大阪市廃止案は否決だそうです。賛否の差は1%程度という僅差ですが、否決は否決。保守的な判断が上回った結果、これまで通り大阪市は存続する事と相成りました。否決時の政界引退を公言していた橋下氏以下、維新は存在意義を決定的に失い、今後は辞職なり解党なり、消滅していく流れに乗ったものと言ってよいのでしょう。
様々な意味で注目を集めまた物議を呼び、一時は地方分権による国家システムの変革を先導するものとして高く期待もされた本構想も、結果を見れば、ただ大阪内部で深刻な分裂を呼び、その過程で多大なコストを消費した挙句、無為に帰して終わり。まさに骨折り損のくたびれ儲けと言うべき始末です。結局どれだけリソースや費用をつぎ込んだのでしょうか。
こんな筈では無かった、とは言うなかれ。橋下氏以下の振る舞いは、少なくとも地域社会における住人間の相互協力関係の維持発展に関しては、独善的、独裁的という言葉が生易しく感じられる程、悪意に満ちたものであって、最初から合意形成を放棄し、批判を敵対行為と断じ、対立と分断を深めはしてもその逆を生じ得るものではありませんでした。その姿勢を幾らかでも改め、今少しでも協力者を得るか、敵対者を減じていたなら、今回の投票は可決に終わっていた事でしょう。
その意味で、今回の否決は必然的な結果と見る事も出来るだろうし、また見方を変えれば、そんな住民同士が先鋭かつ深刻に分断され対立した状態で可決され、その後反対派の意思が取り返しが付かない形で、それも真逆に抑圧されたままで事が進み、地域社会の分断もまた固定されてしまうような悲惨な未来が防がれた点において、相対的に望ましい結果に至ったものと理解する事も可能でしょう。少なくとも、本件のような地域社会の構成員全員に重大な影響を与える事案において、半数近いような多数を数の論理で抑圧するなど許されるべきものではないのであって、仮に僅差で可決されたとしても、その先に望ましい未来があったわけではない、その事は分かり切っていた話なのです。
今後は、地域社会を敵味方に分断するのではなく、協力し合って維持発展させるよう、少なくとも維新の取ったような、その稚拙な手段が改められる事を願う次第なのです。部外の傍観者の立場ではありますが、以前からのそのやり口と合せ、とりわけ本件は見てて不愉快でしたからね。いくら住民の自由であって、その決定方法が多数決によると決められているのだとしても、わざわざお互いを疎外し合うようなそのやり方は幾ら何でもないだろうと。
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