分にガサ入れを受けてのち相応の罰を喰らうか、もしくは逃げ切るかしかないんでしょう。

しかし仮にも国政の担い手、その主導的立場の人間が揃って不適格が理由で機能不全に陥るとか、何とも不毛な話です。出来れば潔く自首して頂きたいところですけれども、それが可能な位ならそもそもそんな犯罪犯しませんよね。ええ。もとより、その種の期待を抱けた時代はもう遠く昔に過ぎ去りました。粛々と強制措置に付されればそれでいいし、そうするしかないんだろう、と諦めるより他ないのでしょうか。代わりはいない、というか代わりになりうる人間も同じ穴の狢なんでしょうから、それでどうなるとも思いませんけど、せめて報いだけは受けて、多少の慰め位にはなって頂きたいところですが、さて。

政務活動費 1万円以下の支出の開示命じる

10/26/2014

[note] ubuntu14.10導入

Ubuntuの最新版14.10がリリースされました。コードネームはUtopic Unicorn、理想的な一角馬さんです。その名前だけ聞くと何か凄そうですが、その実は何という事もありません。リリースノートを見れば一目瞭然、今回のアップデートはopenstackとかサーバー関係が中心というか殆ど、デスクトップ版としてはカーネルが更新されて新しいハードに幾つか対応したのと多少パフォーマンスが上がった程度の、14.04LTSから実質変わっていないマイナーチェンジなのです。

なので、デスクトップ版ユーザにしてみれば14.04LTSからアップグレードする理由はほぼ無いのです。が、変化に乏しいという事は、一方で通常懸念されるようなアップデートに伴うリスクもそれだけ小さいわけです。実際数日様子見をしても特に致命的なクレームが上がってる様子もありませんでした。というわけで、暇が出来た時に気軽にホイホイと上げてしまったのです。

対象はあまり使っていないノートPCとサーバの各一台、いずれも14.04LTSからのアップグレードインストールです。で、結果から言えば、いずれも特に問題なく成功しました。ただ、ノートPCの方はupdate-managerからのアップデートがすんなり完了したんですけれども、サーバの方は "アップグレード作業を見積もれません"云々とかいうエラーメッセージが出てupdate-managerが止まってしまうのです。色々と手動で入れてるパッケージがまずかったんでしょうけど、如何ともし難い、というわけでコンソールからのコマンド入力によるアップグレードです。大した話ではありませんが、一応以下その手順をメモ。

まずは下記コマンド。

$ sudo apt-get upgrade

すると、途中で下記のようなエラーが出てこれまた止まります。

(前略)
dpkg: error processing package brltty ...
(後略)

どうも依存関係がおかしな事になっているようです。update-managerが止まったのもこの辺が原因でしょうか。というわけでworkaround。その辺を一旦リセットします。

$ sudo apt-get upgrade initscripts

今度は一応最後まで完了します。が、保留が460程残ったままになります。再びworkaround。色々調べていると、そういえば、とディストリビューション全体のアップグレードは別のコマンドが用意されていた事を思い出しました。というわけで今更ながらにそちらを実行。最初からこちらをやっておけば良かったのかもしれませんが、後の祭りです。

$ sudo apt-get dist-upgrade

途中幾つか手動で導入したパッケージをアップグレードするか聞かれるのに適当に応答しつつ待つことしばし、保留分も完了。あと、不要になったパッケージのクリーンアップをして終了です。

$ sudo  apt-get autoremove

で、再起動すればOK。何かログイン画面の背景が真っ白になっていたり、ログイン後しばらく画面が乱れたりして少し冷や汗も掻きかけましたが、大きな問題はなく、成功と言っていいでしょう。

なお、ノートPCの方はログイン画面も特に変わりなく、ログイン後の画面乱れも無かったのですが・・・何が違うのでしょうか。謎です。まあ、長い事色々使って来ていれば色々と不整合が入るのも仕方ない、ということですか、と無理やり納得します。

当然ながら、見た目も使い心地も殆ど変わりません。cairo-dockのバー等のデザインに若干変更があった位でしょうか。ibusの切り替えのタイミングとかが若干変わった気もしますが、おそらく設定をいじれば元に戻るでしょう。

というわけで、特段の問題もなく終了。味気ないと言うことも出来るでしょうけれども、OSが安定しているのはいいことです。これからも引き続きこの調子でお願いしたいところですね。というわけでこれでおしまい。

[関連記事 [note] ubuntu 14.04LTS導入]

10/23/2014

[biz] Uber登録ドライバーのストライキ発生

TNC大手のUber社でストライキが発生し、NYを含めた米国内の複数の都市で同社のドライバーのうちユニオン所属者が一斉に通信を切ってサービス停止の上、オフィスに押しかけてるんだそうで。

原因は料金値下げ、それに伴う収入低下への不満。 その撤回を求めてのストだそうです。この値下げ、正確には七月から実施されていた割引キャンペーンを恒久化するって話で、実態的には現状維持なんだそうです。が、ドライバーからすれば将来の収入が減るように感じた、という事ですね。で、ドライバー達がUberに所属するに際して車両調達等に投じた資金の回収が出来ないとか何とか。

これ、どう見ても無意味な自殺行為としか見えないのです。一体何をやってるんだろうと。

ミクロな事から言えば、問題のドライバーが不満を抱いたところの将来の収入減については、料金を元に戻す、すなわち上げた場合に起こるだろう利用客の減少等、負の影響を考慮していないわけで。それに、ドライバーからすればUberは現時点では脱退も自由、他社との掛け持ちすら可能という事なのだから、Uber社の待遇に不満があるなら他社へ移るなり個人タクシーになるなりすればいいわけです。

労組によれば、ドライバーにはアフガンやイラクから帰ってきた退役軍人が多く、その大半は技能等が無いために他の仕事に就くことが難しい、等とも説明されているようですが、であればそのような競争力の低い労働者が買い叩かれて低賃金になるのは尚更当然の成り行きと言えてしまうでしょうし。ストライキなどすれば解雇されて終わりだと思うんですが。。。

そもそも、Uberは最大手ではあっても一プレイヤーに過ぎず、支配的なシェアを確立したわけでもないし、また法的な保護があるわけでもないのです。というかむしろ多方面からの排除圧力に晒される極めて危うい立場にあって、その危うい立場をさらにLyft等の競合と奪い合いつつ、勢力を拡大する事によってデファクト的にTNC独自のポジションを確立し、社会に認容させようという試みの途上にあるのであって。

そして、TNCであるが故の強み、すなわち配車やプライシングの最適性といったサービス面のメリットが有効に働くのは、あくまで従来型のタクシー業者との競争に限定されます。システムが殆ど同じで、サービスのレベルも変わらないTNC同業他社との競争にあっては、どうしたって利用料金の競争にしかなり得ない事は最初から分かり切った話なのです。なら料金がコストカットの限界まで下がるか、法規制が入るかするまで値下げ合戦が続くのもまた当然の成り行きなわけです。

で、過去の例を思い起こすまでもなく、タクシー業のような特殊技能が要求されない、本来的に参入が容易な業種でその規律を完全に自由競争に任せてしまうと、単価が本当に限界まで下がってしまう結果、共倒れやらドライバーの過労に伴う事故とかが頻発するようになってしまうというのも何処でも同じなのであって。公共交通機関でそれはまずいですから、通常タクシーの料金と台数は規制の対象になっているわけです。

しかるに、TNCは需要に応じた料金の動的な変更をその特色とするわけですが、そんなコスト面の競争原理そのものをコンセプトにしたも同然なシステムを採った時点で、競合が発生すれば即価格競争に突入するのも当たり前の話でしょうと。それだけならまだしも、その料金変更が原因で組織が機能不全を起こすとか、自己矛盾もいいところです。挙句只でさえ危うい立場をさらに悪くして、もう何がしたいのと。そんな最初から想定されるようなトラブル、システム上で予防しておけよと。自滅というのも馬鹿馬鹿しい程のあまりの杜撰さ、阿呆さ加減に眩暈がするのです。

この体たらくを見る限り、おそらくはもうこの業界自体、自由にやらせても先がないんじゃないでしょうか。米国外の諸都市のように違法として最初から排除するのならそれでいいんでしょうけれども、許容していくというのなら、早期に法規制をかける必要があるものと思われるところです。といっても、求められるだろう要件を考慮すれば、従来のタクシー規制とあまり変わらない、タクシー業界のネット予約対応的なものに落ち着きそうな気もしますが。そうだとすれば、TNC自体、結局はそう美味い話なんて無かった、的な失敗パターンに終わってしまうんでしょうか。やれやれです。

Uber Drivers Across The Country Are Protesting Today — Here's Why

[関連記事 [biz] Uber白タク摘発。社会に拒絶されるTNCの自業自得]
[関連記事 [biz] ドイツAmazonとAir France、2つの対照的なストライキ]

10/20/2014

[biz] IBMが半導体事業を売却

何か今更な気もしますが、IBMが半導体部門を丸ごと売却しちゃうんだそうです。売却と言っても超赤字部門を引き取ってもらう形だからか、対価がマイナスになって$1.5billion、約1600億ほど先方に支払うんだそうで、その一見して奇妙な取引が注目を集めているようですが。

その引き取り先はGlobalfoundries社。AMDから分社した名前の通りの半導体生産会社で、売上高は5000億程度と普通に大手ですね。対して今回の買収の中心となるIBM Microelectronicsの売上高は2000億弱程度で、こちらの方が小さいものの、その他関連部門も合わせればその差はそれほど圧倒的というわけでもなく、一応吸収という形ではありますが実質的には合併に近いものと言えるでしょう。

そして、IBMの半導体部門はここのところ年500億程度の赤字を垂れ流す不採算事業でしたから、合併に伴うリストラその他諸費用と当面の損失を資産と差し引きした補填額がその額になった、という事なんでしょうか。あと、これから10年ほどGlobalfoundries社がIBMのサプライヤーになる契約も結ばれたそうなので、その分も計算に入ってるのかもしれません。であれば相当にダイナミックな組織再編処理で、その辺は現代的な大規模組織経営の先駆者たるIBMの面目躍如と言えなくもない気がしなくもない感じでしょうか。

ともあれ。ここ数年、サービス特化型へ転換すべく、PCはじめハードウェアの生産事業から次々と撤退し続け、世界的な組織再編と共に大規模なリストラも連発して来たIBMですが、これで一連の転換作業もほぼ完了ですかね。一応ハイエンドのサーバ事業は残っていますけれども、これは外注が難しい事業ですし恐らく対象外でしょうから。

さて今後は、というと、大規模なITサービス事業者が内製を進めるトレンドのせいか、肝心のITサービスその他の継続事業のパフォーマンスが今ひとつで、縮小気味なのが気がかりではあります。それでもとりあえず利益はそこそこ以上あるのだし、早晩どうこうなる筈もないでしょうけれども、本当の危機を迎える前にイノベーションの元祖たる真価を発揮して新しいコア事業を立ち上げる事が出来るのか、それともこのまま時代の潮流に流されて縮小し、その他大勢と大差ない、単なるSIerとして埋もれていくのか。これから数年が転換点になるのか、あるいは既に過ぎているのかもしれませんけれども、頭の片隅に置く程度には注目したいところなのです。

しかし今回のIBMの四半期決算、本件を別にしても酷いです。本件支払い分の1600億以外にも評価損が3000億以上あるらしいし営業も減益だしで、マジでいいところなし。顧客の需要が減った、業界の構造が変わった、だとか白旗宣言じみた泣き言も言ってるようで、ITサービス事業自体も割とヤバいのかもしれません。大体同様な感じのHPとかともあわせて見れば業界全体が本格的な縮小フェーズに入ったようにも思えるし、であれば一連の転換とは別にITサービス事業のリストラも不可避になりそうです。仕方のないこととはいえ、難儀ですねえ。

IBM to Pay $1.5 Billion to Shed Its Chip Division

[関連記事 [IT biz] HPリストラ積み増し16000人]
[関連記事 [biz] 米IBMの高齢社員向け早期退職プラン]

[pol] 適正無視の女性優遇人事失敗の自明

さすがにこれはどうかと。いや、金絡みで辞任に追い込まれた閣僚2人の後任人事の件ですけれども、法相の上川氏というのが全く理解出来ないのです。

元々本件は適正を軽視した、単なる女性優遇の安直な人事が招いた失態である事は疑いようのないところなわけで。いや、女性の登用自体は別にいいのです。いいのですが、問題の担当がよりによって経産、法務と、内閣の中でも特に専門性が高く、かつ高度な実務能力が必須になるポジションでしょう。

そこに門外漢とか諸々能力の足りない人物だとかを女性だからというだけで任命したら高確率で失敗するのは目に見えてる、というかまさにその失敗した結果として今の惨状があるわけですよ。なのにまた畑違いの上川氏を、まず間違いなく氏が女性であるが故に任命するとか、過ちを反省するどころかまんま繰り返してるだけなわけで、到底正気とは思えないのです。

女性の社会進出、その推奨自体は誠に結構な話ですが、男性だろうが女性だろうが、それなりの職責を担うにあたっては当然ながらそれ相応の能力を備える事が絶対に必要なのであって。結局のところ、どのような組織でも、それなり以上に重要なポジションには性別を問わず最高の適正・能力を備えた人物が就かなければ立ち行かないものです。というより、往々にしてそれでもなお足りない位なわけで。さらにそこに軽視や誤りが入れば、自由競争環境下では容赦なく淘汰されるだけだし、競争原理が直接作用しない環境であっても、今回のようにおよそ当然に失敗して報いを受ける帰結に至る事は自明の理というものです。

本来、女性の社会進出を推奨するのなら、その手段は、まず第一に進出するに足るだけの能力を備えた女性を十分に増やすもの、すなわち育成を主とする政策でなければならない筈です。それこそ幼少時から各分野のエキスパートを育成するだとか。政府が実施しているような、不当な人事を排除する類の登用推奨策等はその次、補助的なものでしかあり得ません。それを時間やコストがかかるからと基礎をすっ飛ばして形だけを整えようとしたのがそもそもの決定的な間違いなのであって、現状行われている政策は結局のところ実質的に単なる女性優遇に過ぎません。社会に成長をもたらすどころか、不適格な人材配置によって組織を機能不全に陥らせる危険すらある、本末転倒そのものであって極めて不適切な政策と言う他ないわけです。

そう思って冷ややかに眺めていれば案の定大炎上して、あまりの阿呆さ加減に呆れ果てていたところに今回の後任人事でまさかの上川氏ですよ。もはや言葉も冷笑も蔑すんだ目すらもありませんね。

