はごろもフーズがやってくれました。同社の主力製品であるところのシーチキンの缶詰について、2年ほど前に製造された製品につきゴキブリの混入が発生し、製造過程で混入したものと判明していたにもかかわらず、回収等の対応を取るどころか公表すらせず隠蔽していた事が発覚してしまったそうです。
何という愚かな。無論、食品製造業としてゴキブリが混入した事自体も相当に問題ながら、それだけならまだ不可抗力との抗弁も可能であり、非難はあれども対処可能だった筈です。にも関わらず、おそらくはその対処に必要となるコストを惜しんだためにその後隠蔽に走った点は、企業倫理や顧客対応の観点からは論外であり、最悪という他ありません。信用云々以前に、自身の利益を優先し、同製品を購入した顧客を裏切って傷害を加えたも同然であり、不法行為としてその間の全ての購入者から慰謝料を含め損害賠償を請求されて然るべき愚行です。しかもそれが明らかになったこの期に及んでも、他に申し出がないため他にはない、等という誰からも到底納得され得ないだろう意味不明な理由で回収等はしないと言い放っているのだから、もう救いようがありません。
本当に何を考えてるんでしょう。ここまで無茶苦茶だと、自分たちが何をしたのか、何をしているのか、理解していないものと見做さざるを得ないわけですが、だからと言って許されるわけもなく、その愚かさの代償を支払う事は避けられないだろうのであって。このような事実が明らかになってしまった以上、少なくとも同様の懸念が存在するだろう期間すなわち2年分の回収と返金、あるいは賠償に加え、当然相当期間に渡って販売も出来なくなるだろうし、会社、製品としての信用もブランドも何もかも壊滅必至なわけで、これはもう同社は潰れてしまうんじゃないでしょうか。だとしても当然の報いだとしか思えませんけれども、しかしせめて把握した時点で即座に対応していれば再起も可能だったかもしれないだろうのに、あえて消費者に害を加え、自滅する道を選んだ事については、極めて残念に思われてならないのです。
ツナ缶 ゴキブリが混入 自主回収はせず はごろもフーズ
(追記)
他にない、というのも嘘だったそうで。恐れ入りました。
[続き記事 [biz law] ゴキブリ以前にハエも混入、嘘と隠蔽を重ねたはごろもフーズ]
10/27/2016
[law] 大川小津波被害訴訟、教員の過失認定
注目の訴訟の1審、原告勝訴となりました。無論この種の訴訟の例に倣えば控訴の可能性も高く、またそこで変更される可能性も高いのでしょうけれども、まずは教科書通りの詳細な事実の検証と認定がなされ、それに基いて概ね妥当な判断がなされたものと言えそうです。
本件は、関東大震災における津波の被害、その中でも象徴的に捉えられている大川小の児童・教員らの避難方法の誤りによる多数死亡者につき、学校側(石巻市)の過失責任が問われたものです。その被害の悲惨さもさることながら、本災害の原因が、数百年に一度程度と頻度の低い地震とそれによる津波である事から、その予見可能性の判断についてのリーディングケースになるものと目され、注目を集めていました。
本件訴訟において主たる争点となったのは、通常の過失訴訟と同じく、予見可能性と被害回避の可能性の2点であり、その前提たる事実として、津波の発生から大川小周辺に到達するまでの時間、警報やラジオ等により伝達された情報の内容と伝達時期が検証され、その一方で、被害の回避可能性、その手段の有無等が検討されました。
その結果、通常為すべき注意を払っていても津波の到達可能性を予見出来なかったものとは考えられず、また大川小の裏山への避難という容易に選択可能だった筈の回避手段が存在し、かつ津波の情報が伝わってから裏山へ避難するために必要な時間も存在し、一方で実際に選択された避難先である堤防付近の三角地帯は比較して明らかに不適切と言える事等から、本来為すべき注意を尽くしていれば本件被害の回避は可能であり、その点に学校側の過失があるとされたものです。
本件における問題は、やはり本件規模の津波を伴う大地震という事象の発生頻度が他の天災に比して小さく、そのために津波が到達する可能性を十分認識することにつき存在していただろう一般的な困難性にあります。この点につき地裁は、上記の通り個別具体的な状況を注意深く詳細に検証し、本件学校側に伝わった筈の情報の内容とその伝達時期を認定した上で、それを前提として取り得た選択肢も同様に具体的な検証を重ね、本件の状況下での回避は可能であったと判断したわけです。そこに論理の飛躍や強引な決定等の要素は窺われず、集まった注目に堪え得るというか、一般に納得し得る丁寧な判決と言えるのではないでしょうか。
無論、今回の審理の中で挙示された証拠が全てであり真実である、等とは到底言い得ないのであって、とりわけ本来決定的に重要な筈の、亡くなられた当事者の主観的な要素については知るよしもないのですから、この判決が正当とも不当とも判断する事は困難ですし、控訴審ではまた別の判断がなされる事も十分にあり得るでしょう。ただ、数百年に一度の災害だから予見は困難だった、などという東電絡みの訴訟等でしばしば主張される類の一般論に拠って安直に判断する事を許容せず、あくまでも個々の現実的かつ具体的な状況とそれを裏付ける事実によって判断するべき事を改めて示したとも言えるだろう本件判決は、この種の稀な大災害における被害についての判断の在り方、そのモデルとして正当足り得るものとは言えるだろうと思うのです。
<大川小訴訟>仙台地裁 判決要旨
本件は、関東大震災における津波の被害、その中でも象徴的に捉えられている大川小の児童・教員らの避難方法の誤りによる多数死亡者につき、学校側(石巻市)の過失責任が問われたものです。その被害の悲惨さもさることながら、本災害の原因が、数百年に一度程度と頻度の低い地震とそれによる津波である事から、その予見可能性の判断についてのリーディングケースになるものと目され、注目を集めていました。
本件訴訟において主たる争点となったのは、通常の過失訴訟と同じく、予見可能性と被害回避の可能性の2点であり、その前提たる事実として、津波の発生から大川小周辺に到達するまでの時間、警報やラジオ等により伝達された情報の内容と伝達時期が検証され、その一方で、被害の回避可能性、その手段の有無等が検討されました。
その結果、通常為すべき注意を払っていても津波の到達可能性を予見出来なかったものとは考えられず、また大川小の裏山への避難という容易に選択可能だった筈の回避手段が存在し、かつ津波の情報が伝わってから裏山へ避難するために必要な時間も存在し、一方で実際に選択された避難先である堤防付近の三角地帯は比較して明らかに不適切と言える事等から、本来為すべき注意を尽くしていれば本件被害の回避は可能であり、その点に学校側の過失があるとされたものです。
本件における問題は、やはり本件規模の津波を伴う大地震という事象の発生頻度が他の天災に比して小さく、そのために津波が到達する可能性を十分認識することにつき存在していただろう一般的な困難性にあります。この点につき地裁は、上記の通り個別具体的な状況を注意深く詳細に検証し、本件学校側に伝わった筈の情報の内容とその伝達時期を認定した上で、それを前提として取り得た選択肢も同様に具体的な検証を重ね、本件の状況下での回避は可能であったと判断したわけです。そこに論理の飛躍や強引な決定等の要素は窺われず、集まった注目に堪え得るというか、一般に納得し得る丁寧な判決と言えるのではないでしょうか。
無論、今回の審理の中で挙示された証拠が全てであり真実である、等とは到底言い得ないのであって、とりわけ本来決定的に重要な筈の、亡くなられた当事者の主観的な要素については知るよしもないのですから、この判決が正当とも不当とも判断する事は困難ですし、控訴審ではまた別の判断がなされる事も十分にあり得るでしょう。ただ、数百年に一度の災害だから予見は困難だった、などという東電絡みの訴訟等でしばしば主張される類の一般論に拠って安直に判断する事を許容せず、あくまでも個々の現実的かつ具体的な状況とそれを裏付ける事実によって判断するべき事を改めて示したとも言えるだろう本件判決は、この種の稀な大災害における被害についての判断の在り方、そのモデルとして正当足り得るものとは言えるだろうと思うのです。
<大川小訴訟>仙台地裁 判決要旨
10/25/2016
[IT biz] あまりにも容易なIoT機器乗っ取りによるDDoS攻撃の脅威
先週、TwitterやSpotify等のサービスが大規模かつ長時間に渡りダウンした件の原因というか、DDoS攻撃で利用された主要経路が判明したそうです。
一言で言えば、ネットワークWebカメラが大量に乗っ取られ、一斉にDNSリクエストを発信する方法が採られた、とのこと。問題のカメラは、中国はHangzhou Xiongmai製であり、本件攻撃に利用された事が判明した結果、今週に入って該当製品のリコールも発表されたそうです。他にも似たような脆弱性のある機器は幾つもあっただろうし、実際他の機器も多少なりと含まれていたというのに、何故かその主要ターゲットに選ばれてしまった哀れなXiongmai社には御愁傷様というしかないところですが、それは兎も角。
利用された理由は簡単、デフォルトのパスワードが容易に推測出来るもので、かつユーザに変更を促す事もしていなかったため、簡単かつ大量に乗っ取る事が出来たから、だそうで。特別な技術も何もありませんね。単に虱潰しに機器を探し、ログインを試み続けていればいいわけですから、攻撃者からすれば楽なものだっただろう事は容易に想像されます。
一応、この種のネットワークに接続するタイプのWebカメラは、全体から見ればさほど普及しているというわけではなく、数もそうですが、探すのにはそれなりの手間もかかる筈ですが、今回の攻撃に利用されたデバイスの数は数千、その程度の数を満たすには十分であり、またWebカメラの権限などはまずユーザは一々チェックせず、従って発覚もし難いため、ある程度時間を掛けて本件攻撃に必要となる程度の数を揃える事も容易く、丁度良かったという事なのでしょう。
しかし、高々数千程度でDNSを機能不全に陥らせる事が出来てしまう、というのはやはり看過し難く思われるところです。とりわけIoTの普及に伴い、本件Webカメラ類似のネットワーク通信機能を備え、かつ滅多にチェックも管理もされないだろうデバイスがこれから増加する事が見込まれるところ、当然ながらそれらのIoT機器も同様に乗っ取り・悪用の対象となり得る事は明白なわけで。
本件メーカーのした対応のようにいくらパスワードの変更を呼びかけても、それに応じない向きはどうしても相当割合残る事も間違いないだろうし、数千どころか、将来的には母数が数億のオーダーに上る事も普通に想定されるIoT機器のうち、0.1%程度が脆弱なだけで本件同様の攻撃が実現出来てしまう計算になるのだから、実際のところ極めて解決が困難で深刻な問題と言えるかもしれません。
個々のIoT機器をメーカーが責任を持って遠隔から管理する、というのも解決策の候補としてはあり得るでしょうけれど、遠隔管理するコストも相当なものになって、法人向けならいざ知らず、個人等一般向けの安価なカテゴリの機器には導入出来ないだろうし、サポート期間切れの場合や、そもそもメーカー自体が消える場合もあるでしょうから、根本的な解決にはならないだろう事も明らかです。さしあたりこれといった有効な解決策というのは見当たらないように思われるところ、さてどうするんでしょう。DNSの仕様変更とか根本的な方式面での対策が出来ればいいんでしょうが、流石に無茶もいいところだろうし、やっぱりどうしようもないですかね?うーん。
(補足?)
何か、報道の中には、本件攻撃で数千万件のIPアドレスから攻撃があった、とかいう情報が流れているようですが。今回利用されたとされるMiraiによるbotnetの規模は、トラッカーの計測結果では大多数を占めるオフラインのものを含めても150万台程度とされていて、どう考えても桁が合いません。一体どういうことなんでしょう。通常のアクセスを攻撃と混同しているとかそういう事なんでしょうか?それとも、トラッカーが把握出来ていない範囲の方が圧倒的に広いという事なんでしょうか。謎です。
(補足?その2)
上記のIPアドレス量の不自然な多さは、やはり正規アクセスと攻撃を区別出来ず両方カウントしている事によるもののようです。具体的には、本件攻撃で接続が不安定になり、それによって正規のDNSリクエストがリトライを繰り返したものと推測される分が含まれていた、と。これら正規のアクセスをサーバ側では悪意の攻撃と区別出来ず、その結果、関与したIPアドレスが数千万、というような表現になったらしいですね。紛らわしい事です。
Webcams used to attack Reddit and Twitter recalled
一言で言えば、ネットワークWebカメラが大量に乗っ取られ、一斉にDNSリクエストを発信する方法が採られた、とのこと。問題のカメラは、中国はHangzhou Xiongmai製であり、本件攻撃に利用された事が判明した結果、今週に入って該当製品のリコールも発表されたそうです。他にも似たような脆弱性のある機器は幾つもあっただろうし、実際他の機器も多少なりと含まれていたというのに、何故かその主要ターゲットに選ばれてしまった哀れなXiongmai社には御愁傷様というしかないところですが、それは兎も角。
利用された理由は簡単、デフォルトのパスワードが容易に推測出来るもので、かつユーザに変更を促す事もしていなかったため、簡単かつ大量に乗っ取る事が出来たから、だそうで。特別な技術も何もありませんね。単に虱潰しに機器を探し、ログインを試み続けていればいいわけですから、攻撃者からすれば楽なものだっただろう事は容易に想像されます。
一応、この種のネットワークに接続するタイプのWebカメラは、全体から見ればさほど普及しているというわけではなく、数もそうですが、探すのにはそれなりの手間もかかる筈ですが、今回の攻撃に利用されたデバイスの数は数千、その程度の数を満たすには十分であり、またWebカメラの権限などはまずユーザは一々チェックせず、従って発覚もし難いため、ある程度時間を掛けて本件攻撃に必要となる程度の数を揃える事も容易く、丁度良かったという事なのでしょう。
しかし、高々数千程度でDNSを機能不全に陥らせる事が出来てしまう、というのはやはり看過し難く思われるところです。とりわけIoTの普及に伴い、本件Webカメラ類似のネットワーク通信機能を備え、かつ滅多にチェックも管理もされないだろうデバイスがこれから増加する事が見込まれるところ、当然ながらそれらのIoT機器も同様に乗っ取り・悪用の対象となり得る事は明白なわけで。
本件メーカーのした対応のようにいくらパスワードの変更を呼びかけても、それに応じない向きはどうしても相当割合残る事も間違いないだろうし、数千どころか、将来的には母数が数億のオーダーに上る事も普通に想定されるIoT機器のうち、0.1%程度が脆弱なだけで本件同様の攻撃が実現出来てしまう計算になるのだから、実際のところ極めて解決が困難で深刻な問題と言えるかもしれません。
個々のIoT機器をメーカーが責任を持って遠隔から管理する、というのも解決策の候補としてはあり得るでしょうけれど、遠隔管理するコストも相当なものになって、法人向けならいざ知らず、個人等一般向けの安価なカテゴリの機器には導入出来ないだろうし、サポート期間切れの場合や、そもそもメーカー自体が消える場合もあるでしょうから、根本的な解決にはならないだろう事も明らかです。さしあたりこれといった有効な解決策というのは見当たらないように思われるところ、さてどうするんでしょう。DNSの仕様変更とか根本的な方式面での対策が出来ればいいんでしょうが、流石に無茶もいいところだろうし、やっぱりどうしようもないですかね?うーん。
(補足?)
