8/22/2014

[law] Ice Bucket Challenge、その参加を強制するシステム

ここ最近ネット上で広まり、盛んに報道されてもいるチャリティー運動のIce Bucket Challengeですが。これに違和感を感じて仕方が無いのです。

まず、本運動は、元々2013年頃に北米で生まれた癌研究に対する寄付募集を目的とするもので、その時のpenaltyは冷水に飛び込むものだったそうです。名前は"Cold Water Challenge"。この派生として、目的をALS(筋萎縮性側索硬化症)患者の支援に、penaltyをバケツ入りの氷水を被るものに置き換えたものが2014年になって生まれ、Facebook中心に活動が広まりつつあったところ、6月末頃にGolf ChannelのMorning Driveなる番組中で実況中継されました。それを切掛にキャスターや著名ゴルファーが参加するようになり、有名人間での活動の急速な拡大に伴い、メディアも取り上げるようになったのが本件のものなんだそうです。

この経緯を見る限り、氷水を被る点についての、ALSの麻痺症状を擬似的に体感するため、との説明は後付けのように思われるのですが、それはともかく。

本運動のルールでは、参加者が(指名されてから原則24時間以内に)氷水を被ってその際の動画をSNSに掲載するか100ドル寄付するか、その何れかを選んで実行し、その後次の参加者を指名するものとされています。氷水を被る場合には10ドル寄付とする別バージョンもあるようですし、両方行う事を良しとする向きもあるそうです。寄付の目標額等の終了条件は特に規定されていません。

違和感を感じるのは、このルールの部分です。具体的には、活動への参加拒否が選択肢として明示されていない点です。

本活動の目的は寄付の募集ですから、当然に任意性が担保される必要がある筈です。勿論、指名されても無視すればいいと言うのかもしれませんが、指名を断れば指名者と被指名者の関係に悪影響も生じるでしょうし、何より指名も含めた本活動はSNS上での公開により行われるため、周囲の監視があり、拒否した場合には賛同者からの大規模な非難も予想されるでしょう。従って、被指名者には極めて強い強制力が働くものと思われるわけです。

実際、ルールに従って寄付だけを行い、氷水は被らなかったオバマ大統領ですら空気を読まなかったとして非難する向きがあるそうですが、本来の目的たる寄付を行った人間に対してあまりに理不尽な話です。もはや目的を完全に見失っているも同然、ここで参加自体の拒否などすれば、その結果は明らかなところでしょう。これではとても任意とは言えません。慈善活動の名を借りた、本寄付への賛同という価値観への従属を強制する脅迫であり、実際に金銭を要求する点では恐喝でもあります。その点、指名者と被指名者の関係等により、違法性を帯びる場合も有り得るでしょう。不幸の手紙といったチェーンメールの類と同じ構造を持ちつつ、それをパブリックにして強制力等を強めた分実害性も強まったもの、と言えるかもしれません。

無論、目的は公共の福祉に合致する正当なものだし、心から賛同して参加する分には何ら問題ないわけですが、その実行方法としては、人権を侵害する危険をも孕んだ甚だ不適切なものと言わざるを得ません。違和感を感じる、というのはそのためです。

ただ、もうここまで広まってしまったのですから、今更止めるのも困難な面はあるでしょうけれども。。。というか、広まれば広まるほど、それに水を指すというか、拒否する場合に受ける理不尽な反動の程度も大きくなる事が予想されるわけで。この点、終了条件を規定しなかった発案者には重大な責任があると言えるんでしょうけど、何かその1人は海に飛び込んで亡くなられたそうですね。これで空気が濁ってフェードアウト、となれば良いんでしょうけど、さてどうなることやら。