8/29/2014

[biz law] たかの友梨、労基署告発の従業員を吊し上げて更に告発

エステ大手たかの友梨ビューティクリニックの残業代不払いの件、本件を労基に申告した従業員が、高野友梨社長はじめ幹部陣に長時間の威圧的な非難を加えられた、として不当労働行為の救済を宮城県の労働委員会に申し立てたんだそうで。

具体的には、2時間以上に渡って他の従業員の面前で吊るし上げたとの事で、当該従業員は恐怖から出社出来なくなってしまったんだそうです。あと、その席上、労組に対しても、その存在自体会社の存立を脅かすものとして正面から非難したとか。あまりの阿呆さ加減に戦慄が走ります。勿論社長達のそれにですが。いやだってですね、不払いの件が違法行為な事は疑う余地は皆無なのだし、それが労基に告発され、早晩報道にも乗り世間の非難も集まろうという中で、どうしてそんな事が出来るのかって話です。大体、当該従業員には当事者に労基に駆け込むだけの判断力と行動力があるのだから、不当な事をすれば公の保護を求めて即告発に及ぶだろう事は目に見えていた筈なんですよね。なのにこれ、正気の沙汰とは思えません。労組云々についても、労働組合法に真正面から違反してますし。そりゃ袋叩きにもなって当然というものです。

まさか、脅せば黙るだろうとか思っちゃったんでしょうか。それとも後先考えずにただ攻撃を加えたかっただけなのでしょうか。いずれにせよ、経営者の判断として論外に愚かなものと言わざるを得ません。この種の営業では、消費者に対するイメージは何より重要な筈で、それを毀損する損失は相当なものがあるだろうし、不法行為を殆ど公然と行った時点で、企業としてはそれだけでも致命傷になり得る愚行と言えるでしょう。

本件非難の席上で高野氏曰く「会社つぶしてもいいの」との発言もあったとの事ですが、それはまず自分に問うべきものだったでしょう。不払いにしろ、吊し上げにしろ、その前に。全く以て皮肉な話です。つぶしてもいい、というか、社会的には潰すしかないんじゃないでしょうか。もっとも、この種の不法・不当な行為は今なお社会にありふれた話な事は周知の事実なところ、その悪しき状況を多少なりと抑止する一罰百戒的な教訓として、時には明示的に罰せられる様を晒すのも悪くないのかな、とも思われるわけですが。本当は、そもそも経営者が法を遵守する事が望ましいに決まってますし、元より残念な話の域を出ないんでしょうけどね。

女性に高野社長「会社つぶしてもいいの」威圧か
「たかの友梨社長、組合活動に圧力」 従業員ら申し立て

8/26/2014

[PC biz] 老舗PCショップの店頭にずらりと並んだ電気炊飯器

至極どうでもいい話なんですけどね。

この間、久しぶりに大阪に行く用事があって、その際に日本橋の近くを通り掛かったので、Sofmapの店舗を覗いてみたんです。日本橋1号店。昔からある中古中心の店舗で、今でも僅かながらジャンク類も扱う、往年のPC興隆時代の名残りを残した愛すべき店舗です。

いつものようにエスカレーターと狭い階段を登り、上の階で中古ノートとか相変わらず割高だなーとか思いながら見て回った後、最後に一階のカメラとかを見て終わりにするつもりで降りて来てみると、そこで狭いフロアの半分近くを占めていたのが何と電気炊飯器の大群。

衝撃的でした。何でここにそんなものがあるの?と。だって20年以上、折に触れて訪れた同店舗で、家電の類を見た事は一度もありませんでしたから。テレビやレコーダーですら稀だったところに突然電気炊飯器がずらりと並ぶ様がどれほど異様に感じられたか、分かる人には分かるでしょう。なまじそれ以外が従来通りなだけに尚更です。

戦慄しつつ、これはどういう事だ、と。連想されるのは、ビックカメラそのものと言うべき秋葉原の店舗や地方で見られるコジマとの共同店舗、あと、先日ニュースで流れていた、中国人らに日本製の電気炊飯器が人気だという話。要するに、業績の芳しくない同店舗が、家電系に押し負けた結果、観光客受けの良い家電商品として炊飯器を置く事にした、もしくは強いられたのかと思われるところなわけです。

実際のところ、PC等の中古市場自体が既にオークションやらに取って代わられて、リース落ち以外の安定した供給原も無くなって受けの良い商品があまり供給されなくなっているだろう事と、何より価格下落が激しく、新品のノートPCですら3万程度から通販で常時購入可能となり、中古のデメリットが価格に釣り合わなくなってしまっただろう昨今、もうこれまでと同じような商品、業態では居られないという事でもあるんでしょうけど。XP終了特需も終わりましたし、頼みだったスマホ類もここに来て終了しつつありますしね。カメラ類も概ね同様。

しかしそれにしたって、ねえ。売れるの?そもそもの話。基本的にPC屋として認知されてる筈なSofmapの、それも日本橋の店舗に、電気炊飯器を求めて来る客なんているんだろうか、と。普通、中古PCと関連機器か自作パーツ、あとカメラ類目当ての人位しか来ないんじゃないかと。私だって、実際に目にするまで、炊飯器が売られてるなんて想像すらしませんでしたもん。値段も確認してませんけど、どうせビックカメラと同じでしょうから、それなら難波のビックカメラに行けばいい話だし、それ以前に大半の人はヨドバシ梅田に行くでしょう。わざわざ恵美須町まで来るとは到底思えません。そもそも炊飯器なんてそうそう買うものじゃないですし。

