5/28/2014

[biz law] 残業代ゼロ法案、実質的な全撤廃に改悪され復活

過去から幾度となく導入が検討され、その度に強い反発を受けて流されて来た残業代ゼロ制度、それがまたしても復活した件ですけれども。既に各所で非難する声が聞かれるところですが、毎度の事とはいえ、今回のこれはまた一際酷くなって帰って来たものだと。

何がって、年収要件が撤廃された点と、その代わりに入れられた要件のあまりにもなザルさがです。幹部候補なんて建前だけなら殆ど全員そうだと言えてしまうわけで。例にITコンサルが含まれていますが、SIerなら皆コンサルだと言い張れば対象になるわけですし、どのような形であれ正規雇用で部下がいれば幹部候補と言えてしまうのだから、派遣以外のホワイトカラーは事実上全員対象、ブルーカラーすらも期間工以外は対象になり得るでしょう。非正規はそもそも時間外の発生しない形態が多数だから、結果としてほぼ全ての労働者が対象になり得るものと言えるわけです。そして、被雇用者側には実質的に拒否権はありません。要するにこの要件によれば、殆ど全ての社員を会社の任意で残業代無しに出来てしまうのですね。少なくとも経営側がそのように運用する事は必然と言えるでしょう。

これでは、以前非難に晒され立ち消えとなったホワイトカラーエグゼンプションと比較して見ても、その批判された点を修正緩和するどころか、大幅に改悪したものになってしまっています。かつて本案に非難を加えた向きがこの内容を理解出来ない筈はなく、当然ながら絶対に容認され得ないだろうところ、どうやって合意を図るつもりなのでしょう。まさか、本要件によって高度人材を選別可能、とする寝言のような建前が本気で通用すると考えているのか。もしくはそれらを承知で、確信犯的に反対を押し切って導入する心積もりなのでしょうか。いずれにせよ、厚労省も政治家連中も阿呆の極みと言わざるを得ません。

どう言い繕ったところで、本案が導入されれば、個々の被雇用者が主に時間面で劣悪な労働条件に置かれる事は間違いないし、過去に成果主義を導入した国内企業の例から敷衍すれば、実質的な人件費削減の手段として運用される結果、大半の適用者について収入も大幅に減少する事でしょう。そして、それに合わせて心身の健康を害する頻度、またその割合も増加するでしょう。対して得られる利益は、企業での人件費減少に伴う営業利益の増加すなわち株主に対する幾ばくかの金銭のみ。弊害だけが労働者に集中する、あまりにも一方的なものです。只でさえ疲弊している社会基盤に看過し難い追い討ちとなるだろう事も疑いようはありません。

全く以て不公平かつ不合理、論外の愚策と言わざるを得ない本案ですが、国会の現情勢からすれば、このまま導入される可能性も相当に高いものと思われるわけで。一時の感情に流され、そのような議会構成を許容した国民の自業自得とはいえ、少数の富裕層の利益のために大多数の信頼をして平然と裏切り、社会に害を成す面々の無恥無能加減には、改めて憤りと共に遺憾と軽蔑の念を抱かずにはいられないのです。

「残業代ゼロ」案修正へ 幹部候補に限定、年収は問わず