4/11/2012

[biz law] 富士通の不当解任訴訟で元社長敗訴

ようやく一審判決。判決の詳細は未確認なので具体的な所を論じる事は困難ですが、報道の内容を見る限りでは、辞任とその後を含む一連の行為に野副氏の自由意志が認められ、かつサンドリンガム社をして反社会的勢力とした解任理由も正当としているとの事で、全面的な会社側の勝訴という形になっているようです。概ね会社側が勝つとすればこうなるだろうと予想された通りの判決ですね。

確かに野副氏の一連の行動には、病気療養に入った時点から、不自然さはあるにせよ一定の自発的な部分が見られました。従って氏の主張が認められるためには、それが不当なものである事、すなわち間接的にでも会社から強制されたものである事が証明される必要があったわけですけれども、それに完全に失敗したという事なのでしょう。その部分は、客観的な証明が相当に困難な内心の事情ですから、まあ致し方のないところとも言えそうです。氏の行動、判断に甘さがあった旨の指摘も可能でしょう。

ただ、一連の行為にある程度氏の自発性が認められるのは事実だとしても、看過し難い不自然な面が見られるのも事実であって。氏が主張するように、会社側の指示に抗う一定の余地があっても、会社に信義を置くが故に、そしてその名誉を毀損する可能性がある旨の指摘を信じるが故に、あえて抵抗を封じた面がそれなりにあるのであれば、氏の不作為等を根拠として会社側に責任が無いものとする本判決の判断には、相当の疑念を禁じ得ないところです。

もっとも、いかに怪しかろうとも、訴訟においては事実認定がなされなければどうにもならないわけで、保守的に認定された事実のみから判断してこういう結果になったんでしょうけど。こういう曖昧かつ複雑な部分は、往々にして弁護士のとる立証方法や裁判官の人格的なところで判断に極端な違いが生じるものであるところ、上級審で再び審理がなされる事でしょうから、引き続き要注目ですかね。

ところで、本件はニフティ絡みという事で、かねてから色々と黒い噂の絶えない周辺の諸々が芋づる式に明らかになるんではないかという期待も少なからずあったんですが、双方とも自重しちゃってるのか全然聞こえてきませんね。そちらの方がむしろ残念です。サンドリンガムの方も音沙汰無しだし。うーん。

富士通元社長の請求棄却、東京地裁が「辞任強要」の訴え認めず