2016Q2の決算が大体出揃いました。前年から続く国内外での各種バブル崩壊の影響に加え国内での災害等もあり、大方の予想通りにほぼ減益・赤転の不振一色で、一言で言えば壊滅的という感じなわけです。国内についてはマイナス金利により債権へ逃避しても損失が積み上がるばかりとあって、証券会社は無論、生保や年金、信託等も含め金融業界各社はまさに地獄の真っ只中、といったところでしょうか。例外は低金利の恩恵を受けた不動産業界位のもの、といってそちらもそろそろバブルも限界のようなのですが。
業績が悪化した業界・企業があまりに多すぎて、個々の企業を一々取り上げてもキリがない位の総崩れなわけですが、その中でも、とりわけ中小型液晶大手ジャパンディスプレイの決算における先行きの救いの無さ加減は群を抜いている感じで、象徴的なものを感じさせます。
JDIの状況、また不振の原因は、先日あえなく逝った同業のシャープとほぼ同じと言えるでしょう。iPhoneはじめスマホ等の需要が頭打ちした、と思ったら数割もの急激な減産に走り、それに伴って部品類はどれも同程度の数量的売上の減少に加え、供給過剰による急激な単価の値下がりに見舞われた結果、大幅な赤字に陥ったわけです。JDIの場合は、前年同期比で約30%も売上が減少し、当然に巨額の赤字を計上してしまいました。直前に大きめの設備投資をしていたのもあって、BSは極めて悲惨な感じ。数百億の短期借り入れを追加し、かろうじてショートは免れているという状況です。
当然ながら借り入れで手当した分は、これからその分利益を余分に稼いで返済しなければなりません。しかし、そのアテにJDIが挙げたのはほぼ有機ELのみ、というのがまた。Appleが次期iPhone等に有機ELを採用するという予想は随分前から囁かれ続けている話ですし、液晶からそちらへ需要の移転する可能性は高いのでしょう。が、周知の通り、JDIの事業はほぼ液晶に特化していて、有機ELについては殆ど実績がなく、一方で有機EL自体は別段新規の技術というわけでもなく、海外大手を含め他社が多数既に競合している市場なわけです。かといって発展途上というわけでもなく、SamsungとLGという独占的なシェアを占めるプレイヤーも既にいます。実績もなく、特に優位な技術もノウハウもないJDIが、これからそこに新規参入して、すぐに競争力ある製品を投入し、直ちに利益が得られる程度のシェアを獲得出来る、等とは到底考えられないのですけれども、一体どういうつもりなのか、と首を捻らざるを得ません。
一応、有機EL自体が液晶に比べれば未成熟な製品分野ですから、技術面で飛躍的な新技術を得るか、もしくは生産効率を大幅に高めてコストを削減する事が出来れば、一気に飛躍する可能性も無いではないのでしょうけれども、しかしもしそんな技術があるのなら、既に大々的に発表し、資金を集めて大規模な設備投資も進めていた筈です。それがなく、赤字に転落した今になって有機ELへの転換を打ち出したという事は、そういう具体的な勝算等があった(得られた)のではなく、悲惨な現状を取り繕うためにでっち上げるネタが必要だったけれど、具体的なものはなく、代替分野への進出を漠然と打ち出すしかなかった、というだけの事なのだろう、とそう解釈する他ないように思われるわけです。
だとしたら、今回の投資は無意味、というか単なる無謀であって、資金の無駄遣いに終わってしまう可能性が極めて高い愚策、と言わざるを得ないわけで、しかもそれ以外に回復の可能性すらない状況から予想すれば、JDIの将来は正しくお先真っ暗、という事になるのですね。
シャープの惨状を見れば、事業分野自体に根本的・構造的な衰退の要因がある場合は、いくら企業があがいたところで無為に終わる可能性が高い事は明らかです。一方、JDIは設立の経緯等から官営的な性質のある企業ですから、かつての国鉄等よろしく無理やり借金を重ねて延命させる事も不可能ではないのでしょう。通常の企業なら当然選択肢になる筈の海外企業への売却も困難ですから、清算か存続かのほぼ2択になるわけですが、さりとてそこで清算の選択を取ることは相当に困難でしょうし、しばらくはこのまま赤字を積み重ねつつ存続する可能性が高いようにも思われるところです。しかし、そうなればJDI周りの損失の拡大・累積を招く可能性も高くなるわけで、当事者以外の納税者にとってはかえってタチが悪い案件である、と言えてしまうんでしょうけれども。
どう頑張ってもこの先回復する見込みが無い事に違いはなく、さりとて潰すも売るも困難。厄介な異になってしまったものです。いつまで引っ張る事になるんでしょうか。