4/20/2016

[biz] IntelがPC部門に見切りを付け、大規模リストラ

予想通りと言うべきでしょうか。intelが大規模なリストラを計画中だそうです。

規模はおよそ全体の一割12000人程度、主な削減対象はPC関連部門で、新規ビジネスに注力する方針との事なんだそうです。PC市場の急激な縮小と、それを代替する筈のモバイル系でARM系に概ね敗北した事で不良債権化したリソースに見切りをつけた、という事で。PC周りは技術の進歩の余地もほぼ枯渇して、実質的に新製品の投入が困難になっている事も併せて見れば当然の結果と言えるでしょう。外部環境面では割と八方塞がりな感じですから。

もっとも、外部的な要因を別にしても、以前ALTERAを買収した事でintel内部のリソースには明らかに余剰があって、かつソリューション面とプロダクト面とで組織体制に齟齬が生じていただろうところ、それを整理統合する必要は当然あっただろうから、そちらが主な目的で、リストラは副次的な位置づけのものなのかもしれませんけれども。

ともあれ、今後の方針としては、基本的にはデータセンター向け中心にFPGAとサーバ用プロセッサのラインを統合して、それによって成立するソリューションをこれからの主力に位置づけるって感じでしょうか。その割を食うのが決算でほとんど一人負け状態なクライアントコンピューティング部門と。具体的な製品で言えばAtom系とか厳しそうですね。本来なら主力になっていた筈なんでしょうが、ARM系ともろ競合で惨敗した結果ということで、当該部門の人達はさぞ無念でしょう。解雇されるのでなければ、新しい分野に挑戦出来る機会と捉えてむしろ喜んでいるかもしれませんが。

一応、PCが衰退しているって言っても、Windowsは無論、OSXもLinuxも基本的にCPUはintelの独占は変わりないわけだし、intelのクライアント向け製品自体が近い内に消えてしまうわけではないんでしょう。それでもこうして、先日のムーアの法則終了宣言と併せ、intel自身がゆっくりとしかし確実に白旗を挙げていくのを見て、少なくともこれからはもう殆ど進歩もしないんだろうと思うと、やはり残念に思う部分はあるわけです。一つの時代の終わり、になるんでしょうか。

[関連記事 [biz] IntelがFPGA大手ALTERAを買収]

4/15/2016

[biz] 富士通・東芝・VAIOのPC事業統合破談

国内大手PCメーカー3社事業統合の件、破談したそうで。

統合後の事業方針やらで合意出来なかったからとかいう事ですが、あれですかね。統合の主たる目的である所の集約によるコスト削減及び生産性の向上において、当然必要になるところのOEM先とか、国内・国外工場とかの統廃合については、まず間違いなくそれぞれ一つを残して残りはリストラ、って話になっていた筈なわけで。それはすなわち実質的に3社の内2社が撤退するのと同等と言えるだろうところ、先は無い事は明白ではあるけれども、各々が即倒産するわけではない現時点の状況下では受け入れ難かった、という事なのでしょうか。

保身と言えば保身ではあるのでしょうけれども、事実上の生き死にが掛かっている以上は致し方ないと言うか、これはもう各々が本当に単独では立ち行かない、文字通りの破綻直前ぐらいにならないと纏まらない話なのかもしれないと、改めて思うわけです。

おそらく大きな問題は2点。一点は、統合後のカラーというか、主にVAIOの主力たる尖った製品ラインの継続の是非、また搾り込みをどうするかという事。ある程度は残すにしても、その特殊性の強さから開発・生産体制の統合には相当な困難が見込まれるし、販売の戦略面でも色々とややこしい面が生まれるのは間違いないところです。VAIOのようなブランドイメージ重視の路線は、少なくとも事業体の前面に出さないと意味のないものですが、そうするとブランド的にはVAIOが他2社を吸収した形になるわけで、事業体の規模比的にそれは難しいでしょうし。そりゃ揉めて当然でしょう。

もう一点は、上記で触れたように、純粋に生産・開発・販売リソースの統廃合の方法でしょうか。東芝と富士通は法人向け中心に類似性は高いものの、それだけにどちらか片方は余剰につき必然的かつ単純に削減対象とせざるを得ないだろうところです。しかるに工場も開発部隊も販売部隊も。それらはそれぞれ垂直的に繋がりがあるわけですから、各々が丸ごと残すべきだと主張すれば、自然と一社分だけを残してそこに合流出来る一部以外の残り2社分は廃棄、というような思惑になりがちなパターンに見えます。富士通は特に国内工場の処遇も頭の痛いところでしょう。これまた揉めて当然、というか普通ならやはり、統合出来なければ破綻、位になってないと受け入れられない類の話と言えるでしょう。

一応、当初の思惑的には、各社の全リソースを一旦まとめてシャッフルして、そこから最適化を図る、とかそういう理想論的な考えはあったんでしょうけれども、具体的なプランに出来なかったか、出来ても実現が極めて困難だったか、はたまた3社共が欲をかく、もしくは保身に走ったか。いずれにしろ結果として形にはなりませんでした。やはり3社の統合、それも概ね対等に近い立場の事業体同士のそれとなると、余程の明確かつ差し迫った、強制力の強い事由がないと、任意ではまとまりませんよね、という話で。問答無用で買収するとかするのが普通、と言ってもそんな余力は何処にもなかったのも要因と言えるかもしれません。こう見てみると、圧倒的な資本力の差からあっさりLenovoに買われたNECのPC事業は高く買われ、かつそれなりにリソースの保全も出来て幸運だったとも言えるんでしょうか。

第三者的には、DynabookとかVAIOとか、それらの個々のPC製品自体が枯れてしまって、従来のブランド戦略とか個々の製品品質やらものづくり技術云々ではどうにもならないからこそここまで追い込まれてるわけだし、もう一旦そういうのは全て捨てて、ビジネスモデルから何から名称も含めて全て事業丸ごと新規に立ち上げた方がいいんじゃないの、と無責任にも思うわけですけれども、そんな怖い事したくないというか出来ない、って話なんでしょう。難儀な事です。まあ競合が多すぎるし勝算の立てようもない以上、どうにもならないのかもしれませんけれども。でもね、そもそもの話、統合した所で規模的にはLenovoやら海外大手とは勝負にならないのだから、この辺は結局は避けて通れない筈なんですけれどもね。最終的に買収される事を想定しているのなら別ですが。

ともあれ。さしあたりご破算になったのは事実ですから、しばらくはこのまま、少なくとも本年度は各社とも赤字を垂れ流す運びになってしまいました。

およそチキンレースの様相を強めている本件、その中でいよいよ持たなくなった所から、相対的にまだマシな所へと、力関係がはっきりした時点で順次吸収されていく、とかいう流れになるのかもしれませんね。というよりそれ以外ないと言うべきなんでしょうか。しかし今でさえ瀕死の弱者連合と揶揄される位なのに、さらに弱ってからだと、その時に統合する余力があるのか疑問、というか吸収するorされる意味があるのかすら怪しいし、そのまま共倒れになる可能性の方が高いだろうと思うわけなのですが。とはいえこれも当人達の選択、ありもしない可能性に妄想じみた期待を抱いて機会を逸してしまったとしても、致し方ないところなのでしょう。やれやれです。

しかし困っただろうのは東芝ですかね。どうするのでしょう。まさか単体で放り出す?次いで富士通。既に分社化した同社のPC事業ですが、目的であるところの切り離しができなくなってしまいました。このままだと超赤字で即死コースです。両社とも一刻も早く連結から外したかった筈の両事業、その目論見が崩れてしまったわけですが、さてどうする。

[関連記事 [biz] 個人向けから撤退する東芝、その行く先もまた暗く]
[関連記事 [biz] NECがPC事業をlenovoに譲渡]

4/09/2016

[PC] Bash on Windowsが本当に出て困惑

Bash on Ubuntu on WindowsがPreview Releaseされたそうですね。正直なところ何故?と困惑を否めませんでしたし、意義とか諸々の側面を鑑みるに本当に出るのかと疑わざるを得なかったわけですが、本当に出て驚きました。今でもあまり実感が湧きませんが、出たからには当然ながらそれなりに興味の対象にはなるわけです。皆も、と言ってもその方面限定ですが、色々と盛り上がっているようですね。

もっとも現時点では名前の通りシェルのみ、すなわちコマンドライン上のアプリが動くだけで、XはじめGUI周り一般は当然対象外だし、Previewテスターの報告を見る限り安定性は無論皆無、パフォーマンスも、桁違いのオーバーヘッドのかかるCygwinと比べても若干マシ程度とあって、現時点では大半の用途で丸ごと仮想化した方が良いだろう実質的には無意味なものらしいんですけれども。わざわざカーネルに専用のサブセットを用意までした割には如何にも中途半端に見えます。

それでも、完全に行き詰まって久しいCygwinや混沌としたmsys2(MinGW)の代替足りうる新たな希望として、一応は歓迎したいと思います。個人的にはメンテ終了してしまったgtk for windowsの代替が欲しかったんですけれども、この路線が継続されれば、将来的には当然その辺も復活する目もあるでしょうし。無論パフォーマンスもまだまだ改善の余地はあるでしょう。でも現時点では近い内に使い物になりそうな感じがしないんですよね。意義の薄さからすると、あっさり消える可能性の方が遙かに高そうですけれども、続いてくれるかなあ。。。と疑問が先に立つのも致し方無いところでしょうか。

将来的にはLinuxベースのプログラムがWindowsで動く、って言っても、そもそもLinuxのアプリを必要とするWindowsユーザなんて全体からしたらほぼ皆無に等しい位でしょうし。その割には大げさというか、開発やらにリソースが掛かり過ぎているような。。。Microsoftは人余りなんでしょうか?とか。主に開発環境周りでのOSX対抗って意図はわかるんですけれども、周知の通り元々Unix(BSD)ベースのOSXに、その方面でしかも後付で対抗しようとしても無理があるんじゃないかとも。開発向けというならなおさらパフォーマンスが十分に上がらないと使いようがないわけですしね。法人のLinuxサーバー需要取り込みとか連携とかの思惑もあるとしても、性能の期待値やら安定性面やら、諸々で話にならないでしょうし。うーん。まあ、とりあえず安定するまでは静観するとしますか。Ubuntu(Linux)ユーザとしては歓迎すべき話なのは確かなわけで。糠喜びしないよう、眉唾しつつ。