何か、報道の中には、本件攻撃で数千万件のIPアドレスから攻撃があった、とかいう情報が流れているようですが。今回利用されたとされるMiraiによるbotnetの規模は、トラッカーの計測結果では大多数を占めるオフラインのものを含めても150万台程度とされていて、どう考えても桁が合いません。一体どういうことなんでしょう。通常のアクセスを攻撃と混同しているとかそういう事なんでしょうか?それとも、トラッカーが把握出来ていない範囲の方が圧倒的に広いという事なんでしょうか。謎です。
(補足?その2)
上記のIPアドレス量の不自然な多さは、やはり正規アクセスと攻撃を区別出来ず両方カウントしている事によるもののようです。具体的には、本件攻撃で接続が不安定になり、それによって正規のDNSリクエストがリトライを繰り返したものと推測される分が含まれていた、と。これら正規のアクセスをサーバ側では悪意の攻撃と区別出来ず、その結果、関与したIPアドレスが数千万、というような表現になったらしいですね。紛らわしい事です。
Webcams used to attack Reddit and Twitter recalled
[law] 宇都宮連続爆発、家裁手続において被告の権利は保護されているのか
宇都宮で元自衛官の老人男性が白昼公園で爆発物を用いて自殺し、巻き添えで怪我人が複数発生した件ですけれども。徐々に経緯等の事情が明らかになりつつあるところ、法制度との関連で少しばかり思うところもありますので、軽くまとめておこうかと思います。
まず事実から。当該男性は当地在住の栗原敏勝、72歳。元自衛官で、妻と娘の3人家族。自宅から大量の花火の残骸が見つかった事から、その花火から取り出した火薬を用いて製造した爆発物を用いて今回の爆発を起こしたものと推測されています。爆発物には多数の釘等の金属片が込められており、明らかに殺傷力の確保が意図されていた事も判明している、とのこと。爆発は当人が自殺した公園ベンチ、その近くの駐車場の車、自宅の3箇所で起こされ、本人は死亡、車はその他近くの車2台を巻き添えにして焼損、自宅は全焼するとともに、本人の近くにいた通行人数名を負傷させています。本人以外の死人はなし。
その実際に本人を死に至らしめた爆発物の殺傷力の高さ、同時に3箇所で爆破を成功させた確実性に比して、他人の被害は怪我人数人に留まった点から、無差別殺人の意図はなく、主たる目的は自身の自殺と、その財産たる自宅建物及び車の破壊にあっただろう事が推測されています。その意味で、現時点では怪我人の発生について殺人未遂罪には該当せず、傷害罪が成立するに留まる可能性が高いものと考えられるところです。また、自宅建物と車の爆破については、周辺に延焼した事から、現住建造物等放火罪及び非建造物等放火罪が成立するでしょう。
これらは、間違いなく重罪ではあります。ただ、その手段の苛烈さと比すれば、その被害は相対的に小さいものに留まったと評価する事も可能でしょう。当人は、ブログの記事上で、秋葉原や南仏ニースでの事件のように、車両で人混みに突っ込むような行為に言及した事もあったというのですから、そのような大量殺人に至る手段の選択を思い留まった点は、社会にとって不幸中の幸いだったとも言えるかもしれません。
ただ、今回の主たる結果であるところの自身の自殺と、自宅建物と車の破壊とだけが目的であったとするなら、わざわざ3箇所に分けて爆発させる必要はなく、自宅内でまとめて実行する方が余程容易であっただろう筈で、目的と手段の間にズレが認められます。そこからは、そのような手段を採るだけの特別の理由、一般的には他者への当てつけや顕示欲等の存在が窺われるところですが、本件に至るまでの経緯を見ても、必ずしもそのような理由の存在が否定されるわけではないようです。
というのも、 当人の残したブログ等の記載に曰く、
・娘が精神病(統合失調症)に罹患
・娘の治療等につき妻と対立(妻は宗教的治療を主張?)
・妻は宗教に傾倒し、退職金2000万を費消
・娘を措置入院させたところ、妻がDVと訴え、シェルターへ駆け込み
・精神障害者の相談員をしていたが、不適格な行為を理由に解任される
・妻からDVを理由とした離婚訴訟(調停?)提起
・家裁に自身の主張を全面的に排斥され敗訴
・離婚訴訟全面敗訴に伴い、財産分与のため自宅・車の差押のち競売決定
・全財産ほぼ喪失の一方、年金があるため生活保護不可
等の記載があり、全体を通じて不当な扱いである旨不満が述べられています。その文書は率直に言って論理性に欠ける、稚拙かつ半ば支離滅裂にも感じられるものであって、その精神の健全性にも疑問を抱かせ、そのため真実性にも疑義を抱かざるを得ない面はありますが、その真否はさておき、当人の主観としては、家族と社会、およそ自分以外の全てに裏切られ、お前など死んでしまえ、と言われているように感じ、生きる理由を見失って絶望を感じていただろう事を読み取り得るものでした。
元自衛官という経歴と併せ、国家・社会を守るために生きてきたとの自負があったのなら、尚更のこと裏切られた等と感じる事も、一般的に言ってあり得ないものではないでしょう。その一方で、頻繁かつ大量の書き込みが存在する事から、ある種の自己顕示欲、その発露に対する積極性が比較的高く、また習慣化してもいる人物だっただろう事が示唆されます。これらの発信に対する積極性とその内容からすれば、自身を裏切った家族や社会に対し、その不満の発信としての当てつけ等を図った可能性も、それなりにあり得べきものと言えるでしょう。
無論、そのように特異な精神的傾向が存在し、多分にそれに起因して上記の犯行に至る状況に追い込まれた、というような事情があったとしても、それが放火や傷害等の罪を正当化し得るものではなく、情状の判断に影響を及ぼす可能性があるに過ぎない事は明らかです。ただ、上記の経緯のうち、決定的だっただろうDV認定から離婚調停に係る家裁の判断については、看過し難い問題があるように思われるのです。
というのは、広く周知されている通り、DV関連や離婚調停等、家庭裁判所で取り扱われる訴訟や調停の手続においては、その多くについて非訟事件につき後見的な立場を取るためとして、裁判所及び裁判官、ないし調停委員に、通常の裁判より強力な裁量権が与えられています。また原則非公開につき、一般に客観的性や公平性の保証につき不備が生じやすい面もあります。調停委員による偏った判断や思い込み、それに基づく暴言等も、本来ならあってはならない事ですが、非公開である時点でその防止は十分とは言えず、委員の性向や状況等により、しばしば起こり得るものであろう事は否めません。無論、控訴すれば公開の法廷で争う事も可能になるわけですが、委員の判断は裁判所の判断であり、それには従う他ないものと思い込んで(思い込まされて)しまう事もあるでしょうし、実際問題として一般人には困難な面は多いでしょう。
そして、最大の問題点として、とりわけDV等急迫の危険を理由とする裁判・調停の場合、その危険が存在しない事を証明し得るだけの余程の事情が無い限り、被害者の保護が優先される、という事情も存在します。すなわちそもそも公平な判断がなされる事自体が殆ど期待し得ないのです。しかも、仮にその判断が偏った不当なものであったとしても、一度調停が成立してしまえば、差押や競売も実行出来てしまうのですね。そして、経緯はどうあれ、その財産への強制執行がなされた事が、今回の自殺及び破壊行為を決断させたものと考えられるのです。
本件において、加害者側とされる栗原敏勝が家裁における調停ないし裁判の結果を承服していない事は明らかですし、本来なら上級審に進み、公平性を担保された公開の法廷における審理の下で判断を仰ぐべき案件であっただろうところ、その手続きは取られず、本人は家裁での結果が最終的な司法判断であると考え、それが今回の破滅的な自殺を含む一連の行為の契機になったものと考えられます。そうであれば、一連の経過を通じて、弁護士等を介さず自身で臨んだとされる家裁での審理、決定の手続きの際に、彼の権利の保護は十分に図られたのか、その本件事件において決定的な意味を有するだろう点について、大いに疑義があるように思われるわけです。少なくとも、その点だけは明らかにされなければならないし、もし保護が図られていなかったというのであれば、それは到底看過し難い法の不備であり、許されざる不正義といわざるを得ないだろうと。
それらの事情につき、客観的な検証に耐えうるような情報は未だ公開されず、彼の残した記録の事実性も疑問視されるところ、これらの推測がどこまで真実なのか、判断する術はありません。彼の行為が犯罪である事も事実です。ただ、現時点で、彼をただの狂人として扱い、全ての責を帰し、それで完結するものとして本件を扱う事は、到底相当とは言えないだろう、とそう思うのです。
<故栗原敏勝の残したブログ>
bwssf171のブログ
精神障がい者の子を持つ夫婦の多くは悲劇の連鎖が絶えない。
このまちが好き! 栃木県 宇都宮市 雀宮
なお、facebook等は利用不可になっているようです。
まず事実から。当該男性は当地在住の栗原敏勝、72歳。元自衛官で、妻と娘の3人家族。自宅から大量の花火の残骸が見つかった事から、その花火から取り出した火薬を用いて製造した爆発物を用いて今回の爆発を起こしたものと推測されています。爆発物には多数の釘等の金属片が込められており、明らかに殺傷力の確保が意図されていた事も判明している、とのこと。爆発は当人が自殺した公園ベンチ、その近くの駐車場の車、自宅の3箇所で起こされ、本人は死亡、車はその他近くの車2台を巻き添えにして焼損、自宅は全焼するとともに、本人の近くにいた通行人数名を負傷させています。本人以外の死人はなし。
その実際に本人を死に至らしめた爆発物の殺傷力の高さ、同時に3箇所で爆破を成功させた確実性に比して、他人の被害は怪我人数人に留まった点から、無差別殺人の意図はなく、主たる目的は自身の自殺と、その財産たる自宅建物及び車の破壊にあっただろう事が推測されています。その意味で、現時点では怪我人の発生について殺人未遂罪には該当せず、傷害罪が成立するに留まる可能性が高いものと考えられるところです。また、自宅建物と車の爆破については、周辺に延焼した事から、現住建造物等放火罪及び非建造物等放火罪が成立するでしょう。
これらは、間違いなく重罪ではあります。ただ、その手段の苛烈さと比すれば、その被害は相対的に小さいものに留まったと評価する事も可能でしょう。当人は、ブログの記事上で、秋葉原や南仏ニースでの事件のように、車両で人混みに突っ込むような行為に言及した事もあったというのですから、そのような大量殺人に至る手段の選択を思い留まった点は、社会にとって不幸中の幸いだったとも言えるかもしれません。
ただ、今回の主たる結果であるところの自身の自殺と、自宅建物と車の破壊とだけが目的であったとするなら、わざわざ3箇所に分けて爆発させる必要はなく、自宅内でまとめて実行する方が余程容易であっただろう筈で、目的と手段の間にズレが認められます。そこからは、そのような手段を採るだけの特別の理由、一般的には他者への当てつけや顕示欲等の存在が窺われるところですが、本件に至るまでの経緯を見ても、必ずしもそのような理由の存在が否定されるわけではないようです。
というのも、 当人の残したブログ等の記載に曰く、
・娘が精神病(統合失調症)に罹患
・娘の治療等につき妻と対立(妻は宗教的治療を主張?)
・妻は宗教に傾倒し、退職金2000万を費消
・娘を措置入院させたところ、妻がDVと訴え、シェルターへ駆け込み
・精神障害者の相談員をしていたが、不適格な行為を理由に解任される
・妻からDVを理由とした離婚訴訟(調停?)提起
・家裁に自身の主張を全面的に排斥され敗訴
・離婚訴訟全面敗訴に伴い、財産分与のため自宅・車の差押のち競売決定
・全財産ほぼ喪失の一方、年金があるため生活保護不可
等の記載があり、全体を通じて不当な扱いである旨不満が述べられています。その文書は率直に言って論理性に欠ける、稚拙かつ半ば支離滅裂にも感じられるものであって、その精神の健全性にも疑問を抱かせ、そのため真実性にも疑義を抱かざるを得ない面はありますが、その真否はさておき、当人の主観としては、家族と社会、およそ自分以外の全てに裏切られ、お前など死んでしまえ、と言われているように感じ、生きる理由を見失って絶望を感じていただろう事を読み取り得るものでした。
元自衛官という経歴と併せ、国家・社会を守るために生きてきたとの自負があったのなら、尚更のこと裏切られた等と感じる事も、一般的に言ってあり得ないものではないでしょう。その一方で、頻繁かつ大量の書き込みが存在する事から、ある種の自己顕示欲、その発露に対する積極性が比較的高く、また習慣化してもいる人物だっただろう事が示唆されます。これらの発信に対する積極性とその内容からすれば、自身を裏切った家族や社会に対し、その不満の発信としての当てつけ等を図った可能性も、それなりにあり得べきものと言えるでしょう。
無論、そのように特異な精神的傾向が存在し、多分にそれに起因して上記の犯行に至る状況に追い込まれた、というような事情があったとしても、それが放火や傷害等の罪を正当化し得るものではなく、情状の判断に影響を及ぼす可能性があるに過ぎない事は明らかです。ただ、上記の経緯のうち、決定的だっただろうDV認定から離婚調停に係る家裁の判断については、看過し難い問題があるように思われるのです。
というのは、広く周知されている通り、DV関連や離婚調停等、家庭裁判所で取り扱われる訴訟や調停の手続においては、その多くについて非訟事件につき後見的な立場を取るためとして、裁判所及び裁判官、ないし調停委員に、通常の裁判より強力な裁量権が与えられています。また原則非公開につき、一般に客観的性や公平性の保証につき不備が生じやすい面もあります。調停委員による偏った判断や思い込み、それに基づく暴言等も、本来ならあってはならない事ですが、非公開である時点でその防止は十分とは言えず、委員の性向や状況等により、しばしば起こり得るものであろう事は否めません。無論、控訴すれば公開の法廷で争う事も可能になるわけですが、委員の判断は裁判所の判断であり、それには従う他ないものと思い込んで(思い込まされて)しまう事もあるでしょうし、実際問題として一般人には困難な面は多いでしょう。
そして、最大の問題点として、とりわけDV等急迫の危険を理由とする裁判・調停の場合、その危険が存在しない事を証明し得るだけの余程の事情が無い限り、被害者の保護が優先される、という事情も存在します。すなわちそもそも公平な判断がなされる事自体が殆ど期待し得ないのです。しかも、仮にその判断が偏った不当なものであったとしても、一度調停が成立してしまえば、差押や競売も実行出来てしまうのですね。そして、経緯はどうあれ、その財産への強制執行がなされた事が、今回の自殺及び破壊行為を決断させたものと考えられるのです。
本件において、加害者側とされる栗原敏勝が家裁における調停ないし裁判の結果を承服していない事は明らかですし、本来なら上級審に進み、公平性を担保された公開の法廷における審理の下で判断を仰ぐべき案件であっただろうところ、その手続きは取られず、本人は家裁での結果が最終的な司法判断であると考え、それが今回の破滅的な自殺を含む一連の行為の契機になったものと考えられます。そうであれば、一連の経過を通じて、弁護士等を介さず自身で臨んだとされる家裁での審理、決定の手続きの際に、彼の権利の保護は十分に図られたのか、その本件事件において決定的な意味を有するだろう点について、大いに疑義があるように思われるわけです。少なくとも、その点だけは明らかにされなければならないし、もし保護が図られていなかったというのであれば、それは到底看過し難い法の不備であり、許されざる不正義といわざるを得ないだろうと。
それらの事情につき、客観的な検証に耐えうるような情報は未だ公開されず、彼の残した記録の事実性も疑問視されるところ、これらの推測がどこまで真実なのか、判断する術はありません。彼の行為が犯罪である事も事実です。ただ、現時点で、彼をただの狂人として扱い、全ての責を帰し、それで完結するものとして本件を扱う事は、到底相当とは言えないだろう、とそう思うのです。
<故栗原敏勝の残したブログ>
bwssf171のブログ
精神障がい者の子を持つ夫婦の多くは悲劇の連鎖が絶えない。
このまちが好き! 栃木県 宇都宮市 雀宮
なお、facebook等は利用不可になっているようです。
10/24/2016
[IT] 現行Linuxのほぼ全てに深刻なカーネル脆弱性発覚
またしてもLinuxに致命的な脆弱性が発覚しています。今回の脆弱性はカーネル自体に存在するもので、既に各主要ディストリビューションの現行カーネル用のパッチも公開されていますが、適用には相当の労力と時間が必要になるでしょう。とりわけ、組込系や各種稼働中のシステム等、容易にカーネルを変更出来ない、もしくは変更するにも膨大な検証が必要になるだろう各々のシステムの管理者の方々には、誠にご愁傷さまです。
本件脆弱性は、大まかに言えば、読み込み専用領域に権限のない一般アカウントから不正アクセス出来るようになり、それによってroot権限等も奪取されてしまうというものです。該当するカーネルバージョンは2.6.22(2007年リリース)から直近までであり、事実上パッチが当たっていないものはほぼ全てが対象という事になります。Copy On Writeの機能部分に存在する事から、Dirty Cow(汚い牛)と呼ばれているようですが、それはさておき。
Linusの説明によれば、11年前、すなわち元々の開発中の段階で本件脆弱性の存在を把握していたけれども、その時点では悪用は困難であり、修正もまた困難であった事からそのままにしていたところ、その後のカーネルの変更に伴い悪用が容易になってしまったんだそうです。
・・・これはちょっと勘弁して頂きたい(かった)ですね。事情は理解出来なくもないし、正直に説明した点は好ましくも思われますが、あまりに見通しが甘すぎたと言わざるを得ません。何よりいくら実装が困難だったと言っても、放置した期間が長すぎます。その結果としてあまりに膨大な範囲に被害を及ぼしてしまった事からすれば、その被害を受けた向きから相応に厳しい非難をされても当然と言うべきでしょうか。