例によって民間でも、某IT系とか自動車グループだとかのいつものメンツあたりで、女性登用が数値目標を定める形で進められているという話があるわけですが・・・流石にここまで適正無視な人事は自殺行為とわかるでしょうからまだマシにはなるんでしょうけれども、ちょっと前なら旧三洋とかの酷い例もあるし、第一政府がここまでやってるんだから、と勢いで多少なりとやってしまうケースもあるだろうわけで。ちょっと洒落になりません。どうしてくれるんでしょう。何も考えてないんでしょうけど、そうであれば尚更に罪深いと思うのです。

経産相に宮沢氏、法相に上川氏内定

10/17/2014

[IT biz] Twitpicとlivedoor reader、相次ぐ軽率な終了宣言とその撤回・再撤回

突如サービス終了を発表し、その後引き取り手が見つかったとの公式ツイートを出したきり謎の沈黙を続けていたTwitpicですが、結局終了で確定したそうです。新しい終了予定日は10/25で、丁度当初の予定から一ヶ月遅れになるとの事。

件の継続宣言ツイート自体が怪しすぎましたから、今更再撤回されたところで驚いた人はそんなに多くなかったかもしれませんが、しかし傍迷惑な。非上場ですから市場絡みの思惑は基本関係ないだろうし、身売り先を探していたのは事実、恐らくは犯罪性がある話では無く、当人にも悪気は無いのかもしれませんけれども、ユーザーにしてみれば堪ったものではありません。その手のクリティカルな話は決定にせよ撤回にせよそう軽々しく発表するべきではないし、発表するにしても未確定ならそうとはじめから伝えておくべきだったのに、全て変更余地の無い確定事項であるかのようにリリースしたあたりはどうしたって擁護出来ないのです。

こんな事では信用も何もあったものではありませんから、今回の発表にしたところでこれからまた覆されるかも、と懸念する向きも少なくはないでしょう。しかも終了期日まで一週間程しかないし、ユーザにとっては面倒と迷惑が増えただけの事でした。困ったものです。

そういえば、殆ど時を同じくして終了を宣言した国内向けRSSリーダサービスのlivedoor readerも終了予定を撤回したんでしたっけ。サービスが継続される事自体はユーザからすれば歓迎すべき事なんでしょうけれども、既に止むなしと判断して移行済みのユーザには噴飯ものでしょう。大体継続についても詳細は検討中とか曖昧な事を言っていますし、仮にこのまま継続するにしても、そんな適当な事ではこれからの継続性にも懐疑的にならざるを得ず、信用を失うユーザは多数に上っただろうところ、利用者数の大幅な減少も避けられないでしょう。もっとも、そもそも今回の一連の措置の目的が、ユーザ数を減らす事によるリソースの節約だった可能性もあり得ないではないでしょうけれども、それはそれで何のためにサービスを運営しているのかわからない、という事になるわけです。いずれにしろ、妥当な判断とは言い難く思われます。

Twitpicにしろ、livedoor readerにしろ、その軽率な発表、またその方法の不適切さについては、ユーザにかかる迷惑、負担というのを軽んじ、あるいは最初から考慮すらしていないように思われるわけで。その時点で各社とも、そもそもその種のサービスを営業する資格に欠けているんじゃないか、とも。

公私の別を問わずおよそ規制が存在せず、数撃っても当たらない位に生成消滅のサイクルも極めて短い環境にあって、事業の構造上こういう不適切な面は一定程度殆ど不可避的に付随するのは致し方の無い事なのかもしれません。けれども、一ユーザの立場からすれば迷惑千万には違いないし、どうにか改善出来ないものか、とため息のひとつも吐きたくなる次第なのです。といって、信用性、継続性が致命的に低いというクラウドの欠点が顕在化しただけの話とも言えるわけで、利用を控える以外に本質的に意味のある対策の取りようもないんでしょうけれどもね。

Unable to find a suitor, Twitpic is shutting down on October 25th
【重要】 サービス終了撤回のお知らせ

[関連記事 [IT biz] Twitpic、Twitterに商標申請放棄を迫られ閉鎖]
[関連記事 [IT biz] Google Reader、サービス廃止に]

10/14/2014

[biz] Uber白タク摘発。社会に拒絶されるTNCの自業自得

色々とお騒がせなTNC、その代表格のUber社ですが。今度はオランダで逮捕者が出たんだそうです。容疑はタクシーの無許可営業ですね。先日リリースされたばかりのUberPOPを使って客を取ったドライバー4人が、客に扮した当局員の囮捜査で捕まったんだとか。ドライバー達はそれぞれ4200ユーロ(約57万)の罰金を科されたとの事。

囮捜査なんて面倒な作業を常にやってるとは思えませんし、おそらくは正規タクシー業者とかからの告発を受けてガサ入れしてみたら入れ食いだった、とかそういう事なんでしょう。米国とカナダの一部以外ではほぼ全地域で既存のタクシー業規制と軋轢を起こして袋叩き的な排斥を受け、とりわけドイツやイギリス等欧州で訴訟を繰り返して連敗続きの同社ですけれども、それは基本的にライセンスを受けたドライバーによるもので、争点は料金体系の適法性等の細部に過ぎず、まだ正当性を主張する余地が認められるものでした。本件は個々のドライバーからして違法な白タクだったものなわけで、それもほぼ同時に4件もとあっては言い訳のしようもありません。

同社としては、色々と派手にコミットメントしてしまった手前、米国外でも何とか現状の行き詰まりを打開したい焦りがあるんでしょうけれども、言うまでもなくこれは論外です。早急にUberPOPの停止、及び違法営業の防止策の導入が求められるところです。本件が同社サービスの違法性を印象付ける結果、各国での係争において同社にはより不利な判断が下される可能性が高くなるだろう、とも予想されます。その点からしても、少なくとも違法行為の予防を怠ったのは不味かったと言うべきでしょうね。

もちろん白タクなんてUberに関係なく何処にでもいるものだし、その観点からは特に同社を取り上げて非難するべきものでもない、と言えなくもないんですけれども、正規の事業者として公にサービスを展開しようとする以上、当然そんな言い訳は通じないわけです。さて今回はどう説明するんでしょうか。個々のドライバーが勝手にやった事だから同社に責任はない、とか言いそうですが、さて。

ところでこのUber、法的な問題はともかく、社会的には、また消費者にとってはどうなのか、少し前に気になって調べてみたんです。具体的には、従来のタクシーと比べてのコスト面のメリットの有無、またその程度ですね。ネットで手配、決済、評価が出来る点でサービス面で一定のメリットがある事は明らかでしたけれども、そちらは既存のタクシー業者でもある程度やろうと思えば真似出来ますから、決定的な相違点である筈なところの、個人所有リソースの活用によるコスト低減、その効果がどの程度あるのかが気になったわけです。

で、その結果なんですけれども。ぶっちゃけ殆ど違いがない、どころか逆に普通のタクシーの方が安い事もある位なのです。NYだと、料金体系は基本のUberXで基本料金$3に$0.26/分と$2.15/マイルに対し、NYC Taxi cabsでは基本料金$2.5に$0.4/分と$2.0/マイル。例えばJFK国際空港からgrand central terminalまでのルートだと、UberXの$60に対し後者では$45で、逆に普通のタクシーの方が安い見積りが出るのです。他の都市でも似たような感じ。


そりゃ、Uberのドライバーはそれなりに高給が期待出来ると謳われているのだし、自動車を走らせるコスト自体それなりに大きいのだから、そんな極端に安いわけはないだろう、とは思っていましたけれども、流石にこれはどうなの、と。加えて、Uberのドライバーは訓練・教育が不十分なケースも多く、従ってサービス面でもプロのタクシードライバーの平均には届かないと言われ、ドライバーによる障害事件等も頻発している有様なわけで。利用者側の、すなわち社会的なメリットが薄い以上、既存タクシー業界を潰してまで受け入れる積極的な理由に欠けるように見えるわけです。これでは各国で排斥に遭うのも当然でしょう。

そこに、今回の件ですよ。もはや単なるぼったくりの白タクと変わりません。サービス面はどうしようもないにしても、せめてコスト面だけでも何とかしておけよ、と。といって、タクシー業規制にはその料金体系も含まれるのだから、最初からそのアプローチには構造的な無理があったと言うべきなのかもしれません。むしろ、既存タクシー業者を片端から買収して、規制を骨抜きにした後に法改正を迫るような進め方を取る必要があったのかも、と思う次第なのです。今となっては後の祭りですけれどもね。'internet of things'の担い手として期待する向きも多々ある同社ですけれども、馬鹿馬鹿しすぎて冷笑すら浮かばないのですよ。

Dutch police arrest four Uber drivers in Amsterdam

10/11/2014

[biz] 大手小売チェーンに相次ぐ顧客情報漏洩、不信の行く先

米国中心に顧客情報流出が相次ぐ昨今、ディスカウントストア大手のKmartでレジ等の店頭決済システムがハックされて、クレジットカードやデビッドカード等決済情報の大量流出が発生したんだそうで。

被害の対象範囲は、九月頃に同店を利用した顧客全て。時々程度を含めて、それなりに利用している人は全部という事ですね。一応本件では住所等の会員情報は漏れていないと発表されてはいますが、一番問題の決済情報が漏れている時点で、あまり慰めにもならない感じでしょうか。

それ自体は、規模はともかくとしてよくある話です。ただ、ここ最近のこの種のハッキングの発生頻度がちょっと洒落になっていない感じがするのですね。ここ数ヶ月の、小売周りの代表的な例だけでも、ホームセンター大手のHome Depotとか、フードチェーンのDaily Queenとか、普通に数千万人の消費者が対象になる事件が相次いでいるわけです。報道によれば、その他大小合わせて1000件以上の事業者が同種のマルウェアの攻撃を受けたんだとか。

もちろん、それぞれの案件ごとに被害の範囲、程度、態様は異なりますが、クレジットカード等の決済関連の情報が被害に遭っている点は概ね共通しています。通常この種の被害が発生した場合、被害は信販会社が保証した上でカード類は再発行となるわけですが、こんな頻度でその都度それを行うとなると、信販システム自体が機能不全になる可能性が懸念されるのですね。

実際、Home DepotとかKmartレベルの大手になると、両方で被害対象になり、したがって再発行等の手続きを強いられた消費者は相当にいた筈です。毎年程度ならまだしも、数ヶ月毎に交換するとなると、そのコストは消費者側は当然として、信販会社側にとっても洒落にならないんじゃないでしょうか。

小売周りだけでもこの事態ですが、これに加えて、JP Morganの件やら金融機関でも同様の、あるいはそれ以上に深刻な漏洩が相次いでいる事も考慮すれば、下手をしなくても、カードの再発行や、口座の変更、また不正決済のチェックと場合によっては民事刑事の法的手続きまで、それぞれに相当な手間のかかる膨大な後始末処理を、それこそ毎月連続で強いられるケースも少なくないものと想像されるわけです。流石にそこまで耐えられるシステムになっているのかなと。只でさえ実店舗主体の小売関連は業績不振気味なのですし。

それに、そういった後始末の負荷には何とか耐えられるとしても、個々の事業者、ひいては小売のシステム自体に対する消費者の信頼が大幅に毀損される事は避けられないでしょう。元々、実店舗での販売は、利用に際してその種の信用情報や個人情報等をネットワーク上に流さない、従ってその種の攻撃に晒されるリスクがネット販売より比較的低い点が主要なメリットの一つでもあったわけです。これが実店舗販売でも変わらないというのであれば、元々コスト面で有利なネット販売の相対的優位性はさらに高まる筈なのですね。で、元々ショールーム化等で劣勢が続く小売チェーンはさらに苦境が深まるだろう結論になるわけです。ここ数年、色々とネット系のメリットを取り込もうとして進めてきたシステムのネット化が裏目に出た一面、とも言えるかもしれません。

この業界が、この先何処に行き着くのか。単に業態の境界が曖昧になって競合化が強まった結果、消耗戦の末に疲弊と淘汰を繰り返すのか、それとも何処かで統一的な転換、おそらくはネットワーク的な構造への発展を果たすのか。もし後者であれば、あるいは、以前から多数主張され、しかし長らく仮想的なものともされてきたところの、流通システムのphysical internet的な構造への転換、それが現実のものになるのかもしれません。仮にそうなるとしても流石にそう一足飛びにはいかないでしょうけれども、ここまで兆候がはっきり見えるとなれば、多少なりと移行が進みそうだな、との印象も抱かされます。

とはいえ、もしそのように転換が進むとしても、そのきっかけが本件のような従来のシステムの機能不全のようなネガティブな要因による、というのはあまり歓迎出来るものではないし、その後についてもあまり良い未来が来そうな気がしないのがなんとも。受け皿になりそうな面々、amazonにしろuberにしろ、実体的には微妙ですし。全くの絶望というわけではないし、今の所はジリ貧というわけでもないのですが、色々と残念な感じなのです。

Kmart's registers were hacked, credit and debit card numbers at risk
Kmart and Dairy Queen Report Data Breach

[関連記事 [IT biz] JPMorgan情報漏洩の範囲拡大、その無反省と怠慢]
[関連記事 [IT] eBayがハックされユーザ情報漏洩、1億4千5百万件]
[関連記事 [biz law] MasterCardとVisaが不正侵入されユーザ情報が漏洩]

10/08/2014

[note] Newsfoxに一括マーク機能を追加

何だかんだで愛用しているFirefox用RSSリーダーアドオンのNewsfox。本格的にメインに据えるようになったのはその前に使っていたGoogle Readerがサービス終了した前後位からですから、それなりに長期間使っている事になりますね。で、これだけ長く使い続けると、お気に入りフラグを付けて保存した旧記事も、積もり積もってそれなりの量になるわけです。だからなのかは不明ですが、ここ最近、記事を読んでいる最中にフィードの更新が発生した場合に、時々その辺の保存データファイルが破損した旨が表示されてリセットがかかるようになったんです。

頻度は今のところ数週間に一度位とそんなに高くないし、フィード毎に保存データファイルが分けられている仕様もあって、破損したファイルに対応するサイト分の、それもお気に入りマークのデータだけが失われるだけだし、ちまちまと消えたマークを付けなおせば復旧出来るので、致命的というわけではないんですけれども。しかし、対象の記事数が数百数千のオーダーにもなると流石に一つ一つクリックし続けるのもダルいというか、正直やってられないんですね。これが一時的なものならまだしも、時間が経てばそれだけ数も、おそらくは発生頻度も増えるから、2次的に手間が増えるだろうものと予想されるわけで、尚更絶望感が募ります。