どうにも不可解な話に思えたので、同店舗の試験的な話なのかと疑って他店舗も確認してみたら、難波の店舗でも同様でした。割と本気でPC類が売れなくて切羽詰まってるのかもしれません。と言っても、親会社のビックカメラは壊滅状態な家電小売の中では比較的堅調な部類だし、そこから見捨てられない限りは近いうちに破綻どうこうという話ではないんでしょうけれども。何にせよ、愛着のある店が実質的に消滅していくようで、寂しい話ではあると思うのです。まあ、秋葉原にしろ日本橋にしろ、業界自体が殆ど消滅してしまった今となっては、あまりにも今更な話ですけれどもね。これでいよいよ本当に終わりかな、と。電子部品の店もひっそりと消えて行ったりしてるようですし。よく通ったあの店もこの店も、その殆どが既に閉店して跡形もありませんが、数少ない生き残りも一つまた一つと閉じて行きます。全くこの世は諸行無情でありますね。

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8/22/2014

[law] Ice Bucket Challenge、その参加を強制するシステム

ここ最近ネット上で広まり、盛んに報道されてもいるチャリティー運動のIce Bucket Challengeですが。これに違和感を感じて仕方が無いのです。

まず、本運動は、元々2013年頃に北米で生まれた癌研究に対する寄付募集を目的とするもので、その時のpenaltyは冷水に飛び込むものだったそうです。名前は"Cold Water Challenge"。この派生として、目的をALS(筋萎縮性側索硬化症)患者の支援に、penaltyをバケツ入りの氷水を被るものに置き換えたものが2014年になって生まれ、Facebook中心に活動が広まりつつあったところ、6月末頃にGolf ChannelのMorning Driveなる番組中で実況中継されました。それを切掛にキャスターや著名ゴルファーが参加するようになり、有名人間での活動の急速な拡大に伴い、メディアも取り上げるようになったのが本件のものなんだそうです。

この経緯を見る限り、氷水を被る点についての、ALSの麻痺症状を擬似的に体感するため、との説明は後付けのように思われるのですが、それはともかく。

本運動のルールでは、参加者が(指名されてから原則24時間以内に)氷水を被ってその際の動画をSNSに掲載するか100ドル寄付するか、その何れかを選んで実行し、その後次の参加者を指名するものとされています。氷水を被る場合には10ドル寄付とする別バージョンもあるようですし、両方行う事を良しとする向きもあるそうです。寄付の目標額等の終了条件は特に規定されていません。

違和感を感じるのは、このルールの部分です。具体的には、活動への参加拒否が選択肢として明示されていない点です。

本活動の目的は寄付の募集ですから、当然に任意性が担保される必要がある筈です。勿論、指名されても無視すればいいと言うのかもしれませんが、指名を断れば指名者と被指名者の関係に悪影響も生じるでしょうし、何より指名も含めた本活動はSNS上での公開により行われるため、周囲の監視があり、拒否した場合には賛同者からの大規模な非難も予想されるでしょう。従って、被指名者には極めて強い強制力が働くものと思われるわけです。

実際、ルールに従って寄付だけを行い、氷水は被らなかったオバマ大統領ですら空気を読まなかったとして非難する向きがあるそうですが、本来の目的たる寄付を行った人間に対してあまりに理不尽な話です。もはや目的を完全に見失っているも同然、ここで参加自体の拒否などすれば、その結果は明らかなところでしょう。これではとても任意とは言えません。慈善活動の名を借りた、本寄付への賛同という価値観への従属を強制する脅迫であり、実際に金銭を要求する点では恐喝でもあります。その点、指名者と被指名者の関係等により、違法性を帯びる場合も有り得るでしょう。不幸の手紙といったチェーンメールの類と同じ構造を持ちつつ、それをパブリックにして強制力等を強めた分実害性も強まったもの、と言えるかもしれません。

無論、目的は公共の福祉に合致する正当なものだし、心から賛同して参加する分には何ら問題ないわけですが、その実行方法としては、人権を侵害する危険をも孕んだ甚だ不適切なものと言わざるを得ません。違和感を感じる、というのはそのためです。

ただ、もうここまで広まってしまったのですから、今更止めるのも困難な面はあるでしょうけれども。。。というか、広まれば広まるほど、それに水を指すというか、拒否する場合に受ける理不尽な反動の程度も大きくなる事が予想されるわけで。この点、終了条件を規定しなかった発案者には重大な責任があると言えるんでしょうけど、何かその1人は海に飛び込んで亡くなられたそうですね。これで空気が濁ってフェードアウト、となれば良いんでしょうけど、さてどうなることやら。

8/19/2014

[law] ISISに拘束された日本人に思う、武力措置の非現実性

三つ巴の紛争の続くシリアで、湯川遥菜なる日本人が拘束された件、発覚の切掛となったYoutube掲載の動画を拝見したのですが。紛う方なき拷問真っ只中、ナイフも頻繁に突きつけられてまさに処刑直前といった雰囲気で引きました。かつてイラクで殺害された香田証生氏の映像とは異なり、その凶器を用いて実際の傷害に到る場面こそありませんが、異教徒邪教徒は皆殺し上等なISILの事ですし、ぶっちゃけこれ死んでますよね。であれば冥福を祈ります。

