先日発売され、色々微妙な評価を受けながらもまずまずの売れ行きを見せているiPhone6ですが、その陰でひっそりと部品メーカーがご臨終になっていたそうです。
iPhone6で行われた変更は、大画面化とNFC位で、実際のところらしさを感じさせる売りは存在しない程度のものだったわけですが、事前の噂では極端な薄型化とベゼルの縮小を実現するため、従来のゴリラガラスに代わってサファイアガラスが導入される観測が盛んに行われていました。実際、試作等は熱心に行われていたようですし、他にめぼしいネタもなかったので、違和感を感じさせつつも、そこそこ信憑性が無い事も無く、という感じだったでしょうか。
が、ご存知の通り、これは結局不採用に終わり、従来通りGorilla Glassのままでした。理由は主に2つ、第1に高コストになる点、第2に衝撃耐性があまり高くない点がネックになったものと見られています。で、そのサファイアガラス。これのサプライヤであるところのGT Advanced社がこの程Chapter11の申請、すなわち破綻に追い込まれたそうで。この倒産のタイミングからして、不採用になったのが直接の原因だろう点には疑いを入れる余地はないんじゃないかと。
おそらくアップルの要望に応えようとして色々先行投資をしまくった挙句にあっさり切られ、その損失・負債に耐えられず即死、とかそういう事なんでしょうけれども、これはなかなかに呆れた話です。
大手企業の、しかもAppleのiPhoneの基幹部品を売り込もうというのだから、その立ち上げが博打になるのは当然の事です。しかしだとしても、只でさえ実績の薄い新素材の導入には尋常ではないリスクを伴うところ、この種のガラス部分は品質、性質が最もシビアに要求される割に製造難度は非常に高いわけです。少なくとも安易な楽観の類は許されず、しかもサファイアガラスが製品に絶対に必要な欠くべからざる要素というわけでもなく、少しでも不安が認識されれば即採用見送りにされて当然な程度のものなわけです。そんなリスクまみれの案件に、おそらくはポシャったら即倒産、というレベルの背水の陣で望んだだろう点については、流石にクレイジーだと思うのですよ。何なんでしょうその特攻感は。
いやまあ、最低でも年間数千万台から、とかいうクレイジーな生産規模ですから、最低限の生産設備というだけで普通のベンチャーには命がけな投資が必要になるのは当然なんですが、それは普通に考えて、要するにあれこれのリスクに耐えうる体力のある企業以外はそもそも挑戦する資格が無い案件、と理解すべきものなのではないかと。少なくとも、そんな生死を賭けて勝負、なんてノリで挑まれても、そんな事ではいつ潰れて供給が途絶えるかわかったもんじゃないし、あまりにリスクが高くて、逆にアップルの方が躊躇する理由になってしまったのでは、とも思う位です。
まあ、実際のところは外部からは不明だし、そもそも今となっては世間にはどうでもいい話に過ぎないわけですが。アップルとしては地雷を回避して安堵しているのか、それとも元々そのあたりは承知の上で、GT社は上手く使い捨てられただけなのか。外野からではどちらとも分かるわけもないのですけれども、ビジネスの世界は無情です。南無。しかし、ここまで極端でなくとも、他にも無数に、Appleに売り込もうと無理な投資をし、しかしあえなく失敗し、注目を浴びる事すらもなく散って逝った会社や事業が沢山あるんでしょう。本件GT Advancedは、株価的には一時とはいえ実利もあり、もう少しで手の届く所まで夢を見る事が出来たのだから、その点では幸運な方だったとも言えるのでしょう。何とも業の深い。
しかしGT社、Apple Watch向けの部品供給も担当する予定だった筈なんですが、それはどうするんでしょう。流石にAppleが何の手当ても無いままとは考えられませんし、代替を既に確保してあるのか、それかGT社の事業をAppleが買い取るのかな?うーん。
GT Advanced Files For Bankruptcy