で、ここ数日の間に特にマーク数の多いサイトで破損が連発したのを機にいい加減もう無理だと見切りを付けまして。抜本的な対策、具体的にはアドオン自体に手を入れて、サイト毎に全記事に一括してマークを付け外しする機能を付ける事にしたんです。と言っても、アドオンの修正作業自体は、以前フリーズする不具合が出た時に経験がありますし、大した話ではないんですけれども。一応、その方法を以下にメモ。

機能の実装方法については、元々個々の記事のマークを付け外しするショートカットがあって、しかし全然使ってませんでしたので、これを表示されているリスト中の全記事に対して一括実行するものに置き換える形で実装することにしました。

まず、以前と同様にNewsfoxのモジュールを適当に用意した編集用フォルダにコピーしてバラします。なお*は其々の環境毎に違う筈なので適宜読み替えの事。

> cp ~/.mozilla/firefox/*.default/extensions/\{899DF1F8-2F43-4394-8315-37F6744E6319}.xpi .
> unzip \{899DF1F8-2F43-4394-8315-37F6744E6319}.xpi

解凍されたファイル中、今回いじる対象のインタフェース関数類はchrome/content/newsfox/ui.jsに定義されています。変更箇所とその内容は下記の通り。

<ui.js変更箇所>

Function handleKeyEvent(e)中、左矢印キー(キーコード37)の部分。arttreeが宣言されている箇所から下(現行バージョンでは1889行以下)を書き換えます。

-------------------------------------------------------------
     var arttree = document.getElementById("newsfox.articleTree");
     // var row = arttree.currentIndex;
     // var flag =gCollect.isFlagged(row);
     // gCollect.setFlagged(row, !flag);
     for (var i=0; i<gCollect.size i++)
          gCollect.setFlagged(i,1);
     artTreeInvalidate();
 }else{
     // markFlaggedUnread(false,true);
     for (var i=0; i<gCollect.size; i++)
          gCollect.setFlagged(i,0);
     artTreeInvalidate();
 }
-------------------------------------------------------------

保存して、一時ファイル等があれば消しておきます。しかるのちにモジュールの再作成。なお、どうも以前とは構成が変更されたようで、前回作成したnewsfox.jar等の中間モジュールの作成は不要です。

> zip -r \{899DF1F8-2F43-4394-8315-37F6744E6319}.xpi chrome chrome.manifest defaults install.rdf

出来上がったxpiファイルを元の場所(~/.mozilla/firefox/*.default/extensions/)に書き戻して終了。 Firefox及びNewsfoxを再起動すれば、Ctrl+Shift+左矢印で一括マーク付与、Ctrl+左矢印で一括マーク消去が出来るようになっている、筈。これでいつリセットがかかっても安心です。というわけで今回はこれでおしまい。

そういえば、Google Readerが終了した時に多くのユーザーの受け皿になっただろうlivedoor readerも近々終了しちゃうんでしたっけ。あの時は多少興味が惹かれつつもlivedoorの信用の無さから選択肢から外したんでした。当初の予想からすれば結構持った方だとも思いますが、やはり結局はこうなるのかと、至極腑に落ちた次第なのです。私は二度手間を避ける事が出来ましたが、再度放り出される形になったユーザー各位にはご愁傷様。そしてlivedoorから事実上単独の受け皿に指定されたfreedlyはどうなるか。アプリ経由で収益はそこそこある筈だし、代わりになる事業も無いからそう簡単に撤退はしないでしょうけれども、いまいち信用出来ないんですよね。つい最近もダウンとかしてましたし。うーん。やはりクラウド型は継続性に難があるから、結局長期的にはローカルアプリが安心という事でしょうか。であれば、Newsfoxともまだまだ長い付き合いになりそうです。

[関連記事 [note] Newsfoxが一部サイトの更新でフリーズ]

10/07/2014

[biz] iPhone6で不採用のSapphire GlassメーカーGT Advanced倒産

先日発売され、色々微妙な評価を受けながらもまずまずの売れ行きを見せているiPhone6ですが、その陰でひっそりと部品メーカーがご臨終になっていたそうです。

iPhone6で行われた変更は、大画面化とNFC位で、実際のところらしさを感じさせる売りは存在しない程度のものだったわけですが、事前の噂では極端な薄型化とベゼルの縮小を実現するため、従来のゴリラガラスに代わってサファイアガラスが導入される観測が盛んに行われていました。実際、試作等は熱心に行われていたようですし、他にめぼしいネタもなかったので、違和感を感じさせつつも、そこそこ信憑性が無い事も無く、という感じだったでしょうか。

が、ご存知の通り、これは結局不採用に終わり、従来通りGorilla Glassのままでした。理由は主に2つ、第1に高コストになる点、第2に衝撃耐性があまり高くない点がネックになったものと見られています。で、そのサファイアガラス。これのサプライヤであるところのGT Advanced社がこの程Chapter11の申請、すなわち破綻に追い込まれたそうで。この倒産のタイミングからして、不採用になったのが直接の原因だろう点には疑いを入れる余地はないんじゃないかと。

おそらくアップルの要望に応えようとして色々先行投資をしまくった挙句にあっさり切られ、その損失・負債に耐えられず即死、とかそういう事なんでしょうけれども、これはなかなかに呆れた話です。

大手企業の、しかもAppleのiPhoneの基幹部品を売り込もうというのだから、その立ち上げが博打になるのは当然の事です。しかしだとしても、只でさえ実績の薄い新素材の導入には尋常ではないリスクを伴うところ、この種のガラス部分は品質、性質が最もシビアに要求される割に製造難度は非常に高いわけです。少なくとも安易な楽観の類は許されず、しかもサファイアガラスが製品に絶対に必要な欠くべからざる要素というわけでもなく、少しでも不安が認識されれば即採用見送りにされて当然な程度のものなわけです。そんなリスクまみれの案件に、おそらくはポシャったら即倒産、というレベルの背水の陣で望んだだろう点については、流石にクレイジーだと思うのですよ。何なんでしょうその特攻感は。

いやまあ、最低でも年間数千万台から、とかいうクレイジーな生産規模ですから、最低限の生産設備というだけで普通のベンチャーには命がけな投資が必要になるのは当然なんですが、それは普通に考えて、要するにあれこれのリスクに耐えうる体力のある企業以外はそもそも挑戦する資格が無い案件、と理解すべきものなのではないかと。少なくとも、そんな生死を賭けて勝負、なんてノリで挑まれても、そんな事ではいつ潰れて供給が途絶えるかわかったもんじゃないし、あまりにリスクが高くて、逆にアップルの方が躊躇する理由になってしまったのでは、とも思う位です。

まあ、実際のところは外部からは不明だし、そもそも今となっては世間にはどうでもいい話に過ぎないわけですが。アップルとしては地雷を回避して安堵しているのか、それとも元々そのあたりは承知の上で、GT社は上手く使い捨てられただけなのか。外野からではどちらとも分かるわけもないのですけれども、ビジネスの世界は無情です。南無。しかし、ここまで極端でなくとも、他にも無数に、Appleに売り込もうと無理な投資をし、しかしあえなく失敗し、注目を浴びる事すらもなく散って逝った会社や事業が沢山あるんでしょう。本件GT Advancedは、株価的には一時とはいえ実利もあり、もう少しで手の届く所まで夢を見る事が出来たのだから、その点では幸運な方だったとも言えるのでしょう。何とも業の深い。

しかしGT社、Apple Watch向けの部品供給も担当する予定だった筈なんですが、それはどうするんでしょう。流石にAppleが何の手当ても無いままとは考えられませんし、代替を既に確保してあるのか、それかGT社の事業をAppleが買い取るのかな?うーん。

GT Advanced Files For Bankruptcy

10/03/2014

[IT biz] JPMorgan情報漏洩の範囲拡大、その無反省と怠慢

米銀行大手のJPMorgan Chaseで先日発覚した情報漏洩の件、被害範囲が当初の見積りから大幅に拡大され、個人7600万、小規模事業者700万件になる模様との事です。凄いですね。7月の発覚当初に発表された100万件というのは何だったのかと。しかもこれ銀行のアカウントですよ。

さらに酷いのが、サーバー90台が完全にハック(アドミニストレータ権限まで取得されて改竄され放題)された結果、同社内部の端末多数も改竄されてしまい、そのチェックと修正にはこれから数ヶ月が必要で、その間、すなわち今現在も、再侵入等が普通に可能な、セキュリティも何もあったものではない状態に置かれてしまってるんだとか。確かに、潜在的に全てのネットワーク接続された端末が汚染されたのなら、全部隔離する以外に防ぐ方法は無いわけですが、そうはなっていませんしね。クレイジーです。

本件自体、どう見ても終わっているんですけれども。確かJPMorganは去年もカード絡みでサイトがハックされて情報漏洩をやらかして、その際に監視体制も強化した事になっていた筈なんですが。。。何も出来ていなかったか、そもそも口だけで実際には何もしていなかったのか。まあ、今回のはアカウントを操作して直接口座から送金する類の処理は少なくともすぐに分かる程の規模ではなされなかった、との事ですから、単にその辺が対策の対象外だったって事なのかもしれませんね。であれば何ともお粗末な事です。

銀行といえどもITシステム自体は基本他のサービスと同じだし、脆弱性を突かれればハックされるのも当然ではあるのですが、本件は幾ら何でも酷すぎると思うのですよ。少しでも運用面で手当てがあれば、ここまでは到り得なかった筈なのですから。昨年からの経緯を鑑みても、改善が見込めるとは到底思えませんし、諦めて畳んだ方がいいんじゃないかと思う位です。まあ、自発的にどうこうせずとも、流石に顧客も流出するだろうし、集団訴訟等で被害の補償を迫られれば普通に傾きかねないんでしょうけどね。いやはや。

JPMorgan Chase Says More Than 76 Million Households Were Compromised in Cyberattack

JPMorgan warns 465,000 card users on data loss after cyber attack

9/30/2014

[pol] 欠伸が出るほど馬鹿馬鹿しい香港民主化デモ

学生を中心にした数万人が香港中心部をここ数日占拠してる件、いやほんとアホらしい話です。そんなもんに時間を割いてる自分は何だって話ですけれども、、、まあともかく。

香港特別行政区政府の首長であるところの行政長官、これの選挙が3年後の2017年に迫り、北京が保有する候補者指名権の撤廃とそれによる完全自由選挙の実施を求めて香港中心部で大規模なデモ活動が始まったのが数日前。基本的に平和なデモだったんですけれども、当局が催涙ガス等を使い出して、参加者は余計に反発してエスカレートしてるそうです。ガスへの防御手段として多くの参加者が傘を使ったため、'umbrella revolution'とか呼ぶ向きもあるそうですね。

それでも、実弾や袋叩きによる流血は起こっていないようで、中国にしては至極穏当、平和的なデモと言っていいんでしょう。それは結構な事なんですけれども。で、それが何になるの?と。要求の相手は北京政府ですが、北京政府には、そんな活動をどれだけされたところで、応じる理由は欠片も生じていないように見えるのです。

そもそも、この種のデモというのは、その実効性は最終的に参加者の持つ社会的影響力、その最たるものであるところの選挙権に帰着される、すなわち要求を飲まなければ次の選挙での落選をちらつかせる事で働く強制力を通常その拠り所とするのですが、香港の場合は長官の選任権を北京政府が保有しているために、それを完全に欠いてしまっているのですね。

従って、北京政府に自らの要求を容れさせようとするなら、何か他の手段、強制力の源泉が必要になるのですが・・・これが本当に何もない。参加者の大半は社会的地位が皆無に等しい学生達で、従って参加者個々人にも、その集団たるデモ隊にも、政治的影響力は元より備わっていません。これが参加者の中に、もしくはそのバックに香港経済界の重鎮が多数居るとかならまだしも、金融街を占拠する計画を立てている点からすれば、その種の人達はデモ参加者からすればむしろ敵であるところの政府側と見做しているようです。普通逆だろうと。

さらに、ここ数日の動きを見るに、デモ参加者には、それら基礎的な力の無さを補うための戦略も戦術も何も認められません。集まって、文字通りデモンストレーションを行っているだけです。おそらく指導者も無能なのでしょう。

これで何がどうなるというのか。ひたすら占拠を続け、社会システムにストレスを与えれば、その経済的損失を前にしてそのうち行政が音を上げるだろう、とでも思っているのでしょうか。もしそうなら、救い難い愚かしさと言わざるを得ません。周知の通り、北京政府はおそらく世界中で最も頑迷な組織です。仮に米国はじめ西側諸国が武力を背景に脅しをかけたとしても、この種の話で譲歩する事は考えられない、そう言い切れる位には。武力の行使、またそれによる自国民の殺害にも躊躇すらしません。

対して、参加者の大半は学生達です。一般人としても経済的基盤が脆弱で、政治的立場もあやふや、おそらくは知識経験共に未熟そのものな子供の群れに過ぎません。それで指導者も無能、とくれば、これで実効的な成果を期待する方がどうかしているというものです。この状況があとしばらくでも続けば、あるいは行政側が強制的措置に訴えれば、容易に瓦解するでしょう。その際に死傷者が出なければ御の字といったところでしょうか。

徹頭徹尾、無意味そのものにしか思えない本運動、その馬鹿馬鹿しさは眠気を催す程です。これで'revolution'などと称する様はあまりに空虚で、嘲笑する気にすらなりません。勿論やるもやらないも当人達の自由ではあるのですけれども、これだけ海外メディアで大々的に報道されれば嫌でも目に付くし、一応確認もせざるを得なくなって迷惑なので、ローカルに閉じたところで勝手にやってて欲しいなと、欠伸をかみ殺しつつ思う次第なのです。

金融関係者には相場をいじるのにいいネタという事でそれなりに意味もあるんでしょうけどね。大多数の一般向けには、内陸部の各地に波及してからで十分ですよ。

'umbrella revolution' takes holds in Hong Kong

9/26/2014

[biz] Bill GrossがPIMCO退職、移籍

おおう。先日司直の捜査に晒されているとの報があった債権大手PIMCO代表のBill Grossの退職が決まったんだそうで。移籍先はJanus Capital Group Inc、新規に作られるCaliforniaのオフィスでグローバル債権の運用、またその戦略立案等を担当するんだそうですが。

これはあれですか、逃げた、と解釈すればいいんでしょうか。件の粉飾疑惑のファンドが、粉飾を封じられて従来予定していたパフォーマンスでの運用を続けられなくなり、さらに評価の訂正に伴って巨額の損失が出る見込みにもなったから、ファンドもろとも一旦ご破算にしようって話ですかね。過去の分はミスという事で刑法的には誤魔化せると踏んだんでしょうか。そうだとしても、率直に言って通用するとは考え辛いですし、単に窮余の策か、あるいはBill Grossに責任を被せて切っただけなのか、等、色々と憶測を掻き立てられます。いずれにせよ、そのアクションの速さ、大胆さは衝撃的で、いささかの戦慄を禁じ得ません。

