12/08/2024

[pol] また一人、中東から独裁者が消える

ついに、でしょうか。IraqのHussein,LibyaのGaddafiに続き、また一人、中東から独裁者が消えます。 

親子二代、50年以上に渡って中東Syriaの支配を続けてきたAssad家ですが、国内武装勢力に敗北し、その支配が終わろうとしています。既に首都Damascusは包囲され、事実上陥落したも同然の状況となり、Assad大統領は既に国外に脱出したとの情報も流れています。

Bashar al Assad。2000年に父のHafazの後を継いで以来、常に不安定な中東情勢にあって、その戦場の中心の一つとして、国内の武装勢力、Al QaedaやIslamic states等のイスラム諸勢力、Israel等の敵対国家まで、国内外の様々な勢力との戦争に明け暮れる一方、就任直後の粛清と知識人等の大量逮捕・収監に始まり、Sunni派の弾圧、また数多の虐殺といった明らかな犯罪にも頻繁に及び、多くの人を常に虐げ、殺し続けました。

それはまさに、血塗られた、と形容するにふさわしい独裁者のそれだったと言えるでしょう。情勢的にそれ以外に選択肢はなかった、というだけなのかもしれませんが、本当に戦争以外の話が全く聞こえてこない大統領でした。

永遠に続くかに思われたそのAssad家によるおぞましい支配も、終焉を迎えます。代わってSyriaの統治を担うのは、イスラム系の武装勢力の連合体です。AfghanistanのTalibanほど原理主義的ではありませんが、自由主義的な統治になるわけはなく、程度の差こそあれ前時代的なイスラム国家としての道を歩む事になるのでしょう。

直近の戦闘では、LebanonのHezbollahも参戦していたとの話もありますし、イランの影響が強まる可能性は高いものと推測されます。その場合、Israelとの戦争が本格化する可能性もあります。ただ、地域的にはSunni派が多数派なのと、その他の勢力も多数入り乱れている状況なので、どのような傾向が強く出るのか、また安定的な体制になるのか等、殆どの事が不確定な状況には違いありません。

長年の戦乱によって国内は荒廃しきっており、また今回の政権移行はIraqの時のそれと違い、西側諸国の意向があまり働いていない事もあって、安定や秩序、そして平和がかの地にもたらされる日は遠そうです。

------------

行方が判然とせず死亡説も流れていたAssad大統領ですが、Moscowに亡命して存命であるとの報が流れています。今のRussiaにそんな余裕があるのかという疑問も浮かびますが、流石に注目が集まっている今見捨てる、あるいは切り捨てるのは躊躇われたという事でしょうか。

なお、Iranの影響については、世間的にはどちらかというと減ると見る向きの方が多いようです。いわゆるShiaの孤の一角が崩れた、として。確かにそういう面はあります。Iranは長年Assad政権を援助し続けて来ましたし、そのラインを通じてLebanonに武器を供給もしてきました。それが消滅する影響はそれなりにあるでしょう。

しかし、今回政権を打倒した反政府勢力はその総意として反Shiaや反Iranを掲げているわけではなく、欧米やロシアを含め、特定の外部勢力の傘下にあるわけでもありません。現状は、単にAssadの支配が崩れ、地域の情勢が不安定化したものと見るべき状況のように思われます。しかるに、近隣のどの勢力が最も介入を強め、また今後強い影響を持ちそうかと言えば、それは長年実体的かつ密接な交流を通じて影響を保ち続けて来たIranであろうと思われるわけです。

政権が消えても、人やモノの流れを通じた実体的な繋がりはそう簡単に消えるものではありませんし、むしろ混乱に乗じて影響を強める可能性も低くはないでしょう。勿論、新政府のあり方如何によりますし、とりわけSunni派の意向が強く反映されるものになれば、Iranが排除される可能性もあります。ただ、実際問題としてあの地域でIranを排除するというのはそんな簡単な話ではないし、それが可能な程に一体性を有する、統制された政権になるのかすらわからない現状では、そこはまだ判然としません。

勿論Israelはありえません。Syriaの武装勢力は全てMuslimですから、むしろ対Israelで一致団結する可能性が高いでしょう。