4/04/2025

[biz pol] Liberation. from what?

Liberation Dayです。

周知の通り、米Trump大統領が、原則全ての米国への輸入品に10%超の関税を追加で加える大統領令に署名しました。

国別変動分の税率は貿易赤字の額に応じて加重され、当然ながら輸入超過が常態化している日本に対しては比較的重く20%超、最大の輸入超過国である中国への税率は計50%を超えます。

目的は貿易赤字の削減です。貿易赤字は米国が搾取されている証拠である。これは是正されなければならない。だから輸入を減らし、国内へ生産拠点を回帰させよう、というわけですね。

貿易不均衡の是正という目的自体は理解しうるものです。そのために生産拠点を国内に移転させよう、というのも至極自然かつ妥当な発想です。それが出来れば、同時に国内経済も拡大するでしょうしいいことずくめです。

しかし、その手段として用いた関税の導入・加重は、おそらくその目的・意図の通りには機能しないか、機能しても殆ど効果は得られないでしょう。

生産を国内に移す、というのはまさしく言うは易しの典型です。それに莫大な資金が必要になる事は言うまでもない話ですが、工業製品であれ資源であれ、それぞれ生産には様々なものが必要になるわけで、資金だけあっても絵に描いた餅です。

土地にインフラ、各種設備とそれを適切に扱える訓練された労働者、そしてそれらを整備する時間と各種リソース。どれをとっても一筋縄では行きません。

特に時間の問題は致命的です。生産拠点等の立ち上げには少なくとも数年単位の時間がかかります。移転に踏み切ったとして、それが完了する頃には政策責任者たるTrumpはいません。そして、次の政権が関税政策を維持する保証はなく、むしろその可能性は極めて低いでしょう。もし政策が転換されれば、投下した資金を回収する事も出来ず、破綻するしかない。それがわかっていて、移転する事業者などいるでしょうか。

また、如何に米国が広大で豊富な資源を抱えると言っても、それ以上に莫大な国内需要を自国内で全て賄える程でもありません。特定の地域に依存する希少資源は無論、原油等の比較的偏在する資源も足りない分は輸入せざるを得ない。それらは、単にコストが上がるだけになる。

結果として、国内の供給は不足し、それを補う輸入品の価格は上昇し、インフレが進む。採算が合わなくなった企業が破綻する。生活を維持出来なくなる人も増える。需要は減り、経済の循環が縮小する。まさしく不景気になるだろうわけです。

近年はほぼ投機の場と化し、fundamentalsを反映する事は殆どなくなってしまった各種金融市場も、これには流石に素直に反応し、全面的に評価額を大きく下げました。とりわけ元凶の米国では、goodbye401k!等と皮肉る声が溢れています。

Elon Muskの一連の横暴にSignalgateとも相まって、民主党支持者は無論、共和党支持者からも反発に転じる人が増えています。Fox系とかの無条件に擁護するメディアは健在なんですけれども、それは擁護になっているのか?逆効果では?という位に意味不明で見ていられません。当然、批判する側はそういう擁護も盛んにあげつらって揶揄しています。あいつら救いようのないアホだ、と。

TrumpはこれをLiberationと呼びました。解放。一体何から解放されるんでしょうか。資本主義から? 理性から?それとも、自由から?

いずれにせよ、意味合いとしては犯罪者や狂人がその犯行にあたって法や倫理その他諸々の思考を放棄するのと似たようなものなのでしょう。問題はそれを摘発し裁く者がいないという事ですが、そこは諦めて自衛に努めるほかないでしょう。自衛のしようもないだろう米国向けの輸出関連の人達はご愁傷さまです。

さしあたり、株式等の市場での投資収益に頼った人生設計には、一時的にせよ別れを告げなければならないんじゃないでしょうか。逆に言えば、国家ぐるみのねずみ講、投機という名の博打頼りの社会経済からの脱却のいい機会にはなるのかもしれませんね。もっとも、その先に堅実な社会があるとは期待し難いのも事実なんですが。

4/01/2025

[pol] Marine Le Penが公金使い込みで有罪判決、被選挙権停止。仏極右崩壊

仏極右系指導者の筆頭であり、Macron大統領の対抗馬として近年支持を拡大し続けていたMarine Le Penが有罪判決を受け、被選挙権停止となってしまったそうです。

容疑は、2004年から2016年と12年にも渡り、EU議会の補佐官用の資金を、自党(National Rally)の職員への給与に私的流用していた、というものです。彼女だけではなく、他に同党所属でEU議会議員として務めた8人及び職員12人も同容疑で訴追され、無罪判決を得たのは1人だけとのこと。要するに党ぐるみでカネについて真っ黒でしたと。

期間、規模、流用した資金の性質等を併せて見れば、如何に彼女が仏政界において重要な地位にあると言っても、アウトになるのも致し方なしでしょう。Le Penとその支持者達の叫ぶdemocracyの危機、等というお決まりの捨て台詞が虚しく響きます。

なお、本判決はまだ1審なので確定ではありません。ほぼ確実に上訴もなされる見込みとの事でもあります。が、日本とは違い、上訴をしても被選挙権停止の効力は(上訴裁判所が取り消さない限り)消えないそうです。停止期間は5年。(なお、上訴に伴い拘禁や罰金等、その他の刑の効力は停止するそうです。被選挙権だけ別扱いな理由はなんでしょうね?)

