12/04/2014

[biz law] リコールを拒否するタカタ、その主張の非論理性

タカタ製欠陥エアバッグ大量リコールの件、米での公聴会におけるタカタの振る舞いがもう酷すぎて見てられません。どうにかならんのでしょうか。

件の会でのタカタの言い分、その骨子は概ね以下の3点に集約されるようです。

1.原因について
 (主張)主たる要因は高温高湿の環境であり、それ以外では発生しない 
 (理由)米南部州やプエルトリコ等、高温・高湿地域でのみ発生確認のため

2.欠陥品の判別について
 2-1.種別
   (主張)助手席用部品のみ対象。運転手席用の部品は対象外
   (理由)助手席用の部品でのみ発生確認のため

 2-2.構造別
   (主張)設計及び構造自体に問題は存在しない
   (理由)製造過程の問題(溶接不足等)の発生が確認されたため

で、まあ・・・。どれも具体的な原因や因果関係が明らかでないし、なぜその理由でその結論が導けるのかというような主張なわけです。が、これをもって、現在実施しているところの、南部地域登録車の助手席用部品に限定したリコールは必要十分、として米議会はじめ社会側が求めている全米における全車全部品のリコールを拒絶しているのですね。一々突っ込むのもアレですが、あまりにその影響が大きすぎるのもあって無視するわけにも行きませんから、以下、一応メモがてらに以下、各主張の問題点を指摘しておきます。

まず1.については、南部地域でしか発生していない一事をもって気候が主要因である等とは言えるわけもない上に、仮に高温・高湿が主要因だと仮定しても、それ以外の地域でも局所的に高温・高湿になる場合はいくらでもあるのであって。それに今現在地域外にあるからと言って、今後引越しや売買によって南部に移動する可能性も普通にあるわけです。そもそもリコール対象を製造側の条件ではなく販売・登録地域で区別するという発想自体が意味不明と言うべきでしょう。

次に2-1.は、それこそ構造的な原因が判然としない以上は区別のしようもない筈なわけで。理由が分からない以上交換しても無意味、というのはそれはその通りなのかもしれませんが、一方で助手席用と運転席用を区別する理由も無い結論になる筈だし、そもそも既に部分的にせよリコールに踏み切った以上、具体的かつ合理的な説明もなしに対象を限定出来る筈もありません。今更何を言ってんだって話です。

最後に2-2.はもう、何をか言わんや。 そもそも殆どのリコールを起こさしめる原因は、設計の問題ではなく製造上の欠陥によって発生するものでしょうに。製造上の欠陥の可能性を認めるのなら、その可能性が完全に否定出来るロット以外は全てリスクがあるし、当然リコールの対象になる筈です。少なくとも対象を特定地域に限定するポリシーとは全く整合しません。まさか問題のロットは南部でしか使われていない、なんて訳もないでしょうし。支離滅裂です。

かように、仮説とすら言えない戦慄すべき代物なわけです。清水副社長は公聴会でこれらの主張を並べ立てた挙句、「現状のリコールを拡大する科学的理由はない」と臆面もなく言い放ったそうですが、常識的にはむしろリコールを限定する理由はない、と理解するべき話でしょう。この逆転ぶりは尋常ではありません。結論から理由をでっち上げたか、でなければ適当な思い込みや願望をそのまま事実とすり替えた詭弁の産物か。仮に、公聴会に出席して件の主張を繰り広げたところの清水副社長以下タカタ側が事実その通りに考えていた、と好意的に捉えたとしても、それは数少ない確認された問題事例から適当に思いつきで抽出した共通点をそのまま事実と断定したものとしか解釈のしようもないわけで。いずれにしろ、論理的とも科学的とも到底言えません。タカタの経営陣、法務、担当含め、全関係者の正気を疑わざるを得ない酷さなわけです。お前ら本当にメーカーかと。

そして当然のように米国全体から激烈な怒りを買って大炎上中なわけです。'Defiant Takata'(聞く耳を持たないタカタ)とか言われちゃって、ここまで広く社会の敵と見做されてしまうと、仮に本件を乗り切ったとしてももう再起不能だろうし、何処かに買収されて消滅するしか無くなってしまったんじゃないでしょうか。

もっとも、全リコールに応じたら応じたで、その場合には全米に止まらず、日本や欧州も含め全世界の全製品までもが対象になるだろう結果、その空前とも言うべき巨大な負担にタカタが耐えられないのかもしれませんし、どちらにせよタカタの行き着く先に大差は無いのかもしれません。ただ、最も優先されるべきは利用者の安全であって、その点からすればタカタの振る舞いは残念としか言えないのです。こうして不毛な対立を続け、本来なされるべきリコールが実施されないでいる間に新たな犠牲が出ないとも限らないのですから。10年以上に渡って隠蔽を続けた悪意の塊のようなタカタに今更言ってもしょうがないのでしょうけれどもね。

Honda Decides to Expand Airbag Recall as a Defiant Takata Resists

焦点:タカタのエアバッグ問題、影落とす海外工場の安全管理

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