2/28/2011

[law] 米国が特許先発明主義から先願主義への転換を議論中

らしい。現在採用している先発明主義では特許が形骸化してしまっているということで、世界的に標準である所の先願主義に転換すべく上院議員が中心になって法案作成中とか。といっても、あまりにドラスティックな変更だけに批判も大きく、成立するかは不明との事ですけれども。先願主義は手続きを進めるスピードに優れる大企業を利するもので、個人や小企業のイノベーションを阻害するだとか、当面不要なアイデアも取り敢えず押さえておくために申請が激増して、現在ですらパンク状態の審査プロセスがさらに破綻するだとか色々。現に日本では多かれ少なかれそういう側面は見られるし、概ね尤もな懸念ではあります。

事の成否は兎も角、米国の外からしてみれば、衰えつつあるとはいえハイテク産業とその関連する知財・ビジネスの中心である米国において、基本的なポリシーが世界標準と共通化されるのは歓迎すべき事ではあるでしょう。ただ、先願主義でも先発明主義でも、紛争が起こった時には特許自体の有効性や帰属が法的に争われるわけで、本質的な意味でどちらが明確に良い、というものではないとも思われるのですよね。結局のところ訴訟文化の違いの影響とかの方が実務上大きかったりして。とはいえ、米国の特許は審査自体が形骸化してて、米国以外であれば特許性が到底認められそうも無いようなものが通りまくる、いわゆるザルな状況なのも事実なわけで、少なくともそれは何とかすべきだと思うし、いずれせよ何十年も放置されてきたことによる制度の齟齬を見直すというのは良い事ではあるでしょう。公平かつ建設的な改善がなされる事を期待する次第です。ただ、ここのところ米議会・政府は機能不全に陥りつつあるし、巻き込まれてフェードアウト、と言う可能性も高いとは思いますけれど。

Senators to Debate Patent Bill

[biz] もんじゅ故障で東芝の賠償金17.5億

少なくとも直接には何の利益も生んでおらず、今後の見通しすら立たないまま費用ばかりかかるという事で、いいかげんあきらめたら?と言いたくなるもんじゅですけども。

今回は、燃料交換用の装置が炉に落下して、その吊り下げ用の器具に欠陥があったからその分賠償と。大した事故ではない、とか言ってた筈ですが、復旧費用だけで17.5億もかかる時点で大したことないで片付けられるわけないでしょうに。金銭感覚が麻痺しちゃってんですかね。それとも、放射能が漏れるとか、メルトダウンとかいうような、致命的で回復困難なもの以外は大した事故じゃないって事なのでしょうか。困ったものです。

それは置いておくとしても、東芝については原発事業の過大ともいえるリスクの顕在化という意味合いもある筈で、国内ですら危ういというのでは、特に近年は海外への急激な拡大を推進して来ているところ、アフターも含めて、なおさら手回しが甘くなる可能性も高いでしょうし、少なからず不安を感じさせるものではあると思われます。一般論で言っても、事業を急激に拡大する際には、強気な楽観論に伴ってリスクを抱えがちになるものだし、特に東芝はリスクを過少に見積もって後からそのツケを払う羽目になる傾向が強いだけに、それが現実のものになる可能性は十分に高いものと言えるでしょう。どうなることやら。

もんじゅ装置落下、東芝に損害賠償請求検討 文科副大臣

2/27/2011

[law] 入試カンニング疑惑による業務妨害の主張は妥当か

うーん。大騒ぎですね。京大は偽計業務妨害で被害届を出す方針らしいですけど。試験結果が不正確になって、不正な合格者を出す事は業務に支障を来たす恐れがあるから業務妨害だ、という主張で。

当事者がそう認識しているのなら、その旨を主張するのは当然自由なのですけれども、果たしてその主張、ロジックは妥当なのでしょうか?正直微妙だと思うのです。特に被害の内容について。

カンニング行為が反社会的な行為である事は間違いないし、危険性の段階での告訴も可能ではあるし、本件だけを見れば告訴は別段不当とまでは言い難いようにも思われます。しかし、カンニングというのはぶっちゃけ入試に限らず、大学内での業務に関して、例えば単位認定に絡む各種試験等で少なからず発生しているし、レポート一つ取っても、本来は自ら作成すべき所、本件と同等の不正行為は日常茶飯事なわけで。京大と言えどその例外ではない事も周知の事実で、そちらの方も不正確な単位、学位の認定に繋がる恐れがあると言う意味では被害の程度、範囲も似たようなものの筈ですが、告訴等はせず、大半は目を瞑り、処分にかけるとしても該当分の単位認定取り消し程度、あっても停学処分までで、少なくとも内部で完結する類の話なのですね。退学にすらならない。

そこに、入試だからといって、この件に限って合格取り消し等の内部処分で済ませず、刑事告訴まで行くというのは、いかにも均衡を欠いているように思われるわけです。勿論入試の重要性が高いのも事実ですが、それは相対的な程度の話であって。今回京大が主張する内容の被害が真実刑事罰に値する程に深刻というのなら、逆に内部で発生している数多の不正行為も、程度の差こそあれ刑事告訴に値する筈です。しかしこれまで全くそうしてこなかったわけで。にも関わらず今回に限って行うというのでは、いま一つ説得力に欠けるものと言わざるを得ません。

一言で言えば、一貫性の無い恣意的な振る舞いに見えるわけで。主張された被害の内容も、結局の所、真実性、実質性に欠ける後付けのレトリックに過ぎないように思われます。もっとも、通常のカンニングと違って事が公になって、大学丸ごとメンツが潰されたわけで、怒って冷静さを失う類の声が支配的になるというのも、同時に権威の維持回復のために強引・過剰な示威行動を取るというのも、自然と言えば自然な振る舞いではあるし、それ自体は疑問という程ではないのですけれども。

しかし、少なくともまず事実関係の調査が先でしょ?実際に回答・結果に影響があったのかなかったのか。京大側の監督に手落ちは無かったのか。内部者が別の目的で行った可能性も無いわけじゃないでしょうに。それらの調査確認すらせず、仮説だらけのあやふやな状態のまま脊髄反射的になされた感じの今回の告訴方針発表は、さすがにいかがなものかと思うのですよ。

客観的に見て、大学側に手落ちが全く無かったかと言えばそんなわけもないんですしね。この問題での先進国である韓国の事例は日本でも広く報道されていたところ、日本の関係者がその可能性を認識していなかった筈はなく、韓国と同等の措置、金属探知機やジャマー、とまでは行かずとも、身体検査程度の対策を講ずるべきではあったとも思われますし。

