米共和党の次期大統領選候補者Donald Trumpに対する米国民の支持低下が決定的になってきたようで。予備選段階では最有力と言われた勢いは既に無く、Hillary Clintonに余程の失策でもない限りは敗北で決まりな空気が漂うようにも感じられるところです。勿論、本選はまだ3ヶ月程も先の話だし、まだどんな可能性も残っている、筈なのですけれども、逆転を予想するに足る根拠は今の所見当たりません。
その原因は周知の通り、ここ10日程度の間に立て続けに犯した下記3点の失敗にあります。
1.退役軍人・戦死者等への侮辱行為等
イラクで戦死したイスラム教徒の米国人兵士遺族への中傷
退役軍人や戦死者等に与えられる勲章の安易な受贈
2.会場内で泣き出した赤子を嫌悪し、排除を求めた
3.共和党議員等(Paul RyanとJohn McCain,Kelly Ayotte)の再選不支持
1は米国民一般が非常な敬意を抱き、尊重している筈の、国防における殉死者等の名誉を軽んじる行為であり、とりわけTrumpの主たる支持基盤たるナショナリズムに共感的な国民のうち少なくない割合にとって、その象徴とも言うべき国防の担い手たる兵士に対する侮辱行為として決定的に受け入れ難く忌避されるものであっただろう事は想像に難くないところです。本来なら一番大事にしなければならない層の筈だったのですけれども。
2はこれまた国民の多くが絶対的に守るべきものとしている子供、それも赤子に対して嫌悪と共に攻撃的とも言うべき態度を露わにしたものであって、その後の批判・非難の激しさからしても、人格的に相容れないものを感じた国民が多かっただろう事は間違いないところです。
3は、これから困難を乗り越えて対Hillaryでまとめなければならなかった筈の共和党内の分裂を逆に深めるだけの行為でした。特に共和党内で決定権限を持っているわけでもない、むしろ余所者とも言うべきTrumpがそんな事をしても誰かの支持が得られるわけでなし、何の意味も利益もなく、何やってんの、と唖然とした向きも多かったでしょう。その後撤回し支持を表明しましたが、当然ながら関係修復の気配すらありません。
元々Trumpの現状は、熱狂的な支持者はいるものの、白人の特定層以外の支持が壊滅的である事などから、本選で過半数を得るための幅広い国民の支持は得ておらず、また予備選を通じ、民主党候補と伍するために必要な共和党内の支持体制も著しく毀損していました。それを本選までに修復し、かつHillaryに流れた無党派層や穏健派共和党支持者の取戻し等、支持層の拡大も図らなければ、敗北必至の情勢にあったわけです。
ですから、必然的にこれから本選に向けてポリシーを修正し、何らかの融和策を進めるだろうものと予想され、その方法及び成否に注目が集まっていたところだったのですけれども、それ以前に本件によって逆に安泰だった筈の支持を減じ、かつ党内の分裂はより深刻になりました。率直に言ってわけがわかりませんし、大統領に選出される意思の有無からして疑わざるを得ない位です。この期に及んでなんという事態でしょうか。
いやまあ、上記のどれにしても多分にTrumpは後先を考えず反射的に喋った結果そうなった、というだけの事なんでしょうけれども、だとしたらそれはそれで、そんな自らの発言を制御する事も出来ない愚者だ、という事に他ならなくなるわけで。仮にも大統領候補の片割れなのに、どうしてこんな事に。。。合成の誤謬どころの話じゃないと思うし、当然洒落にもならないしで、いやもうどうしてくれるんでしょうこれ。
もっとも当のTrump自身、既に敗北を見越して"本選では不正が起こるだろう"等とわけのわからない陰謀論的な予防線を張ったりしているらしいし、仮にこのまますんなり敗北するならそれはそれで問題ないんでしょうけれど、当然ながらHillaryが倒れたりする可能性もあるわけです。そうすれば、如何に批判が多かろうと、事実上候補がTrumpしかいない以上、彼が大統領にならざるを得ません。そんなはた迷惑で済まないような博打はそもそも打たないで頂きたい、と心から思う次第なのですが、大丈夫なんでしょうか。と言って、大丈夫なわけがない事は明らかなのですけれども。
Donald Trump claims the election will be 'rigged' — and many are saying that's preposterous and dangerous
それから数日で、さらに
・Hillaryの暗殺示唆
・Obama大統領をISの創設者呼ばわり
と、態度を反省し改めるどころか、悪化の一途を辿る始末。Trump本人もそれをここまで持ち上げた米国も、ともに救いようがないものと言わざるを得ません。
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