ともあれ、これはもう例の容疑が真っ黒と認めたも同然なわけで、信用も何もあったものではないでしょう。突如トップを失った(あるいは切った)PIMCOにしろ、王座を追われた形のBill Grossにしろ、これから大変そうです。ていうかPIMCOにしてみれば、まだしばらく猶予があると思われていた所に前倒しで訪れた決定的な事態、まさにファンド崩壊の危機に直面したわけで、本当にどうなっちゃうんでしょうか。まさかファンドも転職先に移管とかいうわけにも行かないでしょうし、債権市場がかなり混乱しそうです。

関係者は基本的に大変でしょうけれども、慌てて移行先を探す顧客と、取り込みの好機と見て活気付く競合やらが色々入り乱れて、意外と愉快な事になるかもしれませんね。さてさて。

BILL GROSS LEAVES PIMCO

[関連記事 [biz law] 債権大手PIMCOにファンド運用益粉飾容疑]

[IT] bashに最悪の脆弱性発覚

よりにもよって恐らく一番使用者が多いであろうシェルのbashに最悪の脆弱性が発覚してしまい、世界中が大慌てです。変数処理のオーバーフローからのクラックという事ですから、アプリやデーモンから山ほど発せられるexecから権限周りがすべてすっ飛ばされ放題になるわけで、もうセキュリティも何もあったものではありません。先日発生したOpenSSLのHeartbleedを遥に超えるレベルの、文字通り最悪の危険度と評価すべきものでしょう。やってくれたものです。Heartbleedの影響もまだ多数残っているというのに。

まずは落ち着いてbashのバージョンチェック。4.3のパッチ25以前が該当という事ですが、サーバの環境変数BASH_VERSIONを見ると・・・'4.3.11(1)-release'で、ばっちり該当しています。というわけで大急ぎで変更作業に移ります。

と言っても最近はbashばかり使ってたので変更先に少し困るのですが、多少は慣れてるもの、という事でtcshに。シェル変更コマンドchshでデフォルト設定をbashから変更します。変数設定を.bashrcから.cshrcに移植してから再起動、であっさり完了。厳密には対処としては不完全で、一般にはbashを一時的にアンインストールしておいた方が良いんでしょうけれども、私の場合は外部から直接シェルを起動される心配はない(筈です)から、これでとりあえず良しとします。

一時期、というか以前はむしろCシェル系の方をよく使っていた位ですから、特に違和感も感じず、むしろプロンプトとかsetの変数一覧の表示形式とか、とても懐かしく感じられて、たまには違うシェルを使うのも悪くない、と暢気にも思ったりした次第なのです。操作も意外と覚えてるもんですね。そういえばbashを使い始めた頃は変数設定のexport文を冗長に感じたりしたっけ、とか思い出したり。そもそも最近はもうシェルスクリプトで作業する事自体があまり無く、実際の所特段の問題もありませんし。というわけで、個人的にはこれで一安心。しかし心臓に悪いことこの上ありません。OpenSSLの時より余程。あれがHeartbleedなら、こちらはさしずめHeartattackとでもいう感じですかね?

流石にメンテナ連中も死ぬ気でパッチを作ってる所でしょうから、すぐに修正されて元に戻せるだろうとは思いますけれども。と言っても流石に前代未聞のレベルだし、類似の脆弱性が無いかチェックも必要でしょうから、時間がかかる可能性もあるんでしょう。でもそれは必要な作業ですから、とりあえず不便はありませんし、二次災害を起こす事の無い、確実な対処が行われるよう願いたいものです。やれやれ。対処にあたるSE諸氏におかれましては、誠にご愁傷さまです。死んだりしないよう、くれぐれもお気を付け下さい。

'Bigger than Heartbleed': Bash bug could leave IT systems in shellshock
What is the Shellshock Bash bug and why does it matter?

Ubuntuではbashのパッチが発行されていますね。不完全だとの情報もありますが、適用しないわけにもいかないでしょう。何を信じていいものやら、困ったものです。しかし今更ですがこの脆弱性、何十年も放置されたままだったんですよね。。。洒落になりませんほんと。

ところで本件の通称はshellshockで決まりなんでしょうか。これだとbash以外のシェルも影響があるような表現でいまいち釈然としません。Shellを使わないような一般人にはどうでもいい事なのかもしれませんが、その違いは利用者にとっては洒落にならないので、ちょっと気を使って欲しいなと思うのです。といって、報道記事の中には"バッシュ"をshellshockと同列の脆弱性を表す呼称と勘違いしているものすらある位だし、如何ともし難いんでしょうけどね。しかしその記事には、そんな知識でよくこの分野のライターをやってられるなと不思議に思ったりもしたわけです。

(その後・翌日)

パッチが不完全と評価されていた原因であるところの、後から発見された脆弱性(CVE-2014-7169)の分の追加パッチが発行されました。というわけで即適用。これで一段落、でしょうか。

(さらに2日後)

その後、さらに脆弱性が発見されたんだそうです。特定の変数名を使うとすり抜けられるんだそうで。対応策自体がまだ検討開始したばかりで、現時点で出ている案もブラックリストを作るかどうかとかいうとても手間がかかりそうで、かつ手抜かりが入り込みそうなものですし、安定するまでは大分時間がかかりそうです。

Re: Re: CVE-2014-6271: remote code execution through bash (3rd vulnerability)

[関連記事 [IT biz] OpenSSLで再び通信全漏れの脆弱性発覚]
[関連記事 [IT] OpenSSL脆弱性で三菱UFJニコスから個人情報大量漏洩]
[関連記事 [IT] OpenSSLに深刻な脆弱性、通称Heartbleed]

9/25/2014

[biz] ドイツAmazonとAir France、2つの対照的なストライキ

Air Franceでのパイロットによるストライキが続く中、隣国ドイツのAmazonでもFC従業員によるストライキが起こっていたのですけれども、こちらは何事も無かったかのようにひっそりと終了してしまったそうです。

より詳細な経緯としては、ドイツ国内に7箇所あるAmazonの倉庫(FC)の内5つに所属する従業員を中心とした労組が賃金の改善を求めて月曜からストライキに入ったものの、3日経過しても経営側は交渉に応じる事もなく、またストライキによる出荷遅延等の業務への支障も殆ど発生せず、従ってストライキは無意味になったために中止に追い込まれたんだとか。

Amazonのストライキに参加した従業員数は、労組側の発表では2000人程度、経営側の発表では1300人程度とズレがありますが、全体の従業員数は9000人程度という事ですから、概ね2割前後と考えれば良いのでしょう。2割が多いか少ないか、それは意見の分かれる所でしょうけれども、通常の組織であれば到底無視出来る規模では無く、それだけの規模で行われたストライキが全く意味を成さなかった、というのは相当に珍しいケースと言っていいでしょう。セオリー通りに成功を収めているAir Franceのケースと何が違うのかと、興味が惹かれるわけです。

といっても、理由は概ね容易に推測出来るところではあるのですけれども。元々Amazonのような通販業というのは需要やリソースの変動が激しく、季節や日、時間毎に数倍程度の差が発生する事もざらです。しかるに2割程度の変動は当然に想定したシステムになっているでしょうから、キャパが一杯になる繁忙期でも無ければ、元々用意されているバッファ分のリソースで対応可能だった、というだけの事なのでしょう。そうであれば、ストライキを有効なものとするには起こすべき時期と規模をそのバッファ分を超えるように設定する必要があって、労組側がその見通しを誤った結果と結論づけ得るわけです。

そうだとして、次に疑問になるのは、何故2割しか参加しなかったのか、です。Amazonの労働環境の劣悪さは周知の事実で、残り8割の従業員が賃金等に不満がないというのはあまりに不自然です。ストライキへの参加を思い止まるだけの事情があると考えるべきでしょう。

ストライキは法によって保障された労働者の基本的な権利です。ドイツはとりわけそのあたりの権利意識は厳格な国柄ですから、報復的人事等を恐れた、とかいう理由では説明し難いでしょう。そもそもそれらの報復やストライキ不参加によるインセンティブは禁じられている筈ですから。

この辺の事情は、外部からは推測する他無いのですが、、、マクロ的には、Amazonの事業の立ち位置がその要因になっているのではないかと思うのです。Amazonは大手ではありますが、Air Franceのように寡占・独占とまでは行かず、代替となり得る競合企業が多数存在します。そのような企業が、業務に支障のあるレベルでストライキを起こせば、一時的な損失に加えて消費者の信用をも失い、顧客の流出を招きます。ストライキが終わっても元通りにならない可能性が高いのですね。これを恐れて慎重になる可能性はあるでしょう。

また、具体的な割合は非公表ながら、契約社員等の有期雇用者が多い点も、当然に大きな影響があったものと考えるべきでしょう。 その種の社員がストライキ等すれば、再契約を拒否されて終わりになるだけでしょうから、参加出来る筈もありません。むしろ、仮に正社員への登用をちらつかされれば、団結どころか労働者間での対立にさえ繋がり得るでしょう。労働条件がどうであろうが、その改善どころではないわけです。

ここでふとJeff Bezosがこの前最悪の経営者に選ばれていた事を思い出しました。そのニュースを目にした時は、今ひとつピンと来ずに首を傾げたものでしたが、こういうAmazonの、従業員がその労働における基本的な権利すら剥奪され、奴隷のように酷使され使い捨てられる仕組みを認識した後では、なるほど、最悪と言われるわけだ、と納得させられてしまった次第なのです。

翻って、Air Franceはというと。今更言うまでもないのですけれども、企業は独占、労働者も代えの効かない特別資格職で、参加者の比率はパイロットの約半数、大量の欠航を出して営業損失は毎日数十億。要求は通り、会社の新規事業計画は撤回されました。何から何まで、まるで正反対です。今回のストライキは、格安路線への配置転換に伴う賃金等の低下を嫌って起こされた、という事ですが、恐らくそれが成されたとしても、その悪化した条件はAmazon従業員のそれに比べれば夢のような好待遇なのでしょう。

これは、どちらの条件、環境が妥当かと言えるような話では無いのでしょう。ただ、同じ労働者でも、環境や立場が違えばこれだけ差異が生まれるという事例です。本来は法の規律によって公平が図られるべきところであって、法の不備があるとも言えるんでしょうけれども、さてどうあるべきものなのでしょうか。少なくとも、Amazonを非難し、あるいは排斥すればそれでよい、というような簡単な問題ではない事は間違いないんでしょうけれども。

Strikes at Amazon Warehouses in Germany End for Now

Air France offers to scrap low-cost Transavia expansion plan

(その後追記)

独Lufthanzaも同じくLCC絡みの新路線導入に反対してストですか。本件に参加したAmazon従業員はじめ、一般の労働者はさぞ白い目で見ている事でしょう。

9/24/2014

[biz law] 債権大手PIMCOにファンド運用益粉飾容疑

このところ落ち目な債権大手PIMCOですが、法的にも追い詰められつつあるとか。一体どうなってしまうのでしょうか、と興味津々なのです。

Bill Gross自ら担当する一般投資家向けの旗艦ファンド"the Pimco Total Return ETF"で粉飾の疑いがあり、SECの調査がここ数か月続けてられているとのこと。その具体的な容疑は、価値が毀損した債権をその時価たる低価格で調達し、ETFに組み込んだ後に毀損が無いものとして価格を付け替える事でファンドの運用益を水増しした、というもの。

調査に数か月もかかってる点からして、容疑が事実だとしてもそれなりに隠蔽工作がされていたんでしょうし、複合型債権投資信託商品は元々複雑怪奇な構成になりがちで調査には膨大な時間も手間もかかるから、現時点ではまだ確定とは言えないんでしょうけれども。一応、細切れの債権を纏めてヘッジする事による価値上昇も無いわけではありませんしね。

しかし、PIMCOはここ最近、特に前CEOのEl-Erianが突如辞任した前後から不振が続いていたし、それによる急激な、崩壊とも言うべき20%を軽く超える資産流出の真っ只中にあるわけで。それを受けて一部では破綻の観測すら出ていた位ですから、顧客を繋ぎ止めるため、だとか、パフォーマンスを粉飾する動機は十分過ぎるほどにあったのも事実です。実際の所、やっぱり、と納得こそすれ、意外に思う向きは殆ど居ないんじゃないでしょうか。

ただ、ハイリスク上等の株式や為替と違い、低リスクを基本とする債権周りで、それもPIMCOクラスとなると、ちょっと信用を毀損するだけでも大きな影響があるわけで。これでもしBill Grossが逮捕でもされたら、本気で債権市場がカオスになりかねません。もっとも、その傲慢で独裁的な振る舞いから社内社外問わず嫌われている氏の事ですから、いない方が組織としては逆に安定して、業界的にも望ましい帰結になったりするのかもしれませんが。さて。

Report: SEC Probing Pimco For Artificially Boosting Returns

Pimco ETF Draws Probe by SEC

そしてBill Grossが電撃的退職。やはり黒でしたか。。。

[関連記事 [biz] Bill GrossがPIMCO退職、移籍]

[biz] スターバックスの日本法人完全子会社化プランが黒すぎる

コーヒーチェーン大手スターバックスの米国本社が、日本法人を完全子会社にする計画が発表されました。計画の内容をざっと確認してみたんですが、、、これ成立するのか、というか、成立はするんでしょうけど、随分と黒い感じで、すんなりとは行かないだろうな、と首を捻らざるを得ないものだったわけです。

株を取得するのはSolar Japan Holdings合同会社。これは中間的な持ち株会社で、事実上その完全親会社エスシーアイ・ベンチャーズ・エス・エルが取得するものと言えます。で、このエスシーアイ社はスターバックス本社の100%子会社で、現時点で日本法人株の39.52%(57,000,000株)を保有する大株主です。と言うわけで、今回の計画での目標は残りの60.48%の全取得、という事になるのですが、日本法人のスターバックスコーヒージャパンは上場企業ですから当然TOBによらなければなりません。

で、このTOB。普通ならスターバックスレベルの規模の企業で60%超のTOBなんて成立させるのは極めて困難、頑張って成立させるにしても相当なプレミアムが必要になるわけですが、この点スターバックスは色々とアクロバティックな手法を使う事で回避を図っています。

その基本として、TOBを条件の異なる2回に分けて行います。その1回目では、サザビーリーグというエスシーアイと同数の株を保有する大株主と応募契約を結び、事実上の単独対象にします。ただTOBは形式的には応募者に制限は付けられませんから、募集価格を965円と時価より相当低く設定します。割安過ぎて他の株主はまず応募しないだろう、という事ですね。

