宙ぶらりんだった富士通のPC事業の行き先が、Lenovoにほぼ決まったんだそうで。
富士通のPC事業が不振と言われ、リストラ対象と見做され続けて何年経ったでしょうか。昨年の分社化で既にその実行は決定的になっていて、実際国内3社で交渉のち破談、という事もありましたから、今更驚きも何もなく、ようやく決まったか、といった受け止め方をした向きが多いのではないでしょうか。NECと同じ道を歩んだというのには、色々と思うところがある人も多いでしょうけれど、実績のある話でもあるので、理解が得られないという事も殆どないでしょう。というより、当初目論見、即破談したところの国内メーカー間での合併ではなく、世界全体でHPとトップシェアを競うLenovoとの合併という選択は、既に技術的には枯れて久しく、純粋にスケールが競争力の大部分を占めるPC市場にあっては、むしろ自然なところと言うべきでしょうか。元々、東芝ともかくとしてVAIOとの合併は割と意味不明だったのですし。
ただ、合理的な面ばかりというわけではなく、色々と悩ましい面も多々あるのであって。というのも、周知の通り富士通は官公庁向けに大きなシェアを持っていますが、その主たる理由は国内大手メーカーという点に拠っていたわけです。機密等情報管理の観点しかり、公共事業的な意味合いしかり。その点、Lenovoは真逆です。
特に情報管理云々の点からいえば、国家ぐるみのスパイ活動の本拠地中国、その手足となって過去から現在に至るまでの悪行の数々を繰り返したLenovoは、忌避されるべきメーカーの筆頭と言えます。また当然ながら中国資本ですから、公共事業の観点から見ても最もあり得ない選択肢と言えてしまうわけです。普通に考えれば、少なくとも行政周り等は調達先の変更を検討せざるを得ないでしょうけれども、さてどうするんでしょうね?東芝等の競合メーカーにとってはシェア獲得の絶好の機会、という事になるんでしょうか。もしそうなれば、少し皮肉な話と言えるのかもしれません。
ともあれ。Lenovoの下には、既に吸収済の旧IBM,旧NECに富士通、とPCの繁栄期の国内主要ブランドが3社分も集まった事になります。シェアだけで言えば当時を含め、当然に5割を超えますね。さて残る国内メーカー、すなわち東芝、VAIO、Panasonicの3社はいつまで抗えるのでしょうか。最初から小規模ニッチ特化のPanasonicはともかく、東芝とVAIOは普通に競合しているわけだし、独立するにせよ2社合併するにせよ、状況は大して変わらず、極めて厳しいだろう事は明らかなのですけれども、さて。
あと、富士通のPC部門には、旧Siemensであるところの海外ビジネスも含まれる筈ですが、そこの扱いはどうなるんでしょう。一緒にLenovo行き?であれば、EU等でも国内官公庁等と同様の問題が生じる可能性はあるという事になります。もっとも、EUからすればFujitsu自体が外資だし、それが別の外資に替わるというだけの事で、さほど違いがあるわけでもないのかもしれませんけれども。ただ、色んな所で調達禁止になっている中国系、しかもLenovoですから流石にそういうわけにもいかないでしょうか。こちらもどうなることやら。 あっちもこっちも難儀なことで、誠にご愁傷さまです。
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