あと、仮に受験生のカンニングだったとして、刑法的には偽計業務妨害罪位しか適用できそうなのがない、というのはわかるんですけど、もうちょっとマシな理由は付けられなかったものでしょうか、とも。ねえ。発信者の開示命令を得る為に必要な被害届の建前として立てただけの可能性もあるし、それならそれでいいんですけど、そうであれば例えば、所轄官庁の文科省の方でまとめて、国家的、公的な法益侵害の線とかで進めた方が自然だった気がするのです。もっとも結果的には似たような形になってるみたいですし、瑣末な事なのかもしれません。

-----追記
そうこう言ってるうちに話が大きくなって。
続き記事 [law] 入試カンニング騒動が行き過ぎでヤバげ

[law] 日弁連会長は取調べ全記録を主張

現案では冤罪の防止が出来ない、全記録すべき、と。さすがに検察もこれは無視出来ないでしょう、というかそもそもの案が保身に走った筋の通らないものだったわけで、議論はまたリセット、という事になるんでしょうね。一応歓迎すべきかと思います。ていうかこういう批判が来る事はわかりきっていたのだから、最初からちゃんとすべきところであった筈なんですけれども。

しかし日弁連側も、公の意見表明がこんなに遅れたのはなぜでしょう。何か調整でもしてたんでしょうかね。試行開始前とはいえ、異議があまり遅いと今更になってしまうのですし、迅速な対応を願う次第です。

最高検の可視化方針 「一部なら有害」日弁連会長

過去記事
[law] 取り調べは全て記録すべき

[note] 米大学の80%が受験者のFacebookをチェックとか

またミスリーディングっぽい話なのですが。

というのも、この80%というのは実態を問わず入試に関連した利用があれば全てカウントされているようなのですね。対象者の範囲や比率、チェックの方法、考慮する基準etc、各大学での利用実態はまちまち、というかそもそもFacebookのアカウント自体詐称も容易で公信性がなく、誤審に繋がる危険が高い以上、ごく一部の超有名人等を除く大半の一般学生については審査に利用出来る筈もない訳で。あくまで参考にする場合がある、とかいう程度と捉えるのが妥当でしょう。

すなわち、余程特殊な素養が意味を持つ分野とか、特別な実績があって、かつそれがFacebookに信用のおける形で表れている場合にのみ意味を持つのであって、そうではない大半の場合には、積極的には使われず、どちらかというとブラックリスト的なというか、明らかな不適格者のチェックというような消極的かつ副次的な利用に留まるのではないかなと。

大体、この辺りの話は危険なのですよ。受験生のプライバシーに属する部分までもひっくるめて選別基準に取り込む話なわけで。積極的な意味で採用してしまうと、そのあたりの情報の一般公開を半ば強制する結果になってしまって、致命的な弊害がある事は明らかなのです。既に一部では何でも公開するのが良いとかいう人がいるのは事実で、勿論そういう自発的な場合には問題ないのですが、一般的には到底受け入れられない話で。それを安易に、80%が採用してますよ、だからFacebook必須ですよ、と煽って強引に誘導するのは、事業を推進する立場のFacebook関係者としては当然の振る舞いなのでしょうけれど、無責任との非難を免れないでしょう。

SNSに夢を見るのは自由だし、ここまで普及したのは凄い事だけれど、社会システムとしては未だ信頼出来るものには成りえていないのですから。この間のBAN騒動とか見ても、全世界でウン億人とかいうのからして誇大で、色々と虚飾や歪みがあるわけでね。実名推奨といってもあくまで推奨、虚実が入り乱れているのが実態なのだから、それを踏まえて適切な範囲、用途での利用が求められると思うのです。

そもそも危険すぎて実名の開示すら躊躇される日本では論外なのですけれどもね。

REPORT: Facebook Profiles Are Now Part Of 80% Colleges’ Admissions Outreach

2/26/2011

[note] このところTwitterが重すぎる件

ていうかさっき書いてて、いざTweetボタンを押したら無反応になった挙句再読み込みするとキャパ越えとか言われてアクセスすら出来なくなったわけですが。

Twitterは確かに細かい話や脊髄反射的な感想の類を書き込むのに適しているので、まとまった文章にする程でもないそういったものはTwitterの方に書く事にしているのだけれど、最近なんだかんだで書き込もうとしても弾かれるというか応答すらしなくなる事が多くて困ります。書き込もうとする文章は短いとはいえ、逆に短くするために多少なりと気を使ったり労力をかけて書くのに、よし、と思って書き込もうとしたら弾かれる、というのには結構ストレスを感じてしまうのですし、何とかして欲しいものです。これだけ停止するのなら、もうそれ前提のシステムにしてしまえばいいのに。例えば、ローカルのキャッシュに保存しておいて、オンラインになったら反映するしくみにするとか。あと過負荷になったら書き込みの処理だけ遅延させて、読み込み側の応答は確保する、とか。頼みますよホント。

つい先日はGoogle Readerも重くて困ったわけですが、そろそろ代替も考えるべきなのかどうか。それはそれで面倒なんですが。うーん。

2/25/2011

[biz law] JR西車掌の通勤費不正受給

色々と妙な話で。何がって、JRの車掌がJR使って通勤するのに通勤費が支給されていたというのが謎です。社員が自社サービスを利用するだけなわけだから、そんな回りくどい事しなくても定期とか社員用のパスとかでいいんじゃないの、という気がするのですが。経費計上のためとかそういう事なんでしょうか。新幹線通勤で216万とかいうから馬鹿にはなりませんし。でも本来ならそれで切符なり定期なり購入すれば売り上げも上がるわけだから、差し引きあまり変わらない気がするんですけど。うーん。

やっぱり車掌だと通勤先も色々だし、フリーパスだと範囲外の不正利用が懸念されるし、一々専用の切符を発行するのも手間がかかるし、とかで、結局その都度経費的に処理した方がやりやすいんですかね。だとしても滑稽な話です。

JR西の車掌が新幹線不正乗車 通勤代216万円浮かす

[biz] NECの事業売却が進行中、今度は液晶

PCに続いて液晶もですか。この際だからまとめてやってしまおう、という話なんでしょうけど、今度は70%と、1/3の拒否権すら手放すほぼ完全な譲渡という事で、PCの時のようにシナジー云々とか言い訳すらしないあたり、開き直った感があります。譲渡先もPCと同じく中国企業という事で、NEC改めCEC、というのもあながち冗談ではなくなりつつありますが、中の人はどう思ってるのやら。

