Edward Snowdenによる暴露に端を発した米国による諜報活動実態公表の影響、やはりと言うか、ただ単に時間が経つだけでは落ち着く筈もなかったようです。この程、隣国Canadaの情報機関によるBrazil政府機関等の通信盗聴が発覚。当然のようにBrazilは大統領以下が激しく抗議し、しかしCanada側は諜報活動についてはコメントしないとして無視を決め込むという信じ難い対応をした結果、敵国認定一歩手前な緊張に包まれているそうで。
この件が不味かったのは、諜報活動一般のエクスキューズが成立しない点にあるものと思われます。この種の敵対的な活動は、テロ対策等の安全保障目的に限定される事で必要性が担保され、必要悪として容認もされているところです。しかし、本件の主な盗聴対象は鉱山資源・エネルギー省と、安全保障に無関係な経済分野で、さらに関連する民間企業の活動情報までもが含まれていたとの事。従って正当性が全く認められない、慣習的に許容されうる範囲を著しく逸脱した、敵対性の高い活動であるものと解釈されるものなわけです。
これではCanadaは言い訳のしようもありませんし、まず間違いなく他にも多数同様のケースがあって、ここで説明謝罪でもしようものならそちらにも連鎖飛び火して大爆発するだろうから、不味いヤバいとは知りつつ、だんまりを決め込む以外にどうしようもなかったのでしょう。酷いですね。
ところで、元凶の米国も少し前にブラジルに対して同じような事をやってて、これまたカナダのそれと同じようにブラジル大統領の抗議に対して無視を決め込んでるんですよね。対象はBrazilの石油会社Petrobrasだったんだそうですが、抗議を無視されたブラジル側は今月に予定されていた大統領の公式訪問を取りやめ、その後も関係は冷え込んだまま、改善の目処も立っていないとのこと。
そこに本件。これでアメリカにカナダ、北米大陸の大半が政治的にブラジルと敵対関係、とまではいかずとも没交渉になるという、ちょっと信じ難い状況になってしまったわけで。ブラジルでのプレゼンスを高めたい競合国としては絶好機ではありますが、経済的な面での悪影響は当然無視出来るものではないし、現状の膠着状態の解決の見通しすら立たない現状から、これが長引くのは少々どころではなくまずい話のように思われるところです。米国政府・議会の対立より余程大きな影響があるかもしれません。
といっても、自分たちが絶対正義と信じて他人の言うことに耳も貸さない米国とその弟分のする事、周囲がいくら心配したところでどうにもならないのですけれども。まあ、こういう、自分たちが一方的に悪い状況になった事が殆どない人達には、一度とことんまで行って痛い目を見るのもいい薬なのかもしれません。それで、その傲慢さが少しでも減じれば良いのですけれども。無理な話でしょうか。
そもそも、本当に同盟国だとか協力関係にあると言うなら、それらの国に対してスパイによる諜報活動などするべきではないのです。安全保障上の活動が必要なら、その協力関係を強化すれば済む話、そこにスパイ行為を正当化する余地はもとより皆無なのですから。露見しなければ、等という言い訳がもはや現実的ではない事も、皮肉にもNSAの一件で証明されました。現実として、少なくとも公のネットワークにおいては、いかなる行為も秘密には出来ない以上、そこで公に発覚する事が許容出来ない類の行為は、すべきではありません。やり方の問題ではなく、してはいけないのです。それが国家であろうとも。世界中の通信トラフィックの監視システムを実現した当事者として、当然あってしかるべきその認識を欠いた結果が、今の米国・カナダの醜態という事なのでしょう。無残なものです。
Brazil’s Leader Asks Canada to Explain Its Spying
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