もっとも、実際に致命傷を受けるだとか、死亡に直結するような場面は映っていないし、本映像が流された意図は不明で不可解な事もありますから、生存の可能性が無いとは言えないわけですけれども。よくあるパターンは見せしめか取引位ですが、見せしめなら死亡が確認出来る所まで流しそうなものだし、取引材料にしたいのならその要求がありそうなものです。単に日本人や日本の位置づけについての知識が無いためにどうしていいのか分からず、とりあえず確認がてら流して反応を見てみたという事なのかもしれませんけど。確認という事なら、西側諸国のスパイの可能性も懸念したでしょうからその点も。はたまた、単に珍しいから興味本位で気紛れに流しただけな可能性もあるでしょうか。

ともあれ、死亡が確定していない以上、政府としては救助に努めなければならないということで、多分に徒労に終る可能性が高いと知りつつ従事する方々には誠にお疲れ様というわけです。当人の自業自得なのに。

ただ、この種の話が今回限りでは済みそうに無いのが何とも。本件自体は、流石に渡航が全面的に制限されているシリアでの事ですから突発的に起きた特殊ケースと言えるでしょうけれども、イラクやウクライナ、パレスチナに中央アフリカ諸国等、世界各地で市民を広く巻き込む形の紛争が頻発激化する一方の状況を鑑みるに、類似の拉致事件は今後も起こりうるものと思われます。頻度は分かりませんが、特に企業等の駐在者が多数居るイラクあたりではいつ起きても不思議ではないでしょう。

問題は、そういう拉致等が発生したとして、日本は如何に対応するのかという点です。以前であれば、強硬的な対応手段すなわち武装人員を派遣しての奪還保護等は建前上も事実上も不可能でしたから、専ら対話的な、多分に金銭による解放交渉によって対応して来たし、それ以外に手段が無いことは広く了知されていましたから特段の問題もなかったわけですが、言うまでもなく状況は変わりました。解釈改憲により確立された集団的自衛権の下、武装人員の派遣等が現実に可能にされつつあるわけです。ここ最近は世論の反発からか表立っての主張は控えられていますが、現政権は少なくとも紛争地域での邦人保護を明確に必要だとしているのですから、こういう拉致の場合は当然に対象になるべく立法が進められるでしょう。そして一度法制が整えば、それは任意ではなく義務という事になります。

しかるに、今回のような事件に対しては、自然とその種の強硬措置を取った場合の展開等を、近い将来には現実に起こりうる事象として想定せざるを得ないわけです。で、一頻り想像した結論としては、率直に言って無理だし無駄だろうと。結果として損害が激増する可能性があまりに高いのですね。まず、その種の救出作戦は米軍をはじめ各国の特殊部隊が頻繁に実行してきたところですが、熟練を極めた筈の彼らですら人的なものを含め損害が少なからず発生します。日本の自衛隊がそれより上手くやってのけられるとは到底考えられません。人を助ける為に人命を犠牲にするのでは本末転倒です。さらに、その種の実力行為に及んだ場合、当然に日本自体が敵対視される結果、米国同様に市民や企業に対する攻撃も発生するでしょう。しかし米国と違ってそれに対抗する有効な術を持たない以上、その結果は一方的なものになる可能性が非常に高くなります。また、一度リスクが及んだ地域では、経済活動も萎縮せざるを得なくなるでしょう。

相手が個人や小規模な集団で、反撃の可能性が無いなら別でしょうけれども。。。そうでなく、今回のISISのような一定以上の規模がある相手の場合、攻撃を加えるなら、当然その反動や長く続く後始末にも十全に対処出来なければならないわけですが、日本が米国同様の体制を備えるというのも現実的とは言えないでしょう。結局のところ、この種の問題に対しては、国家間の紛争に準じて、武力による解決は解決にならない、という単純な話に帰着するわけです。

その事は、先の大戦、また長く続いた戦後、今以て抱える多くの理不尽な問題を通じてよく思い知っている筈ではなかったのかと。事が致命的な帰結に到る可能性がある場合、それを無視して積極論を主張する者は、往々にして単に後先を考慮する事の出来ない愚か者に過ぎない、とは一般によく知られる経験則であるところ、首相はじめ現政権の面々は畢竟その種の人なのだろうと、諦観とともに結論付けざるを得ないのです。

そうこうしてる内に、米国人がISISに処刑されたとの報道が流れています。被害者はカメラマンのJames Foley、2012年に拉致されてから行方不明となっていて、解放を探る活動も続けられていた人なんだそうですが、最近の米国によるISISへの攻撃への報復として処刑されたとの事です。こちらは残念ながらUPされた動画により死亡確定。イラク戦争時等にも同様の事件は起きていましたし、今更米国がポリシーを変更する事は考えられないでしょうけれども、武力介入の避け難い帰結には違いありません。これからこの領域へと踏み込むだろう日本政府は、このような応報を招いた時、一体どうするのか。これまで通り、遺憾の意を表明するだけで実質何もせず、淡々と受け入れて済ませるつもりなのでしょうか。

8/16/2014

[law] 米ミズーリ州の警官による黒人少年射殺、被害者を貶め正当化を図る警察

米Missouri州Fergusonの警官による黒人少年射殺事件、ようやく犯人たる警官の氏名が公表されました。勤続6年のDarren Wilson、人種は白人との事。事件の発生から一週間も経ってからの発表となります。

と言っても本当にそれだけの発表で、それ以外の本件の詳細についての情報は殆ど明らかにされていないままです。その一方で、被害者のBrownはその直前にコンビニでタバコの窃盗を働いた容疑がある旨だけが発表されました。