NECの液晶といえばハイエンドの代表で、多分に私も憧れがあっただけに、個人的には残念です。欧米ではNECは液晶メーカーとして知られている位ですしね。だからこそ買収されたのでしょうけれど。ただ、今回の買収で安くなるのならそれは消費者としては歓迎すべき事なのでしょうね。でも品質が落ちる可能性も高いし、微妙なところで。うーん。しかし先日のPC事業売却と併せて、プロダクト事業から全面撤退な感じになってきて、電気と言えるのかも怪しくなってきましたね。前述のCECどころか、CIC(China Information Company)?になりつつある感じ、というのは言い過ぎでしょうか。

本件は大した額ではないものの、それだけに先日のアンリツ株売却といい、抜本的な解決手段を持たず、自身を切り売りして当座をしのぐより他ない状況まで追い込まれている事が傍から見ても明白で、切迫感の強まってきたNEC。来年あたりはどうなってるんでしょうか、と聞くのも野暮ですかね。

NEC、中国企業と液晶合弁発表
NEC、退職給付信託名義のアンリツ株売却=純利益を押し上げ

過去記事
[biz] NECのPC事業譲渡成立
[biz] NECがPC事業をlenovoに譲渡
[biz] NEC負け組固定な感じ

そして当然のように下方修正。これだけやって赤字回避も厳しいという。
NEC、最終損益を150億円下方修正 11年3月期予想

2/24/2011

[law] Julian AssangeのSweden移送決定

ハニートラップにひっかかってしまい、スウェーデンで性的暴行の容疑で起訴され、英国からの国外移送の審判にかけられていたWikileaks主宰者のアサンジ氏ですが、あっさり移送の決定が下されたそうです。

決定書は長すぎて全部読む気にはなれませんが、掻い摘んで読むに、アサンジ氏側が懸念を示していたところの米国等EU外への転送の可能性は無いものと判断されているようです。その根拠として、その時にはメディアが騒ぐだろうから、とか言っているあたり、何かいい加減な印象もありますが、建前としては、正式に訴訟を受ける事が被告のためにもなる、という理屈のようですし、そこまで言うなら安全とかは担保されるのであろうし、さしあたって問題はないのかなという気もします。

しかしアサンジ氏側もすんなり従うかはまだわかりませんし、というか少なくとも抗告はするだろうし、最終的に拘束されるにしても、その際にはまたリークが追加される可能性も高いしで、当人も当局もその周辺も引き続き頭が痛いであろうなと。もっとも、一般市民からすれば特にどうなろうと関係の無い話ではあるし、そういう各方面への影響の小ささを考えるにつけ、今回の決定は、グダグダになってきたWikileaks絡みの諸々に区切りを付けてくれるものとして妥当であって、歓迎されるべきものなのかなと思うのです。

どこもかしこも、機密云々以前に見える範囲の問題で手一杯ですしね。偶然ではあるのですが、Wikileaksの事なんか気にしてる場合ではなくなった、という状況なわけで。それは不幸な事なんでしょうけれど。

The judicial authority in Sweden -v- Julian Paul Assange

ウィキリークス代表の移送 英裁判所が認める

2/21/2011

[law] 取り調べは全て記録すべき

と思う今日この頃。取調べ可視化の件についてです。

本件については先日、調書読み聞かせのみの可視化、という中途半端な方針が報じられました。しかし、取調べの手法自体、またその前段階の逮捕拘禁の手続きに問題があって、最終的にはそれらも含めた全過程における不法行為の防止、抑止が求められる以上、それは全く不適切不十分なものです。本来、逮捕ないし任意出頭の時点から公権力とのやり取りを全て記録してチェックすべきものであると思うのです。

そして当然これは特捜案件に限る話でもないのであって。先日の警察官による取調べ時の脅迫の件にしても、本件原告が録音していた事によってかろうじて発覚したものですが、記録されない大半の取調べの中では、類似の違法行為が公然と行われている事は間違いないのであって、その防止は絶対に必要であるし、記録の有無による影響の差はあまりにも明らかかつ致命的に大きいのですから、個々人の自衛に任せるべき話でも全くありません。単に記録しておけば防止が期待出来る事も明白であり、そのための機材、技術も揃っていて、従って必要性も実現性も十分なのですから、それを怠る事は明らかに不法であり、司法の側としても、不作為の責を免れないものと言えるでしょう。

大体ね、記録の範囲を限定する理由として、捜査への支障云々とか言ってますが、順序が全く逆です。まず全ての前提として警察組織とその活動が合法である必要があって、次にそれらが十分担保できる場合の例外として考慮すべき話であるわけで。現在進行形で前科が積み上がり、違法の疑いも強まるばかりの現状にあっては論外です。しかしそれらの主張が公然となされ、あまつさえそれに沿った方針が採られる現状には、そこまで愚かなのかと、愕然たる思いを抱かざるを得ません。

勿論、記録内容の管理方法、また公開の範囲、時期、方法等の手続き面では、諸々の副作用が起こらないよう配慮して制度を作る必要があるのは当然ですが、それは既に情報公開一般の法制でも実績のある部分の話でもあるし、十分合理的で受容される制度が実現出来る事もまた明らかだと思うのです。

あと、警察活動の全記録というと、レコーダー等の機材関連ビジネスも結構なものになるでしょうし、今は亡きライフログ系の実用化、それもエンタープライズ系という事で、新分野かつ発展性も高く、社会的にも経済的にも望ましい話だと思うのですけれども。もっとも現政権はそれどころではないでしょうし、次の政権に期待、でしょうか。

大阪府警警部補、任意聴取での暴言認める 地裁初公判
取り調べ可視化「自白調書読み聞かせ」のみ

2/19/2011

[biz law] 着うた配信独占の違法確定

初手から独禁法違反なのは明らかで、取り立てて見るべき所がある話では無いように見える本件ですが、逆にこれを各社が通ると主張して最高裁まで争ったという事実、またそれが示す各社の無法性には、コンプライアンスとか社会責任とか企業倫理とかいう言葉が虚しく感じられてしまうわけで、極めて残念なのであります。まず違法なのは知っていて、訴訟も多分に時間稼ぎ的な意図で争ったのだろうし、悪質過ぎるでしょう。同様な事例の防止のために、懲罰金とか課すべきだと思うのですよ。