ともあれ。Ubuntuにおけるパッチ適用済カーネルのバージョンは下記の通りとなっています。これより古いものはアウトにつき、可及的速やかに適用が必要ですね。既に悪用するコードも出回っているとの事ですし。
<対策済カーネルバージョン>
Ubuntu 16.10: 4.8.0-26.28
Ubuntu 16.04 LTS: 4.4.0-45.66
Ubuntu 14.04 LTS: 3.13.0-100.147
Ubuntu 12.04 LTS: 3.2.0-113.155
なお、カーネルバージョンの確認コマンドは下記。
$ uname -rv
またしてもLinuxの信用が。。。とほほ。ここ数年、毎年のように起こっている話ではあるし今更かもしれませんけれども、残念です。
Dirty COW explained: Get a moooo-ve on and patch Linux root hole
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本件脆弱性は、大まかに言えば、読み込み専用領域に権限のない一般アカウントから不正アクセス出来るようになり、それによってroot権限等も奪取されてしまうというものです。該当するカーネルバージョンは2.6.22(2007年リリース)から直近までであり、事実上パッチが当たっていないものはほぼ全てが対象という事になります。Copy On Writeの機能部分に存在する事から、Dirty Cow(汚い牛)と呼ばれているようですが、それはさておき。
Linusの説明によれば、11年前、すなわち元々の開発中の段階で本件脆弱性の存在を把握していたけれども、その時点では悪用は困難であり、修正もまた困難であった事からそのままにしていたところ、その後のカーネルの変更に伴い悪用が容易になってしまったんだそうです。
・・・これはちょっと勘弁して頂きたい(かった)ですね。事情は理解出来なくもないし、正直に説明した点は好ましくも思われますが、あまりに見通しが甘すぎたと言わざるを得ません。何よりいくら実装が困難だったと言っても、放置した期間が長すぎます。その結果としてあまりに膨大な範囲に被害を及ぼしてしまった事からすれば、その被害を受けた向きから相応に厳しい非難をされても当然と言うべきでしょうか。
ともあれ。Ubuntuにおけるパッチ適用済カーネルのバージョンは下記の通りとなっています。これより古いものはアウトにつき、可及的速やかに適用が必要ですね。既に悪用するコードも出回っているとの事ですし。
<対策済カーネルバージョン>
Ubuntu 16.10: 4.8.0-26.28
Ubuntu 16.04 LTS: 4.4.0-45.66
Ubuntu 14.04 LTS: 3.13.0-100.147
Ubuntu 12.04 LTS: 3.2.0-113.155
なお、カーネルバージョンの確認コマンドは下記。
$ uname -rv
またしてもLinuxの信用が。。。とほほ。ここ数年、毎年のように起こっている話ではあるし今更かもしれませんけれども、残念です。
Dirty COW explained: Get a moooo-ve on and patch Linux root hole
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10/22/2016
[IT biz] iPhone7も発火、車を焼損
先日あえなくご臨終となったGalaxy Note7に続き、iPhone7も発火が報告されたそうです。意外というよりは遂に来たか、という感の方が強い気もしますが、何にせよSamsungの惨事を目にしたAppleがどう対応するのか、要注目、でしょうか。
発生場所はAustralia、被害者は現地在住のMat Jones氏。同氏曰く、サーフィングのレッスンを受ける間、車の中(シフトレバー近くの小物置き近辺)に布を被せて置いていたところ、レッスン終了後に車に戻った同氏が目にしたのは、車内に煙が充満する光景だった、とのこと。そして灰の中から溶けたiPhone7が見つかり、そこが発火原因である事は明らかだったとか。
火が出てから早めに発見することが出来たからなのか、燃えたのはiPhone7と被せていた布、あと座席の一部を含む小物入れ近辺に留まっていたそうです。そこまで燃えたらもう廃車必至につき、物損面では大損害には違いなく、その点はご愁傷様と言う他ないものの、少なくとも発火が走行中ではなく、かつ無人の状態であったために人的被害が無かった点については、幸運と言えなくもないかもしれません。いずれにしろ、看過し難い重大事象と言うべき事故には違いありませんが。
その原因については、ある程度高温状態であった事は推測されるものの、iPhone7を置いていた場所は車内でも比較的内側であり、布を被せてもあった点からすれば、少なくとも直射日光に晒したわけではなく、単なる車内温度の上昇があったに過ぎないのであって、この事をもってこの種の発火の原因として社会的一般の通念に照らして許容され得るものとは到底評価し得ないだろうところです。夏に車の中に放置する、というごくありふれた普通の状況で発火のリスクがある、というのでは、ユーザにしてみれば欠陥品というしかないわけですから。
問題は、本件について、それ以外の、すなわち夏の車内温度程度の比較的緩やかな高温環境、という以外の、本件ユーザたるJones氏の過失による異常な事故、と評価し得るだけの特別の事情、理由が存在するのか否か。もしこれがあるのであれば、本件はiPhone7一般の不良とは評価されず、従ってNote7のようなリコール等も不要とされるでしょうけれども、それがないというのであれば、iPhone7一般の欠陥と評価される結果、範囲はさておき、Note7類似の惨事に発展するだろうわけです。iPhone7、ないしAppleは重大な岐路に立たされていると言えるかもしれません。
Appleは今のところ調査中としかコメントを出していません。が、Note7があんな事になった直後の今の時期に出てしまった本件ですから、誰もが連想的に不安視するだろうし、疑いの目が集まる中で下手な対応をすればNote7の二の舞に発展しかねない事も容易に想像されるところ、極めて警戒しつつ事に当たっているだろう事は間違いないでしょう。その流通する台数と期間に比した頻度を見れば、Note7より格段に発生の危険性は小さいのでしょうけれど、しかしいくら頻度が小さかろうとも、発火は致命的な欠陥につき、メーカーに求められ得る検証の内容やリコール等の対応について特段の違いはないのでしょうし、大変ですね。担当者にかかるストレスも尋常ではないでしょう。
ただ、iPhone7は初の防水対応という事で、防水仕様には往々にして放熱関連の問題が伴う事は周知の事実なのであって、その辺の疑惑も根拠なしというわけではない事も明らかなところです。そうである以上、Note7の時にSamsungがしたように、先入観や願望をその行動・判断に介在させ、楽観論に傾斜したり、結論ありきで事にあたるならば、事実認識を誤り、取り返しの付かない結果をも招きかねないものと懸念されますし、万が一にもそのような事にならぬよう、Appleには確実かつ誠実な検証及び対応を期待したいところです。どうなることやら。
iPhone 7 goes up in flames, sets fire to vehicle in Australia
[関連記事 [IT biz] 爆弾スマホは回収するのも大変]
[関連記事 [IT biz] Note7交換品も発火、拙速と杜撰の果てに消滅の危機に瀕するGalaxy]
[関連記事 [IT biz] 失敗を重ねるSamsung、爆発物製造業者と揶揄される惨状に]
発生場所はAustralia、被害者は現地在住のMat Jones氏。同氏曰く、サーフィングのレッスンを受ける間、車の中(シフトレバー近くの小物置き近辺)に布を被せて置いていたところ、レッスン終了後に車に戻った同氏が目にしたのは、車内に煙が充満する光景だった、とのこと。そして灰の中から溶けたiPhone7が見つかり、そこが発火原因である事は明らかだったとか。
火が出てから早めに発見することが出来たからなのか、燃えたのはiPhone7と被せていた布、あと座席の一部を含む小物入れ近辺に留まっていたそうです。そこまで燃えたらもう廃車必至につき、物損面では大損害には違いなく、その点はご愁傷様と言う他ないものの、少なくとも発火が走行中ではなく、かつ無人の状態であったために人的被害が無かった点については、幸運と言えなくもないかもしれません。いずれにしろ、看過し難い重大事象と言うべき事故には違いありませんが。
その原因については、ある程度高温状態であった事は推測されるものの、iPhone7を置いていた場所は車内でも比較的内側であり、布を被せてもあった点からすれば、少なくとも直射日光に晒したわけではなく、単なる車内温度の上昇があったに過ぎないのであって、この事をもってこの種の発火の原因として社会的一般の通念に照らして許容され得るものとは到底評価し得ないだろうところです。夏に車の中に放置する、というごくありふれた普通の状況で発火のリスクがある、というのでは、ユーザにしてみれば欠陥品というしかないわけですから。
問題は、本件について、それ以外の、すなわち夏の車内温度程度の比較的緩やかな高温環境、という以外の、本件ユーザたるJones氏の過失による異常な事故、と評価し得るだけの特別の事情、理由が存在するのか否か。もしこれがあるのであれば、本件はiPhone7一般の不良とは評価されず、従ってNote7のようなリコール等も不要とされるでしょうけれども、それがないというのであれば、iPhone7一般の欠陥と評価される結果、範囲はさておき、Note7類似の惨事に発展するだろうわけです。iPhone7、ないしAppleは重大な岐路に立たされていると言えるかもしれません。
Appleは今のところ調査中としかコメントを出していません。が、Note7があんな事になった直後の今の時期に出てしまった本件ですから、誰もが連想的に不安視するだろうし、疑いの目が集まる中で下手な対応をすればNote7の二の舞に発展しかねない事も容易に想像されるところ、極めて警戒しつつ事に当たっているだろう事は間違いないでしょう。その流通する台数と期間に比した頻度を見れば、Note7より格段に発生の危険性は小さいのでしょうけれど、しかしいくら頻度が小さかろうとも、発火は致命的な欠陥につき、メーカーに求められ得る検証の内容やリコール等の対応について特段の違いはないのでしょうし、大変ですね。担当者にかかるストレスも尋常ではないでしょう。
ただ、iPhone7は初の防水対応という事で、防水仕様には往々にして放熱関連の問題が伴う事は周知の事実なのであって、その辺の疑惑も根拠なしというわけではない事も明らかなところです。そうである以上、Note7の時にSamsungがしたように、先入観や願望をその行動・判断に介在させ、楽観論に傾斜したり、結論ありきで事にあたるならば、事実認識を誤り、取り返しの付かない結果をも招きかねないものと懸念されますし、万が一にもそのような事にならぬよう、Appleには確実かつ誠実な検証及び対応を期待したいところです。どうなることやら。
iPhone 7 goes up in flames, sets fire to vehicle in Australia
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10/21/2016
[note] 古いキーボードを修理・その3
随分前に修理した古いキーボードが又調子を崩してしまったので、再修理をする羽目になりました。対象はFMV-KB321、前回の故障の原因はメンブレンの配線パターンの劣化に伴う断線で、断線箇所を特定して導電塗料を塗るだけで修理出来たのですが、しばらく使っていなかった本機を久しぶりに繋げてみたところ、前回とは異なる複数のキーが応答しなくなってしまいました。スペースキーとZを含む文字キーの一番下の段がほぼ全滅。全く使えません。
折角修理したのに、とガックリしつつ、古いモノだし仕方がない、とすぐに諦めて確認してみると、今度は複数箇所、具体的にはカーソルキー周辺の三本のパターンが変色して消えかけてしまっていたのです。その断線している範囲が結構長く、導電塗料だと抵抗値が大きくなり過ぎて無理かな、と不安に思いつつ、駄目元程度のつもりで前回同様に塗料を塗ってみたのですが、やはり抵抗値が大きすぎ(数百Ω〜)るらしく、治りませんでした。
まあ、元々電子楽器等を大雑把にアースするためのものに過ぎないのだし、何cmも回路を繋げ得るようなものじゃないですよね。予想はしていたもののやはり残念。
で、諦めて代わりの方法を検討していたところ、割と最近に発売されていたらしい回路マーカーなる導電インクの一種が目に止まりました。要するに回路パターンをペンで書けるというものですが、割と大きなパターンも書けるというので、試しに一本調達して使ってみたのです。下図のような、どうにも電子工作関連らしからぬチャチなパッケージの割には結構高くて1000円強。"6歳以上"の文字がこれまたなんとも微妙な玩具的な印象を醸し出します。実際、分類としては玩具になるのかもしれませんが、思っていたのとは違う感は否めません。
なんとなくダメそうな予感を抱きつつも、まずは確認と、メンブレンのパターンに使う前に、樹脂の類への乗りだとか、抵抗値だとかを確認するために軽くテストしてみました。
結論から言えば、残念ながらアウト。理由は抵抗値の高さです。数mm程度の幅で数cmの長さのパターンだと、大体数十〜数百kΩにもなります。導電塗料より高く、これでは使えません。実際試してみましたがダメでした。無念。
ただ、このペン(インク)自体は結構面白いです。描いた直後は焦茶色がかった液体状なのですが、時間が経過すると緑がかった銀色になるのです。テストした際の写真を下記に掲載しておきます。
下1つ目の図は、テストに使った樹脂板で、既に時間が経過したパターンが銀色になっています。この左の余白にペンで縦線を描いた直後が2つ目。色はほぼ茶色です。
その数十秒後。拡大すると、かなり黒に近い焦げ茶色になっています。
さらに時間が経つと、黒味が抜けてだんだん銀色に変色していき、
最終的にはこうなるのです。描いてからここまで数分程度。
変色後の見た目はいかにもAgっぽい感じではあるので、これは金属同等、とまではいかずともそこそこ近い導電性があって、銀パターンの補修に使えるのでは、と期待を持たせてはくれたのですけれども、実際には炭素系塗料を超えるものではなく、使えませんでした。実際にキーボードのパターンの配線にも塗ってみました(下図)が、銀色になってからも抵抗値が極めて高く、当然のようにダメでした。見かけだけだったようで残念。
というわけで回路マーカーも没。これはいよいよ昔からあるところのAgペースト等の金属塗料を使うしかないのか、でもあれは流石にこんな少しの配線補修に使うには高すぎるし、と思案していたところ、もういっそ薄い金属箔を貼り付けて配線してしまおうかと思いつきまして。で、手軽なところで銅箔を使う事にしました。丁度100均で売っているらしいとの情報を得て、調達してきたのが下図。ダイソーの園芸コーナーで、植木鉢用の防虫テープとして売られていました。18mm幅で長さが1mしかありませんが、今回の目的には十分過ぎる程十分です。
これの端からカッターを用いて幅1mm強で長さ数cmずつ細く切り出し、両端付近の接着剤(導電性なし)を一部落としつつ貼り付けます。ガタガタですけど見た目はとりあえず気にしない。で、テスターで導通を確かめつつ、短絡が無いよう微調整(テープの位置をずらして配線間の隙間を確保)します。
銅箔と配線パターンの接触が結構微妙で、若干やり直し等もする羽目になりましたが、なんとか3本とも安定して導通するようになりました。
そして、上側のシートを戻します。 幸い厚みも問題なし。
ラバーシートやキー等を戻し、若干ドキドキしつつテストした結果、全てのキーが復活している事を確認し、完了と相成ったわけです。しかし、気づけば結構な手間と時間を掛けてしまいました。元々は200円かそこらのジャンク品なのに。。。それでも、このシリーズのキーボード、その最高に軽く生産性抜群のタッチには、その手間をかけるだけの価値があると思えるところではあるのだから、まあ仕方ないか、とぼやくだけなのですけれども。またそのうち別のところが壊れたりするんでしょうけど、何時まで修理出来るものやら。やれやれです。ともあれ、今回はこれでおしまい。
[関連記事 [note] 古いキーボードを修理・その2]
[関連記事 [note] 壊れた古いキーボードを修理]
折角修理したのに、とガックリしつつ、古いモノだし仕方がない、とすぐに諦めて確認してみると、今度は複数箇所、具体的にはカーソルキー周辺の三本のパターンが変色して消えかけてしまっていたのです。その断線している範囲が結構長く、導電塗料だと抵抗値が大きくなり過ぎて無理かな、と不安に思いつつ、駄目元程度のつもりで前回同様に塗料を塗ってみたのですが、やはり抵抗値が大きすぎ(数百Ω〜)るらしく、治りませんでした。
まあ、元々電子楽器等を大雑把にアースするためのものに過ぎないのだし、何cmも回路を繋げ得るようなものじゃないですよね。予想はしていたもののやはり残念。
で、諦めて代わりの方法を検討していたところ、割と最近に発売されていたらしい回路マーカーなる導電インクの一種が目に止まりました。要するに回路パターンをペンで書けるというものですが、割と大きなパターンも書けるというので、試しに一本調達して使ってみたのです。下図のような、どうにも電子工作関連らしからぬチャチなパッケージの割には結構高くて1000円強。"6歳以上"の文字がこれまたなんとも微妙な玩具的な印象を醸し出します。実際、分類としては玩具になるのかもしれませんが、思っていたのとは違う感は否めません。
