10/23/2014

[biz] Uber登録ドライバーのストライキ発生

TNC大手のUber社でストライキが発生し、NYを含めた米国内の複数の都市で同社のドライバーのうちユニオン所属者が一斉に通信を切ってサービス停止の上、オフィスに押しかけてるんだそうで。

原因は料金値下げ、それに伴う収入低下への不満。 その撤回を求めてのストだそうです。この値下げ、正確には七月から実施されていた割引キャンペーンを恒久化するって話で、実態的には現状維持なんだそうです。が、ドライバーからすれば将来の収入が減るように感じた、という事ですね。で、ドライバー達がUberに所属するに際して車両調達等に投じた資金の回収が出来ないとか何とか。

これ、どう見ても無意味な自殺行為としか見えないのです。一体何をやってるんだろうと。

ミクロな事から言えば、問題のドライバーが不満を抱いたところの将来の収入減については、料金を元に戻す、すなわち上げた場合に起こるだろう利用客の減少等、負の影響を考慮していないわけで。それに、ドライバーからすればUberは現時点では脱退も自由、他社との掛け持ちすら可能という事なのだから、Uber社の待遇に不満があるなら他社へ移るなり個人タクシーになるなりすればいいわけです。

労組によれば、ドライバーにはアフガンやイラクから帰ってきた退役軍人が多く、その大半は技能等が無いために他の仕事に就くことが難しい、等とも説明されているようですが、であればそのような競争力の低い労働者が買い叩かれて低賃金になるのは尚更当然の成り行きと言えてしまうでしょうし。ストライキなどすれば解雇されて終わりだと思うんですが。。。

そもそも、Uberは最大手ではあっても一プレイヤーに過ぎず、支配的なシェアを確立したわけでもないし、また法的な保護があるわけでもないのです。というかむしろ多方面からの排除圧力に晒される極めて危うい立場にあって、その危うい立場をさらにLyft等の競合と奪い合いつつ、勢力を拡大する事によってデファクト的にTNC独自のポジションを確立し、社会に認容させようという試みの途上にあるのであって。

そして、TNCであるが故の強み、すなわち配車やプライシングの最適性といったサービス面のメリットが有効に働くのは、あくまで従来型のタクシー業者との競争に限定されます。システムが殆ど同じで、サービスのレベルも変わらないTNC同業他社との競争にあっては、どうしたって利用料金の競争にしかなり得ない事は最初から分かり切った話なのです。なら料金がコストカットの限界まで下がるか、法規制が入るかするまで値下げ合戦が続くのもまた当然の成り行きなわけです。

で、過去の例を思い起こすまでもなく、タクシー業のような特殊技能が要求されない、本来的に参入が容易な業種でその規律を完全に自由競争に任せてしまうと、単価が本当に限界まで下がってしまう結果、共倒れやらドライバーの過労に伴う事故とかが頻発するようになってしまうというのも何処でも同じなのであって。公共交通機関でそれはまずいですから、通常タクシーの料金と台数は規制の対象になっているわけです。

しかるに、TNCは需要に応じた料金の動的な変更をその特色とするわけですが、そんなコスト面の競争原理そのものをコンセプトにしたも同然なシステムを採った時点で、競合が発生すれば即価格競争に突入するのも当たり前の話でしょうと。それだけならまだしも、その料金変更が原因で組織が機能不全を起こすとか、自己矛盾もいいところです。挙句只でさえ危うい立場をさらに悪くして、もう何がしたいのと。そんな最初から想定されるようなトラブル、システム上で予防しておけよと。自滅というのも馬鹿馬鹿しい程のあまりの杜撰さ、阿呆さ加減に眩暈がするのです。

この体たらくを見る限り、おそらくはもうこの業界自体、自由にやらせても先がないんじゃないでしょうか。米国外の諸都市のように違法として最初から排除するのならそれでいいんでしょうけれども、許容していくというのなら、早期に法規制をかける必要があるものと思われるところです。といっても、求められるだろう要件を考慮すれば、従来のタクシー規制とあまり変わらない、タクシー業界のネット予約対応的なものに落ち着きそうな気もしますが。そうだとすれば、TNC自体、結局はそう美味い話なんて無かった、的な失敗パターンに終わってしまうんでしょうか。やれやれです。

Uber Drivers Across The Country Are Protesting Today — Here's Why

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