そして、2回目では募集価格を1465円にして再びTOBをかけます。こちらは時価(計画公表前日の終値)より5%ほど高く設定されていますから、事実上一般の株主はこちらに応募するかどうかを検討する事になるでしょう。

この2段階TOBですが。一見すると、通常であればどちらも成立が危ぶまれる条件です。1回目はサザビーリーグがみすみす大損をする事になるし、2回目はプレミアムの5%というのが相場より小さすぎます。普通は30%位は付くものですから。ほぼ全ての株主が不満に感じるだろうと思われるところです。

これらの問題点に対してはスターバックスも当然承知していて、それぞれ対策的な措置が採られています。サザビーリーグの第1回TOB応募については、同社が子会社にならない限り、スターバックスと現在結んでおり、平成33年3月31日に切れる日本での合弁に関するライセンス契約を更新しない旨を通告し、それによって強制力を働かせています。普通に脅迫ですね。こちらはサザビーリーグの株主、すなわちその親会社たる株式会社AHAの同意が必須となりますが、その説得は済んでいるという事なのでしょう。恐ろしや。

一般向けの第2回TOBについては、今年度末の配当や優待の廃止を打ち出しています。要するにあえて短期的な株式の価値をなくす事で、売却を促すというわけです。ただ、普通は手切れ金的に上乗せする筈のプレミアムが殆どありません。ぶっちゃけ脅迫同然の追い出しと言って良く、納得しない、というか激怒する株主が多数出る事は避けられず、普通に揉めるでしょうね。今後の流れを想像するに、1回目のTOBが成功した時点で約80%のシェアを握れますから、その議決権を用いて取得条項を設定し即発動、で買取価格で揉めて裁判所の価格決定のち強制買取、とか。最悪訴訟もあるかもしれません。

とまあ、内在する分だけでも随分と不安要素に満ち満ちているわけです。よくこんなややこしくも危うい手法を考えつき、かつ実行に踏み切ったものだと。しかもそれだけではありません。外部要因、すなわち対抗的買収者が出ないとも限らないのです。1回目の買付価格の安さはいくら契約があるとは言ってもちょっかいを出す向きが居ないとは言えないでしょうし、2回目もプレミアムが低すぎですから、手を出したくなるファンドも普通に出るんじゃないかと。もっとも、スターバックスの意見書にはその辺の強制手続きや対抗買い付け等についても記述がありますから、スタバにしてみればそこまでもが既に織り込み済み、規定路線と言うべきなのかなとも思いますけれども。その黒さ加減には正直引きます。

というわけで、それこそ有象無象も含め多数のプレイヤーが色々と慌しく動くだろう本件、さてどう展開するのやら。スタバの目論見通りすんなり行くのか、それとも混沌とした泥沼案件になるのか。価格決定等のアドバイザーにゴールドマンサックスの名前がある時点で色々とお察しな感じでもありますから、あまり深入りせず、適当に見守るのが吉ですかね。突然のカオスに巻き込まれた株主各位におかれましては、誠にお疲れ様かつご愁傷様です。

Solar Japan Holdings 合同会社による当社株券等に対する公開買付けに関する意見表明のお知らせ

米スタバ、日本法人を完全子会社化 対コンビニに備え
スターバックスコーヒージャパン、配当見送り

9/22/2014

[IT gov] 法務局の内部ネットに不正アクセス

冷や汗が出ました。民事局と法務局の内部ネットワークに不正アクセスがあったんだそうです。登記周りがクラックされたとしたら大惨事なわけですが、戦慄しながら確認してみれば今回の対象は事務用の部分、職員用の掲示板やファイルサーバだけで、国家システム的に漏れたり改竄されたりしたらヤバい所は範囲外なんだそうで。

それが本当なら一安心、です。今回の侵入の発覚は5日の事で、それから公表までの2週間以上の間に色々と検証も対策もされたんでしょうから、とりあえずは信頼してよいのでしょう。侵入の原因によっては失職の危機に晒される職員が居るのかもしれませんが、それは社会的には大した問題でもありません。なのですが、改めて考えてみると、そういう事務システムも登記申請システムも閉じてはおらず、その殆どが既にオープンネットに繋がってるわけで。今後については、大丈夫なのか、と少し不安も感じるわわけです。

勿論、そういうクリティカルな部分はその他からはある程度隔離されてるのだろうし、登記官が行うような編集作業は流石に通常の端末から行っているとは考えにくいところですから、今回のようにオープンネットと接する部分が侵入を受けたとしても、即クリティカルな所がクラックされるというわけでもないんでしょう。

しかし、一般向けの登記情報提供サービス等が運用され、そこには現在の情報が概ねリアルタイムで反映される点からして、その隔離はおそらく物理的な、すなわち完全なものではなく、従って外部からサーバへのアクセスは可能なんじゃないかと推測されるところです。もしそうであれば、こういう事務システム等の一般にアクセス可能なところを踏み台にしてクラックされる可能性もゼロではないものと懸念されるのですね。今回はそこまで行く前に発覚しましたけれども、それが多分に偶然の幸いであり、リスクは依然として残っている、というのであれば、それはちょっと洒落にならないわけです。心配のしすぎ、というのであればいいのですが。

もっとも、仮にそこまでして秘密情報の入手や改竄に成功したとしても、そこから金銭等の現実的な利益を得るのはそう容易な話でもないんでしょうけれども。詐欺に使うにしても、不動産取引は一般に対面で色々手間も時間もかかるものだし、法人を登記上乗っ取ったりしてもそれ自体を換金するのは困難でしょうし。それに、万が一そこまで成功したとしても、その後改竄等が発覚すれば直ぐに足が付きますしね。現実性もさほど高いとは言えないのかもしれません。

それでも。単に公共セクターの内部情報というだけで価値があり、それを収集する事を生業にする向きが多数存在するのも事実です。電子申請関連は少し前までは共通でしたし、もしその名残りでシステム間が相互に繋がったままだったりしたら、と、一抹の不安が過る事は否定出来ません。心配したところでどうしようもないんでしょうし、個人も組織も外部のクラウドサービスも使いまくりな政府にセキュリティを云々する意味もないんでしょうけれども。今更、という事でしょうか。色々と。

不正アクセス:各地の法務局結ぶネットに外部から侵入

9/19/2014

[biz] Larry Ellison退任

主にハイテク業界周りのあっちこっちで不振企業の敗戦処理が行われているようです。Microsoftの2100人レイオフをはじめ、いずれも盛者必衰を感じずにはいられませんけれども、これはその中でもとりわけ感慨深く思われるところですね。

Larry Ellisonは言わずと知れたDB系最大手Oracleの創業者であり、激動の業界にあって30年以上に渡ってトップであり続けた奇跡的な経営者です。法人特化の業態故に一般への知名度はMicrosoft等の花形には及びませんでしたが、その100億に届こうかという報酬の高さも相俟って、ITバブルの名残りを未だ体現するものとして、あるいは故Jobsに迫る程に特別視されていたわけです。Sun Microsystemsを買収したあたりからは日本企業との提携もあって国内メディアへの露出も増えましたかね?

しかしさしもの氏も齢既に70を超え、流石に世代交代を進めざるを得なくなった、ということなのでしょう。前期に続いて今ひとつに終わった直近四半期の業績発表と共に、CEOから退任し、権限をMark HurdとSafra Catzの2人に移譲する、との事。完全に引退するのではなく、今しばらくはCTO兼取締役として、事業運営を主導し続けるそうです。この辺は不振と言っても十分に利益を出し続けている優良企業の余裕といったところでしょうか。

Sunの買収で得たサーバ等のハード事業では結局Sun時代とあまり変わらずジリ貧のままだったのは残念でしたが、競合が競合だけに致し方なかったと言うべきでしょう。パートナーも頼りになりませんでしたし。それに、既に主戦場はクラウド系に移りました。そのコア中のコア技術を有するOracleをしても、新たな、以前のIBMとのそれをも超える苛烈な新興各社との競合を前にして旧態のままでいられる筈もありません。世代交代が起こる事はむしろ必然の成り行きのように思われるわけです。

ただ、それが上手くいくか、それは誰にも分かりません。おそらく、成功する可能性の方が低いのでしょう。 それは先んじて事業構造の変遷に晒され、十分に適応出来ずに混乱しつつ急速に力を失っていくMicrosoftやHP、Nokia等の旧最大手他社を見れば明らかです。それが元より競合も多数あるOracleであれば尚更でしょう。元HPのMark Hurdがしれっと後任に収まっている点からしても。

Oracleは、このままLarryと共に、傑出した経営者の伝説として完結するのか、それとも新世代が引き継ぐのか。個人的には後者となる事を期待したいところですが、さて。

Oracle's Larry Ellison steps down as two successors named

Microsoft cuts 2,100 jobs in its latest round of layoffs

9/18/2014

[biz] 東芝がPC事業リストラ。900人削減

東芝がPC事業のリストラに着手するんだそうですね。

同社の説明するところによれば法人向けに集中するという事で、それが本当であれば事業全体が消滅するわけではありませんが、少なくともコンシューマ向けからは撤退する流れに入ったものと見ていいのでしょう。そして同社のコンシューマ向けブランドは言わずと知れたDynabook。かつてノートPCのカテゴリでは長く世界一のシェアを誇り、ノートPCの代名詞とも言われた同ブランドが整理の対象となった事には、多少なりと時代の流れ、その無常を感じずにはいられません。

その経緯、事情については今更疑問を入れる必要もないでしょう。既に同分野自体、進歩を完全に止め、加えての急激な需要減退に晒され、もはやそのシェアの大小によらず損失を免れない程に先がない事は明らかです。東芝が積極的に投入しているタブレット機も、最近リリースした100ドル未満の超低価格機種にしても、利益なんて期待する方が無茶というものです。既にNECもソニーも撤退し、残るは富士通だけ、それも赤字を出しながら無理やり続けているのが現状なのですから。

ともあれ、去年のTVに続いて今年はPCをリストラした東芝。それ以前に撤退売却済みの携帯事業と合わせ、これで同社のパーソナル向けプロダクト事業のうち、かつての主力からは軒並み撤退の流れとなりました。と言ってもソニーと違い、元よりBtoBで稼いでいた企業が本業に回帰しただけだし、その継続性には特段の疑義が付くわけではありません。淡々と重電や半導体部品等の法人向けビジネスを続けていくのでしょう。それは必然の成り行きというものです。

ただ、それに伴って、各社が、各社の製品が、我々個人の前から消えていくのもまた事実です。次々と胸を踊らせるような魅力的な新製品が季節毎にリリースされたあの頃、その活況を、その製品を通して見た夢を、一ユーザとして思い出し、それらの愛すべき時代が完全に終わり、今またその名残りすらも消えていこうとしている事、その事を理解して、寂しさを感じる、ただそれだけの事なのです。

東芝、パソコン事業の再編計画発表 人員減・拠点統合

Toshiba's 7-inch Encore Mini could be the first $99 Windows tablet

[関連記事 [biz] 東芝がテレビ事業リストラ]

9/17/2014

[biz] ソニー・スマホ事業見通し下方修正、損失1800億、1000人削減

ソニーのスマホ事業がギブアップを宣言したんだそうで。販売回復の見通しが立たず、エリクソン買収時ののれん代を減損処理せざるを得なくなったという事で、それはまあ事実なので仕方ないんでしょうけれども、無配とはまた思い切ったものです。これはもう白旗を揚げたものと理解する他ありません。

元々スマホ事業は、テレビはじめエレキ事業が壊滅し、ゲーム事業も衰退の一途、金融等のサービスを除くプロダクト系事業の中では殆ど唯一と言ってもいい成長分野と位置づけられていた筈です。初代iPhoneの登場から数年でコンシューマエレクトロニクスの花形として圧倒的な規模を持つに至り、なお成長を続ける同分野で一定以上の支配的シェアを握り、衰退する旧主力事業に代えようとした目論みも、2011年の完全子会社化からわずか3年、アップルや新興勢力の圧倒的な生産・販売力の前にその後は成長の気配を見せる事すらないまま、こうしてあっさり潰えてしまったわけです。市場というのは容赦無いですね本当に。

まあでも、本件はもう終わった話だし、元々先が無い事は端から見ても明らかでしたからどうこう言っても無意味でしょう。それはそれとして、で、この先どうすんの、と。この疑問を持つのももう何度目かもはやわからない位ですが、それでも一応思わずには居られません。しかしまさか不動産を本気で主力事業にするつもりじゃないでしょうけれども、実際問題もう次のネタが無いわけです。本当に何も。

今更サービス系の事業にソニーが割って入る余地なんて何処にもないし、かと言ってBtoB主体にするのは企業の性質とか能力的にも無理があるでしょう。と言って目先で好調と言えるのはそのBtoBたる画像センサー事業位なんですけれども、しかし何とか事業を上手く継続出来たとして、規模的にも構造からしてもソニーを支える事は出来ない筈で、それに何時まで好調が保つかも疑わしいですしね。さてさてどうするのやら。

まあ、あれだけ色々やらかしながら配当を続けてきた会社が無配にしたって事は、それだけ先行きが暗いって事なわけで、これまでのアクションからしても、単にリストラして縮小均衡に持っていく以外のポジティブな方策が採られる可能性は極めて低いものと思われるところですが。

ソニーの今後はさておき。国内スマホメーカーの中では最もマシな部類な筈のソニーですらこれというのでは、販売ランキングからは姿を消し、市場シェアのグラフ表示では「その他」に埋もれて名前すら出なくなった某社含め競合各社なんかどうなっちゃってるのでしょうね?前期には販売目標大幅未達の挙句に在庫の廃棄まであったし、今季はそこからさらに2桁マイナスとかで、流石に生産を絞ってる筈だから赤字はさほどでもないのかもしれませんが、それはもう事実上の撤退と変わらないのではないかと。

その辺の逝っちゃってる各社を差し置いて、残るとしたらここ位と言われているソニーが真っ先に音を上げたのは、子会社が元々買収事業で、のれん代の会計処理という外に見える要素があったから、という事情を考慮しても少々意外でした。当然本件はそれら各社にも色々と影響がある筈、さてどう出る、というかどうしようもないでしょうから、何時ギブアップするのか。こちらもそろそろという事で、関係各位は保身を図ったり覚悟を決めたり引導を渡したり渡されたり、色々と準備に忙しいといったところでしょうか。大変ですね。他人事ですが。

