この程、大方の予想通りに発表されましたAppleの腕時計型デバイスiWatch。ていうか正式名称はApple Watchなんだそうですけど。後発過ぎて商標的に無理だったって事でしょうか。
結局、曲面や円形といった変形ディスプレイは採用されず、標準的な四角形でフラットな画面に落ち着いた事もあり、デザイン的には賛否両論というか、基本的にこれまで発表されたsmartwatchと比べて特に異なる点は無く、よく言えば手堅い、悪く言えば野暮ったい、いずれにせよAppleの新製品としてはいささか平凡な代物でした。どこかビスケットを連想させるような形状、ずんぐりとした厚みもあって、スマートさは欠片も感じられません。
機能的にも、単体での通話等モバイル通信が不可なのはバッテリーの容量的に仕方ないとして、健康管理とショートメッセージ、後はナビに各種コントローラという事で、特に目新しい点はなく、単に腕時計型デバイスで現状出来うる機能をAppleがまとめました、というだけですね。ネーミングに端的に表れている通りの後追いそのものなわけですが、この辺の革新性の無さは、Jobs亡き後のAppleの立ち位置を象徴するように見えなくもありません。
とはいえ、腕時計型デバイス自体がこれまで幾度となく提案されては受け入れられず消え去ってきた事は周知の事実なところ、Apple Watchがそれなりに受け入れられ、定着すれば、それはそれで社会経済的には一つの革新と言えるでしょうから、意味が無いと切り捨てるのは性急でしょう。
しかしそれには幾つか条件があるわけで。大まかには使い勝手の良さと価格の妥当さの2点ですね。後者の価格については$349という事で、デザインを犠牲にして製造コストを抑制した筈な割にはまだかなり高い感じですが、高い評価がつけば受け入れられない事も無いでしょう。問題は前者の使い勝手の方、特にバッテリーの持ち時間ですね。
で、このバッテリー持続時間、これが非公表なのです。これ、一番問題な所が非公表というのは、言いたくないような、都合が悪いスペックだと自白しているようなものなわけで。公表されない以上は推測するしかないのですが、そのsmartwatchとしては高度かつ豊富なハードの機能からして、おそらくこれまでの例を大きく上回る事は無いだろう事が示唆されています。すなわち、1日1回ないし2日に1回の充電が必要になるものと推測されるわけです。
そうであれば、これはとても使い勝手が悪い事になってしまいます。腕時計を毎日充電する習慣なんてありませんからね。考えるだけで気が滅入る人も多いでしょう。その充電にしても専用のクレードルで非接触充電とかになるんでしょうけれども、旅行や出先では充電用のクレードルの準備とかでとても気を使う事を強いられて、極めて不便なのは間違いありません。
従来のデバイスでよく行われているようにモバイルバッテリー等で補完するにも、デバイスを手首に常時装着するが故に、接続に使うケーブルの取り回しにとても苦労させられる筈です。というかそもそも外部電源を接続可能なコネクタが無いので、そのためには非接触充電アダプタが必要になったりしますし、およそ現実的ではないと言うべきなのかもしれません。この辺の電源に関する融通の効かなさはスマートフォンよりも悪いと言えるでしょう。
逆に言えば、そこさえクリアして、例えば1週間程度は充電不要、とかに出来れば、一定の成功は間違いないと思われるわけなんですけれども。Appleがその点を認識していない筈はないし、発売は来年の初め頃を予定との事で、まだ3箇月程は仕様の変更が可能ではありますから、その間に上手く修正されるかどうか。出来ればジョブス後の新生アップルを象徴する成功ともなりうるだろうし、出来なければやはりカリスマ亡き後の大企業病的な凋落を認定されかねないわけで、割と今後のアップルにとって決定的なポイントともなりそうに思われますが、さてさて。
ただ、基本常時使用するものだから、スリープモードとかで節約する手が殆ど使えないわけで、その点だけでも相当に困難があるものと予想されるんですよね。果たしてそんな上手い話があるのかどうか。電源オフにした状態のデバイスなんて邪魔なだけですし。うーん。
We got our hands on the Apple Watch