性転換した元女性が、第三者の精子を用いた人工授精による妻の子との親子関係の存在確認を求めた人事訴訟について、家裁が棄却する決定を出したとのことで。
結論としては妥当、というか、いやそんな当たり前の事何で争ってんの、とそもそも訴訟が提起された事自体に強い疑問を覚えざるを得ません。というのも、本件原告は親子関係の存在を主張する根拠として民法七百七十二条の規定を挙げているとのことですが、本規定はその条文に明示されている通り、あくまで推定規定であって、事実として血縁のない事が明らかな場合には当然に否認されるものなわけで。本規定が訴訟で争われるとすれば本件とは逆、嫡出の推定が事実と反する場合にその証拠を挙げて否認を求めるのが通常なところ、流石に本件のこれは誤解に基づくもののように思われて、残念な感が拭えません。
いや、パートナーとの子供が欲しいって気持ちは分かるんですけれどもね。分かるんですが、血縁は生物的な事実関係なのであって、事実に反する以上、いくら求めてもそれは無理というものです。そもそも養子で何の問題もないでしょうに。
どうしても、というなら、捏造ではなく血縁関係を作る方向で、すなわち一般の細胞による人工授精技術の実現を待ってそれを用いるより他仕方がないのではないでしょうか。といって、副作用の無い方式が確立されるまでには少なくとも数十年位はかかりそうで、それはそれで無理な感じがしますけれども。
性別変更の男性と人工授精の子、親子と認めず 大阪家裁
<民法第七百七十二条>
妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。