Joe Bidenに決断の時が迫っています。迫っている筈なのです。もしかしたら、本来訪れるべきだったその時は既に過ぎ去っているのかもしれません。しかしまだその決断はなされていません。果たしてその時は来るのでしょうか。だとしたらどのような形で?
彼の歴代最高齢での大統領就任から3年余り、その間にもしばしば明らかな加齢に伴う認知症から来る痛ましい姿を見せ続け、殆どの人がもはや次の4年には耐えられないだろうと予感し、そして先日のDonald Trumpとの公開討論で全世界に無残な姿を晒した事で、公然と立候補を取りやめるべきだと支持者からも主張されるようになった事は周知の通りです。
もはや人の名前を覚える事も、正確に思い出す事も出来ず、公の場にあってさえ頻繁に自失の態を見せるようになった彼に、指導者としての責務を果たす事を期待するのは酷と言うより不可能です。
何より、誰もが知る通り、大統領選では競争相手、比較相手がおり、例え本人が万全かつ支持層が強固であったとしても相手の評価と情勢如何でギリギリ勝てるかどうかというシビアな選挙です。民主党支持層ですら公然と不安を覚えるような状況で、Trumpを上回る票を集められるわけはありません。その意味でBidenはとっくに詰んでいます。議論の余地もありません。
しかし、そんな状況でも、本人は未だ撤退しようとはしていません。少しでも迷いを口に出したり弱気な態度でも見せたりしようものなら、その時点で終わってしまう事がわかっているから、撤退を決断するその時までそのそぶりは見せない、それは当然の事ではあります。そして、そのあまりに重く残酷な決断をするにも相応の時間が必要、それはその通りなのでしょう。
ただ、彼のあのあまりにあまりな衰えぶりを見るにつけ、不安を感じずにはいられません。そもそも彼は本当にそういう、撤退を検討するにあたっての合理的な判断、そのための多岐に渡る要素を総合検討するといった、合理的な思考が出来ているのでしょうか。出来る状態なのでしょうか。
認知症は、本当に残酷なものです。程度の差こそあれ、その名の通り自分の置かれている状況を認識出来なくなるのですから。抗う事も許されず、時に世界で一番大切な人の事すら容易く永遠に奪い去ってしまう。認知症に侵された彼は、一体どこまで自分の置かれている状況、殊に周囲の人の彼に対する評価を把握出来ているのか。おそらく短期記憶は壊滅的で、長期記憶の部分もかなり破損が進んでいるようですから、もはや彼がリーダーシップを取れるとは思われていない、その現状を把握出来ていなくても全くおかしくはありません。むしろ正確に把握出来ているわけはないでしょう。
今の彼は、現在を正確に認識出来ず、壊れつつある過去の記憶によって立つだけの、まさに全てに別れを告げ、人生の終わりを迎えようとしている一人の老人に過ぎません。その、彼に残された、公僕としての仕事に一生の大半を捧げた記憶から、大統領としての、あるいは大統領候補としての責務を全うせねばならないとの、殆ど妄執のような思考に取り憑かれて、そこから抜け出せなくなっているだけなのだとしたら。
彼には、もはや大統領選からの撤退を、撤退せざるを得ない自らの現状を、認識する事すら出来なくなっているのかも知れないのです。そんな彼に、社会は容赦なく大統領としての責任を課し、再選を目指す候補としての振る舞いを要求し、それに応えられない彼を、その振る舞いをあげつらって批判するのです。だとしたら、それはなんと言う残酷な事なのでしょうか。
その悲劇の責任は、もはや彼にはありません。その年齢から、彼がそうなるかもしれないと知っていながら現在の状況に追い込んだ周囲の責任です。この上は、速やかに彼が解放され、他の多くの老人と同じく、心安らかに人生の最期を迎えられるよう、その周囲の者がケアするのが責任というものでしょう。もちろん簡単な事ではないでしょうけれども。
それで彼の代わりの大統領候補を今から立てるのは大変でしょうし、Kamala Harrisをはじめ、その代替として名前の上がる候補は誰一人として全米で広範な支持を得られるとは考えられず、高確率でDonald Trumpに負けるでしょうが、それも致し方のない事、言ってしまえば自業自得だと思うのです。
他の候補者達が名乗りを上げない、上がらないのは、負けるとわかっているから、Trumpに負けたらキャリアやイメージに傷が付いて今後の戦略上好ましくない、とかそういう理由で、Bidenに敗北を押し付けようとしているのかもしれません。そうだとしたら、卑劣と断ぜざるを得ません。そんな卑怯者が大衆の支持を受ける事は未来永劫ないでしょう。
Highlights from Biden’s high-stakes news conference
<追記>
それから粘る事しばらく。Bidenは次期大統領選からの撤退を表明しました。一安心と言っていいのか。お疲れ様でした。