「着うた」参入妨害、3社の敗訴が確定
「着うた」参入阻止、レコード会社側の敗訴確定

[law] 中国の言論弾圧強化

中東での一連の民主化運動の流れが中国にも波及して、中共は当然の如くそれを潰しにかかってるというだけの話ですけれど。胡錦濤主席がネット世論を管理誘導するとか公言してるあたり、今回はとりわけ切迫感が強く、一触即発な様子が伺えます。誘導とは言うけれど、そんな事が出来る筈もなく、単なる規制弾圧になる事は必然です。問題は、ソフト面、情報の統制だけで済むのかどうか。現在はまだ情報規制、またデモ呼びかけ等の扇動的な情報の削除で済んでいますが、状況が発展すれば、下手をしなくても天安門の悲劇再び、となる事が目に見えているたけに、双方とも命を粗末にする事の無いよう願う次第であります。

中国主席「ネット管理で世論誘導」 中東政変念頭に表明

「中国ジャスミン革命」 ネットでデモ呼びかけ広がる

[biz tech] 富士通のAndroid試作機が酷い

タブレット端末では老舗の富士通ですが、アンドロイドに関しては先日買収した東芝の事業が中心で、今回発表の機体は満を持して投入する意欲作・・・とその筋では期待されるところであった筈です。果たして発表されたモノは、スレート型のデュアルスクリーンという事で、折りたたみの出来ないNDSという感じ。確かにこれまでになかった斬新な形ではあるけれど、同一平面内に固定されるディスプレイを、あえて物理的に区切って分ける必要が何処にあるのかと、全く持って意味不明な仕様、各所での反応も概ね否定一色という体たらく。これは恥ずかしい。見た目だけなら純粋な退化にしか見えないわけですし、当然でしょうけれど。

もっとも、今回の機種の主眼はガワの部分にはないのかもしれませんけれども。プロセッサがTIのOMAP4というだけで十分新規ではありますし、上手く使えばこれまでのAndroid機とは一線を画すリッチな処理が可能になる筈、そういう高機能プラットフォーム的な部分の試作という事なのかもしれません。しかしそうだとしても、デモ等でもその辺りの内部的な部分をアピールしてる様子はないので、それはそれでよくわからないのです。

結局、今回のブツが、製品レベルには全く達しておらず、コンセプト試作機だとしても意味不明なのは事実で、国産タブレットの本命メーカーにかけられていた期待からしてみれば、失望モノと言わざるを得ません。まあ、富士通はPDA関連ではこれまでずっとWindowsMobile、タブレットでもWindowsべったりだったわけで、Androidなんて端からやる気がないのでしょう、と読むしかない感じで、とても残念なのであります。

ていうかねー。富士通の中の人達も、自分でもまさかこんなの欲しいとか思わんでしょうに。どうなっちゃってんでしょうかね。他社との差別化を図ろうとして迷走自爆したとか?うーん。

Mobile World Congress 2011:デュアルディスプレイのAndroid端末 WACアプリのデモも披露――富士通ブース

-----追記
NECのAndroidネットブックも発売されましたが、これまた誰が買うのという感じで、数年前にAndroid部隊を設立して延々開発した結果がこれかと思うと泣けます。物理フルキーボードが必須というのはわかるんですが、ならせめてコンバーチブル型に出来なかったものでしょうか。

2/18/2011

[note] 休憩その3

人に説明するというのは面倒な作業ですが、少しでも端折ったりメモにして渡すのを忘れたりすると、ほぼ100%相手の都合に合わせて曲解されるか忘れられるかして後々収集が付かなくなるんですよね。しかし十分に手当てする余裕がないからそうしてるのであって、それで駄目ならどうにもならないし、最初から切るしかなくなるわけですけれど。何とかならないものでしょうか。困ったものです。

2/17/2011

[biz] 中・米の高速鉄道事業に漂う微妙感

電力と並んで好調と言われて来た海外の高速鉄道事業ですが、各国で微妙な話が出始めてるようです。

中国では、既に運行開始してる路線がチケット高過ぎでオーバーキャパになってるとか。上海-成都で$350、飛行機より高いっていうんだから恐ろしい話です。ただ本線は広大な中国全土を横断する超長距離路線で、前述の区間は距離にして2400kmもあるのだから、距離当りにすればさほどでもない気もします。が、中国の物価基準からしてみれば当然高すぎるというわけですね。しかしもう1万キロ分位作っちゃったわけで、どうすんでしょう。

一方米国では大統領肝入りの高速鉄道計画が次々と取りやめになってるとか。今のところ、13路線中3路線ですか。決定権限が各州にあるのも米国らしいですが、半分近く国の補助があるにも関わらず、採算が合わない見込みだから作らない、と地元の側から却下出来るのは、流石に米国という感があります。翻って日本は・・・。もっとも米国は都市間の距離が鉄道で結ぶには長すぎるのだから当然ではあるのでしょう。千キロ程度でもローカル線になってしまうスケールですもんね。数少ない需要がありそうなカリフォルニアは金がない、という事で詰みつつある感じです。

そもそも、電車って1000km超えるような長距離の人員輸送には向かないんですよね。メーカー各社には残念な話ですが、元々需要がなかった、という事なので、すっぱり諦める他ないでしょう。ご愁傷様です。しかし予算が浮く筈なので、飛行機組とかは逆にチャンスかも。

他にもベトナムやブラジルでも微妙な話が続くし、英国も二転三転してるしで、気が付けば総崩れに近く、大山鳴動して鼠一匹、になりそうな期待外れ感が漂い始めた高速鉄道事業ですが、さて。

The Backlash Is Brewing Against Chinese High-Speed Rail: Here's Why It's In Trouble
フロリダ州の高速鉄道計画中止 新幹線輸出に打撃
High-Speed Rail Is a Fast Track to Government Waste

[pol] バーレーンでもネット遮断

エジプトの帰結を見れば、逆効果だとわかりそうなもんですけど。うーん。もっとも、バーレーンは実質的にも王政で、エジプト辺りと比べても権力者の地位、体制の自衛性は強いから、強権的な施策を取り易いであろうし、この種の力技で鎮圧できてしまったりするのかもしれませんけれども。

