米国の選挙が(ほぼ)終わりました。共和党の完勝という形で。
要因はもちろん多岐に渡りますが、本質的には激しいインフレに伴う一般市民の生活苦に起因する民主党政権への不信任によるものと思われます。
現大統領Joe Bidenはインフレにはほとんど無力だった上に認知症による醜態を晒して失望を深め、その後継として擁立されたKamala Harrisもその主張が理念優先で具体性に欠け、実生活の改善を期待し得るものではなかった事で、今まさに生活に苦しんでいる層から決定的に見放される事になったのでしょう。
また、大統領選では通常は現職が知名度で勝り、実績をアピール出来る分有利なところ、知名度は圧倒的にTrumpの方が有利であり、現職の副大統領であるHarrisは、やろうと思えば今すぐ政策を実行出来る立場にありながら何もしようとしない、従って実績は皆無な上に期待も出来ない、との評価を覆す事が出来ず、むしろTrumpの方が有利な状況でした。
結果、その母体である民主党もろとも不信任を突き付けられた、とそれだけの事なのだろうと思われます。インフレ下では現政権は負ける、というセオリーに従った、至極当然の結果と言ってよいのでしょう。
それで、要するにインフレを何とかしろとの米国民の意思を受けてTrumpと共和党は次期政権を担うことになるわけなのですが。。。正直言って、彼ら彼女らが、それが果たせると本気で考えている人はどれくらいいるんでしょう。
周知の通り、米国の物価は、ここ数年で2倍3倍と急激に上昇しています。ただでさえ自由経済下での物価の制御というのは困難極まりない話ですし、一度インフレしたものを元に戻すのはとりわけ困難というか、ほとんど不可能なのです。それも今のような状況を修正するなど、どうすればそんな事が出来るのか、想像するのも難しい。
そもそもの話、Trumpと共和党はインフレ対策についてはほとんど何もコミットしていません。明言しているのは、移民の排斥と関税を増やす事だけです。それらは(安価な)人的リソースの減少並びに輸入品価格の上昇を招き、インフレを加速させる方向にしか作用しないでしょう。
また、Elon MuskがTrump支援者の代表のような立ち位置にいますが、彼は常にTesla株をはじめとした(自己の有する)各種資産の評価額の上昇を図り続けるバブルの申し子であり、すなわちインフレを主導する立場の人間です。今回のTrump支援も、(EVバブルの終了で陰りが見え始めていた)保有資産の価値を維持する事がその主たる目的の一つだったと見て間違いないでしょう。そんな彼が政権の中枢にいて、インフレの抑制が図られるわけがありません。
結局のところ、インフレに苦しむ一般市民が、その苦しみから現政権に失望して不信任を出したわけなのですが、反射的に信任を受け、次の政権を担う事になった共和党とTrumpは、インフレを修正するどころか、さらに悪化させるだろうとしか考えられないのですね。
そして、その想像が現実になった時、当然に再び政権に失望するだろう多くの米国民は、次は一体どうするのでしょうか。また今回と同じように共和党に不信任を突きつけ、漫然と民主党政権に回帰するのでしょうか。それとも、誰にもどうする事も出来ないという現実に絶望し、もはや期待する事すらしなくなってしまうのでしょうか。
いずれにせよ、大した違いはないのかもしれません。結局のところ、人々の抱える苦しみを取り除く事は誰にも出来ないという事なのですから。そして、その苦難が厳しさを増す一方で、苦難とは無縁の、圧倒的少数派の資産家達はその富を膨張させ続けるのです。自由の国アメリカ、その名の下に。