航空機を利用した衛星打ち上げ事業を手掛けている、米Virgin Orbit社が資金繰りに窮して従業員をほぼ全員解雇、事実上の破綻に追い込まれてしまったそうです。
同社は、Richard BransonのVirginグループで宇宙事業を手掛けるVirgin Galactic社のスピンオフ社ですが、売上的に当初から事業が回っているとは到底言えず、少なくとも追加出資を受けなければ運転資金も足りないという自転車操業ですらない惨状だったところ、それに加えて、少し前に主要出資者のBransonが見切りをつけ、追加出資をしない旨宣言されてしまい、あっという間に窮地に陥ってしまいました。慌ててBranson以外の新規出資者を探していた同社ですが、当然ながら出資者を見つける事は出来ず、今回の措置と相成ったわけです。普通に破綻ですね。お疲れ様でした。
同社が今後再生を目指すのか、精算してしまうのかは定かではありませんが、元々収入が無きに等しい位だったのだから、経営的には元々破綻していたと言うべきところですし、むしろよくここまで持ったと言う方が正しいのかもしれません。ろくに事業収入が得られないまま際限なく資本を食いつぶした挙句破綻した、ということで、三菱重工のMRJと似たような感じですが、一応打ち上げに成功した案件も少ないながらある点でこちらのほうがいくらかマシだった、とは言えるかもしれません。
周知の通り、ここ最近の金融環境は急激に厳しくなっています。欧米での金融緩和の終了、続いてインフレ対策のための利上げが続き、米国中心にベンチャー関係に近く、不安定なスタートアップへの資金供給を担ってきた部類の金融機関の破綻も相次いでいる。当然、この種の事業が成り立っていない、話題先行型の企業の資金調達はコストも含め極めて厳しくなっているだろうし、その事が同社の破綻の決定打になった面はあるでしょう。その意味で、運が悪かったと言えなくもないかもしれません。
しかし、そもそもの話として、追加出資が得られなければ立ち行かなくなるような事業の構造は正しいとは到底言えないわけで。需要が不安定な位なら全然ましな方で、本来淘汰されて然るべきだろう採算性の壊滅的な事業や、それ以前に事業の立ち上げが許されるべきではなかったと言わざるを得ない程に見通しが甘いものも当たり前に見られます。そんなもの、破綻して当然でしょう。ですが、そういう、耐震性能0の高層ビルのような企業が山ほどあるのが現状なのです。それらが、雪崩を打って崩れ落ちようとしている。
この種の、ただ徒に資本を食いつぶすだけの赤字事業の存在を許容してきた主たる要因であるところの、資金供給の名目の下に資金調達があまりに容易であった金融環境、そこに溜まったツケの大きさとその精算がもたらす応報の厳しさに、改めて戦慄を覚えます。しかし放置すればそれはさらに肥大化するだけである事もまた明白、そろそろ覚悟を決めるべきかと、半ば諦めとともに思う次第なのです。
Virgin Orbit fails to secure funding, will cease operations and lay off nearly entire workforce