しかるに、一般に上訴の審理には数年かかるとのこと。判決の内容からして、審理中に取消がなされる可能性は限りなく低く、その間は被選挙権は復活しないものと見られています。

つまり、Le Penは事実上次の仏大統領選には出られない、と言ってよいだろうわけです。勿論、党の顔と多数の中核メンバーをまとめて失ったNational Rallyも総崩れ必至です。お疲れ様でした。

言うまでもない話ですが、今回の判決はEU全体としては歓迎すべきものです。対Trump、対Russiaで連帯を強めるEUにとって、その中心的役割を担う仏の右傾化とそれによる不安定化は大きな懸案の一つだったところ、このタイミングでのその主要因たる彼女と同党の失権はあまりに都合が良すぎて裁判への政治的な介入の気配を感じずにはいられませんが、それ自体が正当であれば問題はないでしょう。

綺麗に懸案が片付いたわけではなく、まだドイツをはじめ各国に大小様々な不安定要因はありますが、とりあえずまとめ役の仏が安定するなら、EU全体が内部から分裂瓦解、というような破滅的な危機はさしあたり避けられそうで一安心です。

とはいえ状況の変わる速度も程度も激しい昨今ですから、束の間の平穏、あるいはそれ自体錯覚に過ぎないのかもしれませんけれども。代わりがすぐに出てくる可能性も高いでしょうしね。それ自体はしょうがない話なんですけれども、新興勢力が揃って平和とは真逆の方向にばかり向かおうとするのはどうにかならないものなのでしょうか。

French court finds far-right leader Marine Le Pen guilty in embezzlement case

3/14/2025

[pol] 中途半端な知識は時に身を滅ぼす

石破首相も終わり、でしょうか。

元々憲法解釈等で素っ頓狂な自説を披露する等して、法律に関する正確な知識・理解に欠けているところを伺わせており、そのうちとんでもない失敗をやらかすのではと、大いに不安を感じずにはいられなかった首相ですが。案の定というか、やってしまったようです。

事案自体は極めて単純です。一年生議員15名に対して各10万円相当の商品券を配ったとのこと。政治資金規正法違反(21条の2)である事は明らかです。 

当然に追求を受けた石破首相は、個人的な土産であり政治活動上の寄付ではないと主張しているようですが、一考の価値もありませんね。そもそも会食の土産、の時点で意味がわかりません。なにそれ。

しかも、同様の金品の配布はこれまでにもやっていたと口走ったそうで。本人は慣習的な意味での正当性を主張したつもりなのかもしれませんが、社会一般にすらそんな慣習はないし、仮にそのような慣習があったとしても、厳格に規制されている政治家への寄附の違法性を阻却するものとは到底考えられず、そうである以上、何ら反論になっていません。どころか、それはむしろ余罪の自白そのものです。流石に恐れ入りました。

ただ、その言だけを見れば苦し紛れの世迷い言とも取れるお粗末な物言いですが、その他の石破首相の言も合わせて見ると、本人は本気で合法だと思っていたようにも見えます。 そんな危うい認識でこれだけ長い間議員として活動をして、よく今まで摘発されずに済んだものだと、悪い意味で驚きを覚えずにはいられません。

勿論、首相は立法府の一員ですから、法律とその規定についての知識をそれなりに有してはいるのでしょう。しかし、彼の言葉の端々からは、法律を、自分を含めた社会全体を規律する客観的なルールではなく、自身に都合よく解釈し得る形式的な建前と捉えている事が伺えます。

その点、首相は法学部出身だからある程度正式に学んだ経験もある筈、なのですが、おそらく法律自体にはあまり真摯に向き合わず、表面的にしか付き合って来なかったか、あるいはかつては持っていた法に関する諸々の精神、姿勢を議員として過ごすうちに失くしてしまったのか。

本来、法律の各規定はそれぞれの趣旨に従い、個々の事情を勘案しつつ合理的に解釈すべきものなところ、彼はしばしばその場その場で自身の都合に合わせて到底合理的とは言えない独自の解釈を開陳し、しかもなぜか強弁します。明文の規定がある場合にそれがないと思い込んだり、逆に規定も学説もない場合にそれがあると思い込む事も。当然、誰の支持も得られません。

おそらく石破首相には、それらの、法律についての正確な知識がないのです。足りない、というだけではありません。個々の規定について、自分に十分な知識があるのかないのか、規定に関連する事柄について自身に適切な判断、発言が出来るのか出来ないのか、その判断も出来ていない。

断片的で不十分な知識を、自身の稚拙な思い込みで都合よく補填した結果、時にあのような不合理な発言が生まれてしまう。指摘を受けても、訂正する事も出来ない。自分でも何処が間違っているのか、何が正しいのかわかっていないから。

自分の中では筋が通っている。自分の知識は正しいと思っている。だから、何故非難されるのか理解できず、反発する。しかし理論的な裏付けもない、あやふやな知識しかないために筋立てた反論が出来ず、出来ることと言えば強弁か、でなければ揚げ足取りや詭弁の類ばかりで他者からすれば逆ギレそのもの。挙句の果てに開き直り。

