Nikonがコンデジの新シリーズDLの発売を中止しちゃったんだそうで、大騒ぎです。
それも当然でしょう。同シリーズは同社のコンデジ製品における新たなフラッグシップとして、CoolpixのPやA等、ハイエンドカテゴリを丸ごと承継する、少なくとも今後数年間における同社コンデジ事業の利益の大半を稼ぐべき主力と位置づけられていたものであり、それを中止するというのは殆どコンデジ事業自体からの撤退を宣言したに等しい決定とも理解出来てしまうのですから。
それに、元々の発売予定日は半年以上前で、それが延期されている状態でした。ということは、当然ながら開発・生産・広告等諸々の投資は実行された後であり、そこに遅延による追加の費用までもが積み上がっているわけです。そこまで突っ込んだのにも関わらず、回収を諦めて撤退してしまうというのは、如何なる企業であれそう簡単に出来る筈もない話です。普通に致命傷になりますからね。
にもかかわらず、このような決断をせざるを得なくなった理由は何か。発表されたところでは、プロセッサの不具合とのことですが、センサーの生産上の問題ではなくプロセッサというのは極めて珍しい話です。デジカメのプロセッサなんて殆どの機能は枯れているものだし、技術的な問題が生じたとしても普通なら修正自体はそれほど困難とは考えづらいところですが。。。何が起きたというのでしょう。謎は深まります。
といって、そこは推測するしかないのですが、考えられる理由は幾つもあります。
既に発表済の製品情報によれば問題のプロセッサはExpeedの新型である6Aですが、基本的にその開発・生産は昔から富士通に委託して来た筈なところ、富士通のLSI事業は少し前にリストラされましたから、現在はおそらくそこがパナソニックのLSI事業と合併して出来たソシオネクストが担っている筈です。デジカメ関連ではニコンと競合するパナソニックの資本が入った事が本件プロセッサの開発・生産に影響した可能性はあり得るでしょうし、そうでなくとも独立した事で案件毎の採算に厳しくなり、そこに開発上のトラブルや市場の動向を踏まえた生産数見込みの下方修正等が入れば、不採算案件として手を引く決断がされたとしても不思議ではない、とは言えるでしょう。
他にも、ニコン自身がリストラの真っ最中で、キーマンが抜けたり部門の編成変更等で開発・生産体制に不備が生じた可能性も相当にあるでしょうし、そもそも売り出し価格で10万円前後の高級機につき、余程の"売り"が必要な事は間違いないところ、それに乏しく、単に競合製品や自社の1シリーズ等と比べて商品力に欠ける事から事業として成立しないものと判断されただけなのかもしれません。 勿論それらの事情が重なった可能性もあるでしょう。
何にせよ、ニコンのデジカメ事業が存亡の危機にある事は間違いなさそうです。あわせて発表された2016Q3の決算資料によれば、DSLRとレンズは前年同期比で販売台数で約2割減、コンデジに至っては半減近い壊滅的な状態にあって、しかもその減少率は市場全体の縮小率より大きく、シェアも同時に低下しているというのですから。本来ならこういう時こそ新製品を投入すべきだろうところ、逆に白旗を挙げてしまった本件、このまま同社のコンデジ事業は消滅してしまうのでしょうか。個人的には結構な間Pシリーズを愛用しているので、なんとか回避して頂きたく願う次第なのですが、無理ですかね。
2017年3月期 第3四半期決算 説明資料(PDF)
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