しかし、Bash上で動くsedとかpythonとかのLinuxネイティブアプリ類をUbuntuアプリと呼ぶのは違和感が半端ないですね。Linuxコマンドラインアプリだろうと。

Bash on Ubuntu on Windows

<追記:各所で行われたベンチマークについて>

リリースされてからしばらく経って、不安定性に悩まされつつもテスターの方々が頑張って詳細なベンチマークを行ってくれたようです。

The Performance Of Ubuntu Software Running On Windows 10 With The New Linux Subsystem

その結果を見る限り、CPU内部で完結する計算処理等については高々数十パーセント程度のオーバーヘッドで済んでいて、中々に優秀なようですね。と言ってもこの辺はOSよりもx86CPUの命令セットに依存する話なので、元々バイナリの形式はあまり関係しない部分ですから当然と言えば当然の結果とも言えるでしょう。

問題はファイルシステムのI/O周り。ここは文字通り桁違いに遅いとの結果が出ています。一番OSに依存する部分ですから仕方ないと言えば仕方ないのでしょうけれど、大半のアプリでのボトルネックもここにありますから、そこでのこれはやはり厳しいと言わざるを得ません。GUI等を除外してシェルに限定した理由もおそらくはこの辺のI/O周りの困難さにあるのではないでしょうか。無論実装を頑張れば解決出来なくもないんでしょうけれど、それはもう殆ど仮想化と変わらないような。うーん。

3/19/2016

[biz] 信用を捨て、信用出来ない相手に縋ったシャープの末路

誰もがうんざりしてると思うんです。つくづく阿呆だなあと。倒産寸前のシャープの身売りの件なんですけれども。ここまで酷いと、教訓にすらなるのかどうか。

本件における鴻海の鬼畜さ加減は今更云々するまでもないとして、元より鴻海が信用出来ない事も分かり切ってたわけです。以前出資を検討していた際、株価が下がったからと言って契約を反故にする形で買い叩こうとして破談した件、あの常軌を逸した所業を忘れたって人の方が少ないでしょう。あれだけからしても、誠実さとか善意とか、およそ提携や合併をするにあたって欠くべからざる要素を欠いており、協業の相手として不適格な類の業者である事は明らかでした。それ以前に呈示する条件等も空手形ばかりになって実質無意味だろうし、まともに交渉する事すら期待出来ないだろうと。

誰もがそうと知っていた筈の相手に対し、直近のシャープ経営陣が決定したところの被買収の選択、しかも契約を交わす前に機構を切って一本化する、という判断は、率直に言って正気を疑わざるを得ないものでした。正式な契約すら後から反故にするような連中にそんな立場を与えたら、そりゃもう好き勝手されるに決まってんじゃないですか。対等でないどころか、相対的な優位ですらない。シャープ側に断るという選択肢が普通に存在した例の出資破談の時ですらああだったのに、今回はそれを遥かに超えて、鴻海の出資が無ければ即倒産な状況ですから、決定権を完全に鴻海側に渡してしまったものに他ならないわけです。目一杯足元見て値切るに決まってますし、さらに雇用の保障等、諸々の条件も事実上白紙に戻ったと言うべきでしょう。頭おかしいんじゃないの?と誰もが思う意味不明な判断だったわけです。

しかしもはや後の祭りです。シャープが切り捨てた段階で産業再生機構は完全に撤退してしまいましたから、 今更泣き付いてもどうにもなりません。機構や行政の側からすれば、シャープこそが信用ならない相手と見做されてしまっているのですから、不可能とまでは言わずとも、それを覆す事は非常に困難な状態なってしまっているわけです。

今後の取りうる選択肢は2つ+α。一つはこのまま鴻海の一方的な提案を飲んで大人しく食い物にされる道。もう一つは、債権者たる銀行を説得し、つなぎ融資を引き出して時間を稼ぎ、その間に機構や行政に泣き付いて救済を得る道。αは、流石にまず無いでしょうけれども、どちらも選ばず、大人しく破綻して民事再生に進む道。どっちを向いても地獄しか無いこの絶望的な感じは他人事ながら引きます。

完全にシャープの自業自得とは言え、転職せずに未だ必死にしがみついている社員の方々には多少なりと哀れに思う気持ちを禁じ得ません。どうするんでしょうね。ここ数年、経営陣の振る舞いは不誠実そのものだったのであって、あっちもこっちも舐めてるとしか思えないふざけた態度で振り回し続け、その無能の極みと言う他無い愚かな判断の数々も相俟って、甚大な被害、損失を撒き散らした挙句に行き着いた先がこれですか。それで損害を被り、あるいは人生を狂わされた被害者には刺されても文句言えないんじゃないでしょうか。ほんとに。

もっとも、最後の最後まで、その態度と判断の誤りっぷりは一貫していた、という事で、むしろ当然の帰結と納得すべきなのかもしれませんけれども。信用を捨て、信用出来ない相手に縋った結果なわけで、あれだけ滅茶苦茶やっといて、しかし最後は救済されて幸せになりました、というのもそれはそれで理不尽な気もしますしね。碌なもんじゃなかったのですから、その最後もそれらしく、その報いを存分に受けて、そのままさっさと退場してこの世から消える、というのなら、それはそれで妥当なのかなと。やれやれです。何にせよさっさと綺麗に片を付けて頂きたいものですね。

[関連記事 [biz] 迷走の果てに消滅必至のシャープ、残滓の行方]
[過去記事 [biz] 赤字2223億で資本消滅、錯乱するシャープ]
[過去記事 [biz] 追い詰められたシャープ、狂気の99%超減資]
[過去記事 [biz] SamsungがSharpに出資]
[過去記事 [biz] hong-hiがシャープ出資契約無効を主張]
[過去記事 [biz] シャープがhong-hi傘下へ]

3/17/2016

[biz] 審判の日が迫るHMD型VRデバイス達

今年はVRあるいはARの年なんだそうです。年初あたりにそこかしこの技術系ニュースサイトで掲載された「今年ブレークする製品・技術」的な特集記事では、殆どそれ絡み、といってもどれもヘッドマウント型の端末ばかりだったのですけれども、ともかくそれがヒットするだろうと書かれていて、正直個人的にはその手のデバイスにはあまり興味が無い事もあって、眉唾に思いつつもふーん、程度に聞き流していたわけです。Oculus関連は価格含め期待外れな話ばかりでしたしね。

なのですが、まあそういう諸々の見込みの根拠であったところの、本命の一角たるソニーからのPSVRの価格等が周知の通りこの程発表され、それが思ったよりは戦略的である事が判明し、各所で議論を呼んでいるようです。だから何だというわけではありませんけれども、何はともあれ今年は予定通り、話題先行が続いた各種デバイスが一般向けに広く販売され、実際に市場並びに消費者の審判を受ける年になる事が確定したようで、その直前である今というのは、そろそろまともに先行きを考えてみてもいいタイミングなのかな、と思い、改めて各デバイスの仕様や発展具合等を確認してみたのです。といって、特に期待していたわけではないのですけれども。

その結果はやっぱりというか、絶対とは言わないけれども多分にこれは普及はしないだろうな、と言わざるを得ない、非常に微妙なものだったわけです。いろんな要素があからさまに過去の失敗の焼き直しな感じで、どうしてこう懲りないのかな、とも。このまま行けば、一般向けとしては揃って玉砕しちゃうんじゃないでしょうか。

まず製品の形態としては、各社グレードの違いはあるものの、基本的には3D表示対応のHMDに位置・加速度等のセンサを加えた、頭部装着型のモニタデバイスです。諸々の計算等の内部処理をデバイス内のプロセッサで行う場合と、そこは外部端末に任せてインタフェースに徹する形態等の違いもありますが、見た目は殆ど同じですね。中々に仰々しい外見には賛否があるでしょう。

頭部だけだと、入力に使える情報が頭の位置や顔向きしかなく、何をするにも足りませんから、別途インタフェースも組み合わせる形での運用が想定されています。それには手で操作するコントローラを使ったり、外部のカメラやルームランナー的な装置でモーションキャプチャをしたりする仕組みが採用されていますね。まともに組み合わせて使うと、特にPSVRとかラグが酷いことになりそうですが、それはともかく。

で、その機能というか、出来る事は、当然ながら3D空間への没入。 デモ等を見る限りARはあまり想定されていないようで、完全に別の空間を投影するものが大半のようです。主たる機能を一言で言えば、要するにFirst Person型すなわち一人称視点型のゲーム等の3D表示という事ですね。

機体の価格はまちまちですが、そもそもPSVRではその処理のためにPS4本体が必要になる等、基本的に単体では意味を成さないものですから、システム全体で見るのが適切でしょう。そうすると、およそ10万前後から、という事になります。子供やファミリー層は最初から対象外です。なお、HMD型につき、複数人が利用する場合には一人につき一台が必要になる個人用デバイスであるという点も留意が必要でしょうか。

以上の特色を持つVRデバイス達なんですけれども。その製品・事業的成否を予想するにあたっては、自然と競合するだろう各種製品や、過去の類似した位置づけの製品群と比較してしまうわけです。機能と価格の両面から。

まず機能の面では、既存のゲーム機類。特に3D表示が可能な個人向けデバイスという事で、任天堂の3DSが第一のベンチマーク対象になるでしょう。3D機能を除けば、従来通りのFPS系ゲームを通常の2Dモニターで表示する場合も含めるべきでしょうか。あと、単純な表示デバイスとしての面からは、3Dテレビですね。

