3/20/2024

[biz] マイナス金利政策終了で開く地獄の釜

ようやく。長きに渡り続いたマイナス金利が終わりました。もっとも、事実上は既に終わっていて、それを今回ようやく追認したというだけの事なのですけれども。

当初は異次元の金融緩和の一環として、短期間の例外措置という体で始まった同政策ですが、その目的であった経済の成長が全く得られないまま、従って止め時を見失い、失敗を認められない政府・日銀の無能によって、延々と続いていた事は誰もが知っている通りです。

得られたものは株式等のバブルだけと言っても過言ではないでしょう。

一方、債権市場の機能喪失をはじめ、ゾンビ企業の大量発生に各種のバブル等、その副作用により決定的に取り返しがつかなくなったものの大きさも尋常なものではありませんでした。ただ、これだけ長く続けばそれも恒常的なものとなり、表面的にはそれなりに安定を見せるようになっていたのも事実です。バブルが安定というのもおかしな話ですが。

しかし、その歪で危うい安定もとうとう終わります。

原因は複合的ですが、直接の原因はインフレと言ってよいでしょう。ただ、目標としていた経済成長に伴うそれではなく、世界的な物価高と円安の二重要因による単純な物価上昇です。それによる国内経済への影響、特に国内消費の減少は既に深刻なレベルにあります。もはや輸出の増加では補えないほどに。

この状況を作り出した張本人である故安倍元首相と黒田元日銀総裁は、既に退場しました。安倍元首相が暗殺された事が、この異常な経済政策を終わらせる契機になった事に疑いの余地はありません。逆に言えば、氏が退場させられる事がなければ、今もまだマイナス金利は続いていた事でしょう。

それが良い事だったのか、悪い事だったのかは誰にもわかりません。個人的には、ここまで諸々の債務が膨張し、売ることも出来ない資産を日銀が抱えて身動きが取れなくなってしまっていては、多少時期が前後したところで大した違いはないだろうと思いますが。

ところで、マイナス金利解除の影響はどういうものでしょうか。既に各所で山ほど議論されているように、その予測は非常に困難です。言うまでもなく、各種の要素が絡み合って、時に増幅したり反発したりで混沌的な挙動を見せる関係にあるからです。例えば以下のような。

・円金利上昇=円の価値上昇

 主な影響 円高・円建て資産の価値上昇

      輸入コスト減・輸出減・国内物価低下・消費増

・資金調達コスト上昇 

 主な影響 投資減・経済活動縮小・倒産増・不動産市場縮小・バブル崩壊

      債権価値減

      金融機関増収(利息のみ)

上記の項目だけを見ても、各種の資産や通貨の価格への影響はプラスに働くものとマイナスに働くものが混在している事は明らかです。例えば、金利上昇により通貨単体として見た円の価値は上がりますが、国内経済の縮小や債権の価値下落(の見込み)によって経済活動と結合した資金としての円の価値は下がります。また同時に、消費の増加により資金としての円の価値は上がる側面もあります。さらに、為替市場を通じて投機的な動き等も加わりますし、貿易を行う企業はそれぞれレートを一定期間固定して実質的に独自の金利を用いた取引を行います。

本来なら、金利はその予測も制御も困難な経済活動を規律するための数少ないツールとして決定的な役割を果たす筈のものだったのですが、その喪失を政府・中央銀行が自ら進んでやってしまっていたのです。日銀があの状況、政府も債務で押しつぶされそうな現状にあっては、今更その機能を取り戻す事が出来るのかすら怪しいでしょう。

特に資金調達コストの増加は、およそ全ての商取引の現場に甚大な影響を及ぼします。長らくほぼ0だったものがそうでなくなるとなれば尚更です。

ゼロ金利解除と言っても、当然ながら金利が上がれば、1000兆円を越えて積み上がったあの国債残高は利払い費という形で政府の支出を破滅的に増大させます。他国のように数%の水準にまで上げる事は極めて困難というか、そこまで上がった時点で既に財政は破綻しているでしょう。1%の利払いにつき国家予算の1割超を持っていくのですから、数%となれば利払いだけで当然に支出の半分とかになります。無理です。借り換え前に償還すればいいと言うかもしれませんが、それはそもそも不可能です。

当然、その引受を担っている日銀も道連れになります。つまり国家の財政部門は崩壊します。従って、逆に言えば、破綻を避けるために金利は上げられない筈です。実際、それこそがこれまでマイナス金利が維持されてきた主たる理由なのですし。

しかし、だからと言って、例えば1%以内等の低水準に留めておけるものでしょうか。海外各国は当然のようにそれを遥かに超える水準にまで利上げをし、それでもインフレを制御出来ていないというのに。繰り返しますが、経済活動は元々制御困難なものです。今回の措置に追い込まれた原因たるインフレ等の流れが、金利を少々上げただけで落ち着くと楽観できる根拠は何もありません。

金利を本格的に上げる他に術がない、という残酷な現実が明らかになった時、政府・日銀は、どうするのでしょうか。何が出来るのでしょうか。何も出来ないのでしょうか。

要するに、溜まりに溜まったツケを払わされる時が、迫っているのかもしれません。

[gov] 日銀がゼロ金利放棄