本件殺人はBrownが嫌疑を受ける中での事だったのか、と思えばさにあらず。Wilsonは窃盗容疑の事を知らず、従って本件射殺とは直接の関係が無いというのです。本件の経緯を伏せる一方でこのような容疑だけを大々的に発表するというのは、順序が逆で意味不明です。もっとも、本件容疑を発表した警察の意図は明らかです。要するにBrownは犯罪者で、だから殺されても当然の人間であり、Wilsonの射殺は正当化される、と言いたいのでしょう。遺族はじめ当地の住民もそのように受け止めたために、余計に反発が拡がっているそうです。

言うまでもなく、窃盗は窃盗としてそれに応じた法的手続きにより捜査と処罰がなされるべきものであって、窃盗犯だからと言って殺人が正当化されよう筈もありません。ましてWilsonはBrownが容疑者である事すら知らなかったのだから、元々本件殺人に何の関係もない話なのであって。今回の警察による発表は、およそ不当に被害者の人格を貶めるだけの単なる名誉毀損であり、違法に殺人犯を擁護しようとする論外なまでに不法な行いと言わざるを得ません。大体、仮に警察の言う通り、窃盗をするような人間は射殺して良いと言うのなら、殺人犯たるWilsonは当然に私刑によって殺されても構わない結論になりますが、しかし実際には手厚い保護を与えている、というのでは整合しません。それは非難も拡がって当然というものです。

しかし、よりによって司法の執行を担う警察が、かように本来体現すべき法の正義と真逆な振る舞いを公然と行うとは。法治国家が聞いて呆れます。しかもこれが、これまで中国はじめ他国の人権侵害を散々に非難して来た米国の事とあっては尚更です。もう2度と正義とか口にするなと思いますね。

ところで、本件で警官の氏名が公表される前に、特定して報いを受けさせると言って鼻息荒かったAnonymousの連中が間違えて無関係の他人を晒した挙句内紛に陥ったり、公表後も同姓同名の別の警官を晒して非難する連中が出て、その別人が黒人だったものだから人種差別を問題視していた人達が一時的に混乱に陥ったり、2次・3次の被害が続出しているようです。無論そういう思い込みや浅慮に基づいて判断や行動に踏み切る人達にも責任はあるのですが、そもそも警察が容疑者たる警官を不法に擁護しようとして隠蔽を図ったのが原因なわけで、それらの混乱やそれに伴う被害にも、一義的な極めて重い責任があると言うべきものでしょう。その意味でも、そのあまりにあまりな愚かさは、本当に救い難く思われてならないのです。

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8/14/2014

[law] 米ミズーリの警官による黒人少年射殺事件、人権蹂躙国家としての米国

米Missouri州St.Louis近郊のFergusonで起きた警官による黒人少年射殺事件、米国の最も醜悪な面が如実に曝け出されているようで。

当地の警察は当該警官の氏名等も含めて事件の詳細を一切公表しておらず、それが事態の際限ない悪化を招いている事は明らかなわけですが、被害者の友人はじめ目撃者の証言等を中心にまとめれば、事の次第は以下のようなものだそうです。

被害者は18歳の黒人少年Michael Brown、時刻は8月9日土曜の午後2:15頃。場所は友人宅前の車道上。被害者がコンビニエンスストアから友人宅へ戻る途中、少し手前で出迎えた友人のDorian Johnson(22)と合流し、友人宅へ向かって車道を横断していたところ、パトカーに乗った警官がそれを見咎めて歩道を歩けと命令したのが発端。

その際、二人は警官に対して目的地はすぐそこだ、と言い、理解されたものと判断して横断を続けたところ、パトカーが二人に急接近し、ドアを開けた警官がBrownの首等を掴み、パトカー内に引きずり込もうとしたところ、Brownは抵抗し、Johnsonと共に逃げようとします。すると警官は銃を取り出し、撃つぞと叫んだ後、逃げるBrownを背中から撃ったと。撃たれた後に両手を挙げて振り向き、銃は持っていないと叫んだBrownに対し、警官はなおも数発に渡り銃撃を加え、Brownはその場で殺されたと。Johnson曰く、"Brownはまるで獣を狩るように撃たれた"との事です。

これらは友人らの証言によるものですから、記憶違い等による誤りもあるのかもしれません。しかし、両手を挙げたあたり等の後半部分については複数の証言が得られているそうですし、前半部分も特に詐称を疑われるべき点は認められませんから、おそらくは概ね間違ってはいないのでしょう。あるとすれば、警官が発砲に至るまでのBrownとのやりとりの部分位でしょうか。なお、警察はパトカー内で争い、Brownが銃を奪おうとした等としているそうですが、それを裏付ける第三者の証言は無く、今の所誰にも真実とは受け止められていないようです。

いずれにせよ、後半部分、特に両手を挙げて非武装かつ無抵抗の意志を示しているBrownに数発に渡って銃撃を加え、従って明らかな殺意を以って射殺した点に疑問の余地はなく、2人による警官に対する何らかの暴言や暴力行為の有無等の相違によらず、到底正当化する事の出来ない殺人である事は間違いないでしょう。

従って、当該警官は殺人罪の刑法犯として、当然かつ速やかに司法の裁きを受けるべきところです。にも関わらず、逮捕・起訴はおろか氏名の公表すらされないとあっては、それで事態が収まると思う方がどうかしているというもの、デモ等の抗議活動が拡大の一途を辿る続ける現在の事態は、むしろ当然の成り行きと言わざるを得ません。

まして、Missouri州は元々全米で最も人種差別の酷い地域と言われているわけで。そして、当該警官の人種は不明ですが、地区の警官53人中の50人までが白人という、如何にも当地の人種差別構造を象徴するかのような人員構成の点から、白人である事が確実視されています。これでは、権力を持った白人による黒人に対する理不尽な殺人、またその権力による不当極まりない隠蔽として、かつて起こった同様の事件と比較するまでもなく、黒人社会中心に広く激しい怒りが広がるのもまた当然の帰結というものです。