その辺と比較すると、まず第1に表示方法すなわち主観的な画面・空間の範囲の違いがあり、第2に操作方法すなわち指操作と身体動作の違いがあり、第3に画素数の違いや内部処理能力等による投影空間の情報量差がその違いとして存在するように見えます。これらのもたらす効果をざっくり一言でまとめれば、VRデバイスの特徴はその没入感の高さにある、と言って良いのではないでしょうか。逆に言えば、それ以外にはあまり違いはないように見える、とも言えますね。

価格については言うまでもありません。ベンチマーク対象の既存製品群より明らかに割高です。個人デバイスとして比較すべきだろう3DSとであればおよそ6倍程度にも及びますし、従来通りのゲーム環境等と比較しても、同程度の処理能力で見れば少なくとも2倍程度の差はあります。

である以上、その特色でありウリであるところの没入感の高さというのは、そのだけの価格差があってなお、各製品が一般に広く売れ、普及し、定着するに足りるだけの特徴と評価し得るのか否か。それが問題だろうと思うのです。

で、これが訴求の評価とかいう以前に、その特徴自体が今ひとつはっきりしません。

確かに新しいカテゴリのデバイスですから、物珍しさはあります。熱心なファンは喜んで買うでしょう。その意味で、一時のニッチとしての成功は約束されています。しかし、これらの製品は単発のコンテンツではなくプラットフォームです。そうである以上、成功と言うには、新発売時限定のブームでは足りず、少なくとも5年以上程度の長期に渡って継続的な需要を惹き付け続ける必要がある筈です。そうでなければコンテンツ等が伴いませんから。しかも、そのコンテンツの開発には既存より高いコストが必要になります。コンテンツの単価も自然と上がるでしょう。只でさえ斜陽のゲーム産業周りにあっては、それは到底無視し得ない事業上の負担となります。

3Dである事にそれだけの価値があるかと言えば、おそらくNoです。3Dテレビの完全な失敗と、3DSにおいて3D機能が無意味と評価され、市場からコスト転嫁が拒絶された結果大幅な値下げを強いられた例を経験した今、その点に議論の余地はありません。少なくとも価格増には値しないものと見做されている、と言い切ってよいでしょう。

主観的な大画面化と、その他の外部情報の遮断については、従来のHMD同様、それなりの価値があると言えそうです。しかし、そもそもHMD自体がニッチである現状を鑑みれば、広く一般に訴求するための理由としては如何にも不足のように見えます。ただ、PSVRのようにHMDの従来製品よりは安価になる機種については、潜在的なHMD需要を取り込む効果は期待出来るかもしれませんが、それでもモニター自体を既に保有している層が対象になる以上、その需要が補助的な範囲を超えるものとは考えづらいところです。

操作方法の違いはどうでしょうか。これは人によるでしょうけれども、指先の動作と比較すると、身振り手振りによる操作というのは確かに一線を画した臨場感を与えるものである事は間違いないだろうところです。しかし、部屋の中でそれを行うには逆に不都合の生じる場合も多々あるでしょうし、何よりもそのためのデバイス類のコストで只でさえ高いシステムの価格がさらに大きく上がる事になります。また、周りが見えない中で身振り手振りをするとなれば、ブース型のように範囲を限定しない場合、事故の危険も懸念されます。売りというよりは、むしろ利用場面に対するリスクや制約として働く面も強いのではないでしょうか。コンテンツの設計にも苦労しそうです。ある程度訴求力はあっても、本体のコストまでもを補えるものとは言えないでしょう。

しかも、デメリットは他にも色々見受けられます。眼鏡着用者の場合には従来から眼鏡の干渉や位置ズレ、視野の齟齬等の問題が以前から付き纏っています。デバイス・個人毎にカスタマイズしたレンズを装着出来るようになればある程度解決する話ではあるものの、これまた大きなコスト増や煩雑さを伴い、それでなお違和感が残る事も避けられないでしょう。関連して、長時間の使用に伴う健康面への悪影響の強さを懸念する声もそこかしこから上がっています。単純に重さも負担になりますし。

果たしてこれだけのデメリットや不安定な要素を抱えた、非常に高価格なインターフェースデバイスが、そんなに広く一般に訴求し得るものなのでしょうか。現実的には、その可能性は殆どないと言えるでしょう。

それどころか、ゲーム機等のプラットフォームとして売りだされる点を考えれば、マニアですら十分にコンテンツが出揃うまでは買わないと判断する人が多数を占める可能性は低くないように思われます。では、そのコンテンツは十分に供給され得るのか。PSVRについては、現時点で有力各社がローンチタイトルを投入予定との事ですが、その中でデバイスの販売を牽引するような、すなわちVR専用のタイトルは、おそらくほんの一部に過ぎないでしょう。只でさえ開発費用が余計にかかるVR向け専用では単純に採算が合わないのですから。プラットフォームとして十分普及するまでは、否、普及した後でも、大半のタイトルは従来通りの2Dとのマルチリリースになるものと予想されます。VRデバイスが無くとも、個々のコンテンツを楽しむ事が出来ないという事はおそらく殆どないでしょうし、なおさらデバイスの購入動機は小さくなるとも言えるでしょう。

結局のところ、今売りだされている、売りだされようとしているVRデバイスは、コンテンツや機能の助けもなく、"没入型VRである"その一点のみを売りにして、数倍の価格差を埋め、遥かに普及し、エコシステムを確立している従来のゲーム機市場からシェアを獲得しなければならないわけです。

こう考えると、如何にも無謀な試みに見えてしまうのです。価格が$200位だったら話は全然違ったんでしょうけれども。

そんな無謀が、予想を覆して通るのか。非常な現実の前にあえなく散るのか。成否はともかく、久しぶりの新製品群のチャレンジという事で、外野として適当に楽しませてもらおうかな、と思う次第なのでした。私?買うわけないじゃないですか。

[関連記事 [biz] 任天堂、3Dの泥沼]
[関連記事 [biz] 3DS、らしくない任天堂]
[関連記事 [biz] 3D、 AR、タブレットとか、新ネタ総失敗な空気]

3/10/2016

[biz law] 行政・司法の技術への無知による結果的詭弁及び強権行使が洒落になってない

主にAppleに対する米当局からのiPhoneセキュリティ解除要求とその拒否に関する一連の件についてなんですけれども。膠着状態に入ったようで、話題としては少し時期外れな気がしなくもありませんが、逆に整理するにはいいのかな、と個人的な考えをメモがてらまとめてみました。・・・とつらつらと書いてたら長くなってしまいました。

本件経緯の詳細はここで述べるまでもないでしょうから省略。その概要は、FBIが事件の捜査過程で押収した容疑者のiPhoneからデータを取得しようとして、適当なバスワード入力を繰り返した結果、試行回数上限に達した時点でロックされてパスワード入力自体が出来なくなり、Appleにロックの解除を求めるも拒絶、それでも諦めず裁判所経由で命令を出すも再び拒絶され、しかしまだ諦めず、世論に訴えてAppleを非難しつつ要求を繰り返している、というものです。

平たく言えば、FBI(DOJ)からの理不尽な命令と逆ギレ的な非難に晒されるApple、という構図ですね。そもそもの前提として、本件はあくまでFBIの自己都合による捜査への協力要請であり、それに従うか否かに関係なく、Appleは何も悪くないわけです。法的な責任、問題が成立し得るのは、裁判所の命令を拒絶したという点にのみであり、それも正当事由があれば完全に合法であって、従うとしても善意に基づく任意的な協力者に位置づけられるわけです。にも関わらず加えられる強権的な圧力、次いで一般のユーザの権利の保護という正当な理由によって拒否したにも関わらず浴びせられる苛烈な非難の嵐。Appleとしては理不尽極まりないと言う他無いでしょう。

という感じの、振り返るだけでげんなりする本件ですが、その全体を見て理解した気がする問題点は、

・米国の行政・司法当局はIT関連技術について致命的に無知である
・IT関連事業者についても無知である、あるいは配慮が皆無

という点に尽きるように思うのです。ついでに、

・無関係な市民のプライバシーを含め、他者の権利はまとめてゴミ扱い

というのも挙げておくべきでしょうか。 一々指摘するまでもない気もしますが、結局のところ諸々の理不尽の原因はここに帰着するようにも思いますし。

で、客観的に見れば信じられない事ですが、兎にも角にも自分達は正義であり、その執行を妨げる者は悪である、と言うも同然の振る舞いで、FBIはCalifornia州の裁判所からロック解除命令を勝ち取ってしまったわけです。

これに対し、当然Apple側は反発しているわけですが、周知の通りFBIはそれに対し、まるで共犯者のように世間をミスリードしつつ煽り立て、非難を加えているわけです。まさしく詭弁に他ならない酷い主張なのですけれども、それでも話の中身を知らない一般人の中には、FBIの言うことだから、とそれを真に受ける向きも少なくないようで、その思惑通りにAppleを避難する声もそこかしこから聞こえてきました。見るにも聞くにも堪えません。非常に残念な事です。

Appleとしても、半社会的企業のレッテルを貼られるのは遺憾極まりない話であり、事業面での悪影響もありますから、如何に理不尽であろうとも、少々の事であれば妥協して話を終わらせたい筈ですが、実際にはそのリスクを犯しつつ強固に反発しています。無論それにはそれなりの、すなわち単なる理不尽な命令への反発というに留まらない、事業運営上の絶対に譲れない理由があるわけです。それはどういうものでしょうか。

状況を整理しましょう。法や事業面の話はさておき、まず技術的には、

・端末からのユーザデータ抽出は暗号解読と同義であり、Appleにも技術的に対応不可
・パスワード入力試行回数の制限解除は技術的には対応可能

であり、技術的には後者の試行回数制限解除のみが実行可能という事になります。しかし、試行回数の制限はOSの基盤部分であり、おそらくは暗号化方式にも組み込まれているだろうために、この部分の解除はすなわち暗号化方式そのものの変更を伴うOSの改変を必要とします。従って、その変更にはiOSの専用バージョンを開発する必要があるわけです。なお、マスターキーの導入も同様。

