8/14/2016

[law] 警察自身の全活動監視・記録を義務化すべき

大分県警による別府地区労働福祉会館の監視カメラ設置事件について、県警の幹部を含め多数の関係者が書類送検される運びになったそうで。

これはなかなかに前代未聞の事態です。容疑は建造物侵入罪で、当該容疑者らは発覚当初から当該侵入箇所たるカメラ設置場所は雑草が生えていて公有地だと思った旨供述していますが、当該箇所が会館敷地の奥側であり、かつ隣接する他の私有地との境界の一部であり、しかも当該境界を構成する相当の高さのある石垣の内側でもある、という状況からすれば、当該箇所は敷地と一体を成しているものと見る他なく、少なくとも公有地と誤解し得る可能性は皆無と考えざるを得ません。従って公有地と思った旨の供述は悪意を隠蔽するための虚偽である可能性が極めて高いと言えるわけで、本容疑についての悪質性は相当に高そうです。

しかし無論の事ながら、本件で問題となっているのは建造物侵入の有無などではなく、政治団体への公権力による監視の是非にあります。政治活動の自由とプライバシーのそれぞれ憲法で明確に保障されている人権が侵害されており、重度の違法性を帯びている事もまた明らかです。一方、本件監視行為に及んだ経緯や目的等の事情は何ら公表されておらず、従ってその違法性を阻却する事由は一切認められない状況にある以上、現時点では正当化のしようもない、公権力の濫用たる犯罪と評価する他ないでしょう。

さらに、本件の措置に対する政府の関与の有無も問題になります。主たる監視対象が特定地域に限定されない全国規模の政治団体であり、また県警の捜査部隊の個別事件の捜査に伴う監視と考えるには上層部の関与が大規模に過ぎるように思われる点からしても、より広範かつ大規模な監視活動の一環と考える方が自然と言えるでしょう。そして、そもそも警察自体が行政の一部であり、政府の管轄下にあるのに、これほど違法性が高く、また政治的意味合いも極めて濃いだろう監視行為の計画及び実行に及ぶにあたり、そこに政府が全く関与していない、等という事があり得るでしょうか?とそう考えれば、嫌疑がかかる事はむしろ当然と言えるだろうわけです。

本件の面倒なところは、容疑者が警察組織、それも上層部ということで、只でさえ組織とその身内を擁護して隠蔽も平然と行うところの話ですから、今後の捜査を待つ、というわけにもいかない点にもあります。むしろ時間が経てば経つほど、口封じ等も含め証拠隠滅が進められてしまうだろう事は想像に難くありません。かと言って捜査権等を持つ第三者機関があるわけでもなし、現状の制度では、政党を含めた民間側の団体等による個別の活動に頼らざるを得ないのでしょう。

しかし再発防止以前に、個別事件の捜査からしてままならない、というのは流石に看過し得ない問題だと思うのです。警察内の幹部も含めた各人員の行動、発言等は全て自動的に映像・音声で記録して保存しておく機器の設置・着用等を義務付ける位しないとどうしようもないのかもしれません。まず監視すべきは警察自身である、というべきでしょうか。特に具体的な容疑もなく、捜査令状もなしに監視する事も必要として実際に実行してもいるのだから、犯罪者予備軍たる自分たちが常に監視されても異論はない筈なのですし、本当に行動の全記録を義務付けても良いように思われるところなのです。

無論、その種の再発防止等の対策の実現には困難を伴うだろう事も明らかですけれども、捜査・摘発が難しいからといってこの種の犯罪を見過ごして良いとするわけにもいかないし、何とも困ったものです。あるいは警察専門の捜査機関を設置しても良いのかもしれませんね。会社における社外監査役みたいな感じで。何にせよ、現状の制度の欠缺を漫然と放置する事だけは許されないと思うし、政党各位には是非とも早期の法改正による是正がなされるよう願いたいところですね。