後から自身の発言を振り返って誤りに気づいても手遅れです。言い訳をしようにも、自身がその道を閉ざしてしまっているのですから。知識は力ですが、それが中途半端だと、逆に自身の首を締める事もあるのです。自身でも気づかない内に。怖いですね。

紛うことなき自業自得、身から出た錆で、周囲には呆れられ、見限られる。石破首相の今の状況はそんなところじゃないかと思うのです。元々仲間が少なく、四面楚歌に近い状況だった事もありますし、流石にもう首相としては終わりなんじゃないでしょうか。もしかすると政治家としても。 

[law] 石破総理のトンデモ憲法論に困惑

3/08/2025

[PC] Windows11の24H2強制適用でPCが死にかけた

ひどい目に遭いました。いやほんとに。

何かというと、Windows11です。多分にその最新の大型アップデートである24H2のせいでPCが死にかけたのです。

最終的には生還させる事が出来たのですが、何日もに渡って、ぶっ壊れたとしか思えない、しかもその挙動がころころと変わる不可解な状態が続き、それに翻弄されて精神的なストレスは尋常ではありませんでした。あと作業にかかった時間、労力も。

概要をまとめると、下記のような流れでした。

[概要]

・24H2の適用が強制になり、サブのミニPCに気づかない内に適用される

・ミニPCが頻繁に落ちるようになる。

・次いでOSが起動しなくなる。LED点灯,ファン回転,無反応等、挙動はまちまち

・色々試行。ファン回転orLED点灯等の頻度が減り、ほぼ無反応ばかりになる

・それでも悪あがきをしていると、ごく稀に起動に成功

・起動成功時に数点設定を変更し、24H2の累積パッチを当てる。不具合解消

という感じです。数日に渡っての悪戦苦闘でした。

悪あがき〜の段では正直9割方死んだかと思い、代替機調達の検討を進めていました。その作業は徒労に終わったわけで、安堵はしつつも少々複雑な気分でもあります。

以下は細かい部分を補足したメモです。長いことPCを使ってきましたが本件のような状態に陥った経験はほぼなく、他でも起こり得る話なのかどうかは極めて怪しいのですが、似たような症状が出た場合の参考になれば幸いです。そもそも起こって欲しくないのですけれど。一応、原因についての個人的な推測も載せていますが、確証はないのでご参考程度に。

[詳細メモ]

ユーザー諸氏もご存知の通り、Windowsの大型アップデートの最新版である24H2がつい先日windowsupdateで強制適用の対象になりました。当然ながら、私が使用しているサブのミニPCも漏れなく対象に含まれていたわけです。

なお、対象のPCはいわゆる中華ミニPCです。メーカーはTRIGKEY、APUはJasper Lake世代のN5095A、メモリはDDR4のモデルです。 使用期間は1年半強。使用頻度は数日に1度の起動で、各数時間程度の稼働でした。流石にこの期間、またその程度の使い方で壊れられるのは信頼性が最底辺の安物にしても少々納得し難く思われたところです。

以前から、設定パネルのwindowsupdateの項目に24H2を任意で適用出来る旨が表示されていた事には気づいていましたが、周知の通り24H2に関しては既に色々と致命的な不具合が山ほど報告されていたので、可能な限り適用は遅らせたい、適用が避けられないにしても不具合が解消されてからにしたい、と思いスルーしていたのです。

が、勿論microsoftが配慮してくれるわけもありません。そんな気遣いが出来るならそもそも不具合だらけの状態でリリースする筈もないのですから。そして容赦なく、不具合が解消される事もないままに強制適用されてしまったのです。バックグラウンドで告知も警告もなく。

そして始まった悪夢の時間。

症状としては、時系列順に以下の通りです。

1. 初期 突然OS自体が落ちる

そのまんまです。特に重い処理でもなんでもない、ただの事務作業中にプツッと電源が切れて落ちるのです。これ自体はマザーボードの故障時や熱暴走時、またUSBハブ等の周辺機器の不具合の際等に割とよく見られる症状なので、ハードの故障かと冷や汗を流しつつも、再起動はするので、PCのメーカー(とmicrosoft)に呪詛を吐きながら未保存で消失した分の作業のやり直しをしたりしていました。

しかし当然ながらこの手の不具合が自然と治るはずもなく、事態は悪化します。

2.中期 起動しなくなる

何度か作業中に落ちた後、立ち上がらなくなりました。結果としてはそれだけの話なのですが、質の悪い事に、その後電源を入れようとした際のLEDやファン等の挙動がコロコロと変わって一定せず、単純にハードウェアがぶっ壊れたとも判じ難い状態でした。なので、諦めるに諦められず、色々と試行錯誤する羽目になったのです。

なお、この間試した事は、USB機器等の取り外し、本体を分解して掃除&メモリ等を抜き差し、CMOSクリア、ACアダプタ等の電圧チェック、等です。

症状の例としては、概ね次のような(2-1,2-2,2-3)挙動がほぼランダムに発生しました。

2-1. 電源ボタンを押してもうんともすんとも言わない(何の反応もない)