OSのコア部分からの改変である以上、その開発には莫大なリソース・費用が必要になる事は言うまでもありません。しかも、仮にその開発を実行したとして、それが前例となり、今後も同種の制限解除命令が発せられ、かつ義務同然に従うよう圧力が生じるだろう事も明らかです。そうすると、事実上全てのバージョンのiOSについて、制限解除版を開発し、リリースする義務が生じる事になるわけですが、これはiOSそのものにバックドアを設ける事と同義と言えます。Appleの主張する「バックドアを作る」というのはそういう事なのでしょうけれども、概ね論理的に正しい話のように思われます。

そして、常にバックドア導入バージョンが存在するようになる結果、まず間違いなく、そのバックドア導入版との差分は解析され、さほど時間を置かず一般ユーザの端末への攻撃に流用されるようになるでしょう。公的機関に秘匿出来る筈もありません。盗難にせよ意図的にせよ、テスト開発用の端末が流出するだけでも、そこから解析する事は容易なのですから。結果、全てのユーザがおよそあらゆる脅威に常に晒される状況に至るだろう事は必至なわけです。

要するに、公的機関の主張するような、「特定の、限定された者のみが、正当な目的に基づき必要な場合に限ってアクセス出来る」ような仕組みは存在し得ないのです。第三者が事後的かつ強制的にアクセス出来る仕組みが導入されれば、その仕組みは原理的に誰もが任意に利用可能になるのであって、当然に攻撃者もアクセス可能になるのです。それを任意に制限する術は現実に存在しません。しかし行政・ 司法はそれを理解せず、可能であると思い込んで、もしくは不可能と知りつつあえてなのか、ひたすらそのような仕組みの導入を求めているのです。

オバマ大統領からして率先してそう主張しているのですから、始末に負えません。そう主張するにあたって、自分はソフトウェアエンジニアではない、と言い訳をしているのがまた性質が悪い。無責任にも程があるだろうと。技術的、現実的に可能か否かも理解出来ていない事を自覚しているのですから。専門家であろうとなかろうと、責任が伴う立場から具体的な措置を伴う主張・要求をするのなら、最低限その主張の現実性の有無位は発言する前に理解しておくべきであって、それが出来ないのなら黙っているべきです。

技術的には概ね以上でしょうか。これを踏まえて、事業面への影響を推測すると、

・公機関絡みの類似案件対応が常態化し、対応部門等のリソースが必要となる
・開発費、顧客への損害賠償等対策費による損失が膨大になる
・iPhone、並びにAppleという企業自体に、公的スパイ企業としての評価が付く

ざっとそんな感じでしょうか。特に最後の、ブランド等への悪評については、顧客離れに直結しますからおそらく最も影響が大きく、かつ致命的と言えるのではないでしょうか。とりわけ、Appleのようなグローバル企業が米国のスパイと認定されれば、諸外国での販売激減も避けられないだろう結果、ともすれば企業自体の基盤を揺るがしかねないのですから。

この辺りのデメリットは、Appleに限った話ではありません。たまたま今回は端末がiPhoneだったためにAppleが矢面に立っているだけで、他の端末メーカーは無論、SNS等の情報通信を扱う業者はそのおよそ全てが同様のリスクを負っているのです。明日は我が身。だからこそ、GoogleやFacebook等も本件に関してAppleに同調しているのでしょう。

以上のように、双方の状況をちょっと整理するだけでも、現状の酷さ、危うさがよく分かるというものです。そりゃ拒否もするでしょう。逆にFBIがそれで通ると思っているのが理解し難く思えてなりません。少しは相手の都合も考えろよと思うわけですが、 権力者側が自己中心的かつ傲慢になるのは避け難い世の必然という事なのでしょうか。

ともあれ、当事者はそんな感じだろうとして。残る関係者、すなわちユーザをはじめ、一般市民の本件の捉え方や、その影響はどうなっているのか、どうなるだろうのかも軽く整理しておきましょう。

iPhoneユーザについては殆ど議論の余地もありません。Appleが命令に従えば、端末内とサーバ上問わず、およそ全てのユーザの情報は永続的に公的機関の自由な監視下に置かるためにプライバシーは失われ、かつバックドアの導入により、広く攻撃者の脅威に晒される事になります。NSAの監視が公然と、あらゆる攻撃者によって行われるようになるような感じでしょうか。悪意の犯罪者は秘匿性を強めて適応し、結果一般のユーザへの監視が強まるだけで終わるでしょう。ユーザにとって良い事など何一つありません。かろうじて米国民に限っては、公権力へ協力し貢献した気になる、という満足が得られる程度でしょう。

iPhoneユーザ以外の一般市民はどうでしょうか。これも本件から直接影響されるわけではないものの、同様の措置が他の企業へも広がるだろう結果、結局はiPhoneユーザと同様、諸々の自由は失われ、公権力に協力する事に喜びを見出す一部の人のみがささやかな満足感を感じるだけでしょう。FBIに倣って、または対抗して、他国の当局も同様の措置を実施するようになるかもしれません。ディストピアが生まれる日も遠くないかもしれませんね?

ディストピア云々は冗談としても、世の大半のネットワーク上から、通信・情報の秘密自体が事実上失われる可能性は否定し難いように思われます。それを歓迎するも拒絶するも個々人の勝手ではあろうけれども、Appleのような支配的な企業が一度それを受け入れれば、それが多くの一般人を代理した事実上の最終決定に等しい以上、安易に受け入れる事が許されない性質のものである事も議論の余地の無いだろうところです。その意味で、今回のApple、またその他のIT関連企業の判断は歓迎すべきものと言ってよいのでしょう。そういえば、さすがに状況への理解が進んだのか、NYの裁判所ではCaliforniaのそれとは逆の判断がなされました。これも歓迎したいと思います。願わくば、この流れのまま、FBIが引き下がってくれればと思うのですが、無理なんでしょうね。やれやれです。

ところで、FBIは本件命令に際して、自分たちが一方的に監視する側にあって、今後も永遠にあり続けられる、との前提に立って考えているようですが、仮に上記のように本件命令に従う措置が一般化されたならば、自分達の情報もまた、汎用の端末またはオープンな通信網を経由する限り秘匿出来なくなり、諸外国はじめ外部に筒抜けになる事も避けられなくなる、という事は理解しているんでしょうか。例外はおそらく物理的に隔離されたシステムか、軍事用の特注品位でしょうに。協力者は無論、外国や民間周りではまともに活動出来なくなるだろうし、後からWikileaks等で全て公になってもおかしくなくなるだろうわけなのですが、それはいいんですかね?さてさて。おそらくは、この辺も無知と錯誤のなせるところなのでしょう。中国政府によるスパイ活動や、中国製PC等へのバックドア仕込みを非難していたのは誰でしたっけ。バックドア導入後のApple製品はHTC製同様に調達が禁止される事になるんでしょうか?

錯誤と言えば、本件に関してFBIの主張する、「自分たちは正義であり、悪意もなく、悪用はありえない。だから信用して解除しろ」とかいう主張には失笑する他ないわけです。NSAの件からこっち、目を疑うばかりの諸々の行為が明らかになった現状でそれを真に受ける人がいると、どうして思えるのか、全く以って理解出来ません。いや、一定数いるだろうのは分かるんですが、それは単に何も考えていないだけなのだから、そもそも理解も何もなく、無意味だと思うのです。一時的に勘違いに基づいて煽動する事は出来ても、しばらくして理解が進めば、薄れる事はあっても強まる事はないだろうわけで。

何にせよ、時代の変化に付いて行けず、時代錯誤的な横暴に走り、自らの行いを省みて修正する事も出来ない組織、それが公的機関として権力を持っているというのは困ったものです。というか洒落になりません。その辺は、日本も他人事では全くないのですけれども、どうしたもんでしょうね。もっとも、米国での本件からして他人事ではないのだし、とりあえずAppleには是非とも頑張って頂けるよう願う次第なのです。

[関連記事 [IT biz] Sony Picturesハッキング、愚かで哀れなソニーと無責任なオバマ]
[関連記事 [pol] 米NSAがGoogle、Yahoo両社の全クラウドデータを無断取得]
[関連記事 [pol] 米NSAによる独仏含む各国首脳への盗聴露見、信頼の喪失]

2/16/2016

[biz law] 富士通、NEC、大井電気ら、談合の余罪隠蔽に失敗し再摘発

ちょっと、どころではなく、救えない位に酷いと思うのです。いや、またしても発覚した電力関連通信設備の談合の件なんですけれども。

今回容疑の掛かっている入札は、中部電力発注の保安設備の一部で、障害時の送電遮断等制御用の通信機器・設備に関するものとのことです。容疑が掛かっているのは富士通、NEC、大井電気、名伸電機の四社。持ち回りで落札出来るよう調整していたという事で、典型的な独禁法違反事件ですね。公金を詐取した重罪で、まず情状酌量の余地も無いだろうものではあるけれども、談合案件としてそれ相応の処罰の対象になるだけのことです。それ自体に特に注目すべき点はありません。

本件特有の問題だろうのは、その発覚の経緯です。当該四社の内、富士通、NEC、大井電気の三社は、昨年に東電で同様の談合が発覚して摘発を受けた件がまだ記憶に新しいところ。その捜査の過程で本件の容疑が浮上した、という事らしいのですね。で、前件発覚の際には、各社とも「捜査には全面的に協力する」とお決まりのコメントを出していたわけです。それが何故こんなに時間が経ってから、それも再び強制捜査を受ける形で発覚したのかと。

前件も本件も、製品も顧客も同種である以上、各社の担当部門は同じ。従って、摘発と捜査を受け、それに「全面的に協力」した筈の組織、人間も殆ど同じでしょう。何故その際に本件が発覚しなかったのか。余罪について追求を受けなかったわけはありません。事実、こうして容疑が掛けられ、捜査を受けて摘発されてもいるのですから。前件の捜査の際に本当に協力していたのなら、その際に本件も当然に表沙汰になっていた筈なのです。