いつもの通りイランでもメディア遮断がなされ、イエメンにも飛び火し、いわゆるドミノ現象が起こりつつあるとの事で、体制の脆弱な小国のいくつかはひっくり返るかもしれませんね。というか、西側諸国はこの機に中東の民主化に向けて楔を打つべく関与を強めている筈で、事実上確定している可能性もあるわけですが。

しかしマクロな枠組みや見通しの話はさておき、エジプトでは死者が300人を超えていたという事実も明らかになって、やはりミクロには大量の悲劇が厳然としてあるという事実の前には、民主化万歳、と無邪気に祝福する気分には到底なれそうもなく、ただ彼らの行く末に幸福あらんことを願うより他ないのであります。

NYTのNIck Kristof氏によるTweet
The Mideast Right Now: Internet Shutdown In Bahrain, Violence In Yemen, Media Blackout In Iran

過去記事
[law] 情報統制国家エジプトの行く末
[law] Egyptから電話でTwitter投稿

2/15/2011

[note] しばし休憩

そしていつかは終わる旅。さよならだけの人生などいらない、と嘯いた詩人の時代すらも過去となり、人生自体が曖昧希薄になってしまった今にあっても、形さえあれば終わりは来る。終わりをもたらすために形をなし続けた芸術家の人生を偲びつつ、しばしの休息。

[biz] 中国で海外からの企業買収に審査制

過半数の買収はもとより、それ以下でも経営に影響がある場合は審査の対象になって、政府判断で不可に出来るとか。中国政府による外資排除は今に始まった事ではありませんが、この基準だと、合弁の比率をちょっと変えようという時にも一々審査が入るわけで、猫も杓子も中国進出に邁進する中、さすが色々きつかろうと思います。規模が大きい時には外交問題として処理も出来るでしょうけど、そうそう政府が出張るわけにもいかないでしょうし。

それよりも今後の展開の方がヤバげな気がします。というのも、中国政府としてはそもそも外資sucksで、利用価値のある範囲内で限定的に嫌々ながら許容しているだけなわけで。その立場からすると、今回の審査制導入は、将来的には事実上の強制召し上げとか、用済みとなった外資に対する排除を可能とする流れの具体化、下地作りである可能性が小さくないのですよね。さすがに勘定が合わなさげ、と諦める企業もあろうかと思いますが、ほとんど国ぐるみで中国頼みになりつつある現状、多くは退くに退けないわけで、さてどうなることやら。これまではうまく入り込んで来た訳ですし、案外上手くやるのかもしれませんけれど。

中国、外資のM&Aに審査制 安保上の問題を判断
対中投資の関門に

2/14/2011

[biz] 3Q後半インプレ

後半はそれなりに回復基調ではありました。補助金特需関連はそれなりに利益確保で今期は乗り切れそう、他も大体はリストラ効果で一息ついて、だけど来年度以降は何処もネタなしで中国頼みにつき曇り模様、という感じで、あまり大きなサプライズはありませんでした。という事で今回はお開き。補助金終了であっさりGDPも減少に転じましたし、ついに訪れた金利上昇で債権絡みの損失も拡大中につき、4Qの落ちっぷりは如何ほどか。次回のお楽しみ、であります。

[過去記事 [biz] 3Q決算前半インプレ]

2/11/2011

[biz law] Sandy関連で返品拒否は違法ですよ

返品拒否、平気でやってる店が結構あるみたいですね。交換にしか応じない、とか言い張って。ドスパラとか。

本件、民法で言う所の隠れた瑕疵であって、債権者すなわち購入者側は善意、かつ購入者がそれを知ってから1年以内という事で、瑕疵担保責任の要件が満たされており、従って購入者には、解除権と損害賠償請求権が自動的に発生します。無過失責任ですから、債務者すなわち販売店側の故意・過失は関係ありません。そして、これに反する、交換対応のみとかメーカー対応のみとか、あと一ヶ月以内の初期不良対応のみ等と定めた特約は全て無効です。

一応、販売店側には追完権すなわち交換対応を申し出る権利はあるものとみなされていますが、交換物すなわち同種の正常品の入手が不可能な以上、その余地もありません。また、その入手を待つ義務もありません。

という事で、販売店には、購入者からの解除すなわち返品、返金の申し込みに即応じる義務があります。さらに、それに付随する損害、例えば交通費・送料とか、撤去交換の工事費用とか、今回の件が無ければ発生しなかった各種費用の請求も当然に出来ます。拒否は違法なので、不幸にしてそういう違法な業者から購入された方々はご注意の程。その場合には、消費者センターにでも苦情を言えば大抵は応じるでしょう。それでも応じなければ簡裁へGO!

[過去記事 [biz tech] Sandy用P67チップセットに製造不良 ]

2/10/2011

[tech] iPhoneのセキュリティ崩壊

全自動で手早く簡単にクラック出来て、パスワード盗まれ放題という話で。今回の検証用ツールによるデモの例では6分でロック用のパスワードからGmail等主要アプリのパスワードを全抽出まで完了、と。これはヤバい。

一番のキモになる最初のクラック部分にも殆ど時間がかかっていないあたりからすると、ハッシュの逆計算に成功したか、もしくはそれらをバイパスするルートを開拓したか。もっとも、デモ用にクラックされやすいパスワードを使った可能性とか、色々怪しい部分も無きにしも非ずですけれども。

記事では紛失時に危険、という話にしていますが、道具立てにも特に特別なものを使うわけでもない容易さに加え、ほんの十分で事が済むスピードですので、紛失でなく短時間拝借されるだけでも、情報抜き取りから成りすましから何でも悪用され放題になってしまうのでありまして。iPhoneにおける殆どのサービスが崩壊しかねない、極めてヤバい話であります。

ただ、iPhoneがおサイフケータイに代表される電子マネー関係のサービスに未対応で、電子マネーサービス即崩壊、とまではならないのは不幸中の幸いでしょうか。大して変わらないような気もしますけれど。

といっても、Appleとしては到底放置出来る話ではないでしょうし、Jailbreakの辺りから規制強化すべし、というような話がまた出てくるのでしょうね。強化って言っても、有効な手段があるのかは怪しい所ですけれども。

Researchers steal iPhone passwords in six minutes (video)

2/09/2011

[biz law] 林原は会計監査人自体置いてなかったとか

なんという超展開。非上場だけど大会社だから完全に違法で、意図的なのも明らかです。さすがにこれは予想外、てっきり監査人を抱き込んでたものとばかり。一体何なんでしょうね。中国銀行はじめ債権者も確認してなかったとか言ってますが、とても信じられません。素人じゃあるまいし、融資の額、博打的な面の強い事業の性質からして有り得ないでしょう。少なくとも中国銀行は担保を取っていたとの話、抵当権の登記の時とか謄本見たりするでしょうに。やっぱし銀行もグルだったんじゃないかと、疑惑は強まるばかりであります。

