2/17/2012

[pol] 大阪維新の会の国選公約がとても残念

あれよという間に次期衆院選での国政参加が規定路線化し、それを受けてほとんど泥縄的に作成、発表された政策基本方針、通称船中八策が、その過激な内容によって国内至る所で議論の的になっている今日この頃ですけれども。嫌でも目に入るし、実際に次期国政の中心となる可能性も相当に高いとあって、一応目を通してみた次第です。

個人的な感想としては、とても微妙なというか、期待外れな感が否めません。というのも、その多くが国家機関の基本構成を変更する、控えめに言っても大変革と言うべきものであって、仮にそれらを実現するとしてそれに要するだろう労力、犠牲等は甚大になる事は必至ですけれども、その割にはそもそも各政策の実現に必然性、必要性が認め難いように思われるわけです。

そもそも橋下氏の大阪府市政における絶大な支持、その基礎は、元々は各自治体が直面した経済的な危機に際し、それへの現実的かつ早急な対処を求める、ほぼ全ての市民の要求と、それに考えうる限りベストの形で応えて来た実績に基づくものである事は間違いないものと思われる所です。要するに政策的には経済的破綻を回避するための大規模な歳出削減策が支持されたものでした。ですから、府と市の二重行政解消による行政コスト削減をその主目的とする大阪都構想、また国会議員削減の2点については、おそらく同様に経済的破綻の危機に直面し有権者が危機感を広く共有する国政にあっても広く支持を集めるだろうと思われます。

しかしその一方で、その他の政策、特に議論を呼んでいる統治機構の構成変更や外交、経済政策等に関しては、それらの早急な実現を必要とする理由は見出し難い上に、仮に実行するとしてもその方法については元々有権者間でも分裂対立が激しく、少なくとも多数がこうすべきだろうと言えるようなコンセンサスも存在しない案件なわけでね。とても同様の支持が得られるとは思えない所です。例外は上記2件と首長公選制位でしょうか。であれば、それらの政策の実現に要する大多数の支持、それが得られないのですから、現実性、実現性が無い政策方針と解する他はないわけで。

道州制等の地方分権関係の方針についても、意見が分かれるというか、それを実現する事によるメリットを認識出来ない人の方が多いのではないかと。いや私がそうなんですけれども。というのも、経済的な効率面からすれば、下手に地方分権して中央と地方の分裂を招くより、原則中央に一元化した方が一般にはすっきりして効率が良いに決まってるわけで。むしろ都道府県のような中間自治体の廃止後、道州も入れずに完全に中央集権にするというのなら、行政組織も簡素化されるから確かにコストも下がるし効率も良くなりそうだと思うんですけど、県が道州に変わっても、中間組織の階層数が変わらない以上、組織効率面では大した違いは無さそうに見えるし、コストもさほど変わらないだろうと思われるんですよね。この点に関しては、結局のところ、市民、国民にとっては得るところの無い、行政組織内の、国と地方の権力争いに過ぎないのかなと。

教育関係についても、まあ教員に対する管理を強めるべきっていう意見はそれなりにあるんだろうけど、一方でそういう刑罰、罰則の導入によって危機感を煽る的な政策というのは、往々にして本来適格とされるべき人材にも深刻な悪影響を及ぼすし、組織全体の疲弊を招きがちな点に対する懸念もあって然るべきだし、やっぱり維新の会という一政治組織の政策意見に過ぎないのかなと思う所です。

他にも色々と。それでも、政治の要は経済政策ですから、それが上出来ならそれなりに評価も出来たんでしょうけど、よりによってそれが一番おざなりという。いやまあ元々そんなの期待された事ないし、ぶっちゃけ税収を地方に引っ張る以外何も考えてない所に、急にその元の方についてまっとうな政策案を出せと言われても無理って話なんでしょうけど。しかし、国政を担おうとするからにはそんな体たらくでは話にならんわけでね。特に、社会保障も含めて具体的に増税的な方針を掲げる以上は、その源泉の根拠たるGDP、所得の増加、そのための国内産業の拡大振興が必要になるのに、よりによって国内産業へは悪影響の方が大きい可能性すら懸念されるTPP参加なんてそんな枝葉の話をポンと置くだけとか意味が分かりませんし、その時点で失望されても仕方ないと思うのです。

そんなわけで、非常に厳しい感を否めない維新の会の政策方針ですけれども。もっともまだ出したばかりだし、これから広く議論の的になれば、その過程でブラッシュアップもされていくんでしょう。しかし、基本方針と銘打って派手に打ち上げただけに、その本質的な改善には自縄自縛的に相当の困難が予想される所です。それでも、既存政党よりはマシ、とかいう、つい最近もあった相対評価的で実質的に無根拠な判断によって支持を集めてしまうかもしれませんし、少なくともこれからもしばらく注目の的ではありつづけるんでしょう。

ただねえ、時代の空気を読み、その期待に現実的に応える事でさらに期待を集めつつあっただけに、そこの所を真逆的に裏切った気がして、その事に個人的には結構深く失望を覚えさせられてしまった気がします。うーん。残念。まあ、例によって勝手に期待する方が愚かなんでしょうけどね。