10/22/2017

[note] 小指が使えない時のキーボード操作

私事かつ些事で恐縮なのですが、ちょっと最近難儀した事があるのです。

何かと言うと、料理をしている時、野菜を包丁で切る際に、誤って左手の小指の先を切ってしまったんですね。スパーンと。と言っても、ヤクザの指詰めのようなものではなく、指先の膨らんでいる所を、下図のような感じで厚さ1〜2mm位で。


すぐに血がドクドクと流れ出し、同時に相応の痛みと、軽い貧血症状のようなものが襲ってきました。流石に焦りました。傷自体についてではありません。傷そのものは所詮皮膚の部分ですから何とでもなる事は直ぐにわかりましたし、実際に切り落とした皮膚を拾って被せ、ラップとワセリンを使った保存・湿潤療法を施す事で治療も出来たのです。この時脳裏によぎったのはその事ではなく、完治までの間、キーボードの操作に支障が出るだろう事でした。

通常、職業的にキーボード入力を大量に行う人は、まず誰しもがブラインドかつ全指を使ってキーボードを操作している筈です。私もその例に漏れず、長年の作業により完全に指にキー入力の動作が染み付いている状態なわけですが、中でも小指は操作範囲が広く、かつ押下の頻度も他の指に比べて高くなっています。これが片方、それも左側が使えないというのはそれだけ大幅な制約を受け、操作方法の変更を強いられる事になるのであって、私にとっては指先に感じる痛み以上に頭が痛い話だったわけです。

しかし、だからといってキーボードの操作を控えるわけにも行きません。タッチ入力等の他の入力方法は効率面で論外、代替手段にはなりません。自然、左手の小指を使わないキータッチを覚える必要が生じ、その試行錯誤を初めたわけです。

試行錯誤と言っても、完治後に戻せるよう、最低限の変更に留めようとした結果、自然と"小指の入力範囲を薬指で入力する"というシンプルな方法に落ち着きました。当然、範囲が広すぎて薬指を伸ばすだけでは押せないキーが出ますから、左手自体も動かす必要があって、その分入力の労力とかかる時間が増えてしまいます。そのロスをどれだけ減らせるか懸念しつつ、しかしこれ以上に良い方法も特にないだろう事からやってみたのですが・・・結論から言えば、殆ど問題にはなりませんでした。また、思ったよりも早く、すんなりと慣れもしました。案ずるより生むが易し、というやつでしょうか。

具体的には、左手自体を動かす部分は、手首を支点にして手を回転・伸長させる動作と、指の曲げ伸ばしとを同時に行えば殆どロスにはならなかったのです。もちろん、その分手首付近が疲れるというデメリットはあるにはあったのですけれども、元々動かしていなかった部分を一部動作の際のみ動かす、というだけなので、その点でも思ったより疲労を感じませんでした。

後、キー位置を覚え直す点についても、最初は流石に少しぎこちなく、タイプミスも散見されたのですが、構わず操作を続けている内に、数日と経たずに慣れ、ミスも無くなりました。レイアウト自体を覚えこんでいれば、それに合わせる分にはさほど支障はなかった、という事なのでしょう。

というわけで、一件落着、だったのですが・・・。ただ一点、解消出来ない問題もありました。何かと言うと、HHKBです。使用された経験のある方はご存知でしょう。HHKBはCtrlキーが左側にしかありません。なので、Ctrl+Fや、Shift+6等の、人差し指+小指の組み合わせキーの入力を人差し指+薬指で代替しようとすると、手全体をキーボードに被せるように持ち上げて不自然に伸ばす必要があり、そのイレギュラーな動きがある分、どう頑張っても効率がガタ落ちになるのです。左手を挙げ続けるのは疲れすぎて続けられませんし、どうにもなりません。

HHKBのように特定の環境向けに入力デバイスを最適化する事は、基本的に経済的なのですが、一方で最適化しすぎると、問題が生じた時にそれに対応出来なくなる、とそれだけの事なのでしょう。ただ、今回の怪我は比較的軽いものであるにも関わらず、その克服にはそれなりの手間もかかり、克服し難い場合すら生じました。これより重い場合にはなおさらであろう事は疑いようもありません。図らずも障害を負っている人達の厳しさを実感する事となったわけです。

だからといって、特にその問題を深く考えたこともない私程度に、それを改善する妙案が思いつくわけもありません。真にユニバーサルなデザインなど存在しない、それも事実ですし、障害のある人それぞれに合わせたデザインをあらかじめ用意する事は、主にコスト面で困難でしょう。ただ、軽度の問題の時に、ユーザ側の対処を可能とする程度の、多少の遊び位は残されていて然るべきだろう、と思いもした次第なのです。

ちなみに、指の傷は大体3週間でほぼ完治しましたが、まだキー押下に使うと鈍い痛みも感じます。焦る必要も無くなったので徐々に戻している所ですが、もし小指を使わない方法を上手く確立出来なかったら、と思うとぞっとします。もっとも、そもそも怪我をしなければこんな心配もする必要はなかったわけで、刃物を使う際に注意を怠らない、という心がけの方が大事だと思うべきなのでしょうけれども。皆さんも気をつけましょう。