実際、現地では軍隊と見紛うばかりの重装備に身を包み、装甲車まで持ち出した武装警官がデモ参加者に対しゴム弾や実弾による射撃、催涙ガス噴射等を盛んに行い、数十人以上を超える逮捕者やそれを遥に超える負傷者を出しているそうです。何処の紛争地帯だというのでしょう。とても民主主義を掲げる法治国家の所業とは思えません。あまつさえ、その逮捕者の中にWashington PostとHuffington Postの記者各一名ら報道機関の人間までもが含まれていたとあっては、もはや中国やロシア等の権力・警察主義による人権侵害国家のそれと何ら違いのない、無法地帯と呼んで差し支えないものと言えるでしょう。

一応、事態を重く見た連邦政府もFBIを介して当地警察機関に介入し、また市民権利団体も当該警官の照会を裁判所に請求したそうですから、早晩当該警官も公表され、本来の司法手続きに委ねられるのでしょう。しかし当然ながら起こってしまった事は戻せません。ここまでに曝け出された、その人種差別に基づく、醜悪極まりない警察・社会ぐるみの人権蹂躙、差別を容認し、それによって人命をも容易に奪って恥じもしない社会構造の有様には、色々と建前は立派な米国だけれども、中身はやはり何も変わっていないのだなと、改めて冷めた思いを抱かざるを得ないのです。

本件と直接には関係ないですけど、Hillary ClintonとAndrew Cuomoの米民主党次期大統領候補筆頭の2人が相次いでIsraelへの支援を表明し、或いはNetanyahuと称賛を交わしさえした件にしろ、弱い者の人命を軽視というか、弱者は殺されて当然だし殺しても構わない、というアメリカ人の傲慢な価値観を立て続けに見せ付けられた気がして、その意味でもとても気分が悪いですね。Yazidisへの支援なんて、どの口が言うのかと。

This Is The Version Of The Ferguson, Missouri Shooting That Police Don't Want You To Hear
Ferguson's Police Chief Freaked Out After Finding Out His Cops Arrested Two Reporters

その一週間後、ようやく警官の氏名が公表されした。Darren Wilson、白人との事です。しかし警察のやり口はますます酷くなるばかりで、目を覆いたくなります。

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8/12/2014

[biz law] オムロンが商業施設にて一般客を無断で監視・追跡4年弱

やっぱりというか、先日JR駅監視映像の無断流用が発覚したオムロンですが、他にも類似事案で盛大にやらかしていた事が発覚したそうで。 多分に氷山の一角だろうし一々取り上げてもキリがないんでしょうけれども、一応。

報道によれば、文科省委託の人物追跡・検索技術の研究で、京都烏丸御池駅近くの商業施設「新風館」にて2010年から2014年4月まで、およそ4年近くに渡り無告知で一般客の画像を撮影、追跡実験を実施し続けていた、とのこと。法的にはともかく、社会通念的には完全にアウトです。

ちなみに、委託研究の正式名称は下記ですね。責任機関はオムロンで、東大・京大・名大・中国清華大・中国科学院・ミズーリ大・シンガポール大が参画機関となっていますから、やはり主導として一義的な責任はオムロンにある点には間違いなさそうです。

<文科省所轄の科学技術振興機構公式HP>
環境適応型で実用的な人物照合システム

責任者はオムロンの労世紅氏。清華大や中国科学院・シンガポール大が絡んでいる点からして中国人でしょうか?もしそうであれば文科省の公金を使った研究としてはいささか疑義が付きそうな気もしますし、セキュリティ関連技術の研究開発に中国が関与している時点で不安を覚える人も相当にいるでしょうから、社会的にも問題があるように思われそうますけれども、それはともかく。

本件は一応京都大、東京大、名古屋大との共同研究との事なので、JRの件に比べればオムロンの関与の度合いは相対的に若干低いのかもしれませんが、撮影データ を入手して最も大きい利益を得るだろうのは関連技術の事業者たるオムロンなわけで、実作業とデータ管理の相当部分を担っていただろう事は疑いのないところでしょう。設置調整作業に追われて表示を失念した、との言い訳にしても、オムロンがその重要性や表示した場合に起こりうる利用者の反発等のリスクを理解していなかった筈はなく、失念との説明はあまりに不合理で、逆に故意によるものとの確信を抱かざるを得ません。自分から認めるとは思えませんけれども。

その上、ずうずうしくも泥縄式に表示をしただけで現在も撮影は継続しているんだそうで。これは明らかな愚行と判断せざるを得ません。かように報道に乗ってしまった以上、これから施設に利用者のクレームが殺到するんでしょうし、撮影を継続する限りは利用客の中には敬遠が一定割合発生するだろう事も確実なわけですから。しかしそのあたりについてどう責任を取るつもりなんでしょう。外野としては逆にその種の危機のテストケースとして興味深い面もありますからとりあえず注目はしますけれども、当事者には洒落にならないでしょうし、それ以前に社会倫理的に到底許容し難い行為なのですから、一市民としてやはり暗鬱たる心持ちにさせられてしまうわけです。