しかし、詐欺師側の内部事情は置いておくとしても、資本金動かす時とか、役員変更の時とか、登記官は何をやってたんでしょうか。どう誤魔化してたんでしょうか。それともそもそも登記してなかったのか。色々とわからない事の多い事件です。

林原、会計監査人設置せず=中国銀、確認せぬまま融資
中国銀、破綻林原の「会計監査人」不在を確かめず 初の四半期赤字に

[過去記事 [biz law] 林原の粉飾額・期間が凄い ]

2/08/2011

[biz] 国内の決算報道でミスリードが酷い

今更の話ではあるんですが、トヨタの3Q決算について、海外メディアの伝え方と綺麗に正反対なのが目に付いたので。

3Qの決算発表に際して、通常注目すべきは9-12月の直近三ヶ月の業績であるわけです。それ以前の数値は発表済なのですから。しかるに、海外メディアは素直にその部分の数値を読んで、10%超の売上げ減少、営業利益半減、と報道するわけです。

翻って国内メディアは、何故か4-12月の累計の数値を取り上げて、売上増、大幅な利益増、と結論の所が前者と全く正反対な報道をするわけです。嘘ではないのだけれど、3Q発表における最大の情報である所の9-12月分での各種数値の大幅な減少を、既知であるところの4-9月の数値で隠しているわけで、どうしたってミスリーディングを狙ってるとしか思えない、不適切な内容には違いないのですね。

もちろん、補助金終了以降の国内販売台数の激しい落ち込みは誰もが知っていることだし、そもそも企業の業績については本来各人が決算短信等を読んで理解すべき所であって、スポンサーの意を汲んだ大本営発表になりがちな報道の解釈など一顧だにすべきではないのですが、個人による証券の売買も無視できない規模にある現状、メディアによる解釈に影響される部分もそれなりにある筈で、問題なしとすべきでもないでしょう。メディア各社には、いやしくも真実の代弁者たらんとするのであれば、それなりの誠実さが必要なのは当然な筈、本件のような行いは決して許容されるべきではないと思うのです。

海外: Toyota Operating Profit Falls 47 Percent, Forecasts Lifted

国内:
トヨタ、11年3月期の純利益4900億円 予想を上方修正
10年4~12月は営業益8倍

トヨタ売上高、5%増14兆3516億円 4~12月期

公式:平成22年 3月期 第3四半期決算情報 (平成23年2月8日)

2/04/2011

[law stat] 相撲の八百長統計分析論文

長年の八百長疑惑がついに確定という事で騒乱の最中にある大相撲ですが、取組結果のデータから八百長の存在を統計的に炙り出した2002年の米Chicago大Steven D. Levitt教授による論文が凄いと聞いて、軽く読んでみました。

肝心の回帰分析における変数とかの説明が端折られてて少し怪しい感じが漂いますが、経済畑の人の論文にはよくある事だし、面倒なので無視。この辺の変数等のモデル及び手法の正当性を信じるなら、グラフやら表には、8勝目の勝ち星に関する勝敗の偏りがはっきり表れている、ように見える構成になっています。モデルの構成や分析の手法自体はさほど高度なわけでもありませんが、逆に割とシンプルな感じな分、信憑性は高そうです。といっても、一般の人が読んで理解出来るわけではないでしょうけれども。

そしてそこから読み取れる傾向たるや、まさに絵に描いたようなという感じで。頻度分布の7勝と8勝部分の二項分布からのあからさまなズレ具合に始まり、勝たせてもらった相手には次の取り組みで負けて借りを返してるとか、特に後半戦での偏りっぷりとか、あまりに露骨で引きますね。メディアのガサ入れがあると一時的に偏りが消える所とかも、統計的には疑問も感じますが、とてもリアルです。

本件は既に広く報道もされていますから、本論文に基づいた追及やらが、多分にまともに理解出来てない人達から伝言ゲーム的にカオス感を強めつつ行われていくのでしょうけれども、追及を受ける当の相撲業界の人達はさらにこういった方面の素養が皆無で、理解の出来ない人達なのだから、始まる前からもう訳が分かない事態になるであろう事は必然、色々面白い反応、やり取りが見られそうです。当人達はまさか、どういうことなの、と色々と愕然としている事でしょう。完全に自業自得ですけれど。

公益法人認定の却下もちらつく中、内容も概ねまともそうに見え、またその出自から権威性も十分に備えた本論文は、おそらく行政の側も注目するであろうし、その持つ意味合いは小さくないでしょう。八百長は今回が初めて、以前は無かったと火消しに躍起になっている関係者の主張を真っ向から否定するものでもあるわけですが、統計的なものである為に個々のケースが特定されず、常套手段であるところの尻尾切りが使えない、というのが味噌ですね。今度ばかりは角界も年貢の納め時でしょうか。個人的には、相撲自体既に国技と言うにはファン層の偏りが大きいと思うし、別に一般財団法人扱いで何の問題もないと思います。あとNHKの中継廃止も歓迎しますよ。ええ。

7勝7敗なら千秋楽の勝率75% 八百長、統計で証明?

原論文は下記。Levitt教授のHPから。他にも読みやすいフォーマットの別ソースとかもあったけど省略。
Mark Duggan, Steven D. Levitt: "Winning Isn’t Everything: Corruption in Sumo Wrestling", American Economic Review, 2002, 92(5), pp. 1594-605

2/03/2011

[biz] ユニクロの急進的な海外志向

店長・管理職の海外赴任に続き、新卒8割外国人ということで、急速に日系資本の外国会社になろうとしているファーストリテイリングですけれども。どうにも危うい感じがします。

この種の経営戦略については、多くの企業が殆ど脅迫的にグローバル化を迫られている事もあって様々な分析・議論がなされているわけですが、少なくとも、日本人はダメで外国人は優秀だから大丈夫だとか、外国人を雇えば海外で成功出来る、というような単純な話ではあり得ず、あくまで場所毎時代毎に、各々の社会的なコンテクストの中で受け入れられるかどうか、それに寄与出来るか否かが問題であるわけです。その意味での成功の見込みがさほど明確なわけでもないだろう現状にあっては、とりわけ先行投資的な、長期的な戦略としての意味合いを持つ人材戦略面で、ほぼ全てのリソースを海外という大雑把なくくりで一律にシフトする、というのは、いかにも雑に思われるし、突っ込み過ぎとの印象が拭えません。どうにもリスクがありすぎるように見えるのですね。戦略上の布石というよりは、焦って一発逆転を狙っているような、無理をしているような印象も受けます。国内はジリ貧気味、海外に活路を見出すより他ない現状にあって、危機感はあって当然ではあるのでしょうけれども。

