5/14/2013

[pol] 橋下大阪市長の慰安婦制度肯定・風俗推奨に

どうなってんでしょう。まさに末期的というか。まさか現代の、それも相当に有力な政治家の口から慰安婦制度を"必要"とまで正当化する意見を聞くことになろうとは、全く思いませんでした。

戦中の慰安婦制度の評価については元より緒論あるところ、彼の言のように慰安婦を強制された被害者ではなく自主的な職業的なそれと解釈して違法性を否定する立場自体は、正当化の論旨としては別段珍しいものではなく、むしろよく耳目にする所ではありますけれども、事例を一々検証するまでもなく慰安婦制度が軍組織と必ずしも随伴するものとは到底言えないのであって。その種の主張はあくまで個別事例における合理性肯定のための立証不可能な仮説に過ぎないわけで、根拠も何もない中、一般的に慰安婦が軍組織において必要不可欠であったとまで言い切ってしまった件の発言、その非合理性は明白なものと言わざるを得ません。

しかもその認識を大戦時のそれに対する個人的解釈に留めるならまだしも、米軍に対し風俗施設の公式な利用解禁を提案する等、現在の軍組織についてまで慰安婦の必要性を肯定し、あまつさえ普及を図る発言を繰り返すに至っては完全に論外です。当人はその後合法な風俗についての発言と釈明していますが、 それこそ建前であって、風俗の場では実態として違法な売春が横行するものである事実も認識していない筈はなく、従って風俗と言った時点で違法売春、少なくともその高い可能性が包含されていた事に疑いの余地はありません。しかるに一連の主張は、皮肉にも本人の言う通り、建前を廃した実質において、現時点では明らかに法的にも倫理的にも、少なくとも公には到底受け入れられないだろう個人的な反社会的主張となる、その事はその種の弁に長けた当人が理解していなかった筈はありません。しかし、そこまで理解は当然していただろうのに、その主張を、公の場で、公的組織に対し、公人として行う、それがどういう事なのか、どのような意味を持つか、少しでも考慮したのか。多分にそれも認識し意図した上のものである可能性は相当に高いものと推測されますけれども、その影響を鑑みれは、それは控えめに言っても信じ難い愚行と解釈する他ないのです。

その当然の帰結として、一連の主張は、あっという間に維新派の凋落を狙う政治的思惑を巻き込んでほぼ全方面から批判を受けるというか真っ向から否定され、発言者たる橋下氏、さらにその擁護を図った維新の会までもが支援者からは支持を失うと共に海外含めこれまで比較的無関心だった向きからは危険視されるという流れになっていて、得られたものは敵意だけ、に終わったようにしか見えないわけです。下記BBCのニュースでは"nationalist"とはっきり形容されて、日本で代表的な地位を占める政治家がそのように認識される事で懸念される影響、想像するのもうんざりしますが、その深刻さは残念ながら今更論ずるまでもないところです。強いて言えば一時的な関心が得られたとは言えるでしょうけれども、全く釣り合わないように思われますし、本気で意味が分かりません。政界から引退するための準備とか言われた方がまだ納得出来ます。

いずれにせよ、文字通り彼らにとっても我々にとっても百害あって一利なしな本件、速やかに責任を取って切腹なりして収拾のち無かった事にして頂きたく思う次第なのです。それが目的ならそれでいいから。

Japan WWII 'comfort women' were 'necessary' - Hashimoto

---1日経って

本人は未だ収拾を図るどころか逆に自己正当化と併せて煽り続ける始末。これまでの騒ぎとは質も規模も全く違う事態に至っているにも関わらずいつもの通りの対応で眩暈がします。海外ニュースサイトを巡回してると、至る所でどれもこれも洒落になってない内容の記事を目にせざるを得ないわけですが、安倍首相のナショナリストぶりも当然関連付けられてて、一気に悪の枢軸認定されかねない勢いです。いや仮にこれが他国の話、例えばベルリン市長とかの発言だとしたら私だってそう認定するだろうし当然の流れではあるんですが。勘弁してよもう。と言ってももうどうにもならんのでしょうけど。
Japanese Politician Says Wartime Sex Slaves Were 'Necessary'

---さらに翌日

この期に及んでまだ言うか。表現の問題ではない事は明白なのに。強弁逆ギレの挙句政府への責任転嫁を図るとかもう正気とは思えない、というか少なくとも多数からそう見做される事は避けられないでしょう。政治的には到底取り返しがつかない程に支持、その基礎までもを失っただろう事も間違いないでしょうから、他の維新の面々は今頃身の振り方について懊悩の真っ只中、といったところでしょうか。曲がりなりにも次代の担い手として嘱望された政治勢力に突如として訪れた終焉、これはすなわち日本の政治は短期的には死んだも同然と認識せざるを得ないわけで。もう目も当てられません。
橋下氏「国際感覚が乏しかったかもしれない」

---翌々日

米国をしてアングロサクソン国家と断じた上でその人種的性向を持ち出して一連の発言の正当化を図ったそうで。収束どころか真逆の暴言侮言が飛び交い、引き続き目も当てられない惨状が続いている本件ですが、本発言はとりわけ信じがたく、時代錯誤も甚だしいというかパラノイアかと本気で疑わざるを得ません。元よりナショナリストと認定された一事のみによっても政治的には致命的なところ、これによってレイシストの認定まで加わり、まさに断末魔と言うべき様相です。早急な対処すなわち解職が切に望まれるところですが、少なくとも当面は望めず、従って本件は相当の期間に渡って続いてしまうんでしょう。全てが醜悪で見るに耐えません。

---さらにしばらくして

釈明会見がほぼ無意味に終わった事を受けて大阪市議会で問責決議の運びとなったそうですが。可決後は一旦辞職して出直し選との見方が流れていて、それ自体は自然な帰結ではあるんでしょうけれども、その出元が当の本人ではなく市議会議員でもなく松井府知事というのはいささか不可解に思われるところです。政治家の進退はその活動の中で最も決定的なものであり、その性質、周囲に与える影響を考えれば軽々しく言及するべきものではありえないし、まして当人を差し置いて他人が述べるなど常軌を逸しているように見えるわけですが、どうなっちゃってんでしょう維新の会。

そういう不可解な組織事情は措くとしても、橋下市長が職責外の国政に傾倒し、特に本件にあっては自治体にとって貢献どころか無害ですらなく、逆に評価を著しく毀損したものと広く評価されている以上、問責自体はむしろ当然の成り行きと言うべきところでしょう。この体たらくでは、先日提出された兼職解禁法案も論外とみなされるのも必至だろうわけで、さらに加速度的に存在意義やら支持やら、文字通りすべてを失っていく橋下氏以下維新の会、さて秋ごろにはどうなっている事やら。

橋下氏、問責可決なら出直し市長選も 松井氏示唆