しかしオムロン、懲りませんね。もう先日の件だけでも事業継続は不能かとも思われたところ、流石に終わりでしょうか。いや終わってください。というより、行動追跡とか、元々プライバシー侵害の意味で不法行為同然の悪い評価がつきまとっている監視関連技術自体の評価が、この立て続けの無断監視の発覚によって、許容され得ないものとの評価で固定されてしまったかのようにも思えるわけです。大阪駅の件にしても、終わったと思った矢先にまたしぶとくも再開の計画が立てられたとの事でもありますが、あっちはあっちでむしろ余計に監視対象を拡張するつもりだとか、社会感情を逆撫でするかのような傍若無人ぶりを見せていますし、近いうちにそのあたりの評価が覆るとは到底思えないのですね。

監視社会、という言葉の使われ方、社会的一般の受け止め方からしても、この種の行為に反発する人はいても、賛同する人なんていないも同然な事は明らか、常識と言っていい筈の話なのに、彼らは何故そんな事も理解出来ないのでしょう。もっとも、監視技術を開発しようなんて企業や研究者やらに、プライバシー等の人権を尊重する観念や倫理なんて初めから無い、というかそういう感覚が無いからこそそんな技術に携わってるんでしょうけど。多分にこのまま、社会との対立を強め、ついには強制的な差し止めを食らうまで継続しようとするのでしょう。愚かしくも困ったものです。

[関連記事 [biz law] オムロンのJR駅監視カメラ映像違法流用発覚]

8/07/2014

[biz] 原発評価、非現実的前提の上に立つ空虚な"適合"

ちょうど今、先日発行された川内原発の原子力規制委員会による新規制基準への適合審査書案に対するパブリックコメントの募集期間と言う事で、新基準の内容確認がてら流し読みしてみました。根拠規程と併せて。無論、今回用いられた基準自体、社会からの信頼を喪失した原発に無理やり安全のお墨付きを与える事を目的として策定されたものである事は分かり切った話なわけで、その確認をしたというだけの殆ど無意味な作業であって、今更何かしら有意義な知識が得られたわけではないんですけれども。

果たしてその実態は、予想を超える無茶苦茶なものでありました。いやもうなんなんですかこれ。

まず本書の位置づけは、その名の通り、規制基準との適合可否を評価・判定するものです。ですので、評価基準が具体的かつ明確で、かつ評価対象も構造等を細部まで十分に把握出来ているもの、例えば建築物としての施設自体の構造や人員・設備配置等については、実際の状況と基準とを照らし合わせて個別具体的な、単純な確認評価を行っているだけのものですから、そこに特に問題にすべき点は見られません。作業員にテロリストが紛れ込んだりした時の対応は?というような疑問も浮かびますが、それはそもそもの基準に想定されていないのですから、本書の対象外という事ですし。

問題は、評価対象もしくはその要素の大部分が推定に基礎を置いてしまっている点、もしくは基準自体が曖昧な部分がある点です。これはいけません。実際問題、そんなあやふやな評価に委ねるわけには絶対にいかない性質の話なのですから。しかしその量と話の複雑性からして、ここで全てを列挙するわけにも行きませんので、さしあたり一番目につく、かつ致命的に思えるものを一つだけ。

本評価書の冒頭(p.13~)には、耐震評価の前提となる、立地地域の地盤構造とその地震による揺れの程度等の評価が記載されているのですが、これが殆ど単純化された数理モデルでしかないのです。構造も性質も三層程度に単純化され、各層もそれぞれ均一と仮定されています。この時点でもう話にならない感じですが、しかも、そのモデルのパラメータを決定するに際しても、実測データすなわち採掘に基づいて決定したのは施設下28.5mまでのごく浅い部分のみで、肝心たるそれより深い部分については、施設下1018.5mまでは地上で計測した弾性波のスペクトルをフィッティングさせたものを用い、それ以下に至っては、当該場所での計測すらせず他の論文から値を拝借しただけ、というのです。

あまりの無茶苦茶ぶりに眩暈がします。モデルにも、パラメータにも、およそ当該地域の構造を十分モデリング出来たと言える現実的な妥当性が全く認められません。これで何を示そうと言うのでしょうか。学者の論文としてはよくありそうな仮説で、そういう理論研究の一環として大まかな傾向を推定する方法の提案、程度ならまだしも、というかそれでも怪しい位です。無論、具体的かつ現実的な特定地域の将来に渡る物理的状況の評価に耐え得るものとは到底考えられません。九州電力も委員会も、こんな前提条件を堂々と冒頭に記載するというのはどういうつもりなのでしょう。まさか本気でこれで川内原発近辺では見積り以上の大きさやモードの異なる揺れは絶対に起こらない、等と言えると思っているのでしょうか。だとしたらもう救いようがない阿呆としか言えないわけですが。

具体的に見ても、評価モデルには欠陥ばかりが見られます。このモデルや評価の前提によるなら新規の断層は生まれない事になりますし、過去に観測・記録された地震より有意に大きい地震や、浅い震源からの局所的な強い揺れも発生し得ない事になりますが、そんなわけはないのです。そもそもの本評価の目的として、およそ全ての物理的に起こりうる事象に対する安全を保証する事が求められている以上、捨象が許されるものでもありません。それらは致命的な欠陥に塗れた非現実的な仮定であり、それに基づいた地震に関する記述は、根拠のない憶測に過ぎないと言えるでしょう。そして、それによってリスク事象の限界を画し、現実に起こりうるリスクを過小に見積もった本評価は、社会的に看過し難い危険なものになってしまっているわけです。