ソニー、上場来初の無配に スマホ減損で今期最終赤字2300億円

ソニーはスマホ事業のリストラもするそうです。1000人程度で、当該事業の15%。当然というか、少ない気がする位ですけど。しかし今後は数より利益を追う方針に転換するだとか、そもそも数を出さないと利益が出ない事業分野で何を寝言を言っているのかと。過去その種の宣言をしたケースのその後からしても、むしろ終了宣言にしか聞こえないわけです。

ソニー、モバイル事業1000人規模の削減へ

[関連記事 [biz] ソニー、不動産事業進出]
[関連記事 [biz] ソニーPC事業売却、TV事業リストラ。計5000人]
[関連記事 [biz] ドコモiphone販売]

9/16/2014

[pol] Scotland独立運動への部外者の反応が一様に酷すぎる

Scotland独立を判断する住民投票の期日が迫り、外野が色々と騒がしいこの頃。その外野の声が、どれもこれも脅しとか宥めすかしとか懇願とか、その活動を否定し、独立を押し止めようとするろくでもないものばかりで呆れました。

これほど多数のScotland人が独立を志向しているのは、現状に不満があり、その改善を求めているからだ、という極めて単純な事情を何故理解出来ないのでしょう。Scotland人は、積極的な改革を求めているのです。そこに、やれ独立すれば経済が悪化するだとか、EUやNATOで内紛が広がるだとか、当人に関係のない、しかもネガティブな理由を投げかけたところで何の意味があるのでしょう。それも部外者、あるいは不満の原因たる相手から。

これらの意見を見るに、彼らの頭には、要するに自分たちの都合、不利益を被るだろう事に対する心配しかないのでしょう。全く以て愚かしい事です。何事につけ、相手が求めてもいない話を持ち出して説得出来るわけがありません。実際の所、彼らはScotlandを対等に見ておらず、自分たちに奉仕すべき奴隷同然に見下しているのでしょう。それは現在の利益がロンドンはじめイングランドに偏重しつつ、負担がその他に押し付けられている英国の経済・政治構造からしても明らかです。だからこそ、独立への支持がこれほど高くなったものと理解すべきところでしょうに。

説得しようというのなら、その体制を具体的に是正し得る政策等を提示しなければ無意味なことくらい、誰でも知っている筈でしょうに。一応、Cameronは否決された場合のScotland自治体の裁量権拡大を約してはいるそうですが、肝心の議会与党の支持が無い以上空手形な事も明らか、詭弁と言う他ないわけです。

他国からすれば、実際のところ大した影響もありません。実質的に見て元々独立性の高かった地域が自律性を高めるだけの事です。その手段が妥当なものである限り、自国を定義し、その運営を自ら行う事はその国民固有の権利であって、それ以外の何者にも脅かされてはなりません。愚かな他人の脅迫や詭弁に惑わされず、その意志を毅然たる行動として示される事を願う次第です。

9/15/2014

[note] 朝日新聞の捏造で再確認する、報道への適切な接し方。

朝日新聞による捏造の件。同業各社の中には同社による過去の類似ケースの掘り出しに熱心な向きもあるようですが、そろそろ一通り出尽くした感じでしょうか。

本件はそれこそ至る所で数え切れない程報じられ、論じられている話ですから、今更私個人が何か考える意味も無いでしょう。とはいえ、既存大手メディア業界の時代を画する可能性もありますから、それらのメディアに対する接し方、情報の受取方について整理する機会かとも思うわけで。

事件の内容、その評価自体には取り立てて何も思うところはありません。多分にその偏った政治的主義主張の実現を目的として虚偽の報道を繰り返し、長年に渡ってその過ちを認めるどころか主張を重ねて拡大し続け、その不正を認めてなお責任回避を図る、そのあまりに姑息な振る舞いは報道機関としては勿論、企業経営の観点からも論外の愚行と言う他ないものであって。犯罪ではないために事業の存続に疑義が付くほどではないにせよ、信頼回復は絶望的、あるいは膨大な時間が必要になるでしょう。関係者の言からいまだに自らを被害者と捉えている節が見受けられる点からしても、そもそも回復が可能なのかすらも現時点では定かではありませんが。

そういった本事件の個別具体的な話はさておき。前置き的に個人的な話をすると、一般に報道機関には事実の伝達以外の何も求めていませんし、書き手の分析や表現方法等、それ以外の情報は原則全て無視しています。一個人や営利組織の意見として参考にする事はありますけれども、元よりそれ以上の意味があるとは思っていません。

その事実にしたところで、情報毎にその正確性を多少なりと評価し、事実と判ずるに足る根拠を見出して初めて事実として受け取る事にしています。従って、本件のような、その重大性にも関わらず殆ど単一の機関のみからの報道によるもので、その他からの独立な裏付けが取れないような話については、単なる噂、風説の類と捉えていたわけです。ですので、捏造だった事が判明したところで、ああやっぱりね、とむしろ納得するだけでした。初めから信頼していないのですから、真実虚偽だった事が判明したところで、何ら損害が生じる筈もなかったのです。

そもそもの話、新聞を含め、報道機関は本来的に情報源そのものではなく、情報の仲介者に過ぎません。何をどのように報じるか、その選択における判断、決定において恣意が介在する事は避けられませんが、報道される情報自体は事実である事、それは欠くべからざる前提と言えます。消費者は、その事実を知る為に対価を支払っているのであって、本件のような、故意による虚偽や作り話など論外であり、それが個人や組織の行動や心理に影響して現実の被害に至れば、相応の賠償を求める権利も当然に発生します。従って、それ自体は必ずしも不法行為ではなくとも、不法性を帯びやすい行為であって、報道機関としては自殺行為に等しいものとも言えるでしょう。合理的な判断に従えば、およそ行い得ないものと思われるところです。

とはいえ、報道機関はそれぞれ独立した民間の営利団体ですから、元より一様に律せられているわけではなく、組織毎に異なる論理に従ってその利益を追求して活動する以上、今回のような組織的な捏造も、単に成果を焦った部門や社員によるでっち上げも起こりうるわけです。法による厳格な規制も無く、逆に表現の自由として憲法によって保護されているとあっては尚更でしょう。

むしろ、大手の中でも雑誌やスポーツ紙等では、ミスリードもデマも、もはやその欠くべからざる主要素と位置づけられている感もある程で、概ねにせよ事実の報道をするものとして信頼され得る機関の方が特殊と言うべきなのでしょう。そして、その代表たる大手新聞社ですら、本件のような捏造を公然と行ってしまう、それが現実だという事です。その意味で、信頼のおける報道機関は日本には存在しない、とも言えてしまうのでしょう。残念ながら。建前では公共、公正を謳い掲げながら、その実は各々の組織や個々人の利益のために活動し、時には嘘も平然と流す、欺瞞に満ちた事業者達がその営みを続けている、ただそれだけの事です。

しかるに、この種のおよそ不可避的に発生する虚偽、捏造、ミスリード等について、受け手側としてはどう捉え、対処すべきなのか、それが問題なわけです。私個人のスタンスは既に述べました。自己の責任において検証し、疑わしきは全て虚偽の可能性ありとして無視する、というものです。

社会的にはどうでしょうか。元より、そういった虚偽の報道は全て容認するわけにもいかず、かと言って一々批難してもキリがありません。「朝日も終わりだ」等としてその終焉と見做す向きも多数ありますが、それは報道機関、ひいては事実の伝達それ自体が全て終わりと言っているに等しく、無意味に思われるわけです。そうではなく、現実の問題として具体的な対応方法、方針を持たなければなりません。そこでただ切り捨てるのではなく、積極的に対処しようとするなら、その対象を区別するための線引きが必要です。それは可能でしょうか。

本件の朝日の行為は論外です。では、読売、産経、毎日、日経、地方紙、雑誌、テレビ各局は?虚偽の報道自体は至る所であまりにありふれた話です。従って、その有無で区別する事は出来ません。では、質による区別は可能か?しかし、この種の情報自体の質を定量的に測る客観的な基準、方法は存在しませんから、それも困難でしょう。影響の大きさでは?それは多分に受け手の多さによるでしょうから、結局のところ単に大手の機関を罰するだけになるでしょう。

要するに、妥当な方法は今のところ存在しないのです。積極的な対処が困難なのであれば、いっそ機械的に判断し一律に無視する、というのはそれなりに現実的な対応だと言えないでしょうか。社会経済的にも合理性があると思うのです。

現実問題、捏造や虚偽が行われたからと言って、その事から直ちに刑罰的な報いを受けさせる、そのようなシステムを実現する事は、およそ不可能にも思われます。それより、その帰結としての影響が、詐欺なり名誉毀損なり、個別具体的な損害を生じせしめた時に、それぞれが法に従って罰せられればそれでよいし、またそうすべきであって、その評価、判断が各個人の主観のみによらざるを得ず、従って客観的評価が不可能なために適法な措置が困難な、報道の内容それ自体に対する罰則等は課されるべきではないでしょう。実際、現在の日本の法はそのように作られている事からも、その妥当性は支持され得るでしょう。

そして、個別具体的な被害を受けない大多数においては、単に無視すればそれでいいのではないでしょうか。一々批難追求をしていてはキリがないし、無駄な労力になるリスクも多分にあるわけです。対して、何処からどのように情報を受け取り、それをどう捉えるか、それは元より各個人の自由です。疑わしいもの、信頼のおけないもの、虚偽を流した事のあるもの、それらを選別にかけ、除外していけば、虚偽の報道を受け取る割合も縮小し、いずれ均衡するものと期待されるでしょう。

とりあえず、朝日は系列含めまるごと除外し、関連する他社の報道もまとめて無視する、そのあたりが適切な対応ではないでしょうか。それで何ら問題もないのです。報道各社以外には。

9/13/2014

[note] Joe Sample死去

亡くなってしまいましたか。Melodies of Love、大好きでしたよ。レコードでもCDでも、何度も何度も、数え切れない位聴かせて貰いました。これからも聴くでしょう。

Rest in peace.

Joe Sample, Iconic Jazz Pianist & Composer, Is Dead at 75

9/12/2014

[note] ぼろぼろになったヘッドホンパッド用にカバーを自作

してみました。対象機種はSONYのMDR-F1、かつての人気機種ですね。もう十年以上前に買った代物ですが、とにかく軽くて楽なので、オープン型のファーストチョイスとして未だに愛用しているのです。が、さすがに老朽化が著しく、特にイヤーパッドがビロード質なんですがこれがもうボロボロで崩壊寸前なんですね。弾力も何もあったものじゃないので、スピーカー部が耳に当たる位。さすがにこれはいい加減何とかしないと、と前々から修理したかったんですが、交換用のパッドは片方2000円以上と、物の質からすればボッタクリかと言うくらいに高いのです。で、これ位なら自前でなんとかするか、と。

どういう処置をしようかと思案。まだパッド部は完全に崩れ落ちたわけではなく、一応原型は止めています。なので、分厚い生地でカバーをすればとりあえず大丈夫かな、というわけで、カバーを作る事に決定。

まずは採寸して、大まかな型を作ります。ほぼ真円で直径は外側がおよそ100mm、内側が80mm。外側と内側それぞれに縁を付けるためにマージンを取った型をコンパス等を使って作ります。


で、この型を生地に当てて切り出します。生地には元のパッドの感触に近いものという事でフェルトを採用。ジョキジョキっとな。


縁の部分を作るため、切り込みを入れます。間隔は適当。


折り曲げて少しずつ重ね合わせつつ、ちくちくと縫い合わせます。


1列だけだと流石に耐久性に不安があるので、往復で2列分縫います。こんな感じに。


外側縁のうちフレームと干渉する上側を切り落とし、内側の縁に切り込みを入れます。


これでほぼ完成。今回は一回目、お試しという事で、糸で括り付けるだけの簡易な方法で装着。とりあえず問題ない感じ。でもう片方も同様に作って装着。


クッション材を間に追加するか迷いましたが、入れなくてもまあまあいい感じです。というわけでミッションコンプリート。しかしこうして写真を見ると、スピーカー部とか汚れが酷いですね。そのうちこっちもクリーニングしないと。ヘッドバンド部も耳当て程じゃないですけどくたびれてますし、こちらも補修しないといけません。やれやれです。

ちなみにかかった費用は、100均で調達したフェルト材5枚入108円。あと糸と針だけ。とても安上がりです。手間はそこそこかかりますけど、これぐらいならなんということもないですかね。というわけで今回はこれでおしまい。

9/10/2014

[IT] iWatch発表。無難な仕様、しかし使い勝手が良くない懸念あり

この程、大方の予想通りに発表されましたAppleの腕時計型デバイスiWatch。ていうか正式名称はApple Watchなんだそうですけど。後発過ぎて商標的に無理だったって事でしょうか。

結局、曲面や円形といった変形ディスプレイは採用されず、標準的な四角形でフラットな画面に落ち着いた事もあり、デザイン的には賛否両論というか、基本的にこれまで発表されたsmartwatchと比べて特に異なる点は無く、よく言えば手堅い、悪く言えば野暮ったい、いずれにせよAppleの新製品としてはいささか平凡な代物でした。どこかビスケットを連想させるような形状、ずんぐりとした厚みもあって、スマートさは欠片も感じられません。

機能的にも、単体での通話等モバイル通信が不可なのはバッテリーの容量的に仕方ないとして、健康管理とショートメッセージ、後はナビに各種コントローラという事で、特に目新しい点はなく、単に腕時計型デバイスで現状出来うる機能をAppleがまとめました、というだけですね。ネーミングに端的に表れている通りの後追いそのものなわけですが、この辺の革新性の無さは、Jobs亡き後のAppleの立ち位置を象徴するように見えなくもありません。

とはいえ、腕時計型デバイス自体がこれまで幾度となく提案されては受け入れられず消え去ってきた事は周知の事実なところ、Apple Watchがそれなりに受け入れられ、定着すれば、それはそれで社会経済的には一つの革新と言えるでしょうから、意味が無いと切り捨てるのは性急でしょう。

しかしそれには幾つか条件があるわけで。大まかには使い勝手の良さと価格の妥当さの2点ですね。後者の価格については$349という事で、デザインを犠牲にして製造コストを抑制した筈な割にはまだかなり高い感じですが、高い評価がつけば受け入れられない事も無いでしょう。問題は前者の使い勝手の方、特にバッテリーの持ち時間ですね。

で、このバッテリー持続時間、これが非公表なのです。これ、一番問題な所が非公表というのは、言いたくないような、都合が悪いスペックだと自白しているようなものなわけで。公表されない以上は推測するしかないのですが、そのsmartwatchとしては高度かつ豊富なハードの機能からして、おそらくこれまでの例を大きく上回る事は無いだろう事が示唆されています。すなわち、1日1回ないし2日に1回の充電が必要になるものと推測されるわけです。