もちろん成功すれば全てよし、ではあるんですけれども、急激なポリシーの変更、しかも実績がさほど無いところでの急激な拡大路線、それも海外というのだから、大した度胸です。場所によっては大衆向けの値段ではない事も多々あるのですし。ともあれお手並み拝見ですね。

あと、事業面の話はともかく、本件にはやはり日本を代表する企業が日本人の採用を殆ど止めた、という意味合いもあるわけで、社会的にはこちらがクローズアップされるだろうし、日本国内では非難が避けられないのでしょうけれども、そちらはどれ位の影響が表れるのか。さしあたり追随する企業はあまり多くはないでしょうけれど、ついに日本型の労働慣行が崩れ始めたと見る向きもあるでしょうし、それに危機感を覚える方面からの、何らかの政策的な動きもありうるでしょう。それらの全体的な変化も含めて、将来的に吉となるか凶となるか。社会における企業の意味合いも時代の流れとともに変わり行くもの、それは真実その通りではありますが、後からあれは過ちだった、では済まない、社会の根幹に関わる部分の話だけに、十分な予測と確証の下に、適切な判断がなされる事を望む次第です。

12年採用の8割1050人を外国人 ファストリ、国際化加速

[biz law] 林原の粉飾額・期間が凄い

30年近く、売上金やら売掛金とかを年間売上に相当する300億も水増ししてたとか。資金を調達するために決算書を良く見せる、というのはベンチャーにはよくある話なのでしょうけれど、この期間、額は凄いです。よく続けられたものだと逆に感心させられるし、一体どうやってたのかと興味も沸きます。監査役とか完全にグルなのか、それとも監査すら騙せる程に辻褄を合わせて誤魔化す方法を確立していたのか。発覚の経緯も今一つよくわかりませんし。おそらくは当初試みた私的整理を提案する際の資産評価の段階で露見したのでしょうけれども、これだけの粉飾すなわち債務超過を抱えていて私的整理というのは無謀というかあり得ない筈で、単なる悪あがきだったのか、それとも発覚しない見込みが得られる程の巧妙さがあったのか。はたまた債権者や評価人等の外部にも共謀者がいたのか。貸付額が年間売上げの数倍と、投資額が大きくなりがちなバイオ系にしても異常に大きいあたり、銀行側の共謀が疑われるのは間違いないでしょうし。

これだけ大きな事案ならそのうち詳細も明らかになるでしょうけれども、気になる事が多すぎて困ります。

粉飾決算「昭和の時代から」 バイオの林原、更生法申請

----追記
監査役はグルっぽいですね。なら大抵の事は出来たでしょうけど、さて取引先を使ったのか、子会社か。

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続報。予想外の展開です。
[[biz law] 林原は会計監査人自体置いてなかったとか ]

2/02/2011

[biz] Appleがコンテンツで他社締出に転換

Sonyのreaderアプリを拒否した、と。早晩kindleアプリ等にも波及するであろうわけで、その影響は凄まじいことが予想されるとあって、各所で議論が沸騰しています。

何がまずいって、今回の措置が進むと、iPad、iPhoneが汎用のプラットフォーム足り得なくなってしまうわけで。その意味でユーザはもちろんApple自身にとっても適切な措置とは思えません。Kindleのような独自規格の専用端末ならともかく、iPhoneやiPadのような汎用端末のユーザとしては、コンテンツをAmazonで買って読むのも、可能性というだけだけれどもReaderストアで買って読むのも、本来ユーザの自由であるべき、というのが共通認識の筈です。やりたい事は人それぞれであって、それを自由に行う為に汎用デバイスを使うわけで。それをAppleの都合だけによって制限する事になる今回のような措置は、必然的に地位の濫用、不当で横暴な行いとして反発を持って受け止められる筈です。

Appleの主張としては、この種の排他措置については元々規約にはあって、その厳格な運用を図るだけ、との事ですが、少なくともこれまで完全に認められて来たものを突然禁止にするというのは無茶な話で、利用者が納得するわけがないのですよね。しかも客観的に正当な理由もないし。無茶苦茶です。普通に訴訟になりかねない事案であろうと思われます。

本件は支配的なシェアを得た事による驕りの表れという事なんでしょうけれども、こういう事をすると、普通のユーザは離れてしまう、というか普通に使いたいように使える他の製品に流れてしまうのがわからないでもあるまいに。格好よくても、やりたい事が自由に出来なければ仕方が無い訳で。そして折りしもAndroidがアプリの充実を図っている状況での今回の措置は、戦略的にも不適切に思われるのです。驕れるものは久しからず。かつてのMacの失敗がダブるわけですが、懲りませんねAppleも。らしくないのか元来に戻ったのか。これもJobs不在の影響なのでしょうかね。別にいいんですけれども。

An Apple E-Book Rule Tightens

[biz] ホンダ正規ディーラーが取り込み詐欺

北海道は苫小牧の正規ディーラーが倒産して、代金支払い済みの顧客には返還も納車も、連絡すらなしと。倒産にはつきものの至って平凡な取り込み詐欺の話ですが、正規ディーラーとなるとホンダそのものの信用に直結する話だけに、ホンダ本体も流石にこのまま放置する訳には行かないでしょう。

しかしもし、新聞社が販売店で起きた不祥事に取るような、我関せずといったチャレンジングな態度で臨むとしたら、それはそれでバッシングとか凄い展開になりそうで、興味が惹かれる面もあるのですけれども。

ともあれ先日の子会社の違法取引の件といい、ホンダのイメージが崩れていきます。業績は好調なので大した問題ではないのかもしれませんけれども、傍から見てて気持ちのいい事ではないのは確かです。

