5/13/2012

[biz] IBMの報酬制ダイエットシステム

何かと思って見てみたら、要するに食事のメニュー選択時とかダイエットに影響を与える選択の際に、望ましい選択をする度に金銭等の報酬を与える事でダイエットを促進するって話だそうで、特許も取ってるんだとか。うーん。

率直に言って極めて陳腐な仕組みで、特許性のかけらも感じられません。まあ米国特許のザルさ加減は健在という事でしょうか。しかしそれでも天下のIBMが得意気に出し、メジャーなメディアが冗談まじりながらもある程度真面目に取り上げているのは事実なわけで、逆に言えばそれだけ米国では肥満問題が切実って事なんでしょうね。

しかし、そういうニーズの高さが殆ど藁にもすがる位に切実だとしても、本システムは文字通りの藁にしかならない程度のものらしいのがアレです。特に、肝心のユーザの選択が実際になされたかどうかをシステム側で把握する事が事実上不可能につき自己申告に任せる他は無い、というのは、既にシステムの体を成していないように思われてなりません。下記記事でもしつこく言及されているように、ユーザの生活をほぼ完全にトラッキングする事になるから、プライバシーの問題も深刻でしょうし。要するに商品には到底なりそうもないわけで。開発者自身は18ポンド痩せたよ、とか言って笑ってるようですが、一応遊びじゃない筈だし、IBMってそういうノリが通る所だっけ、と困惑を覚える次第です。

といって本件に限れば、IBMにもそういうおおらかな人がまだ僅かながら残ってるってだけで、ネタの提供ご苦労様です、とほのぼのすれば済む話かもしれません。ただ、こういうアレな話というのは、本件のIBMに限った話では全くなく、むしろ業界全体に共通する傾向に感じられるわけで。国内の大手メーカーのプレスリリースでも、このところよく似たような印象を受けるんですよね。

本件含めそういう微妙な新技術というのは、ほぼ全てネット、特にソーシャル上の話です。スマホを使うサービスですね。その潜在的な可能性の高さからすれば、急速に普及したソーシャル的なプラットフォームをSNS以外の新しいビジネス・サービスに転用したいと思うのは自然な事だし、ライトなものが逆に受け入れられやすい事が多いのも事実で、従って陳腐かつシンプルな仕組みを再発明というか単に流用した、的なものが一通り出尽くすまでは多々発生する、そのあたりの流れ自体は理解出来るところでしょう。

ただ、アクション毎に動く人も資金も大きく、とりわけ新製品、新サービスの投入にあたり、そのコストに釣り合う程度にはリスクもリターンも計算して動くべき筈の組織が、こぞって後先考えないとしか見えないアレさ加減のものを泡沫の如く出してはあっという間に消えを繰り返すというのは、流石にそれは企業活動として違和感を覚えざるを得ません。エンジニア一人当たり年2000万とか小さくないコストをかけて、ヨタ話を流して終わり、では単純に事業として成立しないって話です。浪費出来る位、金や人に余裕があるっていうならいいんですが、そんなわけはないんですし。

単に後先考えて開発出来る人が減ったのか。エンジニアが年を取って時代に付いていけなくなったのか。それとも逆に時代に適応し過ぎて、エンジニアリングを進める動機を失ってしまったのか。考えたところで詮無い事ですが、あらためてこのところの残念な傾向、すなわち技術革新における質の急速な低下、それを再認識させる本件でした。

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