10/15/2016

[biz law] 消防無線設備の談合でNEC,富士通ゼネ、沖電気等5社摘発

既に定例化している感もある公取による談合の摘発ですが、今回は全国の各自治体発注の消防無線設備だそうです。多数の官公庁からそこそこ規模のある継続的な需要が継続する一方、製品の分野的に殆ど革新らしい革新もないため入札候補企業が固定的になり、また需要の増減もないために入札が純粋な価格競争になることから、典型的に談合が起こりやすい類の分野です。現時点では容疑の段階であり、まだ異議申立等の余地が残されているとはいえ、黒である事は確実と言えるでしょう。

談合に加わったとされる企業は、NEC、富士通ゼネラル、沖電気、日本無線、日立国際。なんというか、いかにもいつものメンツというか、懲りない面々が並んでいます。

内容といい、顔ぶれといい、誰もがまたか、と言うだろう既視感ありあり、今更詳細を観察する気も起こさせないテンプレ通りの談合。何故にこうも繰り返されてしまうのでしょうか、とうんざりしつつ疑問を抱かざるを得ません。自動車メーカーの部品発注のような、純粋に民間同士の案件ですら頻繁に摘発がなされる昨今、公取の面前と言ってもいいような官公庁設備の調達案件でやってしまうというのは、自殺行為とすら言えるだろう愚行には違いなく、どういう経緯で及んでしまうのか、控えめに言っても理解し難く思われるところです。

おそらくは、個々の部門や担当者の事情として、そうでもしなければ組織や個人の立場を維持するために欠くべからざるノルマ的な成果が得られないだとか、そういう利益追求圧力の類が働いての事なのかもしれない、とは思いますが、しかしそれはやはり隠し通し切る事が出来て初めて意味があるものであって、摘発されれば当然に利益が無に帰す上に維持するべき立場等も失われてしまうのだから、やはり本末転倒で無意味と言う他ないところの話なわけですし。

そうは言っても、個々の企業や部門とその構成員にとっては、将来の破滅よりも現に目の前にある事情を優先してしまう、という事はあるのでしょう。そして、一度踏み出してしまえば、それを中止する事は尚更困難になるだろう事もあるのでしょう。そうであれば、談合の摘発が行われる度にうんざりしつつ思うところですが、この種の不正行為は、実際に何回か摘発されて、バレなければいい、等という考えの下で隠蔽し果せる可能性がおよそ無い事、また実行すればほぼ即座に摘発されるだろう事を実体験として叩き込み、トラウマになる位まで覚えさせるしかないのだろうな、と。本来なら望ましい事ではないし、そのためのコストも小さくはないけれど、それはやむを得ない必要なものと割り切るしかないのでしょう。というわけで、公取はじめ摘発に携わる向きの方々には、より一層、容赦ない摘発を期待したく思う次第なのです。

あと、各所散々言われている事ですが、もっと罰則を強化すべきだとも思いますね。談合での課徴金の算定率は10%とされていますが、これは一般に不正で得られる利益に満たないものと考えられます。一方、不正に得た利益分は不当利得として被害者たる自治体等に返還請求権が発生しますが、その行使には一般に個々の当事者間で訴訟のち判決を得る必要があり、回収までに相当の期間・コストが必要になる上、当然ながらその額については個別に具体的な立証が必要になるため、往々にして事実上回収困難な部分が生じる事も避けられません。従って、公取の課す課徴金は、課徴金と言いつつも、その相当部分は本来得られなかった筈の不当利得の返還を補完するものに過ぎず、それどころか不当利得分を超えない場合も多々あるだろう事は容易に想像されるところです。すなわち、実質的な課徴金の算定率は高々数%と言えるでしょう。これでは、予防等罰則としての効果は殆ど期待出来ません。罰則として機能させたいなら、せめてその2倍、予防を図るなら、露見しなかった場合に生じたであろう将来の利益も同期間分剥奪する趣旨で加えて3倍(30%)程度が妥当だろうと思いもするわけですが、さて。

消防無線談合、NECなど4社に63億円課徴金