2-2. ACアダプタを抜き差ししただけで、電源ボタンを推してもいないのにLEDが点灯してCPUの冷却ファンが回り始め、しかもその状態が続く(ファンが回り続ける)。しかしその間、画面には何も表示されない。

2-3. 電源ボタンを押すと、一瞬ファンが回ってすぐ電源が切れ、その後は2-1と同じになる

他にも、ごく稀にBIOSの起動画面が表示される事もあり、また更に稀にそこから進んでOSのログイン画面まで辿り着く事はありました。ただ、これらの場合はいずれもすぐに落ちてしまってログインまでは進めない、極めて不安定な状態でした。

この不安定さと、比較的頻度が高かったのが2-2の症状であった事から、熱暴走か、でなければ温度センサあたりが逝ったのかと疑いました。もちろん発熱は全くしていないし、温度センサは壊れやすい部位ではない筈な事もあって、その見方もあまり有力とは思えなかったのですが。

症状的にハードウェアが逝った可能性は高い、しかし完全に壊れたと言い切れるわけではない、と判断に迷いつつ、考えうる操作の組み合わせを試しましたが、改善の兆しは見られませんでした。しばらく試行錯誤を繰り返し、徒に時間を浪費する事になります。 

そして現実は非情でした。症状は改善するどころか、悪化へと傾いたのです。

3.終期 殆ど基盤が完全に壊れたように見える

2で行った操作をしても、LEDは点かず、ファンも回らない。当然画面も出ない。無反応。つまり、2-1.の状態が殆どになったわけです。

ここに及んで、その症状からして基盤の故障が原因である可能性が高く思えた事から、復旧を諦めかけました。実際、代替機の調達も検討していたのです。

しかし、殆ど無反応ではあるけれど、稀に反応がある。であればハードウェアが完全に壊れたとも言い切れないのでは、と半ば諦めつつも未練たらしく比較的長い時間の放置を絡めて色々試していると、ハード面の反応が見られるケースが見つかったのです。

4.蘇生期

反応が見られたのは、主に次のような操作(?)を行った場合でした。

・電源ケーブルを抜いてしばらく放置(数時間〜)した後に電源ケーブルを刺し込む

こうすると、高確率で2-2の状態になるようになったのです。起動はしないけれど、LEDが点灯してファンが回り続ける、という症状です。

そして、またなんでこんな挙動が、と理解に苦しみつつそれを何度か繰り返していると、ついに決定的な変化が現れました。OSの起動に成功するケースが発生したのです。

のみならず、起動に成功した後は、それまでの不調が嘘のように正常かつ安定的に動作するのです。恐る恐るログインし、色々と操作をしてみても、落ちるそぶりもありません。

もちろんこれ幸いと、まずデータ類のバックアップを取り、次いでアップデート時に不具合の原因になりやすいとされる高速スタートアップを無効化。

しかし、再現を願いつつシャットダウンすると、また起動しなくなってしまいました。

だけれども、ついに掴んだ解決への糸口です。一度成功したのだからと、またケーブル抜き放置からのケーブル差し込みを繰り返していると、やはり稀に起動に成功するのでした。起動後の動作は問題ない事も同様です。

この段になって、ようやく原因はハードウェアではなくソフトウェア、すなわちOS(とBIOS)の方にあるのでは、と思い始めます。つまり、ブートの最初期の段階で躓いているのでは、と。

ではソフトウェアの何が問題なのだろう?そういえば24H2がそろそろ強制適用される時期だった筈。確認すると確かに適用されている。いつの間に。不具合の出始めたタイミングと完全に合致しており、これが偶然とは考えにくい。

24H2が深刻な不具合を多数引き起こしていた事は知っていました。その中にPCが落ちるとか起動しなくなるというものがあった事も。おそらくこれが原因だ。

という流れで、やっと原因が24H2であるらしい事に気づいたのです。この時の脱力感は半端なかったですね。Microsoftへの憎悪も当然感じました。ふざけるなと。

ここまで気づいてしまえば、後は簡単です。強制適用直後に不具合に陥ったのなら、24H2の不具合に対処するためのパッチはまだ適用されていない筈。これをあてればいい、とネットワークに接続してwindowsupdateを実行してみると、24H2の累積アップデートが降ってきました。当然適用。

適用後は、それまでの不調が嘘のように普通に起動するようになったのです。再起動も問題なく出来るようになり、一連の不具合は全て解消されました。

不具合の発生から解決まで、一連の事の次第は以上です。 

[具体的な原因についての推測]

それで、結局具体的には24H2の何が障害になっていたの?という疑問が残るわけですが。これについては色々調査したものの、今に至るまで確証はありません。

仮説はあります。多分にセキュリティ関連、特にセキュアブートの部分にバグがあったとかではないかと思うのです。

というのも、イベントビューアのログ等を確認したところ、当該PCでは以前からセキュアブートに問題があったらしく(自覚はありませんでした。おそらく購入当初からそうなっていたものと思われます。なおTPM2.0は有効)、それに応じてエラーが記録されていました。

なおBIOSを確認したところでは、セキュアブートは有効に設定されていました。なのに何が問題でエラーが出ているのか、それは推測するにも情報が乏しく難しい。もやもやします。