他にも色々目につきますが、一々書く気も失せますね。ほんとげんなりです。最初から妥当性等知ったことではない、電力会社と省庁のやらせ的な評価だとは承知していましたが、ここまで明らさまにやられると。。。でもって当人達の大半はこれが本気で妥当だとか思っていたりするのだろうからまた始末に負えません。パブコメの募集にあたっても、"上記1.に対する、科学的・技術的なご意見"とか、条件を付けて一般的な意見の無視をあらかじめ宣言しているあたりも、その姑息さもさることながら、そういう事はやるにしても内部でこっそりやればいいだけの話だろうにわざわざ言うとか、やはり阿呆なのかと、さらにげんなりさせられるのです。

何にせよ、福島の惨事の再現を恐れ、文字通りの完璧かつ絶対的な安全性の保証を求める社会の要求に対しては全く応えておらず、従って社会の動向を転換させるものではなく、その意味で本評価は実質的に無意味なものとも言えるでしょう。むしろ反発を増幅させる可能性の方が高いかもしれない、とすら。全く以て馬鹿馬鹿しい限りです。

九州電力株式会社川内原子力発電所1号炉及び2号炉の発電用原子炉設置変更許可申請書に関する審査書案に対する科学的・技術的意見の募集について

<参考> 適合基準の定義は下記解釈「別記2」(p.122~)参照

原子力規制委員会「実用発電用原子炉及びその附属施設の位置、構造及び設備の基準に関する規則の解釈

[biz] スカイマーク、成田から完全撤退

一連の経営不振と、それに端を発するエアバス社との契約破棄に伴い、破綻が殆ど確定視されているスカイマーク社ですが、間髪入れず成田からの撤退を決定したそうで。一応米子空港は神戸ほど比率が高くはないとはいえ元々少ない路線がさらに減るというので、慌てた関係者が維持要請とか出したみたいですが、あまり意味は無いでしょう。

というのもこれ、路線の一時休止ではなく、事務所まで閉鎖してしまう完全撤退とのことですから。関空からは既に撤退済みにつき、これで国際線への進出は事実上不可能になりました。という事で、それ用の機体であったところのA380調達、その復活の可能性も消滅。従って手付金の回収不能、及び違約金発生も不可避に確定してしまったわけです。ついでに撤退費用も発生します。完全に債務超過です。

問題は、撤退以前ですら今回発生する負債の数分の一に過ぎなかったところの売上高が、本件撤退によって更に減る、というところでありまして。達成可能な営業益はどんなに頑張っても年10億かそこらでしょう。しかるに仮に報道にあるところの違約金700億が事実とすると、手付金と合わせて1000億近くにも見積もられる巨額な負債をどうやって返すのかと。当面は借入金で対処するとして、その利息だけでも少なく見積もっても年数十億、営業益を越えてしまいますから、赤字を多少減らした所で、利息の返済すら全く出来ない計算になるわけです。

一応、社債の発行とか増資とかも資金調達の手立てとしてはあって、それによれば利息を抑えうる可能性もあると言えばあるんでしょうけれども。しかし本件が発覚する前ならまだしも、この期に及んでそんな低金利で社債を発行出来るとは思えませんし、さりとて増資も、引き受け先の有無以前に現在の資本金142億に対して調達すべき額が大きすぎで現実的ではありません。じゃあ身売りは、と言っても、こんな本体より遙に大きい負債が付いてる会社を何処が買うんだという話で。

どう考えてもやっぱり詰んでるとしか思えません。本件の成田撤退も、もはやリストラというより清算に着手したと見るべきもののようにも思われるところです。そうだとして、最終的にいつどのような形での処理に落ち着くのかが気になるところですが、このどうにもならなさ加減と、元々代替もあり、そもそも弱小で社会の大多数にとっては消滅しても問題の生じない同社の立ち位置からすると、時期的には近いうちにあっさりと消滅で決着するのかな、とも。ただ、スカイ社の事ですから、おそらくは一々見苦しくも色々と揉めるんでしょう。最後まではた迷惑というか騒がしいというか馬鹿馬鹿しいというか、むしろその方がらしいと言えばらしい気もします。ともあれ、もうすぐお別れ。個人的には嫌いじゃなかったですよ。搭乗は面倒だし、乗り心地も最悪でしたけど。

スカイマーク、成田路線撤退へ…国際線は断念
スカイマーク米子6路線維持 県幹部が6日要望

そして後日発表された詳細スケジュールによれば、10月の変更時に成田撤退、さらに残りの路線にもまさかの大幅値上げをぶちかますそうです。数割から7割程度とか、正気じゃありません。ついでに予備等の削減も。唯一の売りとも言うべき低料金まで捨てて、只でさえ不安のあるバックアップまでも減らすとは。。。いくら当面の現金確保が必須だからと言っても、値上げすれば当然客は減るだろうし、またいわゆる削ってはいけない備えの部分に手を付けてしまっては、何かトラブルがあったら即死です。それを知った顧客はなおさら敬遠するでしょう。しかも、そこまでやってなお赤字の補填にすら全く足りないのだから救えません。もはやどうにもならないでしょうから、この上はせめて潔く廃業すべきだと思うのです。重大事故や取り込み詐欺的な何かをやってしまう前に。

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8/05/2014

[sci] STAP捏造当事者・笹井氏の死に

死んじゃいましたか。。。STAP細胞捏造事件において、小保方氏の直接の上司かつ関連論文の共著者であり、主犯格とされる笹井芳樹氏が理研の医療センター内で死亡したと。

