10/29/2017

[note] ubuntu17.10は不具合多数、回避or様子見推奨

秋です。半期に一度の恒例行事、ubuntuアップグレードの季節です。

今回のバージョンは17.10、コードネームはArtful Aardvark。巧みなツチブタさんです。南アフリカ在住のアリクイ的な生き物なんだそうです。何が巧みなんでしょうか。蟻の巣を掘るのが上手いんでしょうか。そうだとして、それがOSの何をどう象徴しているというのでしょうか。相変わらず意味がわかりません。

それはさておき。まずは警告をしておかなくてはなりません。ここ数年、Ubuntuのデスクトップ版におけるアップグレードは殆ど形骸化していました。機能面・表示面共に大きな変更は殆ど無く、これに伴ってアップグレード時に不具合が生じる事も殆どありませんでした。が、今回はUnityの終息(予定)に伴う標準環境のGnome3への移行を中心に、主にUI面で大幅な変更が行われました。これに伴い、残念ながら不具合も多数発生しています。

実際、私も複数のトラブルに見舞われました。念の為リリースから10日程時間を明けて適用したのにも関わらず、です。コミュニティの掲示板等へも多数の質問が寄せられ、しばらく見なかった活況を呈している事は喜ぶべきか悲しむべきか。それらの報告される不具合の多さ、深刻さからして、安定するまではまだ相応の時間がかかるだろう事を考えると、可能ならば数ヶ月程度待つ、あるいは見送ってしまったほうがいいのかもしれません。

今回私の下で適用対象としたのは、合計5台。内一台はサーバですが、デスクトップ兼用です。アップグレード自体はupdate-managerからいつもの通り適用するだけで特に問題なく完了しました。ですが、問題はそこからです。これまでに発生した不具合は下記の通り。一部はまだ解決していません。

[既発生の不具合一覧]

1.キーボード入力の不具合
 入力時に遅延が発生。また、リピート入力が数文字程度で勝手に止まったり、fcitx-mozcの変換候補のウィンドウが直ぐに消えたりする。極めて不便、というより入力作業がまともに出来ない。

2.LXDEの不具合
 背景がデフォルトの明るい灰色に戻り、かつ変更不能(設定ツール起動不能)になる

3.複数ライブラリの消滅
 幾つかのライブラリが削除され、それに依存したアプリが起動しない

4.sambaの不具合
 従来のコマンドではネットワークマウントが出来なくなる
 ※これはバグではなく仕様変更ですが、影響や対処等は不具合と同様につき含めました

5.タッチスクリーンの位置ズレ
 キャリブレーションの設定が無効になり、位置ズレが生じる

大体そんな感じです。対処出来たのは5以外です。その方法は下記。

[対処方法一覧]

1.キーボード入力

 これの原因は、特定のモジュール(peaq_wmi)が何故か余計なキー入力を多数発生させている事によります。従って、当該モジュールを削除すればそれで解決します。下記コマンド。

 $ sudo rmmod peaq_wmi

 また、本モジュールが自動で再インストールされないよう、ブラックリストに登録します。

 <ブラックリストファイル> /etc/modprobe.d/blacklist.conf
 <登録方法> ファイルの何処か(末尾でよい)に、 下記行を追加。

  blacklist peaq_wmi 

2.LXDE背景変更不可

 前述の通り、背景がデフォルトの白い背景になり、変更用ツールの[設定]-[デスクトップの設定]も起動しなくなります。これは、おそらくLXDEのアップデート漏れによるもので、LXDE周りの入れ直し等でも対処は可能だろうけれども、面倒なのでテーマをLXDEからLubuntuに切り替えて済ませる事にしました。Lubuntuテーマの場合、何故か[デスクトップの設定]ツールも使用可能になります。この辺りは釈然としませんが、動くならそれでよしとしましょう。

3.ライブラリの廃止
 
 これはアプリ毎に対応するしかありません。私の場合、libgtop2に依存していたプログラムが動かなくなったので、当該依存部分を置き換えてリビルドする事で対処しました。

4.sambaのネットワークマウント不能

 mountコマンドで、cifs形式のマウントを行おうとすると、対応していない旨表示されて失敗します。これは、17.10で採用されたsambaのバージョン(2: 4.6.7)では暗号化通信対応のSMB3.0がデフォルトとなり、SMB1.0,SMB2.0等の暗号化非対応の以前のバージョンは明示的に指定しない限り許可されない仕様になったため。なので、従来通りの非暗号化での接続をする場合、mountコマンドでもバージョン指定が必要となります。指定の方法は、下記の通り。versオプションで指定します。

 $ sudo mount -t cifs -o vers=2.0 ...

 なお、vers=1.0でも接続出来る事を確認。一方、vers=3.0,3.1等は失敗。smb3.0がデフォルトになっている筈なのに失敗するというのはどういう事なのかまだ良くわかりません。ただ、言うまでもない事かもしれませんが、1.0も2.0も非暗号化通信なので、クローズドな環境以外での使用は避けるべきでしょう。

以上です。

あと、5.のタッチスクリーンの問題についても簡単に説明しておきます。具体的な症状としては、xinput_calibratorで取得出来る設定情報をXorgの設定ファイルに入れても補正がされず、おそらくはデフォルトのままとなってタッチ位置がズレる、というものです。これはLooxU(C40)で生じているものですが、他の複数の機種でも生じているとの報告があるため、機種依存ではなくXorgとそのモジュール周りの問題と思われます。実際のところあまり使わない部分なので、急いで対応する必要はないものとして放置していますが、やはりこういう部分が残っているのは気持ちが悪いので、そのうち折を見て対処したいと思います。設定ファイル等の対処で何とかなるのかはわかりませんけれども。

※タッチスクリーンの問題はsynapticsドライバを入れている場合に発生する旨、公式でもknown issueに掲載されていました。ドライバの修正を待つしかないようです。

不具合ではないものの不満点は他にもあります。例えば、一応試すかと、今回のアップグレードの目玉であるところのGnome3も使ってみましたが、私には合いませんでした。画面上部を占拠するバーが邪魔だとか、動作が軽くない点とか、色々目につく欠点があって、正直Unityよりはマシ、という程度です。というわけで直ぐにLXDE(Lubuntu)に戻してしまいました。Canonicalが迷走した末に渋々置き換えた、というだけの、後始末というか消極的な妥協の産物なので、やる気もリソースも殆どなかったでしょうし完成度が低いのも仕方ないと言えば仕方ないのでしょうけど、もう少し何とかならなかったものでしょうか。

今回は総じて悲惨なアップグレードだったと言う他ないでしょう。特にキーボードの不具合は酷すぎると思います。当該不具合はリリース前に報告されており、修正は容易だった筈です。なのにそのままということは、リリースにあたってCanonicalでは動作確認すらしてないとしか思えません。その辺りは元々デベロッパーの領分で、ディストリビュータの責任では必ずしもない、とは言っても、確認もせずに放置して、そのままリリースするというのは無責任過ぎます。

この分だと、また少なからずユーザが離れるんでしょうね。残念ですが仕方ないでしょう。

(追記)

他にも、webサーバのnginxについて、デフォルトのhtmlフォルダ内(/usr/share/nginx/html)内のindex.htmlがデフォルトの"Welcome to nginx!"を表示するものに無断で上書きされてしまう不具合も確認されました。この不具合は、以前(数年前)にも発生し、その後修正されていた筈のものですが、いつの間にか復活してしまったようです。serverでデフォルトフォルダを公開し、かつindex.htmlを変更している場合、アップグレードによって当該ファイルが失われ、サイトが機能しなくなってしまいますので、注意が必要でしょう。

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