なんとなくダメそうな予感を抱きつつも、まずは確認と、メンブレンのパターンに使う前に、樹脂の類への乗りだとか、抵抗値だとかを確認するために軽くテストしてみました。
結論から言えば、残念ながらアウト。理由は抵抗値の高さです。数mm程度の幅で数cmの長さのパターンだと、大体数十〜数百kΩにもなります。導電塗料より高く、これでは使えません。実際試してみましたがダメでした。無念。
ただ、このペン(インク)自体は結構面白いです。描いた直後は焦茶色がかった液体状なのですが、時間が経過すると緑がかった銀色になるのです。テストした際の写真を下記に掲載しておきます。
下1つ目の図は、テストに使った樹脂板で、既に時間が経過したパターンが銀色になっています。この左の余白にペンで縦線を描いた直後が2つ目。色はほぼ茶色です。
その数十秒後。拡大すると、かなり黒に近い焦げ茶色になっています。
さらに時間が経つと、黒味が抜けてだんだん銀色に変色していき、
最終的にはこうなるのです。描いてからここまで数分程度。
変色後の見た目はいかにもAgっぽい感じではあるので、これは金属同等、とまではいかずともそこそこ近い導電性があって、銀パターンの補修に使えるのでは、と期待を持たせてはくれたのですけれども、実際には炭素系塗料を超えるものではなく、使えませんでした。実際にキーボードのパターンの配線にも塗ってみました(下図)が、銀色になってからも抵抗値が極めて高く、当然のようにダメでした。見かけだけだったようで残念。
というわけで回路マーカーも没。これはいよいよ昔からあるところのAgペースト等の金属塗料を使うしかないのか、でもあれは流石にこんな少しの配線補修に使うには高すぎるし、と思案していたところ、もういっそ薄い金属箔を貼り付けて配線してしまおうかと思いつきまして。で、手軽なところで銅箔を使う事にしました。丁度100均で売っているらしいとの情報を得て、調達してきたのが下図。ダイソーの園芸コーナーで、植木鉢用の防虫テープとして売られていました。18mm幅で長さが1mしかありませんが、今回の目的には十分過ぎる程十分です。
これの端からカッターを用いて幅1mm強で長さ数cmずつ細く切り出し、両端付近の接着剤(導電性なし)を一部落としつつ貼り付けます。ガタガタですけど見た目はとりあえず気にしない。で、テスターで導通を確かめつつ、短絡が無いよう微調整(テープの位置をずらして配線間の隙間を確保)します。
銅箔と配線パターンの接触が結構微妙で、若干やり直し等もする羽目になりましたが、なんとか3本とも安定して導通するようになりました。
そして、上側のシートを戻します。 幸い厚みも問題なし。
ラバーシートやキー等を戻し、若干ドキドキしつつテストした結果、全てのキーが復活している事を確認し、完了と相成ったわけです。しかし、気づけば結構な手間と時間を掛けてしまいました。元々は200円かそこらのジャンク品なのに。。。それでも、このシリーズのキーボード、その最高に軽く生産性抜群のタッチには、その手間をかけるだけの価値があると思えるところではあるのだから、まあ仕方ないか、とぼやくだけなのですけれども。またそのうち別のところが壊れたりするんでしょうけど、何時まで修理出来るものやら。やれやれです。ともあれ、今回はこれでおしまい。
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10/18/2016
[note] ubuntu16.10導入 ※tcshユーザは回避推奨
半期に一度の恒例であるところのubuntuアップグレードがまたやって参りました。コードネームはYakkety Yak、おしゃべりなヤク(ヒマラヤ近辺に生息する毛長牛)さんです。
とはいえ、既にその変更の対象はクラウドはじめサーバ周りに移行して久しいところ、今回もクライアント関連については表面上は無論内部的にも殆ど変更はなく、従ってユーザ側では適用する理由に乏しいだろう事は周知の通り。また前回の16.04がLTS版だった事もあって、尚更適用を見送る向きも多いでしょう。しかし、どうせ次のLTSリリースまで全く上げないわけにもいかないだろうし、と最近の例と同じく極めて消極的ながらの適用に踏み切ったのでした。
今回の対象は、デスクトップ1台、ノート5台。全てubuntu、もしくはlubuntuの16.04LTSからのアップグレード適用です。手順はいつもの通り、update-managerの[設定]-[Ubuntuの新バージョンの通知]を[すべての新バージョン]に変更してからupdate-managerを再起動し、ダイアログに追加表示される[アップグレード]を選択します。後は画面の指示に従い、時々挿まれる確認に応答しつつ待つことしばし、で完了。
で、結論から言えば、lubuntuから上げたものはアップグレードの最後の辺りで一部パッケージのインストールに失敗し、不完全な状態になってしまうため、修正が必要になります。また、ubuntuから上げたものについても、アップグレード自体は特に問題なく完了したものの、tcshがtabキーを押しただけでクラッシュするようになる不具合に遭遇。総じて、久々に嫌な感じです。
<lubuntuのアップグレード時の一部失敗について>
まず、lubuntuの場合に問題が生じたパッケージは、lubuntu-desktopです。これのインストール時に失敗し、アップデートが不完全につき問題が生じるかもしれない旨警告が表示されます。もっとも、それをスルーすれば一応インストールは完了し、概ね普通に使用する事は可能ではあります。ただ、そのまま使い続けるにも、アップデートをしようとするとエラーが出るので、やはり支障なしとは到底言えない状態になってしまうのです。具体的には、下記のようなエラーが表示されます。
[lubuntuアップデート後、apt upgrade時エラーメッセージ]
($ sudo apt-get upgrade実行後)
パッケージリストを読み込んでいます... 完了
依存関係ツリーを作成しています
状態情報を読み取っています... 完
これらを直すためには 'apt-get -f install' を実行する必要があるかもしれません。
以下のパッケージには満たせない依存関係があります:
lubuntu-desktop : 依存: gnome-software しかし、インストールされていません
依存: language-selector-gnome しかし、インストールされていません
依存: software-properties-gtk しかし、インストールされていません
依存: system-config-printer-gnome しかし、インストールされていません
E: 未解決の依存関係があります。-f オプションを試してください。
という。割と基本的なパッケージがインストールされていない感じでとてもいけません。仕方がないので、下記コマンド。
$ sudo apt-get -f install
これをすると、ざっと数十個ものパッケージが強制適用され、その後少し使ってみたところ、目に見える問題はなくなったように見えます。が、この手の強制適用は不整合を来す可能性も懸念されるわけで、やってしまった、という敗北感が漂う結果になってしまったのでした。
これについては、やはり適用を早まったかなと。というのも、後から確認してみたところ、適用した時点ではlubuntuはまだ16.10リリースを正式にはしていなかったようなのです。トップページにはまだアナウンスが出ていませんでした。あらかじめ確認しておけばよかった、と少し後悔及び反省。ただ、今はもうリリースが公表されているので、既にこの問題は解決されているだろうとは思いますけれども。
<tcshがtabキー押下で即落ちる不具合について>
次に、ubuntuからのアップグレードで発生した不具合について。具体的には、サーバとして運用しているデスクトップ(64bit版)について、アップグレード後にターミナルが落ちるようになってしまったのです。トリガーはTABキー。要するに、コマンドプロンプト上でオートコンプリートをしようとするとsegmentation faultで端末が落ちるのです。オートコンプリートの利用はもう身に染み付いているわけで、それが禁じられた状態では実際のところまともに使えません。ユーザ側からすれば、近年稀に見る程の酷い不具合と言えるでしょう。
本当に致命的なので、嫌でも早急に対処をせざるを得なくなったわけです。とにかく原因部分の絞り込み乃至特定が必要、という事で色々試してみたところ、本現象は、xtermとかLXTerm等の端末エミュレータや、Xではないコンソール等、ターミナルの種類を問わず再現しました。この事から、アプリケーションやライブラリの問題ではなく、シェルの問題だろうと見込み、端末上で各種シェルを起動して比較しつつ確認してみると、デフォルト設定にしていたtcsh上では必ず落ちて元の端末に戻る一方、bash上では問題なく機能する事が確認されました。ということであっさり原因はtcshに確定。バージョンは下記です。
[16.10アップグレード後に落ちるtcshのバージョン]
$ tcsh --version
tcsh 6.18.01 (Astron) 2012-02-14 (x86_64-unknown-linux) options wide,nls,dl,al,kan,rh,nd,color,filec
本件問題のtcshは、以前bashに酷いセキュリティ関連バグが発生した時に代替として切り替え、以来常用して来たものです。が、流石に補完が効かないというのでは使えませんので、bashの問題も片付いた筈だし、と下記コマンドでbashに戻し、環境変数等諸々の設定等も移行してひとまず解決。
$ chsh -s /bin/bash
しかし冷や汗をかきました。心臓に悪いので勘弁して欲しいです。ていうか、何故にtcshのような、古くからあって枯れ切った、かつ重要極まりない基幹部分で、かように致命的な不具合が入り込み、極めて露見もしやすい症状の筈なのに見過ごされ、あまつさえそのまま正式リリースに乗ってしまうのか、全く以って理解し難いところなわけです。
なお、この16.10のtcshがtabキーで落ちる現象については、下記の通り8月末の時点でβテスト段階で各所でBug報告も上げられていたようなのですが、何故かリリース後の今になっても未だに対処されていません。基幹部分につき修正に困難を伴う等の事情はあるのかもしれませんが、こんな重大なバグを放置したままのリリースを正当化し得る理由とは到底考えられず、従って許容し難いものと言わざるを得ないところであり、把握していなかったというのならディストリビュータとしての最低限の注意義務を果たしていない事になるし、把握していたというのなら尚更悪質と言わざるを得ないわけで、率直に言って話にならないと思うのですよ。いずれにせよCanonicalには猛省を求めたいと思います。
tcsh crashed with SIGSEGV in __GI__rewinddir()
一応、本不具合は64bit版のみで発生するもので、32bit版では発生しません。が、64bitの方が圧倒的に多数だろう今、大した意味もないわけですけれども。
というわけで、久々に遺憾な経過を辿った今回のアップグレードですが、まあ一応修正は出来たという事で、ひとまずはこれでおしまい。やれやれです。
(追記)
これはubuntu自体の問題ではないのですけれども、16.10では、PNG画像ライブラリlibpngのバージョンが大幅に上がっていて(16.04LTSでは1.2.54、16.10では1.6.24or1.6.25)、これに伴いNULL定数等が廃止されたり、構造体メンバへの直接参照が禁止される等の変更がなされているため、それらを利用しているコードはビルドに失敗するようになっています。自身でコードを書くような人の場合は容易に対処出来るでしょうけれども、これも留意すべき点でしょうか。
(追記その2)
発生から待つこと約1ヶ月、ようやく修正版のtcshがリリース。少し不穏な感じもしますが。
[続き記事 [note] ubuntu16.10のtcshに修正版がようやくリリースされました]
[関連記事 [note] Lubuntuはやはり軽くて良いけれど]
[関連記事 [note] Ubuntu16.04LTS導入]
[関連記事 [IT] bashに最悪の脆弱性発覚]
とはいえ、既にその変更の対象はクラウドはじめサーバ周りに移行して久しいところ、今回もクライアント関連については表面上は無論内部的にも殆ど変更はなく、従ってユーザ側では適用する理由に乏しいだろう事は周知の通り。また前回の16.04がLTS版だった事もあって、尚更適用を見送る向きも多いでしょう。しかし、どうせ次のLTSリリースまで全く上げないわけにもいかないだろうし、と最近の例と同じく極めて消極的ながらの適用に踏み切ったのでした。
今回の対象は、デスクトップ1台、ノート5台。全てubuntu、もしくはlubuntuの16.04LTSからのアップグレード適用です。手順はいつもの通り、update-managerの[設定]-[Ubuntuの新バージョンの通知]を[すべての新バージョン]に変更してからupdate-managerを再起動し、ダイアログに追加表示される[アップグレード]を選択します。後は画面の指示に従い、時々挿まれる確認に応答しつつ待つことしばし、で完了。
で、結論から言えば、lubuntuから上げたものはアップグレードの最後の辺りで一部パッケージのインストールに失敗し、不完全な状態になってしまうため、修正が必要になります。また、ubuntuから上げたものについても、アップグレード自体は特に問題なく完了したものの、tcshがtabキーを押しただけでクラッシュするようになる不具合に遭遇。総じて、久々に嫌な感じです。
<lubuntuのアップグレード時の一部失敗について>
まず、lubuntuの場合に問題が生じたパッケージは、lubuntu-desktopです。これのインストール時に失敗し、アップデートが不完全につき問題が生じるかもしれない旨警告が表示されます。もっとも、それをスルーすれば一応インストールは完了し、概ね普通に使用する事は可能ではあります。ただ、そのまま使い続けるにも、アップデートをしようとするとエラーが出るので、やはり支障なしとは到底言えない状態になってしまうのです。具体的には、下記のようなエラーが表示されます。
[lubuntuアップデート後、apt upgrade時エラーメッセージ]
($ sudo apt-get upgrade実行後)
パッケージリストを読み込んでいます... 完了
依存関係ツリーを作成しています
状態情報を読み取っています... 完
これらを直すためには 'apt-get -f install' を実行する必要があるかもしれません。
以下のパッケージには満たせない依存関係があります:
lubuntu-desktop : 依存: gnome-software しかし、インストールされていません
依存: language-selector-gnome しかし、インストールされていません
依存: software-properties-gtk しかし、インストールされていません
依存: system-config-printer-gnome しかし、インストールされていません
E: 未解決の依存関係があります。-f オプションを試してください。
という。割と基本的なパッケージがインストールされていない感じでとてもいけません。仕方がないので、下記コマンド。
$ sudo apt-get -f install
これをすると、ざっと数十個ものパッケージが強制適用され、その後少し使ってみたところ、目に見える問題はなくなったように見えます。が、この手の強制適用は不整合を来す可能性も懸念されるわけで、やってしまった、という敗北感が漂う結果になってしまったのでした。
これについては、やはり適用を早まったかなと。というのも、後から確認してみたところ、適用した時点ではlubuntuはまだ16.10リリースを正式にはしていなかったようなのです。トップページにはまだアナウンスが出ていませんでした。あらかじめ確認しておけばよかった、と少し後悔及び反省。ただ、今はもうリリースが公表されているので、既にこの問題は解決されているだろうとは思いますけれども。
<tcshがtabキー押下で即落ちる不具合について>
次に、ubuntuからのアップグレードで発生した不具合について。具体的には、サーバとして運用しているデスクトップ(64bit版)について、アップグレード後にターミナルが落ちるようになってしまったのです。トリガーはTABキー。要するに、コマンドプロンプト上でオートコンプリートをしようとするとsegmentation faultで端末が落ちるのです。オートコンプリートの利用はもう身に染み付いているわけで、それが禁じられた状態では実際のところまともに使えません。ユーザ側からすれば、近年稀に見る程の酷い不具合と言えるでしょう。
本当に致命的なので、嫌でも早急に対処をせざるを得なくなったわけです。とにかく原因部分の絞り込み乃至特定が必要、という事で色々試してみたところ、本現象は、xtermとかLXTerm等の端末エミュレータや、Xではないコンソール等、ターミナルの種類を問わず再現しました。この事から、アプリケーションやライブラリの問題ではなく、シェルの問題だろうと見込み、端末上で各種シェルを起動して比較しつつ確認してみると、デフォルト設定にしていたtcsh上では必ず落ちて元の端末に戻る一方、bash上では問題なく機能する事が確認されました。ということであっさり原因はtcshに確定。バージョンは下記です。
[16.10アップグレード後に落ちるtcshのバージョン]