ただ、ホンダ個別の話で片付けられるかというと、それも怪しい話ではあります。補助終了以降の売り上げ激減は凄まじく、公式発表の30%程度を遥かに超えて、ディーラーレベルの実態では半減以上の壊滅状態、と聞いていましたが、その影響が早くも表れたという面もあるものと思われるし、そうであれば他社も含め、広く同様の事例が続きそうで、その意味でも嫌な印象を感じさせる事件であると思うのです。だからといってどうしようもないわけですけれども。国を挙げて需要の先食いに手を出した以上、その反動減は当然の帰結なのですから。

苫小牧のホンダ販売店「納車せず連絡絶つ」

[過去記事 [biz law] ホンダが水産物取引で損失 ]

[biz tech] BingのGoogle検索模倣

部分的にではあるけれど、検索結果を丸ままコピーしてる場合がある、とGoogleが実証してちょっとした騒ぎになってるようです。Googleがわざと検索語と本来全く関係がないページがトップに出てくるように設定して、社員でその検索を自演したら、Bingでも同じページが出るようになったとか。

といっても、コピーしてるから違法だ、というような単純な話ではなく、IE、Bingツールバーの利用規約には、ユーザによる検索結果の情報収集・反映を行うという条項が元々あって、ユーザーによる検索の傾向を反映させたに過ぎない、という側面もある、との事。直接真似た訳ではなく、結果として同じになっただけ、という主張ですね。割合もさほど高いわけではないらしいですし。

そうは言っても、ただ乗りされる側のGoogleとしてもはいそうですかと引き下がれるわけもなく、Bing側も下手すると死活問題になりかねないので逃げを打とうと必死になり、双方の主張が飛び交う事態になってるらしい、と。

本件は明確性に欠ける部分も多いので、正直あまり発展しそうな気はしませんが、テクニカルな面も大きく、特許とか不正競争防止法とかの想定していない新しい問題の側面もあるようにも思えなくもないし、検索とは何ぞや、といった検索の定義、品質の問題とも絡んで議論が交錯して、もしかしたら長引くような気がしないでもないかも。何処で線を引くかの一応の基準位は確立しないと、収めるに収められない部分もあるでしょうしね。

元記事の筆者は、本件自体は結果的な話という事で置いておくにせよ、基本的に他の検索エンジンの結果を模倣するようなやり方はされるべきではない、との意見で、結論としてはそれで良いと思うのですけれども、そこに至る道筋が付けられるのかどうか。

気になる点としては、双方から感じられる印象の対照性でしょうか。Googleがユーザの検索内容や結果を一切ランクに反映させてないと言い切ってるのには、本当かなあと眉唾しつつも感心する一方、BingがMSらしく当然のようにユーザ情報を収集してモロに使用している姿にはやはり大いに引かざるを得ない、といった風な。こういう微妙な話に予断は禁物ですが、やっぱしMSは真っ黒、変わらないなあと呆れつつ、この調子だとMSがまた自滅するかも、と思ってしまうのです。それならそれですっきりするし、いいんですけどね。

Google: Bing Is Cheating, Copying Our Search Results

2/01/2011

[law] Egyptから電話でTwitter投稿

出来るようになったんだって。国際電話でボイスメールを出すと、Googleがテキストに変換してTwitterに#Egyptタグ付きで投稿してくれる、と。

しかしこれ、投稿できるだけなんですよね。投稿者側にTwitter側から情報を届けることは出来ないわけで。これまでも普通に国際電話での外国への連絡は出来たのだし、代理での投稿自体も可能だったのだから、実際の意味合いとしては特に新規な効果があるわけではなさそうです。政府による遮断に対する抵抗の意思表示としての意味合いはあるんでしょうけれど。

後は、Googleにしてみれば、一向に普及しないこの手の音声変換技術の宣伝という意味合いもあるんでしょう。その意味合いでは、ちょっと中途半端な感は否めませんけれど。やはり、リツイートとかを音声で流したりする感じで、双方向の完備的な代替サービスとして出した方が良かったんじゃないかなと。VoiceXMLとか色々そういう基盤は持ってる筈なんですけどね。もっとも、あまり色々出来ても、それでややこしくなると使ってもらえなかったりするので、まずはシンプルにした方が良い、という判断なのかもしれません。

と私は殆ど反射的にそういう技術的な事を考えてしまうのですが、翻ってみればエジプト国内の騒乱は悪化するばかり、死傷者の数も増加の一途な状況にあって、本件のように言論の自由云々に関する事に重きを置くのは適切ではない面もあるでしょう。当然、第一に事態の解決が必要なのであるから、指導者には犠牲が増える前の速やかな退陣を願う次第です。ただ、退陣した後にさらに混乱が増幅し、収集がつかなくなっても本末転倒ではあるので、後継の社会体制を構築出来る見込みがあれば、の話になるのですけれども。欧米諸国の中途半端にも見える対応には、そういう懸念があるのであろうし、結局の所、行き着くべき先が見い出せないという悲劇的な状況にあるのかもしれません。しかし、少なくとも死者の増加だけは止まって欲しいと願う次第なのです。

GoogleとTwitter、ネット遮断中のエジプトでのツイートを可能に

[過去記事 [law] 情報統制国家エジプトの行く末]

[biz tech] Sandy用P67チップセットに製造不良

久々にIntelやっちまったな、という事で。SATAコントローラーに関する部分でハード的に不良があって、速度低下等が引き起こされるとか。でめでたく出荷停止。CPUそのものでは無いので、いつぞやのpentiumのエラッタよりは大分マシな事案なのでしょうけれど、それでも250億の損失が見込まれるとか。CPUだと全部Intelが窓口で交換出来るだろうけど、MBだとアセンブリメーカーが間に沢山入ってて非常にややこしい面もあるでしょうし、金銭的なものより手間の方が大変そうです。喜び勇んで購入した人たちはご愁傷様です。もっとも初物ってのはこういうもの、それもまた醍醐味と捉えるべきですかね。リコール費用はIntelが持ってくれるんでしょうし。無理か。まだ出始めたばかりなので、数量的にもユーザー層的にも比較的対応しやすい範囲なのが救いでしょう。しかし期待のSandy Bridgeにケチがついてしまいました。私もそのうち試そうかと思っていただけに残念です。

ちなみに、P67と限定しているのはIntelのカスタマーサービス発の情報で、H67チップセットが問題ないと確認されたわけではないらしいです。まあ普通は全部ですよね。

Intel finds Sandy Bridge chipset design flaw, shipments stopped and recalls beginning

こっちではノート用もデスク用も全種アウトとして損害を800億と算出してますね。
Intel, Finding a Chip Flaw, Expects to Lose $1 Billion