この点、24H2の起動に関する不具合の大部分はBIOS(UEFI)の更新で解決するケースが報告されている事、また24H2ではTPMも含めたハードウェアに関連するセキュリティ回りの大幅な変更(厳格性の強化)が行われたらしい点等を併せて考えると、セキュアブート回りで想定と異なる挙動があった場合にOSが起動に失敗するバグがあった可能性は低くないと思われるのです。その真偽を確認するのはこれまた困難なのですけれども。

もしそうであれば、本件のような不具合が生じるor生じている可能性は実はものすごく高いのでは、と考えて、背筋が寒くなりました。こんな推測は外れていた方がいい、とも思います。もしそうでも、既に今更というか手遅れでどうにもならない話なんでしょうし。

[最後に]

何にせよ、ひどい目に遭いました。対処に費やした数日に渡る時間と労力は勿論の事、解決までミニPCがまともに使えず、その間当該PCで行う筈だった事務作業等が滞りもしました。原因の分析と推測が正しければ、私にはMicrosoftとPCメーカーに不法行為ないし製造物責任の義務違反に基づく損害賠償を請求する権利があると思うんです。 少なくとも10万くらいは。

しかしMicrosoftもPCメーカーも、24H2に限らずこの種の損害に対して補償をした例は殆どありません。まさしく無責任。これだからWindowsをメインで使う気にはなれないんです。

とはいえ、これでもまだサブだったから被害がマシだった筈なのです。もしメインだったら、と思うとゾッとしますね。ちなみに、今回そのPCを使っていたのは、Windowsでしか動かないアプリを使わざるを得ない作業だったからです。そうでなければ誰が使うものかこんなもん。

 Linuxならこんな事は起こらないのに。。。世の中の標準がLinuxに移行する事を願わずにはいられません。たとえそれが不可能だとわかっていても。

3/05/2025

[pol] 米国中心の世界秩序の終焉

ひどかったですね。Zelensky大統領とアメリカ首脳連との会談。

話が全く噛み合っておらず、あまりに醜悪で、見るに耐えませんでした。

特にVance副大統領は一体何がしたかったんでしょうか。最初からまともに話をするつもりもなく、もちろん援助を続けるつもりもなく、ただ自身の嗜虐性を満たすために、相手の窮状に付け込み理不尽な難癖を付けて、挑発し辱めた上で屈服させて悦に入ろうとしていたように映りました。

そして当然に決裂。もはや米国には頼れない。期待する事も出来ない。米国にその意思がないのだから。苦悩に満ち、悲壮感も色濃いZelensky大統領の言動には、そういう諦めがありありと見て取れました。おそらくは、他の殆ど全ての国の指導者や市民も、同様の思いを抱いたのではないでしょうか。

UkraineとRussiaに対する一連の振る舞いを見る限り、米国は、自国領土の近隣地域とIsraelのような自国内で影響力を確保しているごく少数の例外を除く、ほぼ全ての地域について、その安全保障に関わる事を放棄しようとしているように見えます。

否、それどころか、GreenlandやPanama等の近隣諸国、それにGazaやUkraine等の紛争地域に対する姿勢は、武力行使にこそ及んではいないものの、明らかに侵略者のそれです。もはや米国はRussia、Chinaと同様の、ならず者国家の一員に成り下がりました。

善意の協力者としての建前を捨て、圧倒的な暴力を盾にして、財産を差し出せ、領土をよこせ、属国になれと要求する。しかもあらゆる発言、提案、約束を、その時の都合に合わせてなかった事にさえする。

このような振る舞いを見て、米国を信頼できると考えるような者はいないでしょう。最低限の判断力があれば、要求に従ったところで裏切られるだけ、そう悟り、どうやってその侵略・干渉を回避ないし緩和するか、身の振り方に頭を悩ませる事になるのです。

Russia、China、そして米国。大国が揃って武力による侵略に傾斜するのは、ある種の必然なのでしょうか。おそらくそうなのでしょう。倫理の欠如した権力者にとって、武力はあまりに便利なツールです。面倒な交渉も政策もすっとばして、およそ全ての犯罪が思いのままなのですから。脅迫も強盗も、もちろん殺人も。ほとんど全ての独裁者が、善良な市民の敵に堕ちる所以はそこにあるのでしょう。その点、米国も例外ではなかったというだけの事です。

米国では、国連からの脱退さえ現実的な選択肢として取り沙汰されています。米国が世界の警察と言われた時代は、既に過去のものになりました。多極化を強める世界にあっては、むしろそれは自然な事なのかもしれません。

欧州の事は欧州が。中東の事は中東が。アフリカの事はアフリカが。アジアの事はアジアが。そして、米国の事は米国が。その地に住む人がそれぞれに決める。争う。自国を脅かす者は誰であろうと打ち倒すべき敵となる。米国もその例外ではなく、むしろRussia、Chinaと同列の侵略者に位置づけられる。

かくして大国は独裁的な覇権主義に染まり、それぞれの利益のみを追求し、その国土を拡大させるべく侵略を目論む。侵略を受ける近隣諸国はその脅威に怯えながらも生存をかけて抗う。存亡の危機を前にして、必然的に各国は軍事力の強化を際限なく進め、生産力を低下させ、生存に必須ではないものを切り捨てる。