$ tcsh --version
tcsh 6.18.01 (Astron) 2012-02-14 (x86_64-unknown-linux) options wide,nls,dl,al,kan,rh,nd,color,filec
本件問題のtcshは、以前bashに酷いセキュリティ関連バグが発生した時に代替として切り替え、以来常用して来たものです。が、流石に補完が効かないというのでは使えませんので、bashの問題も片付いた筈だし、と下記コマンドでbashに戻し、環境変数等諸々の設定等も移行してひとまず解決。
$ chsh -s /bin/bash
しかし冷や汗をかきました。心臓に悪いので勘弁して欲しいです。ていうか、何故にtcshのような、古くからあって枯れ切った、かつ重要極まりない基幹部分で、かように致命的な不具合が入り込み、極めて露見もしやすい症状の筈なのに見過ごされ、あまつさえそのまま正式リリースに乗ってしまうのか、全く以って理解し難いところなわけです。
なお、この16.10のtcshがtabキーで落ちる現象については、下記の通り8月末の時点でβテスト段階で各所でBug報告も上げられていたようなのですが、何故かリリース後の今になっても未だに対処されていません。基幹部分につき修正に困難を伴う等の事情はあるのかもしれませんが、こんな重大なバグを放置したままのリリースを正当化し得る理由とは到底考えられず、従って許容し難いものと言わざるを得ないところであり、把握していなかったというのならディストリビュータとしての最低限の注意義務を果たしていない事になるし、把握していたというのなら尚更悪質と言わざるを得ないわけで、率直に言って話にならないと思うのですよ。いずれにせよCanonicalには猛省を求めたいと思います。
tcsh crashed with SIGSEGV in __GI__rewinddir()
一応、本不具合は64bit版のみで発生するもので、32bit版では発生しません。が、64bitの方が圧倒的に多数だろう今、大した意味もないわけですけれども。
というわけで、久々に遺憾な経過を辿った今回のアップグレードですが、まあ一応修正は出来たという事で、ひとまずはこれでおしまい。やれやれです。
(追記)
これはubuntu自体の問題ではないのですけれども、16.10では、PNG画像ライブラリlibpngのバージョンが大幅に上がっていて(16.04LTSでは1.2.54、16.10では1.6.24or1.6.25)、これに伴いNULL定数等が廃止されたり、構造体メンバへの直接参照が禁止される等の変更がなされているため、それらを利用しているコードはビルドに失敗するようになっています。自身でコードを書くような人の場合は容易に対処出来るでしょうけれども、これも留意すべき点でしょうか。
(追記その2)
発生から待つこと約1ヶ月、ようやく修正版のtcshがリリース。少し不穏な感じもしますが。
[続き記事 [note] ubuntu16.10のtcshに修正版がようやくリリースされました]
[関連記事 [note] Lubuntuはやはり軽くて良いけれど]
[関連記事 [note] Ubuntu16.04LTS導入]
[関連記事 [IT] bashに最悪の脆弱性発覚]
10/17/2016
[note] 今更ながらLooxUのzif-msata変換基板によるssd換装
をしました。ご存知の方が殆どでしょうが、LooxUは2008年頃に発売された、今となっては殆ど見かけなくなったところの物理キーボードを備えたクラムシェル型の超小型PCです。その物理キーボードによるユーザビリティの高さから、タブレット類に取って代わられた今でもちょこちょこと愛用していたのですが、どうも最近、只でさえ遅いHDDのアクセス速度がさらに遅くなったようで、流石にHDDの交換が避けられない感じに。が、当然ながらLooxUのHDD接続形式のzifはもう廃れて久しく、代替品自体が入手困難かつ高価なわけで。その値段を出して交換する価値があるかというと、流石にないだろうと言わざるを得ない性能ですし、じゃあssdに換装するかとなったのです。
無論、ssdに換装と言っても、zif接続のssd自体も殆ど消え、Kingspec等の極めて割高かつ信頼性の欠片もない古いモデルが数種流通しているに過ぎませんから、自然と現行のsata等のssdをzif接続に変換して繋ぐ事になるわけです。とりわけLooxUのような小型PCの場合は、1.8インチ以内というスペースの制限から、msata接続のssdをmsata-zif変換ボードを介して接続する方法が事実上ほぼ唯一の方法となっている感じですね。
その種のmsata-zif変換ボードが流通し出して早何年、LooxUは無論、VaioPやLatitudeの4シリーズ等、その他メーカーのzif採用の各PCを含め、とうの昔から多数の換装成功事例が公表されていますから、何番煎じかもわからない位に今更の話と言うべきでしょう。ただ、このところのその辺の部品の価格、また供給状況等を見るに、msata-zif変換基盤の価格は当初の半額以下に値下がりしており、ssdの価格も同様に大幅に下がった事に加え、msata接続もまたM.2接続に取って代わられつつあり、msata接続のssdの生産・流通もまた細りつつある事も考慮すれば、その移行をするにはまずまず丁度いい時期でもあり、かつタイムリミットも迫っているのかな、と。
というわけで、部品を調達して換装する事にしたわけですが、手段自体はもう確立されていますし、今更特筆するような事は何もありません。ただ、一発ですんなり成功したわけではなく、恥ずかしくも残念な事に1回目は失敗してしまいました。何をやらかしたかというと、変換ボードのコネクタを破損させてしまったのです。なので、再度入手しなおして、2台目でようやく成功したのでした。無論理由もあるのですが、その辺の細かい注意点のメモがてら、手順を下記に記録しておこうと思います。
<換装手順:部品準備>
まず、何はともあれ部品の調達。zif-msata基盤(1台目)は、ebay経由の輸入で香港の業者から調達。送料込で$3.4位、約350円でした。到着までは2週間あまり。経験的には割と速く着いた方と言っていいでしょう。
ssdは、Plextor製のPX-128M6MVを採用。発売開始から半年も経っていない、同シリーズ中では最新のモデル。既存の成功例では、これの前世代のPX-128M5Mがよく使われているので、その実績を重視した選択です。NANDセルの構造がTLCではなくMLCという所もGood。ただ、実はこのシリーズ、128Gモデルは書き込み速度が170MB/sと、世代が新しい割には他の製品と比較しても遅い部類で、それ故にSSDの中ではあまり人気がない様子なのです。しかし、zifの転送速度が上限になる今回の換装にはむしろ明らかにオーバースペックにつき、障害にならなかったのでした。
これを、基盤に接続して基盤付属のネジで固定するわけですが、既存の報告には、ssdも基盤も剥き出しなので、場合によっては干渉したりショートしたりする危険がある、という警告も複数あるのです。そこで、これも先人に倣い、基盤の間に紙を挟んでおく事にします。用意した紙と、それを挟んだ様子は下記の通り。
結果から言えば、干渉云々は取り越し苦労で、基盤同士は全く接触していませんでした。が、まあ用心するに越したことはない、という事で、念の為紙は入れたままにします。スカスカなので、傾けたりするとすぐに落ちるような状態につき、ほぼ気休めにもならない感じなのですが。
次に、LooxUの方を準備。 背面手前側のパネルを7点のネジを外して開けます。
で、HDDを、フレキ等を壊さないように慎重に外します。
ビクビクしながら途中まで外して、実はzifコネクタが上向きで、あらかじめケーブルを外す事が可能な事に気づき、外しておくことにしました。その方が安全ですしね。ケーブル側を先に本体から外しても良いのでしょうけれども、HDDを付けたままだと変な力がかかりそうでもありましたし。
その後、フレキケーブルも外します。ただ差し込んであるだけなのですが、これを壊すと換えが効かないので、極めて慎重に。つい力を入れすぎそうになってしまいますが堪えます。
外したケーブルを、基盤に差し込みます。基盤の接点は上側のようなので、ケーブルの接点が上を向く方向で。
差し込んだ後、zifのラッチバーを下げ、 固定します。
そして、再び本体側コネクタへケーブルを差し込みます。スッカスカですね。
無論スッカスカでいいわけはないので、ウレタンシートで緩衝しつつ固定する事にします。まずはシートを1.8インチサイズに切って下に敷くだけの超適当な方法を試してみましたが、これは当然ながら横方向にはイマイチ安定しない感じで却下。左右と下にそれぞれ棒状に切って、前後左右上下から挟み込む形にしたところ、まあこれでいいかと。下記写真では作りが適当すぎて、色々ズレたりしてますけど、安定性はそこそこです。
で、やれやれ一段落、とカバーを閉め、ドキドキしながら電源を入れてみたのですが・・・これが芳しくないのです。何かというと、起動時にSSDは認識され、型番も表示されるものの、そこでフリーズしてしまうのですね。BIOS画面に入ろうとしても、そこでフリーズしてしまって入れません。
ありゃりゃ、と一旦電源を落とし、カバーを開けて確認してみたところ、zifコネクタ側のケーブルがズレて、半分程度抜けかけている状態でした。クッション類と位置合わせ等をしているうちに応力がかかり、それで抜けてしまったのでしょう。・・・で、(何回か)挿しなおしたりしたのですが、これが一向に改善しないのです。ある時は全くストレージが認識されず、ある時はSSDの名称が一部文字化けして認識されていたり。一度だけ認識された状態でBIOSに入れた事もあったのですが、その際にはssdの名称の他、容量もデタラメになってしまっていました。
これには参りました。接触不良が原因だろう事はほぼ明らかなのですが、どう対策していいのかと。何度が抜き挿ししていたところ、元々この変換ボードのzifコネクタはケーブルの噛みが緩いようなのですね。元々入っていた東芝製のHDDのコネクタと比較すると明らかに緩いのです。そこで、試しに、と若干zifコネクタを上から押してみたりしてしまった、のがいけませんでした。全く改善しない、どころか、一切認識されないようになってしまったのです。やっちまった、という事で落ち込みつつ、この日はここでお開きとなったのでした。ちなみに異常発生以降はテンパッていたため写真記録なし。
失敗は残念ではあるけれども、再調達は容易だし諦める必要もない、ともう一枚調達して再トライすることに。ebayだと安いのですが、また輸送に2週間以上かかってしまうし、その間悶々とするのも何なので、割高な事には妥協して、国内から調達しました。送料込800円強。前の2倍以上ですが、仕方ない。これでも数年前の半額以下だし、と言い訳しつつ発注。そして届いた物が下図下側。上側は1台目です。偶然か必然か、基盤のパターン、部品配置、刻印等から、QCのシールまでも全く同じ。尚更割高感が強まりますが、しかし前回の反省をそのまま反映出来るメリットもあるので、まあいいか、と割り切ります。
前回の反省点その1、ssdとケーブルの接続後に不要な応力を掛けないよう、緩衝材はあらかじめセットしておく。という事で、前回よりもう少し幅等を適切になるよう調節してウレタンシートの切れ端を貼り付けます。
で、前回同様に紙を挟みつつ、変換ボードにssdを接続。
次いでフレキケーブルの接続ですが、事前にzifコネクタを確認したところ、やはりこの個体のものも東芝のHDDのそれと比べてかなり緩いです。このままやれば、高確率で二の舞になる、と判断し、フレキケーブルの接点のない側にテープを貼り、厚みを増やしてからセットしました。東芝HDDに接続した時のように、ラッチを下げる前からそこそこ強い固定感があります。 もっとも、一度こういう規格超の厚みのケーブルを使ってしまうと、コネクタがその分さらに広げられてしまうでしょうから、このケーブル(ないし、厚みを増やしたケーブル)以外の通常のケーブルには適合しなくなってしまうデメリットもチラッと頭をよぎったのですが、もうここはこれ専用、と割り切る事にしました。使い回しを考えて失敗してては元も子もないわけですから。予備をあらかじめ準備しておくのもいいかも、とも。
で、ラッチを倒して固定。前回は画面上側がユルユルだったのが、全体に渡ってがっちり噛み込んでいい感じです。ただ、それでも東芝HDDより若干緩いかもしれないとは感じました。
ともあれ、速やかに本体にセット。前回はここからちょこちょこ動かしたのが第一の敗因だろうところ、もう二度と動かさない、位のつもりで。
素早く、丁寧にカバーを閉め、遊び等もない事を確認した後、またしてもドキドキしながら電源ON。結果は、無事認識され、かつ認識されたままBIOSに入る事も出来たのでした。型番の文字化け等もありません。ここに至ってようやく、やれやれ、と胸を撫で下ろす事が出来たのです。
この後、lubuntu(16.04LTS)のインストールと、あらかじめ退避しておいた各種設定ファイルやプログラム・ツール類の移行・導入と初期設定をし、なんとか移行を完了。使用感もまずまず。CPUの非力さと、zifの転送速度上限の縛りもあって、絶対的に爆速、というわけでは無論ないわけですが、それでも起動時間はHDDの好調時と比べても半分以下になったようですし、何より耐衝撃性が向上しました。だからと言って手荒に扱っていいわけではないけれども、移動中に利用する場合、ちょっとした衝撃で破損する懸念を抱く必要が随分と軽減された点は、とても良いと思います。
ちなみに、丁度ubuntuの16.10がリリースされたところ、 Lubuntu16.10のisoも某所に転がっていたので、最初は試しにそちらをインストールしようとしたのですが、インストール終了間際のGRUBのインストールに失敗してしまう不具合が確認されたために16.04LTSにしたのです。ちょっと無謀過ぎたと反省。やはりこういう時に色気を出して不確定要素を増やしちゃダメですね。
ともあれ。不用意な痛恨のミスで、当初の目論見から大幅に時間も手間も費用もかさんでしまった今回の換装作業ですけれども、 基盤の特性を把握するためには必要なコストだった、と全く言えなくもない気もしますし、失敗を繰り返さず、2回目で何とか修正出来た事には、消極的ながらそこそこの満足は得られたのでした。というわけで、これで今回はこれでおしまい。やれやれです。
[関連記事 [note] Lubuntuはやはり軽くて良いけれど]
[関連記事 [note] ubuntu 12.04LTS導入]
無論、ssdに換装と言っても、zif接続のssd自体も殆ど消え、Kingspec等の極めて割高かつ信頼性の欠片もない古いモデルが数種流通しているに過ぎませんから、自然と現行のsata等のssdをzif接続に変換して繋ぐ事になるわけです。とりわけLooxUのような小型PCの場合は、1.8インチ以内というスペースの制限から、msata接続のssdをmsata-zif変換ボードを介して接続する方法が事実上ほぼ唯一の方法となっている感じですね。
その種のmsata-zif変換ボードが流通し出して早何年、LooxUは無論、VaioPやLatitudeの4シリーズ等、その他メーカーのzif採用の各PCを含め、とうの昔から多数の換装成功事例が公表されていますから、何番煎じかもわからない位に今更の話と言うべきでしょう。ただ、このところのその辺の部品の価格、また供給状況等を見るに、msata-zif変換基盤の価格は当初の半額以下に値下がりしており、ssdの価格も同様に大幅に下がった事に加え、msata接続もまたM.2接続に取って代わられつつあり、msata接続のssdの生産・流通もまた細りつつある事も考慮すれば、その移行をするにはまずまず丁度いい時期でもあり、かつタイムリミットも迫っているのかな、と。
というわけで、部品を調達して換装する事にしたわけですが、手段自体はもう確立されていますし、今更特筆するような事は何もありません。ただ、一発ですんなり成功したわけではなく、恥ずかしくも残念な事に1回目は失敗してしまいました。何をやらかしたかというと、変換ボードのコネクタを破損させてしまったのです。なので、再度入手しなおして、2台目でようやく成功したのでした。無論理由もあるのですが、その辺の細かい注意点のメモがてら、手順を下記に記録しておこうと思います。
<換装手順:部品準備>
まず、何はともあれ部品の調達。zif-msata基盤(1台目)は、ebay経由の輸入で香港の業者から調達。送料込で$3.4位、約350円でした。到着までは2週間あまり。経験的には割と速く着いた方と言っていいでしょう。
ssdは、Plextor製のPX-128M6MVを採用。発売開始から半年も経っていない、同シリーズ中では最新のモデル。既存の成功例では、これの前世代のPX-128M5Mがよく使われているので、その実績を重視した選択です。NANDセルの構造がTLCではなくMLCという所もGood。ただ、実はこのシリーズ、128Gモデルは書き込み速度が170MB/sと、世代が新しい割には他の製品と比較しても遅い部類で、それ故にSSDの中ではあまり人気がない様子なのです。しかし、zifの転送速度が上限になる今回の換装にはむしろ明らかにオーバースペックにつき、障害にならなかったのでした。
これを、基盤に接続して基盤付属のネジで固定するわけですが、既存の報告には、ssdも基盤も剥き出しなので、場合によっては干渉したりショートしたりする危険がある、という警告も複数あるのです。そこで、これも先人に倣い、基盤の間に紙を挟んでおく事にします。用意した紙と、それを挟んだ様子は下記の通り。
結果から言えば、干渉云々は取り越し苦労で、基盤同士は全く接触していませんでした。が、まあ用心するに越したことはない、という事で、念の為紙は入れたままにします。スカスカなので、傾けたりするとすぐに落ちるような状態につき、ほぼ気休めにもならない感じなのですが。
