国内大手PCメーカー3社事業統合の件、破談したそうで。
統合後の事業方針やらで合意出来なかったからとかいう事ですが、あれですかね。統合の主たる目的である所の集約によるコスト削減及び生産性の向上において、当然必要になるところのOEM先とか、国内・国外工場とかの統廃合については、まず間違いなくそれぞれ一つを残して残りはリストラ、って話になっていた筈なわけで。それはすなわち実質的に3社の内2社が撤退するのと同等と言えるだろうところ、先は無い事は明白ではあるけれども、各々が即倒産するわけではない現時点の状況下では受け入れ難かった、という事なのでしょうか。
保身と言えば保身ではあるのでしょうけれども、事実上の生き死にが掛かっている以上は致し方ないと言うか、これはもう各々が本当に単独では立ち行かない、文字通りの破綻直前ぐらいにならないと纏まらない話なのかもしれないと、改めて思うわけです。
おそらく大きな問題は2点。一点は、統合後のカラーというか、主にVAIOの主力たる尖った製品ラインの継続の是非、また搾り込みをどうするかという事。ある程度は残すにしても、その特殊性の強さから開発・生産体制の統合には相当な困難が見込まれるし、販売の戦略面でも色々とややこしい面が生まれるのは間違いないところです。VAIOのようなブランドイメージ重視の路線は、少なくとも事業体の前面に出さないと意味のないものですが、そうするとブランド的にはVAIOが他2社を吸収した形になるわけで、事業体の規模比的にそれは難しいでしょうし。そりゃ揉めて当然でしょう。
もう一点は、上記で触れたように、純粋に生産・開発・販売リソースの統廃合の方法でしょうか。東芝と富士通は法人向け中心に類似性は高いものの、それだけにどちらか片方は余剰につき必然的かつ単純に削減対象とせざるを得ないだろうところです。しかるに工場も開発部隊も販売部隊も。それらはそれぞれ垂直的に繋がりがあるわけですから、各々が丸ごと残すべきだと主張すれば、自然と一社分だけを残してそこに合流出来る一部以外の残り2社分は廃棄、というような思惑になりがちなパターンに見えます。富士通は特に国内工場の処遇も頭の痛いところでしょう。これまた揉めて当然、というか普通ならやはり、統合出来なければ破綻、位になってないと受け入れられない類の話と言えるでしょう。
一応、当初の思惑的には、各社の全リソースを一旦まとめてシャッフルして、そこから最適化を図る、とかそういう理想論的な考えはあったんでしょうけれども、具体的なプランに出来なかったか、出来ても実現が極めて困難だったか、はたまた3社共が欲をかく、もしくは保身に走ったか。いずれにしろ結果として形にはなりませんでした。やはり3社の統合、それも概ね対等に近い立場の事業体同士のそれとなると、余程の明確かつ差し迫った、強制力の強い事由がないと、任意ではまとまりませんよね、という話で。問答無用で買収するとかするのが普通、と言ってもそんな余力は何処にもなかったのも要因と言えるかもしれません。こう見てみると、圧倒的な資本力の差からあっさりLenovoに買われたNECのPC事業は高く買われ、かつそれなりにリソースの保全も出来て幸運だったとも言えるんでしょうか。
第三者的には、DynabookとかVAIOとか、それらの個々のPC製品自体が枯れてしまって、従来のブランド戦略とか個々の製品品質やらものづくり技術云々ではどうにもならないからこそここまで追い込まれてるわけだし、もう一旦そういうのは全て捨てて、ビジネスモデルから何から名称も含めて全て事業丸ごと新規に立ち上げた方がいいんじゃないの、と無責任にも思うわけですけれども、そんな怖い事したくないというか出来ない、って話なんでしょう。難儀な事です。まあ競合が多すぎるし勝算の立てようもない以上、どうにもならないのかもしれませんけれども。でもね、そもそもの話、統合した所で規模的にはLenovoやら海外大手とは勝負にならないのだから、この辺は結局は避けて通れない筈なんですけれどもね。最終的に買収される事を想定しているのなら別ですが。
ともあれ。さしあたりご破算になったのは事実ですから、しばらくはこのまま、少なくとも本年度は各社とも赤字を垂れ流す運びになってしまいました。
およそチキンレースの様相を強めている本件、その中でいよいよ持たなくなった所から、相対的にまだマシな所へと、力関係がはっきりした時点で順次吸収されていく、とかいう流れになるのかもしれませんね。というよりそれ以外ないと言うべきなんでしょうか。しかし今でさえ瀕死の弱者連合と揶揄される位なのに、さらに弱ってからだと、その時に統合する余力があるのか疑問、というか吸収するorされる意味があるのかすら怪しいし、そのまま共倒れになる可能性の方が高いだろうと思うわけなのですが。とはいえこれも当人達の選択、ありもしない可能性に妄想じみた期待を抱いて機会を逸してしまったとしても、致し方ないところなのでしょう。やれやれです。
しかし困っただろうのは東芝ですかね。どうするのでしょう。まさか単体で放り出す?次いで富士通。既に分社化した同社のPC事業ですが、目的であるところの切り離しができなくなってしまいました。このままだと超赤字で即死コースです。両社とも一刻も早く連結から外したかった筈の両事業、その目論見が崩れてしまったわけですが、さてどうする。
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