先頃最高裁の決定を経て原告勝訴で確定したオリンパス社員浜田正晴氏の不当人事訴訟の件、オリンパスが是正措置を取らず違法状態を放置しているとして原告が東京弁護士会に人権救済申立を行ったんだそうで。
また面倒な事になってますねえ。無理からぬ所ですけれども。最高裁まで行って確定した判決の重要性は無論、またそれを実質的に無視するオリンパスの行為が反社会的である事についても、今更論ずるべきところがあろう筈もありません。非難を浴びるのも当然、速やかに是正措置が取られるべきものです。ただ、本件訴訟における請求は地位確認と損害賠償の2点だったのであって、人事的作為の給付を求めるものではなく、従って人事措置については執行力がない判決であるために外的な強制が困難なわけで、オリンパスが無法を決め込むのであれば如何ともし難いのですよね。
一応、オリンパスにもノーペナルティというわけではなく、放置期間が延びる分損害賠償額は増えるのだけれども、日本ではその額に懲罰性が薄く強制力が無いも同然なのですね。そこに司法制度上の根本的な問題があろうところなんですが、だからと言ってそのために民事の賠償額を大幅に増やすというのも無茶な話でしょう。
結局、本件のような人事案件については、今回なされたように、人権救済申立のような強制力の無い手段で、被告の違法性を社会に広告し、企業イメージの毀損やそれに伴う事業環境の悪化リスクに晒す等、経済制裁的なやり方に訴えるより他に仕方の無いところなのでしょう。しかしそのやり方は一般的に直接的な強制力に欠けるために、事態の膠着に陥りやすく、控えめに言っても紛争の終局的な解決の手段とは到底言えない事実に変わりはありません。特に今回のオリンパスのように既に落ちる所まで落ちて開き直ってしまったような場合には尚更ですね。これは法の不備とも言える部分のように思われるわけですが、かと言って強制執行の手続きを導入するにしても、そもそも通常の企業組織運営の原則と真っ向から対立する事は必至なのだし、元のポジションに戻して終わり、というような単純な話であろう筈もないわけで、さてどうするべき、どうなるべきものなのかと、傍観者の立場からしても途方に暮れてしまう次第なのです。そんな無責任な事ではいけないんですけれども。
オリンパス社員 人権救済申し立て
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