しかるに結果は全く逆。捜査当局側が再度摘発するに至っています。件の全面的に協力するとの言に反して姑息にも余罪の隠蔽に走り、おそらくは証拠の隠滅もしたのでしょうけれども、しかし隠し通せずに暴かれたもの、と理解する他ないのですね。前言は全くの虚偽でした。あまりに悪質と言わざるを得ません。

ここまでで十分以上に腹立たしい話なわけですが。。。その上、本件を受けて発表されたコメントでは、あろうことか前回と同様「捜査には全面的に協力する」とこの期に及んで再び寝言をほざく始末。誠実さの欠片も無いその態度には、間接的に被害を受けた一般市民として、舐めてんのか全員逮捕されてそのまま会社もろとも死ね、と溢れ出る怒りを抑え難く感じずにはいられないわけです。

知ってますよそれは。談合なんて悪質な犯罪に手を染めた時点で誠実さなどあろう筈もないし、その種のコメントは組織としてのポーズに過ぎないって事くらい。それでも、幾ら何でも事ここに至ってそれはないだろうと。不誠実なんて生易しいものではありません。どれだけの悪意があればそのような、謝罪の一言すら加える事もなく、反省以前に自分達の発言を覚えてすらいないとしか思えない振る舞いを出来るのかと。それも一社だけではなく複数が揃って。

あれですね、これ程迄に腐り切ってしまっている、というのなら、もはや自発的な改善など欠片も期待できよう筈もなし。談合には年間売上の10倍位の懲罰金を課して事実上の取り潰し位にするべきだと思うのです。それ位しないと、現状の罰則では軽すぎて予防にはならないのでしょうから。それで誰もいなくなるのなら、それはそれでしょうがないんじゃないかと思うし、新しい企業が直ぐに出てくるでしょうから、特段の問題もないでしょう。

ともあれ、公取はじめ規制当局にはお疲れ様でした。基本的に何処も彼処も真っ黒なのは殆ど明らかなのだから、出来ればもっとバンバン摘発して行って欲しいものです。でも多すぎて一々捜査とか面倒、というか実際の所不可能な位でしょうから、やはり一発アウトで消滅する位の厳罰にして予防した方が適切だろうとは思いますけど。

[過去記事 [biz law] 富士通、NEC含む5社、東電の通信設備整備工事で談合し公金騙取]

2/14/2016

[pol] 終わりゆく株価吊り上げを前に進退窮まる政府・日銀

万事休す、といった所でしょうか。日銀の矢は既に尽き、専らそれにのみ依存していた政府もろともただ呆然と眺める他無いように見えるここ数週間の株式等金融関係各市場についてです。

現在の状況自体は周知の通りであり、今更ここで繰り返す必要はないでしょう。政府・日銀が現在の政策を実施してからこっち、上がり続けていた株式市場の価格が反転し、一ヶ月余りの間に半分程度、およそ2年近くの上昇分が巻き戻された格好になります。為替も大方の想定から大きく乖離し、輸出企業中心に決算に向けて青ざめている向きは数知れないでしょう。しかしまあ、これまでおそらくは不相応に得ていただろう利益からすればまだ何ということもない程度でしょうし、とりあえずは気にするような事でもないのでしょう。

本件を巡っては当然ながら関係無関係入り乱れて各方面が色々と騒がしいわけですが、何にせよ、今更じゃないかと思うのです。緩和と称して株式市場に公的な買い資金を闇雲に注ぎ込み始めた最初の時から、遅かれ早かれこうなる可能性が高い事も十分に認識されていたし、こうなった後で取りうる有効な手段も残されておらず、ただ巻き戻すに任せる他ないだろう事は尚更明らかだったのですから。

一連の政策の開始当初から今に至るまでに政府が行った事は、その事実上の支配下に置いた日銀はじめ公的金融機関による株・債権の価格釣り上げに他なりませんでした。文字通りに。すなわち、従来から行っていた年金等のリスク資産運用比率の大幅な増加、税率の操作やNISA等の導入による民間の買い奨励に加え、挙句の果てに日銀自ら投信の購入にまで手を出す事によって、殆ど売る事を制限あるいは禁止されたも同然の買い資金を、国を挙げて市場に注ぎ込み続けたのです。

結果、その期間内、株価は殆ど一本調子で上昇を続けていました。本来ならば株価は平均的に実体経済の成長あるいは衰退に同期するものであって、そこから外れる動きは原則としてランダムなものに留まり、中長期的には実経済の推移に連動して均衡する筈だったのにも関わらず、誘導の域を超えて際限なく人為的に操作が続けられたわけです。頻繁に介入を公言する事実上の脅迫によって市場原理の反動を抑えこんでもいました。

それによって齎された値上がりっぷりは、まさしく釣り上げとしか言いようのないものでした。為替比で見ても、2009年頃の暴落以前の高値すら超えた、価格と実体面との均衡を見出す事はおよそ不可能に見える程の不合理的なものだったわけです。もっとも、それこそが政府の目的だったのですから、市場操作自体の倫理的な是非等諸々の側面はさておき、結果だけを見れば確かに政策目標は達成しました。まさにその結果だけを求める経済界、殊に目先の利益を重視する向きからは広く強い支持も得られたし、当然に目先の事だけに左右される一般大衆の大半も同様に支持しました。従って、短期的には政府の政策的勝利であったとは言えるのでしょう。

しかし、その勝利は目先のものに過ぎない事もまた明白でした。そもそも政府はその手段を選択するにあたり、明らかに後先を考えていなかったのですから。買い支えによる価格吊り上げとその維持には、当然ながら多額の追加資金を継続的に必要とします。そしてその額は、政府と日銀と言えどもせいぜい数年の調達が限界で、それ以上の長期間に及ぶ継続は不可能なまでに莫大だったわけです。そしてその時が来たのです。

市場価格の上昇が専らその政策的な買い資金の市場への流入によって釣り上げられたものである以上、その資金流入が途切れる、もしくは減少すれば、当然本来の均衡点に戻るべく逆方向の作用が当然に生じるものです。しかも、市場の動きには政策のような配慮も何もありませんから、往々にして一気に戻ろうとする結果、バブル崩壊の一種とも言える暴落が起きるわけです。それを防ぐには、永遠に釣り上げ続ける事を可能にする方法を見出すか、でなければその終了まですなわち釣り上げの継続に必要な買い資金が尽きるまでに、釣り上げた価格に均衡する所まで実体を引き上げるか、のいずれかを成し遂げておかなければなりませんでした。

しかし、政府はそれに失敗しました。というより、目の前の成功に慢心したか、無策というよりさらに悪く、むしろ逆に、増税とそれに伴うコスト増の奨励等により需要を大幅に縮減させ、引き上げるべき均衡点を引き下げてしまっていたわけです。そんな状況で買い資金が鈍れば維持など論外、あっさり逆回転して元に戻ってしまうのも当然の結果と言うべき話です。何ら驚くに値しません。

いや、むしろ元戻りで済めばマシと言うべきでしょうか。ここ最近は中国人観光客の誘致や高級食品の輸出等を前面に出して成長の演出を図っていたようですが、経済全体比では微々たるものであって、到底全体の縮減を補えるようなものではありませんでした。また、政策を実施する前から既にイノベーションは枯渇しており、新たな経済、その循環の発生も殆ど認められませんでした。結局の所、実体は著しく縮減していたわけです。そこに増税。実際、2015年度第三四半期決算、また今年度の予想は、東芝やシャープの惨状を挙げるまでもなく惨憺たる結果になっており、さらに大幅な下落が不可避になっています。では輸出はというと、海外はむしろさらに数倍は酷い縮小の真っ只中という。。。率直に言って八方塞がりと言う他ありません。

かように全方位的に実体面での凋落が明らかである以上、買い支えが切れてそれが反映されれば、元の木阿弥どころかそれを通り越してより低い価格が付けられる事も、むしろ当然の帰結と解釈出来る状況なわけです。

それを防ぐため、直近に導入されたマイナス金利政策は明らかに悪手でした。これは余剰となっている当座預金を株式市場へ流す事で従来通りの株価吊り上げを継続する目的で行われたものだったわけです。手段は利息のマイナス化。いわば罰金を課せば、銀行は預金を引き上げ、運用利回りを求めてリスク資産へ移転するだろうと見込んだのでしょう。

ですが、そもそも安全資産とリスク資産の違いはそのような誘導に素直に従って移行出来る程相対的なものではなく、リスク資産への移転は起こりませんでした。当座預金は同種の安全資産である債権類に流れ、株等のリスク資産は逆に価値を落とした結果、むしろリスク資産からの逃避が加速する結果に終わったのです。

銀行は保有債権の価格上昇は得られたものの、継続的な安定収益源を失い、またリスク資産も大幅に目減りし、運用における根幹からの困難に直面しています。本件に関して大半の民間金融機関には小さくない有形無形の損害とそれに伴う当局に対する恨みしか残らなかったのではないでしょうか。金融機関まで敵に回して、政府と日銀はこれからどうするつもりなのか。マイナス金利が検討すらしていないと明言していた政策であった事もあり、発言に対する信用も大きく失ったのと併せ、もはや中央銀行の体を成していないようにすら見える惨状なわけです。

なお悪い事に、現時点で買い資金が減ったのは民間周りだけ、と言っても規模的にはそれが主体ではあるのですが、本来の本体であるところの日銀の政策はまだ変更すらされておらず、依然として継続的に買い支えている状態なのがまた。この中止と後始末、それに伴う反動はこれからです。途中で減損処理もあるでしょうけれども、最終的には今回大量に購入した投信等を売却し終えて初めて終わったと言えるのでしょう。その時に一体何処で均衡する事になるのでしょうね?大きく毀損したバランスシートと、それ以上に毀損した実体経済、それを反映した株価が残り、何もしない方がマシだった、に終わる可能性は決して低くはないのです。しかし資金もなく、信用もなく、協力もない、となれば、今更撤退する道も残されてはいないでしょう。進退窮まるとはこの事です。