そうであれば、これはとても使い勝手が悪い事になってしまいます。腕時計を毎日充電する習慣なんてありませんからね。考えるだけで気が滅入る人も多いでしょう。その充電にしても専用のクレードルで非接触充電とかになるんでしょうけれども、旅行や出先では充電用のクレードルの準備とかでとても気を使う事を強いられて、極めて不便なのは間違いありません。

従来のデバイスでよく行われているようにモバイルバッテリー等で補完するにも、デバイスを手首に常時装着するが故に、接続に使うケーブルの取り回しにとても苦労させられる筈です。というかそもそも外部電源を接続可能なコネクタが無いので、そのためには非接触充電アダプタが必要になったりしますし、およそ現実的ではないと言うべきなのかもしれません。この辺の電源に関する融通の効かなさはスマートフォンよりも悪いと言えるでしょう。

逆に言えば、そこさえクリアして、例えば1週間程度は充電不要、とかに出来れば、一定の成功は間違いないと思われるわけなんですけれども。Appleがその点を認識していない筈はないし、発売は来年の初め頃を予定との事で、まだ3箇月程は仕様の変更が可能ではありますから、その間に上手く修正されるかどうか。出来ればジョブス後の新生アップルを象徴する成功ともなりうるだろうし、出来なければやはりカリスマ亡き後の大企業病的な凋落を認定されかねないわけで、割と今後のアップルにとって決定的なポイントともなりそうに思われますが、さてさて。

ただ、基本常時使用するものだから、スリープモードとかで節約する手が殆ど使えないわけで、その点だけでも相当に困難があるものと予想されるんですよね。果たしてそんな上手い話があるのかどうか。電源オフにした状態のデバイスなんて邪魔なだけですし。うーん。

We got our hands on the Apple Watch

[note] SEAGATE製HDDをRMA

先日故障し、データをサルベージした上でお役ご免となったHDDをRMAに出しました。これまで数回経験したRMAは全てWDで、SEAGATEは初めてにつき少し手間取りつつ完了し、今は代替品の返送を待っているところです。という事で備忘録的に。

ドライブのデータをddで消去しつつ、まずは保証期間の確認から。SEAGATEのHP中、保証のところでモデル名とシリアル、あと国を入れ、Captchaを入力。これはOK。今回のドライブは代理店(CFD)経由で販売されたものという事で、そちらへの連絡先を示してコンタクトを勧めつつ、このままシーゲートで直接交換処理する事も可能、との表示が出ます。具体的には、「お問い合わせ CFD SALES INC  または、[返品する をクリックして Seagate に直接 RMA をご要求ください。」とか。

指示に従い一応CFDの方で確認してみると、CFDの保証は1年だけで、今回のは既に過ぎてしまっており不可でした。というわけでシーゲートでの交換処理に戻り、[返品する]ボタンを押して処理を進めます。交換品を受け取るための住所等を入力。この時、日本語は入力出来ず、国際表記にする必要があります。これは恐らく代替品が海外(シンガポール)から送付されるためでしょう。で、確認を経てオーダー発行の最終実行ボタンが出ます。

ここで少し疑問を抱きました。WDの場合にはあった筈の、RMAの原因を入力する所が無かったんですね。申告は不要という事です。これだと、具体的にどういう理由でRMAをしたのかは申請処理上記録に残りませんので、先方のチェックで問題が発生しないだとか、後から何か問題が発生した時に困ります。なので、その点は何かしら証拠なり記録を自前で残しておく必要があるだろうわけです。

その辺はどうなってたんだっけ、と今更ながらに保証規定のドキュメントを今一度確認すると、シーゲートが発行している障害チェック・修復用ソフトSeatoolsでチェックしておく事が推奨されています。勿論起動しない場合には適用不要というか不可能なんでしょうけれども、今回の個体の場合には起動はするので、適用しておくべきケースという事になります。というわけで、一旦RMA申請は取りやめてそちらの処理に移行。

Seatoolsを入れたWindows機にHDDマウンタ経由でHDDを繋ぎ、Seatoolsを起動。HDDリスト中、チェック対象ドライブを選択し、[ベーシックテスト]から実行。簡易なものから破壊ありのものまで色々あるテストを軽いものから実行して行きます。

まず[S.M.A.R.Tチェック]。成功となります。C6セクタエラーとか多数あるのに成功と言われても釈然としませんが、動作不能ではない、という意味なのだろうと飲み込みます。次に、[ショートセルフテスト]。これも成功。どうもこれは先頭付近のごく一部の読み書き等をチェックしているだけのようです。今回のセクタエラーは1.3TB近辺とかなり後ろに集中していた筈ですから、その種のテストでは引っかからないのだろうと理解されます。だとすると、[ショートリードテスト]もおそらくやるだけ時間の無駄だろうと推測されますから、これは飛ばして[ロングリードテスト]を実行します。

すると表示された残り時間がまさかの6時間超。ここに来てまたそんな、とうんざりしつつ、どうせ後半にならないと動きもなかろう、と諦めて放置します。で待つこと数時間。残り2時間を切ったあたりでようやく[ロングタイプ-失敗]の赤文字が表示され、処理が中断されました。表示された結果の詳細は下図の通り。[失敗の詳細]に表示された結果は、「診断ソフトの診断結果では、お使いのドライブのセクターに異常が発生されており、読み込みが困難になって・・・」云々。何か日本語がおかしいですが気にしない。保証規定で記録しておくよう指示のあった[Seatoolsテストコード]もここに表示されています。これをメモ。


ログファイルを確認してみると、4時間程もかかっていました。


ともあれ、これで障害の記録は完了です。公式ツールでこの結果が出るなら、RMA送付後に向こうのチェックをパスする事もないでしょう。万が一問題無しと判定されるだとかのトラブルになっても、この結果を伝えればいいわけです。

と言う事で、ずいぶんと遠回りさせられましたけれども、RMA申請のHPに戻り、今度はオーダー発行ボタンを押します。送付先はシンガポールと国内(千葉)の二つがあり、後者を選択。そして発行完了画面にリンクの張られたpdfのラベルを印刷して梱包済みの箱に張ります。送付方法は任意ながら、基本的にトラッキング可能な方法を使う旨明記されています。これはおそらく事故・紛失時の問題回避のためでしょう。定形外だと少し安いんだけど、と思いつつも従って、今回はその中で一番安価なゆうパックにします。60サイズの持ち込み割引100円付で。その際には伝票を日本語で書かなければなりませんから、送付先の日本語表記と電話番号を調べてメモ。そして窓口持参で送付手続き。ちなみに送付先の住所及び宛名は下記。

<宛先住所>
〒270-1407
千葉県白井市名内字内山322 白井ディストリビューションセンター

<宛名>
UPSサプライチェーンソリューションジャパン(株

後は待つだけです。トラブルが起こらないよう祈りつつ。

(その後)

無事先方に到着し、待つ事3日で無事代替品がShippingされました。やはりSingaporeから。折角国内に窓口があるんだから、そこに多少の在庫位は持ってても良さそうなものですけど、集中管理で節約出来る人件費とか保管費とかが国際輸送費を上回ってるんでしょうか。UPSは単なるパートナーに過ぎないから、あまり複雑なオペレーションを任せると委託料が高くつくのかもしれませんね。ともあれ何事も無ければ一週間もすれば着くでしょうから、引き続き待つだけです。

しかし、進捗があるとメールで連絡をくれるんですけど、これがどうも不親切です。届いた時には単に"Receipt Acknowledgement"だけで、これからの手続きについては全く説明もないし、発送まで何の音沙汰もありません。その発送時には"Ship Advice for shipper Number ***"で発送された旨だけ連絡して来ます。もうちょっと何とかならないものでしょうか。まあこの辺の不親切加減はWDも似たようなものでしたけど。下手に色々書くと面倒があるから、て事なんでしょうか。

(さらに数日後)

代替品が届きました。UPSのWWD Express Saver便でSingaporeからChangi空港-深圳空港(中国)を経由して日本へ、所要日数は2日。流石に速いです。

ドライブには"Certified Repaired HDD"と記載されたラベルが貼られており、再生品扱いとなっていますが、おそらく実際には新品なんでしょう。何にせよ、これで全て完了。今度は長く壊れませんように。



[関連記事 [note] データ用HDDの障害復旧、その顛末]

[関連記事 [note] WD製HDD故障再び]
[関連記事 [note] WD製HDDが故障したのでRMA]

9/08/2014

[note] ADTの動作不具合修正

久しぶりに開発環境周りでの不具合対処。結果から言えば解決出来たんですが、もう大変でした。その事の次第は次の通り。

Android用の開発環境であるところのAndroid Developer Tools(ADT)について、その最新版(20140702)が落ちまくりで使い物にならず、やむなく旧版を使い続けていたんですが、こちらもライブラリ類のアップデートに伴ってExportとかでエラーを吐くようになってしまい、修正も上手くいかなかったので仕方なく最新版に移行する事にしたのです。なお環境はUbuntu 14.04LTSの64bit版、IDEは勿論同梱のEclipseです。ADTのパッケージ名はadt-bundle-linux-x86_64-20140702。

しかしこの20140702版、とにかく落ちる。何をしても落ちるし、何もしてなくても内部で自動処理の類が動くと勝手に即落ち。話になりません。で、終了時にコンソールに吐くメッセージを眺めてみると、

Gtk-Message: Failed to load module "canberra-gtk-module"

とか言ってるんですね。gtkのモジュールが無いと。しかしチェックしてみると導入済みです。どういう事なんだろう、と訝しみながら調べてみると、どうもこのADT、基本的に32bitモジュールで動いてるんだとか。そういえばSDKの導入時に色々やったな、と思い出しつつ、i386版を入れます。

> sudo apt-get install libcanberra-gtk-module:i386

これは一応正解だったようで、とりあえず即落ちはしなくなりました。AVDマネージャがエラーを出したりはするものの落ちはせず、概ね編集作業はそこそこ出来る感じなので、とりあえずそのまま作業していると、今度はAndroid SDK Content Loaderが下記エラー。

parseSdkContent failed
Could not initialize class android.graphics.Typeface

一難去ってまた一難。まあそんなもんですよね、とため息を付きつつまた調べると、アップデートに絡んで設定に不整合が起こっているらしく、テンポラリを削除して初期化すればいいらしい、との事で、下記。一時フォルダを丸ごと消去します。

> rm -rf ~/.android

これまた正解のようで、当該エラーは出なくなります。が、続いて下記のような別のエラーで落ちる。

Gtk-WARNING **: Unable to loction theme engine in module_path:"murrine"

これも最初のと同様で32bit版ライブラリが無い事によるもの、と言う訳で同じくi386オプションを付けてインストール。

> sudo apt-get install gtk2-engines-murrine:i386

もうそろそろ打ち止めにならないかな、と祈りつつ恐る恐る作業をしてみると、大半の操作では落ちなくなりました。少し気分が上向きます。しかし安心するのはまだ早い。特定のコードを入力しようとすると落ちる。再現性がありそうな感じだったのでよくよく見てみると、メソッドの入力候補のドロップタウンリストが表示された所で落ちていました。メッセージは下記。

 Gtk-Message: Failed to load module "overlay-scrollbar"

 はいはい32bit版、というわけで下記実行。

 > sudo apt-get install libgtkmm-2.4-1c2:i386

が、今度はこれでも治りません。色々調べてみると、overlay-scrollbarコンポーネントには割と前から知られているライブラリ内部の不具合があるそうで、この場合は上手くリンク出来ないんだそうです。なので入れても無意味なのだと。これは困りました。色々と代わりのモジュールセットを入れてみましたがやはり改善せず。

これはギブアップか、と諦めかけたわけですが、我慢強く調査を続けていると、これに関連するworkaroundに、ADT同梱のEclipseには描画エンジンに使うブラウザの設定に不整合があり、これを修正するとoverlay-scrollbarのエラーも回避出来るよ、という話が目に留まります。文脈的にはUbuntuのバージョンアップに伴って発生したエラーの話で、本件とはあまり関係なさそうにも見えたし、まさかそんな事で、と眉唾ながら、駄目元で試してみました。ADT内、eclipseフォルダ中の設定ファイルeclipse.iniに下記を追記します。

-Dorg.eclipse.swt.browser.DefaultType=mozilla

するとこれがまさかの正解。同様のコーディングを行っても、正常に候補が表示されるだけで落ちなくなりました。いや、やってみるもんですね。

さらに嬉しい事に、問題はこれで打ち止め。その後は普段行う操作・処理については全て問題なし。落ちません。以前のバージョンの環境と同じレベルまで辿り着けたわけです。途中ではもうこれ泥沼のギブアップコースかと思いましたから、殆ど晴天の霹靂です。いや逆か。何にせよめでたしめでたし。というわけで、開発途中のプロジェクトも程なく無事作成完了する事が出来たのでした。

しかし疲れました。Androidの開発環境はコロコロとしかもドラスティックに変わるし、その割にドキュメント類は全然無いから、不具合に遭ったが最後、抜け出すのが大変です。元々OS自体からしてバンバン仕様が変わるのだから、それに伴って開発環境も大きく変わるのも仕方ないと言えばそうなんでしょう。加えてLinuxの環境もやはり激しく変化するし、その組み合わせを網羅して対応するのが困難なのも分かります。けれども、だからと言ってこう、Ubuntuの最新64bit、それもLTS版なんてポピュラーなディストリですらこう頻繁に動作しなくなるというのは、いくら何でも適当すぎじゃないでしょうか。管理しきれないのなら、利用する外部コンポーネントも安定したものに極力絞ればいいだけの話でしょう。なのにむしろ不安定度は上がる一方ってどういうことなの、と。

Googleがそういう勝手な会社である事は最初から分かり切った話なのだし言っても無駄な事も分かっていますが、それでも文句の一つ二つも言いたくなって当然だと思うのです。ほんと勘弁して欲しいわけですが、かと言ってAppleはAppleでもっと酷かったりするし、どうにかならないのでしょうかこの業界。Microsoftレベルとは言いませんが、プラットフォームのシェアを保有する事業者の責務として、最低限の所は弁えて欲しい、と心から願います。そうであればそもそも今回のようなworkaroundはする必要も無かった筈なのですから。
 
と一頻り愚痴ったところで、今回はこれでおしまい。

9/05/2014

[IT biz] Twitpic、Twitterに商標申請放棄を迫られ閉鎖

あら勿体ない。Twitterと連携する画像アップロードサービスの先駆けとして広く利用されて来たTwitpicが、9/25に閉鎖しちゃうんだそうです。最近は使ってませんでしたけど、ちょこちょこ使わせて頂いた1ユーザとしては残念。