訪れようとしている世界のあり方が、近代化以前の、原始的な世界のあり方に回帰していくように見えるのは、多極化のもたらす自然な帰結と言うべきなのか、それとも退化と言うべきなのか。いずれにせよ、米国中心の世界秩序は終わろうとしています。

その行き着く先に、悲劇の少なからん事を、そして、避け得ない破滅が訪れない事を願いつつ。

2/20/2025

[biz] 米EVトラックNIKOLA破産

EVバブルの崩壊を実感させる出来事がまた一つ。

米NIKOLAがChapter11の申請をして破産したそうです。

かつてTESLAの後追いで沢山生まれたEVメーカーの中でも、名前からしてとりわけパクリ感の強かった同社ですが、既に殆ど忘れられた存在になっていました。私自身、そういえばそんな会社もあったね、と今回の報を聞いて思い出した位です。

破綻自体は、まあ、そりゃそうだろう、としか。同社が開発・製造していたのは大型トラックですが、EVはその巨大なバッテリーの重量が致命的に大型車とは相性が悪く、重すぎて例えば日本国内では法令上の重量制限に引っかかって殆どの道を走れないという、わけのわからない代物になってしまっていました。 

さらに、数年前にはモックアップを走っているように見せかけたプロモーション映像で資金を集めて詐欺で訴えられたり、全車リコールをやらかしたりと、色々と不祥事が絶えなかったそうです。なお、投資詐欺等で訴えられた創業者で当時のCEOのTrevor Miltonは既に有罪が確定しています。(4年の実刑+1m$の罰金)

それでも年に数十台程度は売れていたようですが、採算が合うわけもなく、当然のように毎年数億$レベルの赤字を垂れ流し続け、この程ついに資金が底をついた、というわけですね。株価は既に殆ど下がりきっていたようですから、関係者も市場もみな織り込み済みの結果なのでしょう。

むしろ最初からその構造上事業として成り立たないだろう事が明らかだったのに、よくそんな体たらくでここまで保った、と評するべきなのかもしれません。

その意味で、十分な実体を備えない殆ど詐欺同然のスタートアップも、投資をする側が実体に頓着せず、最低限の精査すらしようともしない(あるいはその能力がない)ために、最低限の外面的な体裁と流行のネタに絡んだ話題性があれば巨額の資金を集める事が出来てしまう、バブル生成機構としての株式市場を含めたスタートアップ環境の病的な現状を象徴する一例であったとも言えるのかもしれない、とそう思うのです。

太陽光バブルは既に遠く過ぎ去り、さほど時を置かずEVバブルも破綻しました。しかし同様の、実体がないのにあたかも実体があるかのように見せて無知・無頓着な人から資金を集め、資金が集まっている、という事実のみによって得た仮初の価値によってさらに資金を集め、ガワに使ったネタの神通力が切れたらゴミになる、という詐欺同然の仕組みの投資対象は、見た目だけを変えて日々生成と消滅を繰り返し、途絶える気配はありません。

現時点でその代表的な立ち位置にあると言えるだろう暗号資産も、バブルの生成と崩壊を無限に繰り返しながら今の所は存続していますが、さてあちらはいつまで続くのでしょうね。 NFTは終わった感がありますし、有象無象のmeme系の暗号資産についても同様に終わりが見えているように見えます。 

BTCやETHについては正直先が読めません。その仕組み上維持に必要となる計算リソースのコストはあまりに重く、それ以上のバブルの膨張を続けられなければ維持出来ないだろう事は明らかであり、膨張が止まれば終わらざるを得ない、それは間違いないでしょう。

しかし、虚像のバブルがそうと知られながらここまで長期間に渡って膨れ上がった例も今までになく、当然にその終わりに直面した経験もないために、先行き及び着地点の予想が困難なのですよね。それ自体に実体的な価値など無い事は他と同じなのだし、危ういにも程があるのは事実なのですが。

Nikola goes bankrupt, to sell assets in latest EV market turmoil

2/08/2025

[biz pol] 当事者不在で勝手に決まった事にされる恐怖のTrump's deal

日本製鉄によるUS Steel買収の件で、Trump大統領が石破総理との会談の席でまたよくわからない事を宣ったそうで。

曰く、"過半数の持分(majority of stake)を取得せずに多額の投資をする事になるだろう"、と。

これを素直に読むなら、発行済株式総数の半分以下の範囲での出資&業務提携、という意味合いであるように思われます。まさか予約券なしの社債発行とかじゃないでしょうし。

仮にそうだとして、具体的な出資額は次のような感じでしょうか。

現在のUS Steelの時価総額はおよそ$8.3billion、1.2兆円。その半額だと6000億程度。1/3なら4000億。確かに多額ではあります。日本製鉄の時価総額は3.6兆円程度ですから、その1割から2割弱程度の資金を投入する計算になります。

日本製鉄がその資金をどこから調達するのかはわかりませんが、自己資金で賄うには厳しい額でしょうから、おそらく基本的には株式を追加発行して調達するのでしょう。この金利上昇局面で金融機関からの借り入れは博打が過ぎるでしょうし。