次に、LooxUの方を準備。 背面手前側のパネルを7点のネジを外して開けます。
で、HDDを、フレキ等を壊さないように慎重に外します。
ビクビクしながら途中まで外して、実はzifコネクタが上向きで、あらかじめケーブルを外す事が可能な事に気づき、外しておくことにしました。その方が安全ですしね。ケーブル側を先に本体から外しても良いのでしょうけれども、HDDを付けたままだと変な力がかかりそうでもありましたし。
その後、フレキケーブルも外します。ただ差し込んであるだけなのですが、これを壊すと換えが効かないので、極めて慎重に。つい力を入れすぎそうになってしまいますが堪えます。
外したケーブルを、基盤に差し込みます。基盤の接点は上側のようなので、ケーブルの接点が上を向く方向で。
差し込んだ後、zifのラッチバーを下げ、 固定します。
そして、再び本体側コネクタへケーブルを差し込みます。スッカスカですね。
無論スッカスカでいいわけはないので、ウレタンシートで緩衝しつつ固定する事にします。まずはシートを1.8インチサイズに切って下に敷くだけの超適当な方法を試してみましたが、これは当然ながら横方向にはイマイチ安定しない感じで却下。左右と下にそれぞれ棒状に切って、前後左右上下から挟み込む形にしたところ、まあこれでいいかと。下記写真では作りが適当すぎて、色々ズレたりしてますけど、安定性はそこそこです。
で、やれやれ一段落、とカバーを閉め、ドキドキしながら電源を入れてみたのですが・・・これが芳しくないのです。何かというと、起動時にSSDは認識され、型番も表示されるものの、そこでフリーズしてしまうのですね。BIOS画面に入ろうとしても、そこでフリーズしてしまって入れません。
ありゃりゃ、と一旦電源を落とし、カバーを開けて確認してみたところ、zifコネクタ側のケーブルがズレて、半分程度抜けかけている状態でした。クッション類と位置合わせ等をしているうちに応力がかかり、それで抜けてしまったのでしょう。・・・で、(何回か)挿しなおしたりしたのですが、これが一向に改善しないのです。ある時は全くストレージが認識されず、ある時はSSDの名称が一部文字化けして認識されていたり。一度だけ認識された状態でBIOSに入れた事もあったのですが、その際にはssdの名称の他、容量もデタラメになってしまっていました。
これには参りました。接触不良が原因だろう事はほぼ明らかなのですが、どう対策していいのかと。何度が抜き挿ししていたところ、元々この変換ボードのzifコネクタはケーブルの噛みが緩いようなのですね。元々入っていた東芝製のHDDのコネクタと比較すると明らかに緩いのです。そこで、試しに、と若干zifコネクタを上から押してみたりしてしまった、のがいけませんでした。全く改善しない、どころか、一切認識されないようになってしまったのです。やっちまった、という事で落ち込みつつ、この日はここでお開きとなったのでした。ちなみに異常発生以降はテンパッていたため写真記録なし。
失敗は残念ではあるけれども、再調達は容易だし諦める必要もない、ともう一枚調達して再トライすることに。ebayだと安いのですが、また輸送に2週間以上かかってしまうし、その間悶々とするのも何なので、割高な事には妥協して、国内から調達しました。送料込800円強。前の2倍以上ですが、仕方ない。これでも数年前の半額以下だし、と言い訳しつつ発注。そして届いた物が下図下側。上側は1台目です。偶然か必然か、基盤のパターン、部品配置、刻印等から、QCのシールまでも全く同じ。尚更割高感が強まりますが、しかし前回の反省をそのまま反映出来るメリットもあるので、まあいいか、と割り切ります。
前回の反省点その1、ssdとケーブルの接続後に不要な応力を掛けないよう、緩衝材はあらかじめセットしておく。という事で、前回よりもう少し幅等を適切になるよう調節してウレタンシートの切れ端を貼り付けます。
で、前回同様に紙を挟みつつ、変換ボードにssdを接続。
次いでフレキケーブルの接続ですが、事前にzifコネクタを確認したところ、やはりこの個体のものも東芝のHDDのそれと比べてかなり緩いです。このままやれば、高確率で二の舞になる、と判断し、フレキケーブルの接点のない側にテープを貼り、厚みを増やしてからセットしました。東芝HDDに接続した時のように、ラッチを下げる前からそこそこ強い固定感があります。 もっとも、一度こういう規格超の厚みのケーブルを使ってしまうと、コネクタがその分さらに広げられてしまうでしょうから、このケーブル(ないし、厚みを増やしたケーブル)以外の通常のケーブルには適合しなくなってしまうデメリットもチラッと頭をよぎったのですが、もうここはこれ専用、と割り切る事にしました。使い回しを考えて失敗してては元も子もないわけですから。予備をあらかじめ準備しておくのもいいかも、とも。
で、ラッチを倒して固定。前回は画面上側がユルユルだったのが、全体に渡ってがっちり噛み込んでいい感じです。ただ、それでも東芝HDDより若干緩いかもしれないとは感じました。
ともあれ、速やかに本体にセット。前回はここからちょこちょこ動かしたのが第一の敗因だろうところ、もう二度と動かさない、位のつもりで。
素早く、丁寧にカバーを閉め、遊び等もない事を確認した後、またしてもドキドキしながら電源ON。結果は、無事認識され、かつ認識されたままBIOSに入る事も出来たのでした。型番の文字化け等もありません。ここに至ってようやく、やれやれ、と胸を撫で下ろす事が出来たのです。
この後、lubuntu(16.04LTS)のインストールと、あらかじめ退避しておいた各種設定ファイルやプログラム・ツール類の移行・導入と初期設定をし、なんとか移行を完了。使用感もまずまず。CPUの非力さと、zifの転送速度上限の縛りもあって、絶対的に爆速、というわけでは無論ないわけですが、それでも起動時間はHDDの好調時と比べても半分以下になったようですし、何より耐衝撃性が向上しました。だからと言って手荒に扱っていいわけではないけれども、移動中に利用する場合、ちょっとした衝撃で破損する懸念を抱く必要が随分と軽減された点は、とても良いと思います。
ちなみに、丁度ubuntuの16.10がリリースされたところ、 Lubuntu16.10のisoも某所に転がっていたので、最初は試しにそちらをインストールしようとしたのですが、インストール終了間際のGRUBのインストールに失敗してしまう不具合が確認されたために16.04LTSにしたのです。ちょっと無謀過ぎたと反省。やはりこういう時に色気を出して不確定要素を増やしちゃダメですね。
ともあれ。不用意な痛恨のミスで、当初の目論見から大幅に時間も手間も費用もかさんでしまった今回の換装作業ですけれども、 基盤の特性を把握するためには必要なコストだった、と全く言えなくもない気もしますし、失敗を繰り返さず、2回目で何とか修正出来た事には、消極的ながらそこそこの満足は得られたのでした。というわけで、これで今回はこれでおしまい。やれやれです。
[関連記事 [note] Lubuntuはやはり軽くて良いけれど]
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10/15/2016
[biz law] 消防無線設備の談合でNEC,富士通ゼネ、沖電気等5社摘発
既に定例化している感もある公取による談合の摘発ですが、今回は全国の各自治体発注の消防無線設備だそうです。多数の官公庁からそこそこ規模のある継続的な需要が継続する一方、製品の分野的に殆ど革新らしい革新もないため入札候補企業が固定的になり、また需要の増減もないために入札が純粋な価格競争になることから、典型的に談合が起こりやすい類の分野です。現時点では容疑の段階であり、まだ異議申立等の余地が残されているとはいえ、黒である事は確実と言えるでしょう。
談合に加わったとされる企業は、NEC、富士通ゼネラル、沖電気、日本無線、日立国際。なんというか、いかにもいつものメンツというか、懲りない面々が並んでいます。
内容といい、顔ぶれといい、誰もがまたか、と言うだろう既視感ありあり、今更詳細を観察する気も起こさせないテンプレ通りの談合。何故にこうも繰り返されてしまうのでしょうか、とうんざりしつつ疑問を抱かざるを得ません。自動車メーカーの部品発注のような、純粋に民間同士の案件ですら頻繁に摘発がなされる昨今、公取の面前と言ってもいいような官公庁設備の調達案件でやってしまうというのは、自殺行為とすら言えるだろう愚行には違いなく、どういう経緯で及んでしまうのか、控えめに言っても理解し難く思われるところです。
おそらくは、個々の部門や担当者の事情として、そうでもしなければ組織や個人の立場を維持するために欠くべからざるノルマ的な成果が得られないだとか、そういう利益追求圧力の類が働いての事なのかもしれない、とは思いますが、しかしそれはやはり隠し通し切る事が出来て初めて意味があるものであって、摘発されれば当然に利益が無に帰す上に維持するべき立場等も失われてしまうのだから、やはり本末転倒で無意味と言う他ないところの話なわけですし。
そうは言っても、個々の企業や部門とその構成員にとっては、将来の破滅よりも現に目の前にある事情を優先してしまう、という事はあるのでしょう。そして、一度踏み出してしまえば、それを中止する事は尚更困難になるだろう事もあるのでしょう。そうであれば、談合の摘発が行われる度にうんざりしつつ思うところですが、この種の不正行為は、実際に何回か摘発されて、バレなければいい、等という考えの下で隠蔽し果せる可能性がおよそ無い事、また実行すればほぼ即座に摘発されるだろう事を実体験として叩き込み、トラウマになる位まで覚えさせるしかないのだろうな、と。本来なら望ましい事ではないし、そのためのコストも小さくはないけれど、それはやむを得ない必要なものと割り切るしかないのでしょう。というわけで、公取はじめ摘発に携わる向きの方々には、より一層、容赦ない摘発を期待したく思う次第なのです。
あと、各所散々言われている事ですが、もっと罰則を強化すべきだとも思いますね。談合での課徴金の算定率は10%とされていますが、これは一般に不正で得られる利益に満たないものと考えられます。一方、不正に得た利益分は不当利得として被害者たる自治体等に返還請求権が発生しますが、その行使には一般に個々の当事者間で訴訟のち判決を得る必要があり、回収までに相当の期間・コストが必要になる上、当然ながらその額については個別に具体的な立証が必要になるため、往々にして事実上回収困難な部分が生じる事も避けられません。従って、公取の課す課徴金は、課徴金と言いつつも、その相当部分は本来得られなかった筈の不当利得の返還を補完するものに過ぎず、それどころか不当利得分を超えない場合も多々あるだろう事は容易に想像されるところです。すなわち、実質的な課徴金の算定率は高々数%と言えるでしょう。これでは、予防等罰則としての効果は殆ど期待出来ません。罰則として機能させたいなら、せめてその2倍、予防を図るなら、露見しなかった場合に生じたであろう将来の利益も同期間分剥奪する趣旨で加えて3倍(30%)程度が妥当だろうと思いもするわけですが、さて。
消防無線談合、NECなど4社に63億円課徴金
談合に加わったとされる企業は、NEC、富士通ゼネラル、沖電気、日本無線、日立国際。なんというか、いかにもいつものメンツというか、懲りない面々が並んでいます。
内容といい、顔ぶれといい、誰もがまたか、と言うだろう既視感ありあり、今更詳細を観察する気も起こさせないテンプレ通りの談合。何故にこうも繰り返されてしまうのでしょうか、とうんざりしつつ疑問を抱かざるを得ません。自動車メーカーの部品発注のような、純粋に民間同士の案件ですら頻繁に摘発がなされる昨今、公取の面前と言ってもいいような官公庁設備の調達案件でやってしまうというのは、自殺行為とすら言えるだろう愚行には違いなく、どういう経緯で及んでしまうのか、控えめに言っても理解し難く思われるところです。
おそらくは、個々の部門や担当者の事情として、そうでもしなければ組織や個人の立場を維持するために欠くべからざるノルマ的な成果が得られないだとか、そういう利益追求圧力の類が働いての事なのかもしれない、とは思いますが、しかしそれはやはり隠し通し切る事が出来て初めて意味があるものであって、摘発されれば当然に利益が無に帰す上に維持するべき立場等も失われてしまうのだから、やはり本末転倒で無意味と言う他ないところの話なわけですし。
そうは言っても、個々の企業や部門とその構成員にとっては、将来の破滅よりも現に目の前にある事情を優先してしまう、という事はあるのでしょう。そして、一度踏み出してしまえば、それを中止する事は尚更困難になるだろう事もあるのでしょう。そうであれば、談合の摘発が行われる度にうんざりしつつ思うところですが、この種の不正行為は、実際に何回か摘発されて、バレなければいい、等という考えの下で隠蔽し果せる可能性がおよそ無い事、また実行すればほぼ即座に摘発されるだろう事を実体験として叩き込み、トラウマになる位まで覚えさせるしかないのだろうな、と。本来なら望ましい事ではないし、そのためのコストも小さくはないけれど、それはやむを得ない必要なものと割り切るしかないのでしょう。というわけで、公取はじめ摘発に携わる向きの方々には、より一層、容赦ない摘発を期待したく思う次第なのです。
あと、各所散々言われている事ですが、もっと罰則を強化すべきだとも思いますね。談合での課徴金の算定率は10%とされていますが、これは一般に不正で得られる利益に満たないものと考えられます。一方、不正に得た利益分は不当利得として被害者たる自治体等に返還請求権が発生しますが、その行使には一般に個々の当事者間で訴訟のち判決を得る必要があり、回収までに相当の期間・コストが必要になる上、当然ながらその額については個別に具体的な立証が必要になるため、往々にして事実上回収困難な部分が生じる事も避けられません。従って、公取の課す課徴金は、課徴金と言いつつも、その相当部分は本来得られなかった筈の不当利得の返還を補完するものに過ぎず、それどころか不当利得分を超えない場合も多々あるだろう事は容易に想像されるところです。すなわち、実質的な課徴金の算定率は高々数%と言えるでしょう。これでは、予防等罰則としての効果は殆ど期待出来ません。罰則として機能させたいなら、せめてその2倍、予防を図るなら、露見しなかった場合に生じたであろう将来の利益も同期間分剥奪する趣旨で加えて3倍(30%)程度が妥当だろうと思いもするわけですが、さて。
消防無線談合、NECなど4社に63億円課徴金
10/12/2016
[IT biz] 爆弾スマホは回収するのも大変
結局、GalaxyNote7は生産中止になってしまいました。既に販売した分は全部回収し、返金や他社製品との交換等がなされるという事だそうです。あまりにも致命的な失敗を繰り返し、もはや挽回の目処すら立たないように見えた事の経緯からすれば、その事自体に驚きはなく、むしろ当然の結果というべきものであるわけですが、世界有数の事業規模を有する製品が全回収のち消滅する事態というのは前代未聞につき、後始末の方法、影響の範囲、また今後これに伴って何が起きるのか、そしてそれに対し如何なる対応が採られるのか、諸々に興味を惹かれざるを得ないのです。
さしあたって問題なのは回収の手続きですけれども、これがまた何とも言い難いというか。当然ながら回収のためにはモノを郵送する必要があるところ、発火の可能性がある危険物につき、Samsungが専用のキットを用意したそうです。段ボール箱を入れ子的に何重にも梱包する構造となっていて、その中(一番外側?)には耐熱性のものも含まれるという中々に仰々しい代物です。
しかし、何重にもなっていて外箱には耐熱性もある、とは言っても所詮は段ボール箱には違いなく、リチウムイオンバッテリーの発火・発煙に耐え得るのか、疑問を感じないではありません。流石に指示通り適切に梱包すればおよそ問題はないのでしょうけれども、やはり普通の梱包方法、また作業内容ではないし、慣れない作業を一般人が指示書を見ながら実行したとして、誤りや不備は起こりえないのか、ちょっとどころではなく不安も残るように思われるわけです。
その辺の、ちょっとした不備の可能性が気になるのは、本件回収には長時間の輸送が想定されるためです。というのも、物の性質上、輸送方法は航空便は利用出来ず、地上・海上輸送に限定されているのですね。一番外側の箱にはその旨注意書きもされています。車両による地上輸送なら長くとも一週間単位でしょうからまだいいとして、船舶での輸送となれば、月単位の長時間に及ぶ事も普通にあり得るのですから、輸送中の発火等の発生も高確率で予想されるところ、そこに梱包等に不備があれば、大惨事を起こしかねないでしょう。不備が重なれば、の話ではあるし、心配しすぎなのかもしれませんが、非常な多数の内1件でも起これば他の荷物を巻き込んで大惨事になるわけで。といって、個々の荷物を一々開封してチェックするわけにもいかないでしょうし、これはもうどうしようもないのかもしれませんけれども。
ともあれ、ただ回収するにもそんなリスクを負わなければならないというのは、自業自得とはいえ難儀な事です。加えて、ユーザの中には、危険があっても使い続けたい、として返品等を許否する向きもあるそうで、それもまた困ったものです。当人は自己責任でいいのだろうけれども、他人の命に関わるような事態が起きる前に諦めを付けて頂きたいところですね。
Samsung's crazy return kit for the Galaxy Note 7 may scare you
[前記事 [IT biz] Note7交換品も発火、拙速と杜撰の果てに消滅の危機に瀕するGalaxy]
[前々記事 [IT biz] 失敗を重ねるSamsung、爆発物製造業者と揶揄される惨状に]