その理由は、商標にTwitterが付けてきたクレームによるとの事です。具体的には、数年前から商標申請していたそのサービス名について、Twitterから申請を取り下げるよう請求があり、それに従わない場合はTwitterAPIを使用禁止にする、すなわちTwitterと連携出来なくする旨警告されたのだとか。取り下げに応じれば、当然商標を登録出来なくなる結果、恐らくTwitterに対し商標権を侵害する状態になるし、かと言って申請を保持すればサービスが事実上運用出来なくなってしまう、という事で詰んでしまったんですね。

これ、一般には独占禁止法とか不正競争防止法あたりに引っかかりそうな話で、訴訟すれば普通にTwitpic側が勝てそうに思えるわけです。しかし、創業者のNoah Everett自身も言っているように、時価10億程度に過ぎない同サービスには、その数百倍以上の規模を持つTwitterのような大企業を相手取っての訴訟に耐えるだけの体力は無いだろうし、仮に勝てたとしても、これまでサードには色々と嫌がらせや締め出しを半ば公然と行ってきたTwitterの事、そのような決定的対立に及べば、何だかんだと難癖を付けて来るでしょうから、事実上サービスが運用出来なくなってしまうだろう事もまた容易に予想出来るわけです。筋論はともかくとして、実際として致し方の無いところなのでしょう。

Twitpicが立ち上がった当初は文字のみだったTwitterも、Instagramはじめ代替や自前の画像投稿機能も完備され、今となっては不要というか競合する状況になったから、という事情はあるのでしょう。その意味では既に使命は終えたサービスであり、その退場は必然と言えるのかもしれません。しかし、Twitterの画像関連機能を長らく補完し、大いにその事業の発展に貢献してもきたパートナーに対し、不要になったからと言ってこのようなやり方で追い詰め、締め出す形で閉鎖に追い込むというのは、あまりに理不尽な仕打ちと言うべきところでしょう。その意味でも残念ですね。Twitterのような信義に悖る企業が相手の場合、元よりTwitpicのように依存的な形では無理があって、Instagramのように連携はするけれども基本対等な事業形態、というのでなければ持続し得ない、という事なのかもしれません。

もっとも、Everett氏は既にGmail類似のスタートアップに軸足を移しているとの事ですから、潮時だと判断しただとか、ある程度は自主的な側面もあるのかもしれませんけれども。ともあれ、お世話になりました。氏の先行きに幸いあれ。Twitterには相応の災いあれ。

Twitter trademark turmoil forces Twitpic to shut down

(追記・その後)

Twitterの公式アカウントで、Twitpicが存続する旨の書き込みがなされたそうです。経緯も理由も何も説明が無いので何とも評価のしようもありませんが、事実なら歓迎したいところですし、あまり問題の無いものであるよう願いたいものです。

(追記・さらにその一月余り後)

結局前回の存続宣言ツイートは誤報で、身売り話は全て可能性が消え、改めて終了する旨宣言されました。新しい終了予定日は10/25だそうです。何という傍迷惑な。

[関連記事 [IT biz] Twitpicとlivedoor reader、相次ぐ軽率な終了宣言とその撤回・再撤回]

9/03/2014

[note] データ用HDDの障害復旧、その顛末

ありふれた話ですが、割と大変だったのでメモ。数日前、私用サーバーで久々にトラブルが発生しました。複数繋いでいるデータ用HDDのうち一台で書き込みの異常な遅延が発生したのです。

即座に当該HDDを外し、チェック。下左図はCrystalDiskInfoの画面ですが、回復不可能セクタ等のセクタ異常が多数。寿命と判断し、移行することにしました。なお、HDDの型番はST2000DM001、Seagate製の2TBのもので、運用期間はおよそ1.8年です。保証期間内での故障という事で、予定通りに行かず残念。もっとも、ほぼ24時間の連続運用、S.M.A.R.T.に記録された使用時間は16346時間ですから、一般向けモデルとしてはそれなりに頑張ってくれたと言えなくもないでしょうけれども。しかし読み書きの総量はさほどでもなかった筈だから、やはり期待は下回ったと言わざるを得ず残念です。


ともあれ。面倒ですが、移行・復旧をしなくてはなりません。予備のHDDは同型のもの(ステータスは上図右)を用意してありましたから、これに正常な部分のデータをコピーすればいいわけです。まずはコピー機(これDo台Master)でトライ。今となっては古い型のコピー機なので、35MB/s位のスピードしか出ませんが、問題のHDDは異常に発熱しており、遅い方が発熱を抑える事が出来て良いかもしれない、と思ったわけです。基盤部の発熱であればあまり意味は無いのかもしれませんけれども、気休め的に。しかし触って火傷するレベルの発熱というのは。。。

2台を繋ぎ、コピー設定にして実行し放置。数時間後、数百G進んだあたりでエラーセクタにあたったらしく、ビープ音が鳴り響きます。このコピー機には、手動ながらエラーセクタのスキップ機能が付いています。ダイヤルとボタンを操作し、リトライとスキップを適当に繰り返すと、十数程度セクタを飛ばした所でコピー再開。やれやれ、とため息を付きつつ、また放置。

そして数時間後、再びのビープ音。1300G弱、およそ2/3弱の辺りでエラーセクタ。また手動で一つずつセクタをスキップします。が、今度はなかなか、というか全然終わらない。数十回やっても終わりません。ここは大きすぎて手動では無理か、とそこで一旦諦め、現在のセクタ位置をメモした上でストップしました。

しかし、2/3程度まで殆どコピー出来た事から、ドライブの基盤やヘッダ周りの機構、各機能自体は正常で、単に途中でエラーセクタが多めに発生しているだけだろうと判断出来るわけで、かつて遭遇し、トラウマともなったWD20EARSのそれとは異なるものと理解して少し安心。なので、ここからは単にエラーセクタを回避して残りの正常部を回収する、ソフト的な対応に切り替える事に。

残り部分のコピーには、linuxのサルベージツールの定番、GNU ddrescueを使用しました。ddrescueを選択した理由は、エラーブロックをスキップしつつ、ファイル(デバイスファイル含む)をバイナリコピーするツールです。途中での中断・再開が可能な事と、任意の領域だけを対象にコピーする機能がサポートされている(当たり前と言えば当たり前ですが)もの、という条件に合致する中で最も標準的に使われるものだったからですね。

サブの各種テスト等作業用デスクトップPCにコピー途中の当該HDD2台を繋ぎ、Ubuntuを立ち上げます。当該HDDのデバイス名は、オリジナルがsda、コピー先がsdc。これについて、既にコピーが完了している1300G弱を除く700G強の領域を対象にコピーをかけたのです。コマンドは下記。

# sudo ddrescue --force -r 3 -i 0x12B04BE0000 -o 0x12B04BE0000 /dev/sda /dev/sdc rescue_sda_sdc.log

なお、各オプションの意味は次の通り。--forceがデバイス全体を対象にする場合の実行オプションで、誤ってデバイスを破壊しないためのものですね。-rはリトライ回数。デフォルトでは0ですが、これは不要だったかもしれません。-iはコピー元側の開始地点、-oはコピー先側の開始地点。コピー機でエラーセクタが発生した箇所の直前の同じ場所を指定しています。後ろ3つはコピー元、コピー先、ログファイル名。

何せコピー先は完全に上書きされてしまいますから、万が一にも間違いのないよう、ファイルへの一部書き出し・比較等の動作テスト等も繰り返し行い、コマンドも入念に確認した上で実行。

すると、当然ながら即エラーセクタにぶち当たり、リトライと諦めてスキップ、を繰り返しながらえっちらおっちら進みます。100K強程スキップした後、コピー再開。大体45MB/s位で快調に。

それからおよそ一時間。もう大丈夫かな、と思いきや、さにあらずで再びエラーセクタ。今度はなかなか終わりません。スキップして再開した、と思ったらまたすぐエラーセクタ、を断続的に繰り返します。それでも延々と待っていると、総計6MB程スキップした後にコピーが再開されました。そこからは最後まで問題無し。被害の範囲が確定され、その程度か、と一安心です。

なお、ddrescueの処理はまだ続きます。1度目のトライでは大雑把な処理、すなわちやや大きめのブロックでリトライ無しで行うらしく、抽出されたエラー箇所でのリトライと細分化しての個別処理をそれぞれのステップに分けて再度行うのですね。それぞれ、"Trimming failed blocks..."と"Splitting failed blocks..."というメッセージが出ます。で、Splittingの方は何時間も変化しない状態が続いたのでその途中でCTRL-Cを入れて打ち切りました。最終的には下記のような状態です。

<ddrescue打ち切り時のステータス>

rescued:   716122 MB,  errsize:   1778 kB,  current rate:        0 B/s
   ipos:     1411 GB,   errors:      93,    average rate:   29147 kB/s
   opos:     1411 GB,    time since last successful read:    27.9 m
Splitting failed blocks...

結局、エラー領域のサイズは1778KB、1段階目の1/3以下にまで縮小しました。エラー回数は93回。対象領域サイズ700GB超と比較すればよくここまで抑えられたと言うべきでしょう。

これで、エラーでコピー出来なかった領域がファイルシステムの上位管理領域にかかっていなければ、いくらかの末端ファイルの破損で済む、というわけです。

で、若干どきどきしながらサーバに再接続します。当然ながら入るディスクチェックを見つめることしばし、無事起動してくれました。いや、データドライブなのだから元々起動には関係ないのですが、その後急いでファイル類を調べて見ても、ディレクトリに欠損は見られず、普段アクセスするファイル類にも特段の欠落は見られません。

というわけで、これでようやく作業完了です。最初の不具合認識からここまで、およそ丸2日。精神的に疲労しましたが、概ね復旧出来てめでたし。

もちろん、最初からRAIDを組んでおけばこんな苦労する必要もなかった筈なのですが、ドライブは複数あるわけで、その全てにRAID1とか5とか6となると、常時十数台のHDDを運用する羽目になるし、個人のサーバとしてはコスト的に厳しいところです。ということで止むなくこういう、障害、その兆候を認識したら直ぐに復旧に移る運用にしているわけなのですが、やはり綱渡りですね。システム系はバックアップも割とマメに取っているのですけれども、その範囲や方法を少し見直した方がいいのかも、と反省しきり。しかしこれだけストレージのサイズが大きくなると、バックアップを取るのも時間がかかりすぎるし、どうするのが適切なのか、悩ましいところです。さしあたり、優先度の設定が必要ですかね。

ともあれ疲れました。 やれやれです。

<その後>

移行後のドライブの動作自体は特に支障も無いものの、結構ファイルが消えている事が判明しまして。エラー領域が途中のリンクに引っかかってたようで、幾つかのフォルダ中に入れてあったファイルのうち、1/10位の消失が確認されました。当該フォルダのファイル数は10000位でしたから結構な数で、消失データは再度作成可能なものだった事は不幸中の幸いではありますが、とても面倒で困りました。どうするべきか、悩ましいところであります。ちなみにファイルシステムの形式はext4で、FAT系やNTFS等に比べればこういう大量消失は起きにくい筈だったんですけど。何にせよこの種の消失は検知し辛いものですから、ここ以外にも消失がある可能性も否定出来ません。困ったものです。

なお、外したドライブは後日RMAしました。
[note] SEAGATE製HDDをRMA

[関連記事 [note] WD製HDD故障再び]
[関連記事 [note] WDのHDD破損が再発]
[関連記事 [note] WDのHDDでファイル破損頻発]

[note] デジカメにバッテリー等の不具合連発

暑い最中、冷や汗をかかされてしまいました。このところ使っていなかったカメラをメンテしようとしたら、そのうちの一台、NikonのP6000で2つほどトラブルにあったのです。

トラブルのうち1つ目は、レンズカバー(レンズ前で電源ONOFFに合わせて開閉する保護用のシャッター部分)の上側の羽根が、何処かで衝撃が当たったのか外れかけていました。当然そのままでは使えません。これは分解コースかと青ざめました。が、症状の確認がてら指で少し押してやると運良く羽根が元のところにハマり、復旧。胸を撫で下ろしたのです。

がしかし、これで終わりではありませんでした。電源スイッチを押しても電源が入らないので、バッテリー切れか、いやでも満充電にして置いた筈だけど、と訝しみながら予備に入れ替えようとすると、本来ならラッチを外せば飛び出す筈のバッテリーがスロットに張り付いたかのようになって取り出せません。

これがトラブルその2です。中は見えずとも原因は幾つか想定出来るわけで、再び青ざめます。膨張か、染み出し固着か、はたまた加熱から溶けて固まったか。いずれにせよ放置は出来ません。悪い事は重なるものだ、とまた冷や汗をかきながら、二次事故を起こさないよう、工具を使って慎重に引きずり出すと、やはりというか、下図のようにバッテリーが膨張していました。
下図は正常なバッテリー(右側、互換品)と並べてみたものです。分かりづらいですけれども、中央少し上側の文字が湾曲しているのが見えるでしょうか。
バッテリーの膨張、というのは想定された中では一番軽い症状で、正直胸を撫で下ろしました。漏洩や溶融まで行くと本体が道連れになるのは無論の事、火事の危険等もありましたから。

今回膨張したバッテリーはニコンの純正品なんですけれども、さすがに経年劣化には勝てなかったという事でしょうか。製造からは5年以上経ち、当然ながら保証期間はとうの昔に過ぎてます。しかし、この手の障害は発火や爆発の危険もありますから、言えばメーカーで対応してもらえるのかも知れません。ただ、それはそれで面倒ですし、さてどうしましょうか。

ところでこのP6000、元々中古で入手したものですが、それなりに強い愛着があって、出来ればこれからも長く使い続けて行きたいと思っているのです。だからこそあまり使わなくなった今でもこうして不定期的にメンテも続けているのですが、しかし長く使い続ける程、今回のような問題が発生する可能性は高くなるんですよね。当たり前の話と言えばそうですが、やはり化学物質たるバッテリーの経年劣化に対する不安定性はどうにもネックだと痛感する次第です。あと基盤のコンデンサーとかも。しかし対策の立てようもなく、どうにもなりません。中国製は潜在的にエラー率が高い事は分かってはいますが、それ以外なんて殆ど無いも同然ですし。困ったものです。

とりあえず、予備のバッテリーを調達しないと。eBayはロストが続いたから不安ですが仕方有りません。諦めて祈るとしましょう。あと、これ以上悪い事、具体的には予備バッテリーが爆発したりしませんように、とも。

[関連記事 [note] 今更中古のNikon P6000購入]
[関連記事 [note] ebayで送料の誤設定に遭遇]
[関連記事 [note] eBayでの購入品が連続でロストしてげんなり]