何にせよ、経営権を握らないのなら、出資自体は金融機関がするのと同種の純粋な投資になります。である以上は、リターンがプラスになる見込みがなければ話になりません。少なくとも、資金調達コストをペイするだけの収益を上げた上で資金を回収出来る見込みが立たなければ実行出来ないでしょう。

ですが、US Steelの経営状況、また今後の見通しは知っての通り非常に芳しくなく、むしろ資金だけ出してもすぐに食いつぶされて終わり、になりかねない状況です。

普通に考えれば、そのような危険な状態の企業に、金だけ出して経営には口出しせず黙って見ているだけ、などという条件で多額の資金を出そうという者はいないでしょう。そうでないなら、とっくにファンドなりが出資して、そもそも外資たる日本製鉄などに出る幕はなかった筈です。

必然的に、今のUS Steelに資金を提供するには、その経営を抜本的に改善する施策とセットでなければならないわけです。そして、その施策の実行を担保するには、経営権を取得しなければならない。ゆえに、議決権の過半数取得は出資に際しての欠くべからざる条件になる。経営危機に陥った企業の救済の大半が買収の形を取る所以です。

なのに、Trump大統領は、金だけ出して口出しはしない、という条件を出して、しかもそれが既に決定事項であるかのように言ったわけです。Trump大統領はもちろん、その話相手の石破総理も含め、出資交渉の当事者が誰もいない場で。当然根回しも何もありません。

意味がわかりません。何の権利・権限があってそんな発言をするのか。US Steelはともかく、日本製鉄がなぜそのような案を飲むと思えるのか。そもそも仮にその案の通りにするとして、US Steelの経営危機自体は解決しないわけで一時凌ぎにしかならず数年後に破綻してしまう、それじゃ意味がないだろうと。

本来そんな事は一々指摘するまでもない話な筈だし、両政府の管轄部門を含め、関係者は当然よくわかっているだろうに、トップがアホだとこんな無茶苦茶になるんですね。目を覆うばかりの惨状とはこの事です。

とりわけ、日本製鉄は今頃大混乱でしょうね。。。担当者はストレスで死ぬんじゃないでしょうか?日本政府も同意した事にされて、しかし純然たる私企業同士の話に口出しする権限も筋合いすらもなく、否定しようにも正面切ってTrumpの顔を潰すわけにもいかず、経産省も外務省もどうしたものかと途方に暮れているのではないかと。おそらくは米国側の産業回りの担当部署も。

当該発言の際には、日本製鉄のNipponをNissanと言い間違えてもいた、という冗談のような話もあるそうです。Trump大統領はマジでボケ始めているのでは?との疑念もちらつきます。就任したばかりの今からのそれは洒落になりませんね。勘弁してほしいものです。

いや、正気で言ってるならそれはそれで困るんですけれども。いやはや。

Gazaの件といい、お前部外者だろうが無茶苦茶言うな案件が連発していますが、そういうのは流石に迷惑でしかないのでやめて頂きたいですね。

2/05/2025

[biz] ホンダ・日産の経営統合、あえなく破談

まあそうなりますよね、としか。むしろ成立すると思ってた人っているんでしょうか。公表から一ヶ月あまり。ホンダ・日産の経営統合の件、具体的な組織上の手続きに入る事もなく、また株主からの反発等を受けるまでもなく、経営陣同士の交渉、その初期の時点で早々に破談したそうです。

救済される側の日産の側から撤退した点は少し意外だったというか、いやそれは殆ど部分的廃業にも等しいリストラ要求とホンダに吸収されるも同然の合併形態・比率等に我慢ならなかったというだけなのでしょうけれど、それでも存亡の危機にあるのは事実なわけで、一体日産はこれからどうするつもりなんだろうと疑問を抱かずにはいられないわけです。

今の日産にホンダ以外の、今回ホンダが要求したであろうより良い条件、つまり対等な立場で合併等を申し出てくれるあてがあるとも考えられません。本件によって日産に抜本的なリストラ等をする気がない、すなわち経営状況の改善が望めないという事が明らかになってしまった今となっては尚更でしょう。もはや同業他社による救済の道は閉ざされたも同然です。

である以上、もはや日産には独力で立ち直る以外に生き残る術はない事になります。

言うまでもなく猶予はさほどありません。事業自体、強みらしい強みもなく、手札は無いに等しい。組織は腐敗しきって機能不全。それでいてプライドだけは山より高い。そんな日産が、残されたわずかな時間で、経営統合という目標もなく、外部からの圧力もなく、自律的に体質も含めた事業の抜本的な構造改革など出来るものでしょうか。正直不可能なのでは、と思わずにはいられません。

さよなら日産、と別れを告げる日はそう遠くないのかもしれませんね。そうなったとしても、完全に自業自得なので同情する気も起こりませんが、行き詰まった企業というのは無残なものだなと、しみじみ思うのです。

[biz] 無理筋に見えるホンダ・日産の経営統合 

<補足: ホンダの言い分も酷い件>

とはいえ、今回のホンダ側の言い分も大概ではあって、到底支持出来ない酷いものではあります。

ホンダは、日産をホンダの子会社にするという、当初の合意から大きく逸脱して、基本的な枠組みを自分に都合のいいように大幅に変更する重大な要求をしておきながら、日産側に殆ど検討の時間を与えず、その上で意思決定が遅いと宣ったわけです。