さしあたって問題なのは回収の手続きですけれども、これがまた何とも言い難いというか。当然ながら回収のためにはモノを郵送する必要があるところ、発火の可能性がある危険物につき、Samsungが専用のキットを用意したそうです。段ボール箱を入れ子的に何重にも梱包する構造となっていて、その中(一番外側?)には耐熱性のものも含まれるという中々に仰々しい代物です。
しかし、何重にもなっていて外箱には耐熱性もある、とは言っても所詮は段ボール箱には違いなく、リチウムイオンバッテリーの発火・発煙に耐え得るのか、疑問を感じないではありません。流石に指示通り適切に梱包すればおよそ問題はないのでしょうけれども、やはり普通の梱包方法、また作業内容ではないし、慣れない作業を一般人が指示書を見ながら実行したとして、誤りや不備は起こりえないのか、ちょっとどころではなく不安も残るように思われるわけです。
その辺の、ちょっとした不備の可能性が気になるのは、本件回収には長時間の輸送が想定されるためです。というのも、物の性質上、輸送方法は航空便は利用出来ず、地上・海上輸送に限定されているのですね。一番外側の箱にはその旨注意書きもされています。車両による地上輸送なら長くとも一週間単位でしょうからまだいいとして、船舶での輸送となれば、月単位の長時間に及ぶ事も普通にあり得るのですから、輸送中の発火等の発生も高確率で予想されるところ、そこに梱包等に不備があれば、大惨事を起こしかねないでしょう。不備が重なれば、の話ではあるし、心配しすぎなのかもしれませんが、非常な多数の内1件でも起これば他の荷物を巻き込んで大惨事になるわけで。といって、個々の荷物を一々開封してチェックするわけにもいかないでしょうし、これはもうどうしようもないのかもしれませんけれども。
ともあれ、ただ回収するにもそんなリスクを負わなければならないというのは、自業自得とはいえ難儀な事です。加えて、ユーザの中には、危険があっても使い続けたい、として返品等を許否する向きもあるそうで、それもまた困ったものです。当人は自己責任でいいのだろうけれども、他人の命に関わるような事態が起きる前に諦めを付けて頂きたいところですね。
Samsung's crazy return kit for the Galaxy Note 7 may scare you
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10/06/2016
[IT biz] Note7交換品も発火、拙速と杜撰の果てに消滅の危機に瀕するGalaxy
発火炎上を繰り返して総交換中のSamsung製爆弾スマホ、GalaxyNote7がまたしても火と煙を吹いたんだそうで。それも交換済のものが、飛行機の中で。Samsungは無論、ユーザも飛行機の関係者も含め、誰にとっても最悪な話と言えるでしょう。巻き込まれた方々はご愁傷さまです。
貧乏くじを引いてしまい、当然に緊急着陸する羽目になったのはSouthwest Airlines機。乗り合わせた乗客も含めて大損害&大迷惑再び、というわけですが、残念ながらこれも予想通りの結果、というのがまた。というのも、前回の記事中でも述べた通り、今回の交換対応は問題の発覚から交換の半分完了までおよそ2週間と、調査や対策の検討に費やされただろう期間があまりに短すぎました。そのことから、おそらくは本来必須の筈の十分な原因調査、またそれに基いた設計変更、それらの検証等まで、およそこの種の不具合の対応に欠かす事の出来ない、技術面での対応が満足に行われていないのでは、と推測され、従って問題は解決されておらず、再発の可能性も高いものと懸念される状況にあったからです。
今回の再発は、まさにその懸念を裏付けるものと言えるでしょう。すなわち必然の結果であり、いわんこっちゃない、と呆れている向きも多いのではないでしょうか。その発生場所が、およそ最も被害が甚大になるだろう飛行機の中で起こった事については、不運だったとも言えるでしょうけれども、発生自体はむしろ予想通りと言うべきところなわけです。
これでSamsungはいよいよ追い込まれました。回復も極めて困難だろう深刻な信用の喪失は言うに及ばず、再交換するにしろ、販売継続を諦めて返金するにしろ、数千億単位の費用が追加で必要になるわけですし、何より同社の中核たるスマホ販売事業の中でも最主力と位置づける機種が、その看板ブランドごと消滅してしまったとも評価し得る惨事に至ってしまったのですから。
仮に諦めず再交換を目指すにしても、これから本来の対策を採るには相当な時間がかかります。その間大半のユーザが待っていてくれるわけもなく、膨大なユーザの流出、また仮に繋ぎ止めるにしても、そのためには相当な補償の負担も避けられないでしょう。その上、これまでの経緯からして、おそらくはSamsung自身、まだ根本的な原因の特定は出来ておらず、またその解決の目処も立っていないものと推測されます。これらの状況を総合すれば、いくら巨人Samsungと言えど、本件に関しては流石に詰んでいるものと考えざるを得ません。
ただ、本件含め、一連の発火爆発の頻発を通じて、今の所は死人が出ていない事だけは、かろうじて不幸中の幸いと言えなくもないでしょうか。死者や重傷者が出ておらず、金銭的な補償で取り返しが付くだろう今のうちに、Samsungには、自分たちが如何な無謀を働いたのか、ユーザや社会を危険に晒したのか、よくよく認識の上、深く反省して頂きたいと思う次第です。無理なものはやはり無理、その事を理解していれば、このような事態には至らなかった筈なのですから。
とりあえず、崩壊してしまったGalaxyブランドの回復は客観的に見て殆ど不可能にも思われるところ、もうすっぱり廃止して、別のブランドを立ち上げた方がいいんじゃないかと。といっても、揃ってクビがかかってるだろうSamsung内の責任者達はそう潔く諦めるのも難しいだろうし、悪あがきを続けた挙句の果てにより重大な事故が連発、というような最悪の展開になる可能性の方がむしろ高いだろうとも予想出来てしまうんですけれどもね。困ったものです。
(追記)
そして一週間と経たず2件目。
Samsung Galaxy Note 7: Second 'safe' replacement catches fire
今度は米Kentucky州の民家で、夜間に充電のためGalaxyNote7を電源に繋いでいたところ、所有者が目覚めると部屋に煙が充満していたんだそうです。「死ぬかと思った」とのコメント。そりゃそうでしょう。恐ろしや。
(追記その2)
2件目の発生でようやく観念したのか、Samsungが生産を停止したそうです。再開の目処はまずもって立っていないでしょうし、丁度、強力な競合となるだろうgoogleのPixelが発表された直後でもあるし、一気にユーザが流れるだろう事も考えると、このまま終息しちゃうかもしれませんね。安全面のリスクを軽視した自業自得だし、まだ復活の可能性も完全に皆無になったというわけではないでしょうけれども、それにしてもこれだけの規模を誇った事業がわずか1ヶ月程度で本当に終わりかねないところまで行ってしまうとは。まさに一寸先は闇、コンシューマ事業の恐ろしさを改めて示す教訓となった、と言えるかもしれません。
Samsung halts production of the Galaxy Note 7
ところで、これでSamsungの経営面への相当の規模・期間に及ぶ悪影響が避けられない事も確定したものと言ってよいだろうところですけれども、同社に極度に依存している事で知られる韓国の経済は大丈夫なんでしょうか。折悪しく海運大手も破綻したところですし、芳しいとは言えないだろう同国の自動車産業の業績等も併せて見ると、問題ないわけはないのでしょうけれども。
(追記その3)
結局、全回収で返金・他社製品へ交換だそうです。というわけで終了。キャリアに販売許否されたのが決定打になったようです。しかし回収するのも大変な感じですね。
[続き記事 [IT biz] 爆弾スマホは回収するのも大変]
[前記事 [IT biz] 失敗を重ねるSamsung、爆発物製造業者と揶揄される惨状に]
貧乏くじを引いてしまい、当然に緊急着陸する羽目になったのはSouthwest Airlines機。乗り合わせた乗客も含めて大損害&大迷惑再び、というわけですが、残念ながらこれも予想通りの結果、というのがまた。というのも、前回の記事中でも述べた通り、今回の交換対応は問題の発覚から交換の半分完了までおよそ2週間と、調査や対策の検討に費やされただろう期間があまりに短すぎました。そのことから、おそらくは本来必須の筈の十分な原因調査、またそれに基いた設計変更、それらの検証等まで、およそこの種の不具合の対応に欠かす事の出来ない、技術面での対応が満足に行われていないのでは、と推測され、従って問題は解決されておらず、再発の可能性も高いものと懸念される状況にあったからです。
今回の再発は、まさにその懸念を裏付けるものと言えるでしょう。すなわち必然の結果であり、いわんこっちゃない、と呆れている向きも多いのではないでしょうか。その発生場所が、およそ最も被害が甚大になるだろう飛行機の中で起こった事については、不運だったとも言えるでしょうけれども、発生自体はむしろ予想通りと言うべきところなわけです。
これでSamsungはいよいよ追い込まれました。回復も極めて困難だろう深刻な信用の喪失は言うに及ばず、再交換するにしろ、販売継続を諦めて返金するにしろ、数千億単位の費用が追加で必要になるわけですし、何より同社の中核たるスマホ販売事業の中でも最主力と位置づける機種が、その看板ブランドごと消滅してしまったとも評価し得る惨事に至ってしまったのですから。
仮に諦めず再交換を目指すにしても、これから本来の対策を採るには相当な時間がかかります。その間大半のユーザが待っていてくれるわけもなく、膨大なユーザの流出、また仮に繋ぎ止めるにしても、そのためには相当な補償の負担も避けられないでしょう。その上、これまでの経緯からして、おそらくはSamsung自身、まだ根本的な原因の特定は出来ておらず、またその解決の目処も立っていないものと推測されます。これらの状況を総合すれば、いくら巨人Samsungと言えど、本件に関しては流石に詰んでいるものと考えざるを得ません。
ただ、本件含め、一連の発火爆発の頻発を通じて、今の所は死人が出ていない事だけは、かろうじて不幸中の幸いと言えなくもないでしょうか。死者や重傷者が出ておらず、金銭的な補償で取り返しが付くだろう今のうちに、Samsungには、自分たちが如何な無謀を働いたのか、ユーザや社会を危険に晒したのか、よくよく認識の上、深く反省して頂きたいと思う次第です。無理なものはやはり無理、その事を理解していれば、このような事態には至らなかった筈なのですから。
とりあえず、崩壊してしまったGalaxyブランドの回復は客観的に見て殆ど不可能にも思われるところ、もうすっぱり廃止して、別のブランドを立ち上げた方がいいんじゃないかと。といっても、揃ってクビがかかってるだろうSamsung内の責任者達はそう潔く諦めるのも難しいだろうし、悪あがきを続けた挙句の果てにより重大な事故が連発、というような最悪の展開になる可能性の方がむしろ高いだろうとも予想出来てしまうんですけれどもね。困ったものです。
(追記)
そして一週間と経たず2件目。
Samsung Galaxy Note 7: Second 'safe' replacement catches fire
今度は米Kentucky州の民家で、夜間に充電のためGalaxyNote7を電源に繋いでいたところ、所有者が目覚めると部屋に煙が充満していたんだそうです。「死ぬかと思った」とのコメント。そりゃそうでしょう。恐ろしや。
(追記その2)
2件目の発生でようやく観念したのか、Samsungが生産を停止したそうです。再開の目処はまずもって立っていないでしょうし、丁度、強力な競合となるだろうgoogleのPixelが発表された直後でもあるし、一気にユーザが流れるだろう事も考えると、このまま終息しちゃうかもしれませんね。安全面のリスクを軽視した自業自得だし、まだ復活の可能性も完全に皆無になったというわけではないでしょうけれども、それにしてもこれだけの規模を誇った事業がわずか1ヶ月程度で本当に終わりかねないところまで行ってしまうとは。まさに一寸先は闇、コンシューマ事業の恐ろしさを改めて示す教訓となった、と言えるかもしれません。
Samsung halts production of the Galaxy Note 7
ところで、これでSamsungの経営面への相当の規模・期間に及ぶ悪影響が避けられない事も確定したものと言ってよいだろうところですけれども、同社に極度に依存している事で知られる韓国の経済は大丈夫なんでしょうか。折悪しく海運大手も破綻したところですし、芳しいとは言えないだろう同国の自動車産業の業績等も併せて見ると、問題ないわけはないのでしょうけれども。
(追記その3)
結局、全回収で返金・他社製品へ交換だそうです。というわけで終了。キャリアに販売許否されたのが決定打になったようです。しかし回収するのも大変な感じですね。
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[前記事 [IT biz] 失敗を重ねるSamsung、爆発物製造業者と揶揄される惨状に]
[biz] 富士通PC事業はLenovoへ。官公庁は調達先切替か
宙ぶらりんだった富士通のPC事業の行き先が、Lenovoにほぼ決まったんだそうで。
富士通のPC事業が不振と言われ、リストラ対象と見做され続けて何年経ったでしょうか。昨年の分社化で既にその実行は決定的になっていて、実際国内3社で交渉のち破談、という事もありましたから、今更驚きも何もなく、ようやく決まったか、といった受け止め方をした向きが多いのではないでしょうか。NECと同じ道を歩んだというのには、色々と思うところがある人も多いでしょうけれど、実績のある話でもあるので、理解が得られないという事も殆どないでしょう。というより、当初目論見、即破談したところの国内メーカー間での合併ではなく、世界全体でHPとトップシェアを競うLenovoとの合併という選択は、既に技術的には枯れて久しく、純粋にスケールが競争力の大部分を占めるPC市場にあっては、むしろ自然なところと言うべきでしょうか。元々、東芝ともかくとしてVAIOとの合併は割と意味不明だったのですし。
ただ、合理的な面ばかりというわけではなく、色々と悩ましい面も多々あるのであって。というのも、周知の通り富士通は官公庁向けに大きなシェアを持っていますが、その主たる理由は国内大手メーカーという点に拠っていたわけです。機密等情報管理の観点しかり、公共事業的な意味合いしかり。その点、Lenovoは真逆です。
特に情報管理云々の点からいえば、国家ぐるみのスパイ活動の本拠地中国、その手足となって過去から現在に至るまでの悪行の数々を繰り返したLenovoは、忌避されるべきメーカーの筆頭と言えます。また当然ながら中国資本ですから、公共事業の観点から見ても最もあり得ない選択肢と言えてしまうわけです。普通に考えれば、少なくとも行政周り等は調達先の変更を検討せざるを得ないでしょうけれども、さてどうするんでしょうね?東芝等の競合メーカーにとってはシェア獲得の絶好の機会、という事になるんでしょうか。もしそうなれば、少し皮肉な話と言えるのかもしれません。
ともあれ。Lenovoの下には、既に吸収済の旧IBM,旧NECに富士通、とPCの繁栄期の国内主要ブランドが3社分も集まった事になります。シェアだけで言えば当時を含め、当然に5割を超えますね。さて残る国内メーカー、すなわち東芝、VAIO、Panasonicの3社はいつまで抗えるのでしょうか。最初から小規模ニッチ特化のPanasonicはともかく、東芝とVAIOは普通に競合しているわけだし、独立するにせよ2社合併するにせよ、状況は大して変わらず、極めて厳しいだろう事は明らかなのですけれども、さて。
あと、富士通のPC部門には、旧Siemensであるところの海外ビジネスも含まれる筈ですが、そこの扱いはどうなるんでしょう。一緒にLenovo行き?であれば、EU等でも国内官公庁等と同様の問題が生じる可能性はあるという事になります。もっとも、EUからすればFujitsu自体が外資だし、それが別の外資に替わるというだけの事で、さほど違いがあるわけでもないのかもしれませんけれども。ただ、色んな所で調達禁止になっている中国系、しかもLenovoですから流石にそういうわけにもいかないでしょうか。こちらもどうなることやら。 あっちもこっちも難儀なことで、誠にご愁傷さまです。
[関連記事 [biz] 富士通・東芝・VAIOのPC事業統合破談]
[関連記事 [biz] NECがPC事業をlenovoに譲渡]
[関連記事 [IT] Lenovo製PCのスパイウェアsuperfish疑惑確定]
[関連記事 [PC law] 全Thinkpadにユーザ情報収集プロセス発覚]
富士通のPC事業が不振と言われ、リストラ対象と見做され続けて何年経ったでしょうか。昨年の分社化で既にその実行は決定的になっていて、実際国内3社で交渉のち破談、という事もありましたから、今更驚きも何もなく、ようやく決まったか、といった受け止め方をした向きが多いのではないでしょうか。NECと同じ道を歩んだというのには、色々と思うところがある人も多いでしょうけれど、実績のある話でもあるので、理解が得られないという事も殆どないでしょう。というより、当初目論見、即破談したところの国内メーカー間での合併ではなく、世界全体でHPとトップシェアを競うLenovoとの合併という選択は、既に技術的には枯れて久しく、純粋にスケールが競争力の大部分を占めるPC市場にあっては、むしろ自然なところと言うべきでしょうか。元々、東芝ともかくとしてVAIOとの合併は割と意味不明だったのですし。