追い詰められた上の自殺との見方が有力なようですが、であれば全くの自業自得、死亡した事自体は何とも思いませんし、死因等にも関心は全くありません。ただ、その程度は不明ながら、本件を主導し、従って真実をよく知っていただろう点に疑いのない氏が、およそその全てを明らかにしないまま死去してしまった事は、その疑惑をさらに深め、あるいは確信に変える事はあってもその逆はないでしょう。その意味では国内の科学研究一般に対して負の影響をもたらすものと言えるでしょうか。結局氏の罪は償われることもなく、ここに確定してしまいました。もはや完全に失われたその信頼の回復には一縷の期待すら抱いてはいませんでしたが、それでもその点にだけは少し残念な気はします。

とはいえ、まだ他に大勢の当事者が残っています。彼らには笹井氏と同じ道は選んで欲しくありませんし、そのうちの一部でも、事実の告白に踏み出してくれる事を願います。無論、小保方氏自らが真実を明らかにする事が最も望ましいところですが、氏の一貫したその行いに照らせば、この期に及んでもそれは期待出来ないでしょう。そのような生き方しかしてこなかっただろう人なのですから。

この先はどうなってももう絶望以外存在しないように見える本件、せめて何がしかの救いのあらん事を。

笹井副センター長が自殺=首つり、研究所に遺書-兵庫

[IT] 顔認証による出入国審査実証実験再開

羽田・成田での出入国の顔認証実証実験、始まってしまったそうですね。ほんと気が滅入ります。

オープンスペースで実施した前回から、室内での実施に切り替えて一般に失敗要因とされる外光による変動を除去し、装置に照明も追加して、少しでも失敗率を低減させようとする姿勢は一応見られます。が、前回の20%近くにもなる論外な認識失敗率と、実際に求められ、メーカーのNECも喧伝するところの1%未満程度の目標失敗率のギャップからすれば、その程度で埋まる筈もないだろう、としか思えないわけで。

それでも、少しでも改善が見られれば、その相対的な進歩を理由にして、絶対的な失敗率が如何に実用に耐えなかろうとも、省庁関係者は予算獲得のため、NECは受注のためだけに、種々の詭弁を弄して継続しようとするのでしょう。というより、今回の実験自体がその一環なわけで、その意味では最初から実施する意味自体が存在しない試みと言うべきものです。これまで、膨大な費用、10年にも上る歳月、人的リソースが本件のために費消されて来たところ、この上さらに浪費を重ねて恥じもしないNECはじめ官僚ら関係者には憤りを禁じ得ません。全く以て鹿馬鹿しい限りです。

個人的には即止めるべきとは思うんですが。。。止まらないのでしょう。で、このままこの茶番的なゴリ押しが続くとして、実際に導入するとなれば、当然色々と無理が来る事が予想されるわけです。特に、今回の実験は特別に設けられた室内スペースで実施されているようですが、本運用の際には本来の通関ゲート近辺、すなわち前回の実験と同様のオープンスペースで実施出来なくてはなりません。ゲート丸ごと改築とかするわけにはいきませんから。それで今回多少底上げされるだろう認証率が逆戻りしたとして、どうするのでしょう。というより、そもそも今回底上げされても、多少の程度の差こそあれ、認証失敗が頻繁に発生する点に変わりがないわけです。

そんな装置を導入して、どうなるか?分かり切った事です。認証結果がどうあれ、認証失敗の可能性が相当に残る以上、原則全員、従来同様に人手でチェックし直さなければならないでしょう。その結果、確認の多重性が増えるのですから信頼性は向上するでしょうけれども、本来の目的たる通関の人手削減の観点から見れば、自動化は全く出来ませんし、結局のところ従来のプロセスに加えて顔認証の手間が追加されるだけで、通関業務の効率化どころか、逆に各種の手間もコストも大幅な増加が予想されます。加えてシステムの管理者や説明員も必要になるでしょうから、むしろ必要な人員も増えるだけの結果になるでしょう。

また、そもそもの話として、顔認証によるゲート自動化は対象が日本人限定とされていますが、これが不合理なのです。本件推進の主たる理由は、東京五輪の開催による外国人観光客の増加への対応とされています。であれば、当然今回の措置も、外国人の通関処理の機能強化に充てられるべきもの、むしろ日本人は対象外となるべき筋の話です。この点、本措置により生じる余剰人員を外国人通関に振り分ける、とか理由付けがされていますが、日本人向けの通関を自動化出来る見込みが無い以上、現実性も全くありません。

単に人員不足が問題で、その強化で対応可能だというのなら、普通に採用なり他部門から異動するなりして補充しておけばいいだけの話です。認証ゲートのような複雑で、実用性も定かではなく、従って計画の確定も困難な仕組みを、このような莫大なコストや手間をかけて導入する理由にはなり得ません。せめて補助的に機能してシステム全体のトータルのコストが安くなる、といったメリットがあればまだしも、それもなし。

最初から、目的と手段が全く噛み合っていないのです。要するに、この辺の理由や目的は全て建前、それも後付けのものなのでしょう。NECはじめ企業各社が非現実的な認証性能を謳って省庁に顔認証製品を売り込み、それを官僚が予算獲得のダシに使い、数多く突き付けられた筈の実態と建前の齟齬を前に、延々とその場しのぎの取り繕いと糊塗を続けたその結果という事なのだろうと。であれば、当人達はその過去の経緯から自縄自縛となって、もはや如何に非現実的だろうと引き返す道は残されていないのかもしれません。このまま、彼ら以外の誰にとっても害悪としかなり得ないただのハリボテが現実に作られる、その日まで。

顔認証:自動化ゲート実証実験 成田、羽田空港で

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そして、到底あり得ない高精度の結果発表。倫理の欠片も感じられません。

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