公表前の水面下での話ならいざ知らず、既に基本方針も公表されている以上、そのような重大な不利益を伴う変更の是非の判断を日産側経営陣が独断で出来るわけもなく、社内外との調整検討説得に多大な手間その他の困難がある事は明らかであるにも関わらずです。

救済する側される側として事実上力関係ははっきりしていたとはいえ、少なくともその時点での建前上は別企業として当然に対等な立場の交渉相手であり、そもそもこれから一つの企業体として仲間になろうという相手に対し、あまりに傲慢かつ不誠実で理不尽な振る舞いと言わざるを得ません。正直ドン引きです。

そのような扱いをあからさまに受けて、日産側が屈辱を感じなかった筈はありませんし、もはや信頼できないし経営統合など論外、と判断するのも仕方ないでしょう。その意味で、日産側にも同情すべき点は大いに認められるのです。経営危機云々は別にして。

2/04/2025

[pol] 予想通り?世界を振り回すTrumpに試される平常心

Donald Trumpの大統領就任から2週間。激動、というべきなんでしょうか。何か違う気もしなくもありません。

何にせよ、概ね予想通りとは言え、洒落にならないレベルの過激な大統領令の連発に世界中が振り回され、精神的にとても疲れる日々でした。それでも、人は慣れるもの、な筈です。数ヶ月もすればきっと。・・・多分?

これまでの振る舞いを一期目と比較して見ると、個人への攻撃的な言動は殆どなく、その代わりに特定の属性毎の集団にターゲットを絞っている点に違いがあるように見えます。

各々の行動に際して何も根回しもせず、合憲性すら考慮せず、周囲を混乱に陥れる点は同じなのですが、対象が桁違いに広く、また規制等の程度が前例がない程に過激なため、個人から企業団体まで、一瞬にして危機的状況に見舞われる人たちが膨大に発生し、各所で当然に阿鼻叫喚の大混乱が生じました。Trumpが大統領の権限について理解を深め、より効果的な行動を選択するようになったものと評価できるでしょう。

米国籍の出生地主義の廃止は早々に違憲との司法判断から差し止められ、連邦政府の補助金・貸出金の一律停止についても司法により一時差止措置が取られましたが、それ以外の、米国憲法による規制が原則として及ばない対外的な政策については抑止が困難で、個々に標的となった近隣国等の対象との間の交渉に委ねられています。

相手が国家であれば、アメリカ側が圧倒的に優位とはいえ、何もせず黙って受け入れる程弱くもないわけで、対抗措置の応酬が当然に始まり、その損害が割に合わないとなれば和解がなされ、結果として当初懸念される程の深刻な事態への発展までは至らないケースが多いでしょう。

交渉が不可能ないし困難な相手なら?言うまでもありません。不法移民のような交渉の余地のない相手は無論、DEI関連職員等のマイノリティには抗う術はなく、淡々と排斥が進められていますね。このあたりはTrumpの公約の中核的な部分ですし、法的にも問題は殆どありません。このまますんなり行くところまで行くでしょう。

流石にカナダ・メキシコへの25%の関税については、その目的(オピオイドの流入抑止等)に比してあまりに国内経済への影響が大きすぎるし、報復措置もきつく、主に経済界からの反発を受けてあっという間に殆ど事実上の撤回に等しい延期に追い込まれました。このインフレ下でさらに何割も上乗せとか、米国民からしたら何の冗談だって話でしょうしね。

しかし、中国への10%追加についてはそのまま実行されそうです。もっとも、中国はWTOに提訴する構えを見せていて、提訴されれば間違いなく米国は負けるでしょうから、そう長く続くわけではないかもしれませんが。

とまあ、やっている事は過激ではありますが、実のところ概ね公約通りでもあります。その意味で驚きはないのですけれども、程度の面で予想を超えていた、という向きも多いようです。そういう意見については、正直甘いのでは、と言わざるを得ません。

明確に国民の多数の支持を得て大統領に復帰したTrumpには今更恐れるものもためらう理由もなく、1期目より過激になるだろう事は目に見えていました。これまでの言動からおよそTrumpが実行し得る事は原則として全て為されるものと想定すべきです。

もっとも、インサイダーなど知ったことかと無価値な暗号資産を売り出して儲けようとした件など、大多数からも想定外だろう権力濫用の類もないわけではありません。とはいえ、そのレベルになるともう予想とかしても無駄だろうし、影響もたかが知れているでしょうから、事が起こった後でその都度対処すればいい話なのかもしれません。

疑心暗鬼は百害あって一利なし。無警戒は難しいでしょうしするべきでもありませんが、過剰な心配はしないに越したことはありません。落ち着いて見れば、大多数の人にとってTrumpの振る舞いが実際に利害が絡む点はそう多くはありません。平常心を心がけましょう。

ただ、軍事関連についてだけは別です。軍事政策でのやらかしは、およそ取り返しのつかない事になるので。その意味では、Trumpが軍事関連には一貫して消極的な点だけは救いと言えるでしょうね。どうかこのまま乱心を起こさずにいてくれますように。

[pol] インフレに翻弄される米国、その先に待つもの