ただ、合理的な面ばかりというわけではなく、色々と悩ましい面も多々あるのであって。というのも、周知の通り富士通は官公庁向けに大きなシェアを持っていますが、その主たる理由は国内大手メーカーという点に拠っていたわけです。機密等情報管理の観点しかり、公共事業的な意味合いしかり。その点、Lenovoは真逆です。
特に情報管理云々の点からいえば、国家ぐるみのスパイ活動の本拠地中国、その手足となって過去から現在に至るまでの悪行の数々を繰り返したLenovoは、忌避されるべきメーカーの筆頭と言えます。また当然ながら中国資本ですから、公共事業の観点から見ても最もあり得ない選択肢と言えてしまうわけです。普通に考えれば、少なくとも行政周り等は調達先の変更を検討せざるを得ないでしょうけれども、さてどうするんでしょうね?東芝等の競合メーカーにとってはシェア獲得の絶好の機会、という事になるんでしょうか。もしそうなれば、少し皮肉な話と言えるのかもしれません。
ともあれ。Lenovoの下には、既に吸収済の旧IBM,旧NECに富士通、とPCの繁栄期の国内主要ブランドが3社分も集まった事になります。シェアだけで言えば当時を含め、当然に5割を超えますね。さて残る国内メーカー、すなわち東芝、VAIO、Panasonicの3社はいつまで抗えるのでしょうか。最初から小規模ニッチ特化のPanasonicはともかく、東芝とVAIOは普通に競合しているわけだし、独立するにせよ2社合併するにせよ、状況は大して変わらず、極めて厳しいだろう事は明らかなのですけれども、さて。
あと、富士通のPC部門には、旧Siemensであるところの海外ビジネスも含まれる筈ですが、そこの扱いはどうなるんでしょう。一緒にLenovo行き?であれば、EU等でも国内官公庁等と同様の問題が生じる可能性はあるという事になります。もっとも、EUからすればFujitsu自体が外資だし、それが別の外資に替わるというだけの事で、さほど違いがあるわけでもないのかもしれませんけれども。ただ、色んな所で調達禁止になっている中国系、しかもLenovoですから流石にそういうわけにもいかないでしょうか。こちらもどうなることやら。 あっちもこっちも難儀なことで、誠にご愁傷さまです。
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10/04/2016
[biz law] Amazonの電子書籍読み放題における人気作品除外の違法性について
Amazonの電子書籍読み放題サービスKindle Unlimitedにおいて、人気書籍等が突然サービスの対象外とされる措置が乱発され、ユーザと出版社双方から強い批判がなされている件ですけれども。これまでは書籍単位だったのが、今度は出版社単位で除外されるようになったとかで、講談社から提供されていた作品が軒並み消えているそうです。
当然ながら、これにより、ユーザはこれまで読むことが出来ていた当該書籍を読めなくなり、また出版社は将来に渡って継続的に得られる筈だった収入を失う事になってしまっていると。対象が人気作品という点からすれば、影響を受けたユーザは相当な割合になるでしょうし、同時に出版社の失った、将来得る事が期待された収入の額も相当なものになっただろう事も間違いないでしょう。そりゃ怒るに決まってますし、それでは済まされない向きも当然多数あるでしょう。常識的にはそんな事は無理だ、と誰もが思い躊躇うだろう所業ですが、倫理その他諸々の壁を無視して平然と実行してしまえる辺りは流石ブラックの親玉Amazon、とある種の感心を少しだけ抱きつつ、呆れる他ないわけです。
Amazonが今回の措置を採ったそもそもの理由は、本サービスは定額制を採る一方、出版社への支払額はユーザの閲覧量に比例する形で定めていたところ、閲覧量が見積もりより多く、そのためにその支払額が収入を上回ったために発生してしまっていた損失を解消するため、との事だそうです。それが事実であれば、端的に言って事業設計の失敗から損失を出してしまったのに、それを出版社とユーザに押し付けようとしている格好になるわけですから、それは正当な理由とはとても言えず、自業自得による不当なものという他ないところ、それらの損失は、本来的に自分が被るべきものです。仮に今回の措置が正当な理由なしとは言えないものだったとしても、ユーザへは返金、出版社へは違約金が支払われて然るべきでしょうが、それすらもなしで。身勝手、理不尽にも程があるだろうというものです。
本件の問題点を、もう少し具体的に見てみるとしましょう。まず前提として、本件読み放題サービスは、Amazonとユーザ間の閲覧サービス供給契約と、Amazonと出版社間の電子書籍データ供給契約との、2件の契約関係から構成されています。それぞれの契約を分析してみれば、本件措置は、両契約ともについて、看過し難い違法性を帯びているように感じられてしまうのですが、その理由は大まかに言ってそれぞれ下記の通りかなと。
第一に、ユーザとの間の供給契約について。本契約は、あらかじめ契約の対象となる電子書籍がAmazonにより指定され、ユーザは月額980円を支払い、期間中は当該指定された電子書籍を自由に閲覧することが出来る、というものです。しかるに、一般にこの種の期間付きのサービス契約において、契約期間の途中でサービスの内容が一方的に変更される、すなわち突然書籍が読めなくなる、等という事は、ユーザ側ではおよそ想定されないところでしょう。対価は既に支払っているのですから、その期間中、対象の書籍は自由に閲覧し得るものと当然に期待するだろうところです。にもかかわらず、人気作品を多数まとめて一方的かつ突然対象外にし、閲覧不能にするという措置は、実質的にサービスの相当割合を中止したに等しく、まさにユーザの期待に反して不意打ち的に損害を被らせるものであって、たとえ約款にその種の措置が可能な旨記載があるとしても、一般的な通念及び信義則に照らして到底許され得ないものと言えるでしょう。
勿論、個々の作品の特別な事情の変更があった場合等には、当該作品がやむを得ず対象外となる事はあり得るでしょう。しかし、今回の措置のうち、当初から行われたところの、その閲覧数上位の作品を大量に除外した、という点からすれば、個々の作品毎についての特別の事情によるものとは全く考えられず、ただ単に不採算に転じたため、といった専ら事業者側にのみ責がある理由によるものであるだろう事が強く推測されるところであって。無論、ユーザ側に何らの帰責事由が認められるわけでもありません。そういった本件措置が採られるに至った事情からしても、今回の措置は到底正当とは評価され得ないものと考えざるを得ません。従って、原則としてAmazon側に債務不履行が成立し、損害を被った各ユーザに対する賠償責任等が生じて然るべきものでしょう。
次に、出版社との契約について。こちらは、その契約の内容、契約に至る経緯等が不明につき、少し慎重な考慮が必要かもしれません。一般論で言えば、契約で定められた期間中に同意なく打ち切ったというのであれば、ユーザの場合と同じく債務不履行という事になるだろうし、元々期間等が定められていなかったというのであれば、契約の内容から判断してそのような一方的な中止が為し得るものだったかどうかが問題になるでしょう。とはいえ、一般的に、事前の通告も何もなく、一方的に契約を打ち切る、というのは、やはり信義則に照らして相当とはまずもって言えないでしょうし、あまり詳細を追わずとも違法性が窺われるところなのですけれども。
少なくとも、講談社の件については、講談社の出版物を全て対象外にする等、完全に契約を解消するが如き重大な措置を採るに及んでいますから、そのような権利がAmazon側にあったのか否かが問題になるだろうところ、そんな事はまずないでしょうし、Amazonの本件措置が出版社との関係で違法と判断されるべきものである可能性は相当に高いものと考えざるを得ません。
勿論、これらの推測はあくまで推測、それも一般論によるものであって、具体的な事情の如何によってその実際の評価は様々に異なったものになり得るわけですけれども。とりわけ、本サービスでの閲覧数に応じて支払われるとされる出版社への対価と、通常の電子書籍の販売価格との差異とその程度は、本件措置の違法性の有無等を判定するについての決定的な要素となり得るでしょう。というのも、本件での対価には、まず間違いなく、一般の電子書籍販売の場合の額とは異なる、相当に安価な金額が設定されている(いた)筈ですが、これは出版社からすれば、Amazonに対して特別に販売価格を下げたのと実質的に同じなわけです。すなわち、今回の措置は、出版社から安価で書籍を仕入れ、大安売りをしておいて、一定数量以上売れたら勝手に販売をやめた、というに等しいのですね。そして、本サービスで閲覧したユーザがその後正規価格で単体の電子書籍を別途個別に購入する可能性は非常に低いでしょうから、結果として出版社としては単に安売りをさせられたのと同じ事になってしまっているのですね。それも人気作品をまとめて。それは出版社としてはたまったものではないだろうし、客観的にも不当という他ないように思われるわけです。
出版社側に生じた損害は、当該各作品を電子書籍単体として販売した場合に得られただろう販売収入額と、本件措置までに得られた閲覧収入との差額の相当部分程度、と大体そんな感じで見積もれば概ね正しいでしょうか。しかるに、本件措置を採る過程で甚だしく信義に反していること、またAmazonがその支配的立場を濫用した面も多分にあるだろう事も考慮すれば、おそらく講談社が本件の損害につき賠償を求める訴を起こしたならば、勝訴する可能性は非常に高いものと言わざるを得ないのです。
というわけで。今回のAmazonの措置には、ユーザ側、出版社側ともに違法性が非常に強く疑われるところなのですけれども。こういう、支配的立場を濫用した大手による理不尽な措置と、それに泣かされる取引先やユーザー、という構図自体はごくありふれた話ではありますが、Amazon位のシェアを保有する企業のそれとあっては社会的にも到底看過し難く、改善が強く求められるところなのです。しかるに、個々のユーザがクレームを入れても実際のところあまり意味はないだろうし、ここは講談社には頑張って他社も巻き込んで糾弾して頂いて、このところ傲慢の度をさらに強めつつあるAmazon、その企業体質の悪化に一定の歯止めをかけ、あわよくば改善が促されればと強く願う次第です。もっとも、実際のところとても難しい話なんでしょうけれどもね。
当然ながら、これにより、ユーザはこれまで読むことが出来ていた当該書籍を読めなくなり、また出版社は将来に渡って継続的に得られる筈だった収入を失う事になってしまっていると。対象が人気作品という点からすれば、影響を受けたユーザは相当な割合になるでしょうし、同時に出版社の失った、将来得る事が期待された収入の額も相当なものになっただろう事も間違いないでしょう。そりゃ怒るに決まってますし、それでは済まされない向きも当然多数あるでしょう。常識的にはそんな事は無理だ、と誰もが思い躊躇うだろう所業ですが、倫理その他諸々の壁を無視して平然と実行してしまえる辺りは流石ブラックの親玉Amazon、とある種の感心を少しだけ抱きつつ、呆れる他ないわけです。
Amazonが今回の措置を採ったそもそもの理由は、本サービスは定額制を採る一方、出版社への支払額はユーザの閲覧量に比例する形で定めていたところ、閲覧量が見積もりより多く、そのためにその支払額が収入を上回ったために発生してしまっていた損失を解消するため、との事だそうです。それが事実であれば、端的に言って事業設計の失敗から損失を出してしまったのに、それを出版社とユーザに押し付けようとしている格好になるわけですから、それは正当な理由とはとても言えず、自業自得による不当なものという他ないところ、それらの損失は、本来的に自分が被るべきものです。仮に今回の措置が正当な理由なしとは言えないものだったとしても、ユーザへは返金、出版社へは違約金が支払われて然るべきでしょうが、それすらもなしで。身勝手、理不尽にも程があるだろうというものです。
本件の問題点を、もう少し具体的に見てみるとしましょう。まず前提として、本件読み放題サービスは、Amazonとユーザ間の閲覧サービス供給契約と、Amazonと出版社間の電子書籍データ供給契約との、2件の契約関係から構成されています。それぞれの契約を分析してみれば、本件措置は、両契約ともについて、看過し難い違法性を帯びているように感じられてしまうのですが、その理由は大まかに言ってそれぞれ下記の通りかなと。
第一に、ユーザとの間の供給契約について。本契約は、あらかじめ契約の対象となる電子書籍がAmazonにより指定され、ユーザは月額980円を支払い、期間中は当該指定された電子書籍を自由に閲覧することが出来る、というものです。しかるに、一般にこの種の期間付きのサービス契約において、契約期間の途中でサービスの内容が一方的に変更される、すなわち突然書籍が読めなくなる、等という事は、ユーザ側ではおよそ想定されないところでしょう。対価は既に支払っているのですから、その期間中、対象の書籍は自由に閲覧し得るものと当然に期待するだろうところです。にもかかわらず、人気作品を多数まとめて一方的かつ突然対象外にし、閲覧不能にするという措置は、実質的にサービスの相当割合を中止したに等しく、まさにユーザの期待に反して不意打ち的に損害を被らせるものであって、たとえ約款にその種の措置が可能な旨記載があるとしても、一般的な通念及び信義則に照らして到底許され得ないものと言えるでしょう。
勿論、個々の作品の特別な事情の変更があった場合等には、当該作品がやむを得ず対象外となる事はあり得るでしょう。しかし、今回の措置のうち、当初から行われたところの、その閲覧数上位の作品を大量に除外した、という点からすれば、個々の作品毎についての特別の事情によるものとは全く考えられず、ただ単に不採算に転じたため、といった専ら事業者側にのみ責がある理由によるものであるだろう事が強く推測されるところであって。無論、ユーザ側に何らの帰責事由が認められるわけでもありません。そういった本件措置が採られるに至った事情からしても、今回の措置は到底正当とは評価され得ないものと考えざるを得ません。従って、原則としてAmazon側に債務不履行が成立し、損害を被った各ユーザに対する賠償責任等が生じて然るべきものでしょう。
次に、出版社との契約について。こちらは、その契約の内容、契約に至る経緯等が不明につき、少し慎重な考慮が必要かもしれません。一般論で言えば、契約で定められた期間中に同意なく打ち切ったというのであれば、ユーザの場合と同じく債務不履行という事になるだろうし、元々期間等が定められていなかったというのであれば、契約の内容から判断してそのような一方的な中止が為し得るものだったかどうかが問題になるでしょう。とはいえ、一般的に、事前の通告も何もなく、一方的に契約を打ち切る、というのは、やはり信義則に照らして相当とはまずもって言えないでしょうし、あまり詳細を追わずとも違法性が窺われるところなのですけれども。
少なくとも、講談社の件については、講談社の出版物を全て対象外にする等、完全に契約を解消するが如き重大な措置を採るに及んでいますから、そのような権利がAmazon側にあったのか否かが問題になるだろうところ、そんな事はまずないでしょうし、Amazonの本件措置が出版社との関係で違法と判断されるべきものである可能性は相当に高いものと考えざるを得ません。
勿論、これらの推測はあくまで推測、それも一般論によるものであって、具体的な事情の如何によってその実際の評価は様々に異なったものになり得るわけですけれども。とりわけ、本サービスでの閲覧数に応じて支払われるとされる出版社への対価と、通常の電子書籍の販売価格との差異とその程度は、本件措置の違法性の有無等を判定するについての決定的な要素となり得るでしょう。というのも、本件での対価には、まず間違いなく、一般の電子書籍販売の場合の額とは異なる、相当に安価な金額が設定されている(いた)筈ですが、これは出版社からすれば、Amazonに対して特別に販売価格を下げたのと実質的に同じなわけです。すなわち、今回の措置は、出版社から安価で書籍を仕入れ、大安売りをしておいて、一定数量以上売れたら勝手に販売をやめた、というに等しいのですね。そして、本サービスで閲覧したユーザがその後正規価格で単体の電子書籍を別途個別に購入する可能性は非常に低いでしょうから、結果として出版社としては単に安売りをさせられたのと同じ事になってしまっているのですね。それも人気作品をまとめて。それは出版社としてはたまったものではないだろうし、客観的にも不当という他ないように思われるわけです。
出版社側に生じた損害は、当該各作品を電子書籍単体として販売した場合に得られただろう販売収入額と、本件措置までに得られた閲覧収入との差額の相当部分程度、と大体そんな感じで見積もれば概ね正しいでしょうか。しかるに、本件措置を採る過程で甚だしく信義に反していること、またAmazonがその支配的立場を濫用した面も多分にあるだろう事も考慮すれば、おそらく講談社が本件の損害につき賠償を求める訴を起こしたならば、勝訴する可能性は非常に高いものと言わざるを得ないのです。
というわけで。今回のAmazonの措置には、ユーザ側、出版社側ともに違法性が非常に強く疑われるところなのですけれども。こういう、支配的立場を濫用した大手による理不尽な措置と、それに泣かされる取引先やユーザー、という構図自体はごくありふれた話ではありますが、Amazon位のシェアを保有する企業のそれとあっては社会的にも到底看過し難く、改善が強く求められるところなのです。しかるに、個々のユーザがクレームを入れても実際のところあまり意味はないだろうし、ここは講談社には頑張って他社も巻き込んで糾弾して頂いて、このところ傲慢の度をさらに強めつつあるAmazon、その企業体質の悪化に一定の歯止めをかけ、あわよくば改善が促されればと強く願う次第です。もっとも、実際のところとても難しい話なんでしょうけれどもね。
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