私自身、数年前に日銀が政策の拡大を決定した際に、そんなに死に急ぐ事はないだろう、と虚しくも諦観を抱いた事が思い出されます。無論、諸々の政策は複数回の選挙によって多数に支持された結果でもあるわけで、政権に支持票を入れた国民にこそ責任がある話であるところ、元より反対であったけれども選挙を通じて封殺された側としては、それらの政府支持派に対して、心からの遺憾を禁じ得ない所なのです。可能ならばお前らだけで責任を採ってもらいたい、と、無駄な事とは知りつつ思うのを止められません。悲しい事です。

[過去記事 [pol] 追加緩和決定、無謀の果てに浮かび上がる破滅]

1/28/2016

[note] Win10のバックグラウンドタスク無効化

Windows10絡みの設定メモ。

色々と微妙なWindows10ですけれども。その微妙さの主たる原因は、ユーザ情報を収集するところだろうと改めて思うのです。周知の通り、Windows10はその使用許諾の中で、予めPC内のユーザ情報をMicrosoftが取得する事に同意を求めています。これはサービスで収益を得るビジネスモデルには欠くべからざる要素であり、先行するAndroidやiOSのそれにも同様の条項が含まれていて、特に奇異なものではないのですが、それでも単なる個人の端末ではないPCの、これまで想定していなかった領域へのプライバシー侵害を導入する変更ですから、著しい忌避感を持つ人が多数生じたのも当然の結果と言う他ないわけです。

当然ながら私もその一人なわけで、当初2台をUpgradeしたものの、特に機能面でのメリットが薄い事を確認した後で、1台は既に元のOS(Win7Pro)に戻してしまいました。残る1台についても、設定項目から可能な限りMicrosoftのサーバとの通信を排除するよう設定していたのですが、設定の自由を事実上禁止しているも同然のインタフェースに業を煮やしまして。この程少し手間をかけ、タスクスケジューラ中で待機しているバックグラウンドプロセスの内、不要なものを片っ端から手動で無効にする事にしたのです。

Reporting関連のタスクの多さに改めて驚きつつ、ちまちまと要不要の判定と無効への切替を繰り返し、ついでにその他の通知関連やSkyDrive関連等の不要なタスクも無効にした結果、実にその対象タスクは30以上にも上ったのでした。幾ら同意を取り付けたからといって好き放題やり過ぎだろうと呆れ果てた次第です。法的には問題ないだろうとは言え、殆どユーザへの背信に等しいように見えて、印象は最悪ですね。これでは忌避されても仕方ないのではと。

ともあれ、これまで不安の付き纏っていたExperience Program関連は無論、WindowsUpdate等の挙動も抑制されてくれました。動作上の不具合が発生する可能性も多少なりと懸念していたのですが、それも特になし。今後のアップデートの際に元に戻される可能性はあるので、時々確認は必要だろうのが面倒ではあるものの、それも何時勝手に行われるか不安を抱えるのではなく、自分で管理し得る点で不安は大きく減じられました。総じて、心の平穏を取り戻した気分。やはりPCは自分で管理してこそだと思うのです。Cortanaもストアアプリも不要。従来通りのプログラムが動けばそれでいいのです。そういうユーザ向けにモードを設けてくれれば面倒もないのに、と残念な気もしますね。

以下は、無効にしたタスクスケジューラ中の項目一覧。あくまでも私の環境で独自の判断に基づき無効にして良いだろうと思ったものなので、過不足の有無は不明、またその他の環境での適合性も不明です。Windows7で共通する項目をoffにしてみたところでは問題はありませんでしたが、その辺も含め、ご参考程度に。

<無効化タスク一覧> ※[]はタスクスケジューラ中のフォルダ名

[Application Experience]
 Microsoft Compatibility Appraiser
 ProgramDataUpdater
 StartupAppTask

[Autochk]
 Proxy

[CloudExperienceHost]
 CreateObjectTask

[Customer Experience Improvement Program]
 Consolidator
 KernelCeipTask
 UsbCeip

[DiskFootprint]
 Diagnostics

[Feedback]-[Siuf]
 DmClient

[Location]
 Notifications
 WindowsActionDialog

[Maintenance]
 WinSAT

[Maps]
 MapsToastTask
 MapsUpdateTask

[NetTrace]
 GatherNetworkInfo

[Shell]
 FamilySafetyMonitor
 FamilySafetyRefresh

[SkyDrive]
 Idle Sync Maintenance Task
 Routine Maintenance Task

[SoftwareProtectionPlatform]
 SvcRestartTask

[UpdateOrchestrator]
 Reboot
 Schedule Scan

[Windows Error Reporting]
 QueueReporting

[Windows Media Sharing]
 UpdateLibrary

[Windows Update]
 Automatic App Update
 Scheduled Start
 Scheduled Start With Network
 sih
 sihboot

[WS]
 Badge Update
 Sync Licenses
 WSRefreshBannedAppsListTask
 WSTask

[関連記事 [note] Win10メジャーアップデートの適用とCortanaの無効化]
[関連記事 [note] Windows10アップグレードの無効化]

1/26/2016

[note] Marvin Minsky passed.

Minskyが逝去したそうです。享年88歳、死因は脳溢血とのこと。彼の死がその終生を賭けて研究を続けたところの自身の脳から訪れた事には、偶然とは知りつつも因果めいた人生の美を感じずにはいられません。彼の人生は脳から始まり、そこで終わったのです。

近年は年齢から表舞台に立つことはなくなっていたものの、AIの創生を担った氏はあまりに偉大であり、MITを中心にして広がったその影響は広く世界に及び、理工学、殊に情報を扱う分野に関わる者ならば誰しもがその理論、著作に触れ、今なお多大な意味を有している事も周知の事実であるわけです。

しかし、人間の脳をモデルとし、その再現を目指したNeural Networkも、数十年を経てなお初期とさほど変わらない、単なるパターン識別程度の機能しか実現出来ず、未だその目標の達成は目処を立てる事すら程遠い段階に留まっています。その事実を氏がどう受け止めていたのか。単に無念を抱えていたに留まるわけはなかろうけれども、何らかの現実的な、具体的な可能性を伴う希望を見出し得ていたのか否か。その、多くの者に引き継がれただろう魂の行方に幸ある事を祈りつつ。

1/25/2016

[biz] 彷徨う東芝、医療機器事業売却の意味不明

先頃の不正発覚に伴い、色々と噂が飛び交う東芝ですが。どうにも解せないのです。何がというと、この所公然と流れているところの、資金調達のアテとして、既に既定路線になっている家電に加えて医療機器事業等を売却する、という話についてです。

その他、フラッシュメモリ以外の半導体も売り払い、フラッシュメモリと電力に注力する、という事らしいのですけれども、正気かと。半導体はともかく、医療機器に関してはむしろ逆だと思うのですよ。

というのも、東芝の医療機器事業と言えば超の付く優良事業です。シェアも技術面の強みも十分、安定性将来性ともに申し分ない、どころかフラッシュメモリや原発より明らかに上。規模は若干小さいものの、原発以外の電力系と並んでグループの中核を担う事が可能な虎の子事業、だった筈なわけで。

それは資金を幾ら出そうとも得難い、シャープやソニーはじめ、経営の柱を失って苦しむ他のグループからは羨まれる程のものである事は間違いないわけですが、それを売り払い、家電や原発事業の損失填補、またメモリ事業の投資資金に充てるというのです。いささか信じ難く思われてなりません。普通に考えれば逆、すなわち医療機器事業を残し、不安定なメモリやお先真っ暗の原発事業によって失われる信用への備え、あるいは破綻の際に寄るべき柱とするものではないかと。 しかし今の所流れている話は医療機器事業を売り払ってリストラの資金に充てるとかいう話ばかり。意味がわかりません。

そりゃ、他社は喜んで手を上げるでしょう。国内だけで言っても、日立は言うに及ばず、パナソニックも医療機器は強化したいでしょうし、オリンパスと組むソニーもですか。それも当然。収益力等の純粋な事業の価値からすれば、液晶や家電等より余程価値がある筈なのですから。海外勢も当然興味を示しているでしょうけれども、にも関わらず経産省はじめ政策面では全く気にもされていない様子なのは如何にも奇妙に思われるところですが、手が回らないというだけなのでしょうか?それとも原発の方を優先しているからでしょうか?それは相対的なものに過ぎない筈なのですが。。。と、それはともかく。

もっとも、医療機器関連はコンシューマで稼げなくなった他社等が相次いで参入もしくは強化を打ち出していて、これから競争が強まる見込みではあるので、シェアが高い今の内に売るという判断も無いではないのでしょうけれども。それでも、その非常に長い事業のスパンからすれば、少なくとも一時の資金需要のために売買するというのはやはり短慮な印象は否めません。

こう、どうにも腑に落ちない点が多々あるところからすれば、今回の決定、やはり社内の政治力学的な理由とかそういう非合理的な要素による話なのかな、等と疑わざるを得ないのです。そうであれば、一連の施策もまた非合理性を帯びるだろう事は避けられず、その結果も推して知るべし、なものになってしまいそうで、想像するだに残念な気持ちにならざるを得ません。あれだけの事を仕出かし得る程にまで狂ってしまった組織、またその中の個々人の性質が、そう簡単に改善される筈もない、それもまた当然の話なのでしょうけれどもね。 

[関連記事 [biz] 個人向けから撤退する東芝、その行く先もまた暗く]

<その後の経過>

国内からはCANON、富士フィルム。海外からはKKRも争奪戦に参戦とのこと。本当に売っちゃうんですかね。いやはや。コニカミノルタも入札するんだそうですが、そんな資金が調達出来るんでしょうか?規模的に厳しそうだし、何処か大手と組まないと難しいんじゃないかと思うんですけど。

1/02/2016

[note] Unforgettable Natalie Cole

She went to her great father's side. It seems too fast for her voice to be lost from the world forever, though we know it must be the way it goes. So now, your songs stay in our memory... As represented in your masterpiece song title, unforgettable. Rest in peace, Natalie.

