2/15/2017

[biz] 時間切れ濃厚な東芝の惨状に改めて戦慄

見るに耐えない惨状を呈している東芝の件ですけれども。色々無茶なスケジュールで事を進めようとしていた上、ここに来ての2016Q3決算の延期は致命傷だと思うのです。しかもリスク要因も増えて下方修正の可能性ありとか。。。これはもう間に合わないんじゃないでしょうか。

今現在の東芝の目標というか再優先事項は、今年度決算すなわち2017年3月末における債務超過回避にある事は明らかなところ、既にQ3において少なくとも2000億程度の債務超過が確定している以上、あと40日強でそれを解消するだけの大規模な資本調達が必要になるわけです。

その手段は、(事実上)半導体事業への外部資本導入しか残されていません。そしてその実現のためには、同事業の分社化すなわち新設分割の手続を踏む必要があります。同社における同事業の規模比率からして、簡易の手続による事は出来ませんし、株主総会の特別決議等を得る必要があります。また、設立会社へ承継させるだろう工場を含む資産等の内容から、債権者の保護に関する手続も必要になるだろうところ、その手続には公告等のため計画策定から最低でも1ヶ月以上の期間が必要になります。

で、その策定すべき分割計画には、資本金や承継する資産・人員等の設立会社自身の構成は無論の事、株式の割当すなわち外部の出資の内容も含まれます。出資を受ける相手を選定し、割り当てる株式の内容、出資比率、一株あたりの出資額、役員を受け入れるならその構成等の条件をも固めなければなりません。従って、3月末までに手続を完了させるには、それらの膨大な内容の決定を2月中に、すなわち残りわずか2週間の間に完了させなければならない、という事になります。承継させる全ての債務を東芝本体が連帯保証するというなら債権者保護は省略可能ですが、それでも株主総会決議の2週間前まで、すなわち3月半ばがデッドラインとなります。なのに、延期された決算の発表日時は3月14日という。

そもそもこんな質的にも規模的にも重大な案件、しかも将来の譲渡も見据えた新しい協業の相手や条件等までもを短期間で選定・決定する事自体が困難極まりない話です。無謀とさえ言えるでしょう。そこに加えて、その検討及び判断の前提となる直近の決算すら確定出来ていないというのでは、出資を検討している相手方候補各社も不確定性が大きすぎて決めようがないだろうし、率直に言って話にならないと言わざるを得ないと思うのです。

そのリスクをカバーするとでも言うつもりでしょうか、将来の過半数の譲渡にも言及されていますが、諸々の規制絡みで今年度末までに出資可能な範囲は20%未満である事に変わりはない以上、相手方にしてみればあまり意味はないでしょう。むしろ、この段階でそんな事を言ったらより一層足下を見られて、あるいは一気に丸ごと乗っ取られかねない話だろうわけで。

それで足下を見られまくった条件で半導体事業を売り飛ばし、債務超過を回避したとして、何の意味があるというのでしょうか。残るのは、未だ底の見えない泥沼と化した原子力事業と、成長余地に乏しいインフラ事業と、他社に明らかに劣る脆弱なITサービス事業位です。もはやその損失を補填する事もままならず、原子力事業を手放すまで債務超過の危機を繰り返す様が目に見えるようですが、東芝経営陣は、それでいいと本気で思っているのでしょうか。貧すれば鈍す、と言うにも程があるでしょう。恐ろしい話です。関わりあいのない第3者の立場で良かったと、心から思わずにはいられません。

およそ全てにおいて場当たり的な対応に終始して来た事がこの破綻した帰結に導いたというか、そもそも破綻を云々出来るだけの計画性自体が無く、通常なら当然にあるべき準備も保険も選択肢も何もないままに目先の取り繕いに汲々とするばかりで一年先の事すら考慮しない、という信じ難い振る舞いを続けた必然の結果と言うべきなのでしょう。ここまで酷いと、教訓にするのも難しい感じで、ただひたすら距離を取って巻き込まれないようにする位しか仕様がないんじゃないでしょうか。最早その影響を逃れる事も困難な位に関わってしまった利害関係者も多数いるだろうわけですが、東芝のその有様を見て、それでも関係を持ち続けた自身の愚かさの報いを受けるだけの事、同情は無用だし、するべきでもないのでしょうね。実際どうしようもないし。くわばらくわばら。

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