Strikeです。
年の瀬の最中ですが、米国ではそんな事関係ないと言わんばかりにStrikeが頻発しています。
秋頃に長らく続いたBoeingのストがようやく終わったと思ったら、AmazonのDelivery Driverがスト、続いてStarbucksの一部でもストです。
要求内容はほぼ同じ。賃上げと労働環境の改善です。もちろんこの超のつきそうなインフレ下ですから賃上げが主たる目的である事は明らかです。
要求はBoeingの例に倣えば概ね通る見込みではあります。およそ30%〜が相場でしょうか。インフレ率からすればまだ控えめと言っていい位ではあるのですが、凄い率ですね。
ただ、Amazonだけはちょっと、いやかなり事情が違います。以前日本国内でも一部地域で発生したストの時と同様、 配送担当のドライバーは形式上Amazonに雇用されているのではなく、委託契約を受けた下請け業者の立場にあります。なので、AmazonはそもそもDriver達(及びその結成したUnion)を交渉相手と認めておらず、門前払いしている状況なのです。
日本の労働法で言えば、契約の形式によらず、実質的にAmazonの指揮命令下にあればその限りで雇用関係にあるものとして交渉権が認められるものと解されていますから、その拒否は違法という事になるだろうわけですが、米国の労働法は統一的なものではなく、しかも連邦法・州法によって様々な規定が分散していて一概にこう、という解釈が困難らしい感じなのですね。
だから門前払いも即違法とはならず、そこから裁判、もしくは実力行使で争う必要がある。何にせよ、時間稼ぎにはなるでしょうし、その間にAmazon側が個別に契約解除なりしてしまえば終わりだったわけです。これまでは。今回はそうなっていません。何故か?それは、Driver達をAmazonの被用者と認めるお墨付きが最近になって出たからです。
一般的な感覚では、注文から配送まで完全に一体のシステムとして組み上げられたAmazonの通販サービスの中で、機械的に委託を受けるドライバーに個別の裁量の余地などなく、実質的にAmazonの指揮命令下にある労働者と見るべき事は明らかですが、米国の労働関係局が最近になってAmazonを"joint employer"、つまり実質的な雇用者に分類する判断を示したのです。(もっとも、Amazonは不服として争っているそうですが。)
このお墨付きが与えられた事によって、これまで成立しづらかったUnionが成立し、ストが起こせるようになった、というわけですね。
とはいえ、Driver達のUnionは、Amazonの労働者の一部に過ぎず、ストの効果も限定的で、交渉力は弱く、要求をAmazonに飲ませるには不十分です。そこで、その弱い交渉力を補い、ストを効果的なものにすべく、Amazonの他の部門の労働者とも連携を進めており、その一環としてNY,California等の一部Hubの労働者がDriverのストに呼応してWalkoutを実施しました。
AmazonはDriverのストによる影響は殆どないとしていましたが、HubでのWalkoutについてはその配送への影響を認め、遅延等の発生を警告しています。つまり、ストが機能している。これまでのようにAmazon側が無視して終わり、とはいかなくなっているわけです。
今後の見通しは不透明です。決着の形以前に、そもそも交渉の席に未だついていない、という現状からして、Amazonのストが収まる見込み自体立っていません。しかし事業に無視できない支障が出ている以上、無視・放置を続けるわけにもいかないでしょう。
また、これまで交渉自体を拒否し、放置し続けて来た経緯上、労働者側の溜め込んだ不満は尋常なものではないだろう事は明らかで、その分要求は苛烈なものになるだろう事も必至です。Amazonにとって、その交渉は困難を極めるものになるでしょう。長年のツケを払わされる時が来た、という事なのかもしれません。であれば自業自得と言う他ないのですが。
委託契約を使って雇用・労働法制を潜脱し、不当な労働条件・環境を強いてきた搾取企業の代表であるAmazonの、その悪しき体制の終わりにつながるのか、労働者達の健闘を祈りつつストの行方に注目する次第なのです。
Amazon workers are striking at multiple facilities. Here’s what you should know