色々とお騒がせなTNC、その代表格のUber社ですが。今度はオランダで逮捕者が出たんだそうです。容疑はタクシーの無許可営業ですね。先日リリースされたばかりのUberPOPを使って客を取ったドライバー4人が、客に扮した当局員の囮捜査で捕まったんだとか。ドライバー達はそれぞれ4200ユーロ(約57万)の罰金を科されたとの事。
囮捜査なんて面倒な作業を常にやってるとは思えませんし、おそらくは正規タクシー業者とかからの告発を受けてガサ入れしてみたら入れ食いだった、とかそういう事なんでしょう。米国とカナダの一部以外ではほぼ全地域で既存のタクシー業規制と軋轢を起こして袋叩き的な排斥を受け、とりわけドイツやイギリス等欧州で訴訟を繰り返して連敗続きの同社ですけれども、それは基本的にライセンスを受けたドライバーによるもので、争点は料金体系の適法性等の細部に過ぎず、まだ正当性を主張する余地が認められるものでした。本件は個々のドライバーからして違法な白タクだったものなわけで、それもほぼ同時に4件もとあっては言い訳のしようもありません。
同社としては、色々と派手にコミットメントしてしまった手前、米国外でも何とか現状の行き詰まりを打開したい焦りがあるんでしょうけれども、言うまでもなくこれは論外です。早急にUberPOPの停止、及び違法営業の防止策の導入が求められるところです。本件が同社サービスの違法性を印象付ける結果、各国での係争において同社にはより不利な判断が下される可能性が高くなるだろう、とも予想されます。その点からしても、少なくとも違法行為の予防を怠ったのは不味かったと言うべきでしょうね。
もちろん白タクなんてUberに関係なく何処にでもいるものだし、その観点からは特に同社を取り上げて非難するべきものでもない、と言えなくもないんですけれども、正規の事業者として公にサービスを展開しようとする以上、当然そんな言い訳は通じないわけです。さて今回はどう説明するんでしょうか。個々のドライバーが勝手にやった事だから同社に責任はない、とか言いそうですが、さて。
ところでこのUber、法的な問題はともかく、社会的には、また消費者にとってはどうなのか、少し前に気になって調べてみたんです。具体的には、従来のタクシーと比べてのコスト面のメリットの有無、またその程度ですね。ネットで手配、決済、評価が出来る点でサービス面で一定のメリットがある事は明らかでしたけれども、そちらは既存のタクシー業者でもある程度やろうと思えば真似出来ますから、決定的な相違点である筈なところの、個人所有リソースの活用によるコスト低減、その効果がどの程度あるのかが気になったわけです。
で、その結果なんですけれども。ぶっちゃけ殆ど違いがない、どころか逆に普通のタクシーの方が安い事もある位なのです。NYだと、料金体系は基本のUberXで基本料金$3に$0.26/分と$2.15/マイルに対し、NYC Taxi cabsでは基本料金$2.5に$0.4/分と$2.0/マイル。例えばJFK国際空港からgrand central terminalまでのルートだと、UberXの$60に対し後者では$45で、逆に普通のタクシーの方が安い見積りが出るのです。他の都市でも似たような感じ。
そりゃ、Uberのドライバーはそれなりに高給が期待出来ると謳われているのだし、自動車を走らせるコスト自体それなりに大きいのだから、そんな極端に安いわけはないだろう、とは思っていましたけれども、流石にこれはどうなの、と。加えて、Uberのドライバーは訓練・教育が不十分なケースも多く、従ってサービス面でもプロのタクシードライバーの平均には届かないと言われ、ドライバーによる障害事件等も頻発している有様なわけで。利用者側の、すなわち社会的なメリットが薄い以上、既存タクシー業界を潰してまで受け入れる積極的な理由に欠けるように見えるわけです。これでは各国で排斥に遭うのも当然でしょう。
そこに、今回の件ですよ。もはや単なるぼったくりの白タクと変わりません。サービス面はどうしようもないにしても、せめてコスト面だけでも何とかしておけよ、と。といって、タクシー業規制にはその料金体系も含まれるのだから、最初からそのアプローチには構造的な無理があったと言うべきなのかもしれません。むしろ、既存タクシー業者を片端から買収して、規制を骨抜きにした後に法改正を迫るような進め方を取る必要があったのかも、と思う次第なのです。今となっては後の祭りですけれどもね。'internet of things'の担い手として期待する向きも多々ある同社ですけれども、馬鹿馬鹿しすぎて冷笑すら浮かばないのですよ。
Dutch police arrest four Uber drivers in Amsterdam