12/29/2015

[biz] 迷走の果てに消滅必至のシャープ、残滓の行方

東芝が派手に炎上し、その延焼防止等の対処に追われる一方で、既に全焼確実で諦められた感のあるシャープですけれども。揉めに揉めた甲斐があったというか、かろうじて2015年中の消滅は免れました。もっともそれを喜ぶ人は殆どいないでしょうけれども、それなりの規模でもって存在している以上は、まだしばらくは引き続きやきもきし、或いは迷惑を被る向きが多々あるわけで、誠にご愁傷さまと言う他ないのです。第三者的には関わらないのが良いだろうと思うんですけれども、当事者の立場では縁を切りたくともままならないものなのでしょう。

既に資本は底を突き、背水で望んだ筈の今期にも当然のように大赤字を出し、実質的に債務超過に陥ったも同然のシャープに復活や再生を云々する声は既に無く、もはやどのように消滅させるか、すなわち残余資産・事業を何処がどのような形で引き受け、債務を債権者間でどう分担して損失処理するかといった論点のみが取り沙汰されているのが現状なのです。

具体的な焦点になっているのは、液晶事業と太陽光パネル事業、次いでCMOSセンサ等の電子部品事業に、あとコピー機等のMFP事業。液晶事業が売却対象に入っている時点で、もうシャープの存続自体を諦めたも同然なわけで。家電は殆ど話題には上りませんが、死に体のテレビ事業に加え、その他家電も未だにプラズマクラスターを掲げるオカルト商法を展開中なあたりでお察しというか、技術面で特筆すべきものはなく、むしろ詐欺に手を出すデメリットもあるとなれば、そうそう手を出す既存大手もいなかろう、という面もあるだろうし、仕方ない事なのでしょう。

しかし見事に成長見込みのある事業が存在しません。また、他社に無い、もしくは他社より優れた強みのある事業も殆どありません。強いて言えば高精細液晶パネルの一部高級品位でしょうか。ただ、そちらは需要面が微妙で、現在の所廉価品に競争力で劣ってしまっています。その結果が売上見込みの大幅な未達、過剰になった設備投資の減損、それらによる液晶事業の大赤字なわけで、今となっては強みと言って良いのかは微妙な始末。ですが、今更それを言っても仕方有りません。液晶は現在でもシャープの主力事業であり、殆ど唯一の、一定以上の継続的に維持されうる価値を見込んで売れる大規模事業なのですから。他の事業はおよそ全ての面で他社に明らかに劣っているのだし。

液晶事業の売却先の候補は大きく2通り。JDIか海外大手か。多分に政策的な意図が絡んでJDIに押し付ける形になるだろうと見込まれていますし、私もそうだろうなと思います。知財群は今でもそれなりですし、海外への流出は避けたいと考える当局関係者も多いでしょうし。金額や吸収後のリストラ等の条件面でのハードルは相当に高そうですが、シャープ側が折れるまでどれ位揉めるかが問題でしょう。と言っても既に最高に追い込まれている状況ですから、時間の問題でしょうけれども。

その他の事業はぶっちゃけ液晶に比べると。。。相手を選べるかすら微妙だと言わざるを得ません。MFPとCMOSに新規進出したい海外大手グループが手を出すかも、という位でしょうか。それにした所で、当然海外への技術流出という事になりますから、これまた政策的にとても揉めるでしょうね。でも、CANONやSONYが今更買う理由があるかというと怪しいですし、やはり相手は二の次で、売れれば御の字という所ではないでしょうか。そもそも赤字で回復の見込みも無いために解体されるのだから当然と言えば当然なのですが、無残なものです。

そんな感じで。いくら政策配慮が、と言っても所詮シャープは代替の効く一民間企業に過ぎず、JAL等のように絶対に存続させる公の必要はないし、何にせよ解体は進むでしょう。ただ、この種の整理に関してよく言われる話ですが、組織の先行きに見込みが無い、と思われた時点で有力な技術者、とりわけ若手・中堅は見切りを付け、既に去ってしまっているものなわけで。従って液晶を含め、各事業とも開発力・生産力等に従来の実力は既に無く、丸ごと不良債権になりかねない、と懸念する向きも多いでしょう。残っているのは会社にしがみつくしか選択肢が無いような能力の高くない人員が中心のため、労働コストが高く、かつ整理や配置転換にも抵抗が強くなる事が予想されます。そうなる前に価値を下げる事無く譲渡出来れば、と思うところでしょうけれども、しかし先行き見込みがあればそもそも整理の対象にならないのだから、結局の所この種の事業価値の毀損は避け得ないものと言うべきなのでしょう。残念ながら。

ともあれ。個々の事業の価値が十分とは言えず、にも関わらず政策的には過剰なまでに重視され、さらに追い込まれている筈なのに何故か強気で傲慢な姿勢を見せるシャープが、それら内外の条件を観たす売却先、また売却条件を得られるとはとても考えられませんし、銀行をはじめ債権者の妥協が得られるかも現時点では不明とあって、いつまでにどのような形で成されるのか、全く以って不透明です。にもかかわらず、資本と業績の状況からして来年中には大部分が消え去る事だけは確実、というのは中々に奇妙な状態に思われてなりません。

こういう不透明な状況が続き、しかし非情な資本面のタイムリミットによって否応なく処理を迫られれるとなると、大抵は碌な結果にならない事は間違いないし、ある程度の考慮や手当が可能な内に処理されるのが望ましいだろうと思うのですが、そうなりそうな気は全くしませんね。このままシャープは空中分解的に破綻してしまうのでしょうか。第三者としてはケーススタディというか、怖いもの見たさ的な興味も無いわけではありませんが、関係者には洒落にならないでしょうし、困ったものです。

(追記)
そしてまさかの交渉段階で機構切り捨てての鴻海一本化、からの足元見られまくり。どこまで阿呆なのでしょうか。

[続き記事 [biz] シャープ経営陣は最後まで救い難く愚かでした]

[関連記事 [biz] 赤字2223億で資本消滅、錯乱するシャープ]
[関連記事 [biz] 追い詰められたシャープ、狂気の99%超減資]
[関連記事 [biz law] プラズマクラスタ性能虚偽でシャープに排除命令]
[関連記事 [biz] hong-hiがシャープ出資契約無効を主張]
[関連記事 [biz] Sharpが生産・研究開発900人を営業等へ転換]
[関連記事 [biz] Sharpも業績不振で一般社員2%減給]
[関連記事 [biz] シャープがhong-hi傘下へ]
[関連記事 [biz] シャープ液晶の設備過剰]
[関連記事 [biz] シャープが研究開発部門で英語公用語化]

12/25/2015

[biz] 個人向けから撤退する東芝、その行く先もまた暗く

2015年は、少なくとも東芝にとっては悪夢のような年になりました。春先に損失隠しが明るみに出て以来半年以上を過ぎ、年の瀬を迎えた今になっても一向に収拾の目処も立たない東芝。元々の原因にしろ、その後の往生際の悪い対応にしろ、全て自業自得で当然の成り行きという他無いわけですが、それでも、事業の整理についてはようやく一応当面の見通しが立ちつつあるようです。それが東芝自身や利害関係者にとって良い事なのかはともかく。

テレビはじめ家電関連は開発も含め拠点を全て分離し、PCも個人向けは撤退の運びと言われています。一言で言えば、コンシューマ向け製品からは総撤退し、重電等法人向けに特化する方向で落ち着いた、という感じでしょうか。まだ完全に決定というわけではないようですが、家電もPCも酷い赤字だし、既に成長の見込みはおろか回復を期待する事さえ不可能とあっては、客観的に見てほぼ不可避と言ってしまってもいいのかもしれません。

家電は中華系へ。PCは先立って分社化が決定済みの富士通、並びにVAIOとの合併へ向かうものと見られています。その辺の推測に対しては、東芝含め関係各社とも"決定した事実はない"等のお決まりの文句で事実上認めていますし、売却される事業には採算性はさておきそれなりの価値はあって価格次第で普通に売れるでしょうから、後は細かい条件のすり合わせだけで、もう既定路線に乗ったように見えます。個人的には、家電はともかくPCは、赤字事業が寄り集まってもあまり意味はないのではと思う所ではあるのですが、ともあれ、予想通りに事が運べば、既に撤退済みの携帯事業と併せ、コンシューマ向け事業から殆ど総撤退、という事になるわけです。ここ数年東芝はコンシューマ向け事業でリストラを繰り返していましたが、ようやくその完了ですね。結局、再生ではなく単なる切り捨てで終わってしまう様子なのは残念ですが、これも時代の流れによるものなのであって、惜しんでも仕方のない事なのでしょう。

何にせよ、それはもう終わったも同然の話です。今後の問題は、残された事業、すなわち社会インフラ等の電力関連部門とIT関連、あとフラッシュメモリ事業の先行きが色々と怪しい事でしょう。

電力の問題は、言わずと知れた原発事業。先行きが不透明というか、原発事故以降は新規需要が殆ど壊滅し、事実上保守専業になっており、これからも回復の目処は全く立たないわけです。先ごろ発覚したWestinghouseの損失隠しが象徴するように、既に買収時ののれん代の減損処理も不可避だろうと公然と言われる現状にあっては期待しろという方が無理があります。主要ベンダーを務めるもんじゅが引導を渡されつつあるのも相俟って、研究・開発部門や生産設備等は維持に膨大な経費がかかるにも関わらず売上は殆ど無きに等しく、単に損失を垂れ流すだけとあっては、むしろ普通ならどうやってリストラなり清算なりで切り離すか検討すべき状況にあるのはもはや明らかでしょう。むしろ家電やPCより余程深刻に見えるような。

