11/02/2017

[note] 仮想通貨バブルの狂気性について

誰もがそうと知りつつ、目先の利益に目が眩んで飛び込み続けるネズミ講でありチキンレースでもある仮想通貨のバブルが止まりません。遂には大手市場での先物取引までもが導入され、その事実自体がバブルをさらに加速させてもいるという始末です。皆そんなに破滅したいのか、と戦慄を禁じ得ません。

bitcoin、ethereum、またその派生の仮想通貨は既に1000種を超え、その殆どが何ら他の財産等による価値の裏付けも、それが普及する保証も無いにも関わらず、金や各種の債権、株式よりも高額で取引されています。それもICO(公開)の時点で。明らかな詐欺すら横行しています。

それらのオープンな仮想通貨は、他の実体を有する財貨とのつながりが希薄、ないしは殆ど皆無です。帳簿上の名義のやり取りに過ぎない、と言ってもいいでしょう。そうであるが故に、通常の通貨や債権類が当然に有するような、財貨間の価値の均衡も、現実の事象との相関も存在しません。ただ、仮想通貨自体が独立した財物と看做されているが故に、その価値を表現するために既存の通貨が用いられているに過ぎない、片面的かつ一方的な関係のみがあるに過ぎないのです。

すなわち、仮想通貨の価値、またそれが取引される市場は非常に閉鎖的なのです。そのため、期待や思惑、それに基づく市場内のプレイヤーの振る舞いのみによって、如何様にも価値が変動します。それを律する事は出来ない、というより第3者的な視点から制御する仕組み自体が存在しません。通常、それらの規律は、国家等の公共性と権威を有する機関が担うのですが、オープンな仮想通貨にあっては、国家すらもプレイヤーの一員に過ぎません。むしろ、率先して参加し、相場を操縦して利益を得ている場合もあるでしょう。国家が運営に参加する事も禁じられてはいないし、Fakenewsは政治的な目的のみに用いられるものではないのです。

それらの、閉じられた市場に流れ込むプレイヤーの漠然とした期待が、それ以外の裏付けも担保もないままに価格を上昇させ、それに引き寄せられた者が財貨を投入して新たなプレイヤーとなり、さらに市場の期待、その総量を膨張させ、それがまたさらに参入を呼ぶ。追加の参加者、またその資金の流入が続く限り際限なく続くだろうその膨張のプロセスの有り様は、Tulip bulbの故事を引き合いに出すまでもなく、正しくバブルと言う他ないものであり、また一方でネズミ講としての構造も有しています。

言うまでもない事ですが、バブルにせよネズミ講にせよ、その膨張がいつまでも続く事は有り得ず、資金と参加者の流入が止まって参加者の期待がしぼみ、見切りを付け出した時点で一気に破綻します。そのことは、既に多数の専門家からの指摘が繰り返されていますし、 それ以前に参加者の多数も不動産やIT技術を対象とした過去の事例等から経験的によく知っている事でしょう。

まして、仮想通貨は不動産等とは異なり、それ自体の価値も、他の財貨の裏付けも無く、それを有しているからと言って何かと交換する事が保証されているわけでもないのだから、それが他の財物よりも高い価値を持つと評価され、さらに高騰を続けるという事自体に全く違和感や危険を感じない、等という事があろう筈もありません。加えて、各国の当局も座視しているわけではなく、主要な取引市場の閉鎖やICOの禁止等を含む規制を多数導入しています。プレイヤーも、また直接参加しているわけでない周囲も、その殆どが仮想通貨市場を取り巻く現状を多かれ少なかれ危険視している事は間違いありません。

にも関わらず、現実には仮想通貨は急激な価格高騰を続け、破綻を避けるために抑制的に振る舞う兆候すら殆ど見られません。これはもはや偶然や無知による暴走、あるいは一部のプレイヤーによる誘導等によるものではなく、マジョリティーの総意に基づく、総体的かつ意図的な動きと解するべきものでしょう。すなわち、皆がそうと知って、あえて歯止めの効かない市場を作り出し、それを維持すべく価格の高騰を生み出しているのです。そうであれば、狂気の沙汰と言わざるを得ません。

その意図するところは何か。投機による短期的な利益の獲得は、誰しもが抱える動機、その中に含まれているものでしょう。それは仮想通貨に関わらず、全ての投機行為に伴うものであり、自然な動機と言うべきものです。ですが、そのリスクを顧みない、どころか進んで作り上げ、際限なく育てようとするその狂気の理由が、ただ目先の利益、それだけなのでしょうか。それだけのために、これほどの人、資金が集められ、仮想通貨市場という場が作り上げられたというのでしょうか。

だとしたら、その行く先は。目先の利益、それが象徴するところの人々の欲望だけがその存在理由だというのなら、 遠くないだろうその破滅が訪れた後、殆ど全てが消え、形として残るものは何もなく、ただその狂気の記録が記されるだけになってしまうのか。あるいは、人の欲望の限り無さを象徴するかのように、形を変えて引き継がれていくのか。もはや、米国等の巨大な国家権力が法的に禁ずるのでもない限り誰にも御する事は出来ないだろう以上、ただその行く先を見守る他ないのです。

少なくとも、仮想通貨の先物取引は正気じゃないですね。株式等のそれとは比較にならないヤバさです。あっという間に死ねますよきっと。自殺したいという向きには丁度いいんじゃないでしょうか。

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