12/27/2024

[biz] 無理筋に見えるホンダ・日産の経営統合

このところ世間を賑わしている、自動車大手ホンダと日産の経営統合の件なんですけれども。既に多数の指摘がある話ですが、私もあまり筋のいい合併ではないだろうと思うのです。 

ホンダによる日産の救済という話なんですが、救済になってないんじゃないかとも。というのも、周知の通り両社はあまりにも事業の内容が被りすぎているのです。

通常、企業の合併によって得られる利点は、主に互いの弱みを強みで打ち消す相互補完とスケールメリットの2点です。

ですが、このうち前者については、それぞれの強みと言えるだろうのは日産がEVと運転支援関連で若干先行している点、ホンダが自動車以外も作っている点位で、両社の事業の大半を占める自動車製造業本体についてはもろ被りです。

そして、後者のスケールメリットについては、前提として設計・部品の共通化が必須になりますが、そのためには被っている部分を一本化する、すなわち単純にいずれかの競合車種をリストラする必要があるわけです。付随する開発部隊等の人員・組織も含めて。

そうすると、結局のところ片方が生産・販売部門だけを売り払って廃業するのと殆ど変わらない結果になってしまいかねません。

それはそれで、両社を合わせて一つの連合体と見た事業全体の合理化という観点からすれば、いずれか一社規模の冗長性が解消されるのですから無論有意には違いないでしょう。実現できるのなら。

けれども、両社の個別のステークホルダーの立場からはどうでしょう。銀行等の債権者は問題ないでしょう。彼らは最終的に債権を回収できればそれでいいのですから。しかしそれ以外、殊に社内はおそらく経営陣以外反対一色だろうし、株主にも反対する向きも多数いるのではないでしょうか。

業績等を見る限り、現時点では経営危機にある日産の方が弱い立場にあるのは明らかですから、とりわけ日産側の社員は自分達がリストラされる可能性が極めて高いだろう今回の合併には猛烈に反対するでしょう。株主も、救済と捉えて歓迎する向きもいるでしょうが、事実上の廃業になりかねない本件については、歓迎一色とはいかないのではないでしょうか。

逆に、差し迫って経営危機にあるわけではないホンダ側にしてみれば、自分達の側がリストラされない保証はないし、何より近年不正が多発している日産の開発・生産部隊を受け入れる事に懸念や忌避感を抱く社員は多かろうと思われます。もちろんホンダ側の株主にも同様の懸念はあるでしょう。日産がホンダにない特別な必須技術を持っているわけでもなし、割に合わないと評価する向きは少なくないでしょう。前提とされる日産のリストラや採算改善等についても、その実現性は極めて怪しいわけですし。

その辺りの事情を鑑みると、正直言って本当にまとまるのか、とこちらも懐疑的にならざるを得ません。

そもそも、いくら両社の経営陣が合意したとて、最終的に決定権を持つのは株主です。合併等に必要となる両社株主の各々2/3の同意を得られなければ実現しません。しかるに両社とも株主は多種多様で、主要株主の同意だけでは足りません。経緯からして両社経営陣のトップダウン的な決定で、株主への根回しは全くされていない様子ですし、普通に考えれば無理筋じゃないでしょうか。

ただ、かと言って今の日産をこのまま放置すると、本当に潰れてしまいかねないし、合併に準ずるような措置が必要なのも事実なのでしょう。どうしたものでしょうか。