一方のフラッシュメモリはというと、タブレットやスマホ等での需要が概ね頭打ちして市場価格が下落し、同時にここ数年の技術面の進歩の鈍化・停滞によって東芝自身の先行者としての技術・品質面での優位性が殆ど失われた事から、採算は急激に悪化していると言われます。どうあがいても全く採算が取れない、という程ではないでしょうけれども、スマホ等の携帯デバイスに代わる新しい出口は今の所見当たりません。HDDの置き換えを期したSSDも、それが実現する前にPC市場自体が縮小局面に入ってしまい、コスト面の弱みからHDDの置換としての普及には失敗し、元々HDDが利用出来ない携帯デバイスに採用が限定されてしまいました。この辺、シャープの液晶事業の採算が悪化しはじめた頃と似ているように思える点が認められるような。。。だからと言って必ずしも同じ末路を辿るとは言えませんが、その可能性は決して低くはないだろうとも思われるところ、少なくともこれがある限り安泰、と言えるような成長または安定したパフォーマンスを期待し得る事業ではもはやない事だけは間違いなさそうです。

他に残る事業は、お世辞にも順調とは言えないITサービス関連や法人向け電気設備・機器という事になるわけですが、それはいずれもどちらかと言うと競合他社の方が強い、というか東芝の方が新参だったりそもそも枯れた分野だったりして、東芝クラスの規模の企業を主力事業として支えるには現時点では不足と言わざるを得ないものなのであって。

勿論、事業規模の縮小を甘受し、不採算事業を切って余剰人員も廃し、採算を均衡させれば企業グループとしての継続自体は何ら問題なく達成出来るのでしょう。けれども、当然その過程で切り捨てる部分、殊に人員については、数割程度もリストラをするとなれば色々と社会的にも問題となって相応の非難も浴びるだろう事は必至です。今の求心力を失った経営陣に、只でさえ不信に満ちて多分に非協力的でもあるだろう幹部、社員に対し、それ程の措置を実行する事が果たして可能なのか、その辺りから大いに疑義が付いて然るべきところでしょう。

何にせよ、ここ数年の先送り、また不採算隠蔽のツケを払うのが先ですけれども。しかしやはり、ツケを払ったとしてもその後にまともな未来が待っているかも分からない、というのが他人事ながら悲惨ですね。かつてのNECや現在のシャープのように、ただ個々人の保身と責任逃れと切り捨てを繰り返し、組織が衰退するに任せた果てに残念な結末を迎えるのか、それとも過去の犯罪や不誠実な振る舞いを生んだ風土と決別し、組織としての革新を経て社会の信頼を得た上で新たな事業領域へと踏み出し、再起を掴む未来もあるのか、さてどうなることやら。もっとも、責任逃れと開き直り、また無反省に満ちた現状を見る限り、衰退もしくは破滅へとただ流されているようにしか見えないし、期待するだけ無駄なのかもしれない、とも思うわけなのですが、さて。

[関連記事 [biz] 東芝の粉飾、インフラ部門のみ公表最低500億]
[関連記事 [biz] 粉飾の東芝、未だ不明の内容を巡って膨れ上がる疑念]
[関連記事 [biz] 東芝がPC事業リストラ。900人削減]
[関連記事 [biz law] 特許庁新システム案件、完成予定2022年で仕切り直し]
[関連記事 [biz] 東芝がテレビ事業リストラ]
[関連記事 [biz] 東芝がWH株追加買取]
[関連記事 [biz] 10年廃炉、原発推進とか、東芝が寝言を]
[関連記事 [biz] もんじゅ故障で東芝の賠償金17.5億]

12/12/2015

[pol] 傲慢で愚かなTrumpが大統領候補筆頭という現実

米国はどうなってしまうのでしょう。いや、次期大統領選の候補者レースの件なのですけれども。Donald Trumpがついに行ってはいけない所まで行ってしまったっぽいんですが、しかし完全終了したかというと対抗馬がまだ見当たらず先行き不透明、という。全く以ってクレイジーです。

話の前提として、議会の支配権を失い、また国民からの支持も無く、既に死に体の現政権の有り様を見れば、その後継と見做されるだろう民主党の候補にはバックグラウンドにおける著しい不利があり、例年のように双方の候補者個人の評価が同程度であれば共和党候補が勝利するだろう事は疑いようの無いところなのであります。それでも個人に突出した人気があれば話は別なのでしょうが、現時点での有力候補たるHillary ClintonやBernie Sandersらには元々さほど支持が期待されるわけでもなく、それどころかおそらく筆頭だろうHillaryは体力や不祥事を巡って始まる前から色々と危ぶまれる始末。加えてオバマ大統領の後援もマイナスになりかねない、とあっては期待しろという方が無理があるでしょう。

従って、共和党の候補者選定が事実上の大統領選と位置づけられる結果、民主党の候補者数人に対し共和党では各派色物取り混ぜて20人以上の候補者が乱立し、毎日のように各候補者の発言が民主党の候補者はおろか現職の大統領すらも押しのけて各種報道を占拠している状態なわけです。来年以降の米国の政策方針に直結するのだから関心が寄せられるのは当然だし、各候補者は宣伝になるから自重する筈もない、とあって全く歯止めがかからないのは当然と言えば当然の話。とはいえ、現時点では何の決定権も無いのだから迷惑になる向きも多かろうと思うし、第三者的には違和感を感じるとともに、余計な争いの種になっているのを見るにつけ鬱陶しくも感じられる所です。が、おそらくは仕方ない事なのでしょう。

と、そこまではいいのです。問題は、その共和党候補者、信じ難い事にその筆頭であり、従って現時点で次期大統領の可能性が最も高いとされるDonald Trumpの言動が明らかに常軌を逸しており、公的立場に無い者のそれにも関わらず米国の立場に多大な影響を及ぼしているところにあります。

特に移民問題とイスラム原理主義組織への対処について、思想・人種に基づく一律の強制排除を公約に掲げた点などは、明らかに違法性を帯び、かつ非倫理的と見做されるものであって、およそ現代社会において到底受け入れられないだろう酷いものでした。仮に倫理面には目を瞑るとしても、そもそも実現可能性は無きに等しく、現実的ですらありません。不法入国者全員の強制送還やイスラム教徒の入国禁止など、どのような手段を持って可能とするのか、想像すら困難です。過去の宗教迫害よろしく、コーランを使って踏み絵のような事でもするのでしょうか。コーランを焼いた、と噂が流れるだけで暴動が起き、風刺絵を公表しただけで暗殺が呼びかけられる現実を前にしてのそのような措置を主張するとは、とても正気とは思えません。

にも関わらず、その正気ではない政策が、来年以降に米国の国策として実行される事が公約され、既定路線に乗りつつあるわけです。しかしその元は現時点では一般人の発言につき、公的立場にあれば当然に課されるべき抑制すらままならず、結果国際的な対立に発展し、ミクロな迫害・排斥を誘引し、各企業や政府、個人が火消しや自衛に追われる、という。暴動やテロの発生も当然に懸念されます。洒落になりません。

元々、Trump氏はその短慮かつ傲慢な性格で知られた人物です。何処までも自己中心的なその振る舞いに、他者への理解や調和、融和といったリベラルな要素は全くなく、おそらくは概念自体が存在しないのだろうと皮肉られてきました。控えめに言っても、自由主義の多民族国家の指導者にふさわしいとは思われない類いの精神を持ち、大統領選の有力候補になった現状を想像していた人はおそらく殆どいなかっただろう人物です。加えて元々政治的な素養は皆無、どころか知識人ですらありません。軍人でもない。富豪であり、有名人ではあるものの、それだけの、単なる一般人であって、法や政治、およそ公的な立場に求められる知識、見識、経験は一般人のそれと何ら変わりない素人です。諸々の偏見も甚だしく、その傲慢な性格と相俟って、明らかに誤った認識とそれに基づく行動を周囲の協力を得て修正もしくは抑制する事すら困難。その、素人相応の振る舞いを続けるだけの彼が、現時点で米国の次期大統領の最有力候補である、という事実が、今でも理解出来ない、という人は少なくないでしょう。

もっとも、そのような人物とその振る舞いは当然にごくありふれたものであり、それだけにその狭い見識や、衝動的で短慮な言動は一般人にも理解しやすく、従って一般に共感を得やすい面はあって、それによって他の候補と差別化され、支持を得ている面もあるのでしょう。しかしそのような人物は、ごく小さなコミュニティですら不和と衝突をもたらし、時に破壊してしまう事も珍しいものではありません。それがよりにもよって米国の最高意思決定機関に就き、同様の独善的かつ自己中心的で明らさまに排他的な性格に従ってその権限を振りかざし、如何に破滅的だろうと実行出来てしまう、という事がどのような帰結をもたらすのか。その想像するだけでも悲惨なというか、非現実的さに目眩がするのです。対外的には無論、米国内でも暴力的な衝突の頻発すら有り得るでしょう。

ただ、ここ最近の発言は明らかにタブーの域に踏み込んでいますから、流石に容認出来ないとして致命的に支持が離れる可能性もあるのかもしれません。しかし、Ted Cruzら他の共和党候補の状況を見るに、まだまだこれで終わるとは思えないのがまた。Jeb Bushは言うに及ばずですし。とはいえ候補者レースはまだまだ続きます。従ってTrumpの舌禍も、さらに過激の度合いを強めつつ続くでしょう。次は何か。お決まりの人種差別でしょうか。ロシアや中国への宣戦布告でしょうか。それとも核攻撃の脅迫あるいは行使でしょうか。気に入らないものは排除するのみ、という点で一貫するTrumpならば、きっと安易にそれを口にし、その時に実行が可能ならばそうしてしまうのでしょう。第三者としては、それが、彼が実際に権力を得た後の事、すなわち現実のものとなる事のないよう願うばかりです。もう手遅れかもしれませんが。さて。