3/31/2023

[biz] Virgin Orbitが資金調達失敗でほぼ全従業員解雇

航空機を利用した衛星打ち上げ事業を手掛けている、米Virgin Orbit社が資金繰りに窮して従業員をほぼ全員解雇、事実上の破綻に追い込まれてしまったそうです。

同社は、Richard BransonのVirginグループで宇宙事業を手掛けるVirgin Galactic社のスピンオフ社ですが、売上的に当初から事業が回っているとは到底言えず、少なくとも追加出資を受けなければ運転資金も足りないという自転車操業ですらない惨状だったところ、それに加えて、少し前に主要出資者のBransonが見切りをつけ、追加出資をしない旨宣言されてしまい、あっという間に窮地に陥ってしまいました。慌ててBranson以外の新規出資者を探していた同社ですが、当然ながら出資者を見つける事は出来ず、今回の措置と相成ったわけです。普通に破綻ですね。お疲れ様でした。

同社が今後再生を目指すのか、精算してしまうのかは定かではありませんが、元々収入が無きに等しい位だったのだから、経営的には元々破綻していたと言うべきところですし、むしろよくここまで持ったと言う方が正しいのかもしれません。ろくに事業収入が得られないまま際限なく資本を食いつぶした挙句破綻した、ということで、三菱重工のMRJと似たような感じですが、一応打ち上げに成功した案件も少ないながらある点でこちらのほうがいくらかマシだった、とは言えるかもしれません。

周知の通り、ここ最近の金融環境は急激に厳しくなっています。欧米での金融緩和の終了、続いてインフレ対策のための利上げが続き、米国中心にベンチャー関係に近く、不安定なスタートアップへの資金供給を担ってきた部類の金融機関の破綻も相次いでいる。当然、この種の事業が成り立っていない、話題先行型の企業の資金調達はコストも含め極めて厳しくなっているだろうし、その事が同社の破綻の決定打になった面はあるでしょう。その意味で、運が悪かったと言えなくもないかもしれません。

しかし、そもそもの話として、追加出資が得られなければ立ち行かなくなるような事業の構造は正しいとは到底言えないわけで。需要が不安定な位なら全然ましな方で、本来淘汰されて然るべきだろう採算性の壊滅的な事業や、それ以前に事業の立ち上げが許されるべきではなかったと言わざるを得ない程に見通しが甘いものも当たり前に見られます。そんなもの、破綻して当然でしょう。ですが、そういう、耐震性能0の高層ビルのような企業が山ほどあるのが現状なのです。それらが、雪崩を打って崩れ落ちようとしている。

この種の、ただ徒に資本を食いつぶすだけの赤字事業の存在を許容してきた主たる要因であるところの、資金供給の名目の下に資金調達があまりに容易であった金融環境、そこに溜まったツケの大きさとその精算がもたらす応報の厳しさに、改めて戦慄を覚えます。しかし放置すればそれはさらに肥大化するだけである事もまた明白、そろそろ覚悟を決めるべきかと、半ば諦めとともに思う次第なのです。 

 Virgin Orbit fails to secure funding, will cease operations and lay off nearly entire workforce

3/18/2023

[sci] 新型コロナウイルスの第一被害者はタヌキらしい

タヌキが犬の親戚だと知ってました?知ってた?そう。。。

とある英文記事を読んでいると、Racoon dogという言葉が出ていまして。えっこれタヌキ?と思って調べてみるとやはりタヌキでした。直訳するとアライグマ犬、という事ですね。その見た目からして、アライグマに近い種なんだろうと勝手に思っていたのですが、生物学的に見るとタヌキはイヌ科に属していて、アライグマの属するアライグマ科ではないんだそうです。意外でした。生物に詳しい人なら常識なんだろうな、とか。

それはそれだけの話なんですが、 その読んでいた記事というのが、新型コロナウイルスの起源を遺伝子的に分析したら武漢の市場で売られたタヌキの可能性が高い、というもので。またタヌキが風評被害を受けそうな話ですね。周知の通り、武漢はコロナウイルスの流行が始まった地であり、そこにあったウィルス研究所、及び家畜市場は状況証拠的に見てコロナウイルスの発生地である事が確実視されてきたところですが、そこに物的証拠が追加されたということです。

具体的には、コロナ発生後中国政府により閉鎖された後の家畜市場について、調査団はその壁や床、ケージ等をモップ等で拭って採取したサンプルを確保しており、それを分析したところ、コロナウイルスと共に動物のDNAが検出され、その大部分がタヌキのものだという事が判明したんだそうです。

壁を拭うだけでそんなに出るくらいだから、市場内で蔓延していた事は確実でしょうし、これをもってタヌキが宿主だと断言できるわけではありませんが、タヌキが主たる宿主の一つであった事はほぼ間違いないだろう、というわけですね。そりゃそうでしょう。

しかし、この分析がどれくらい意味があるかというと微妙ですね。というのも、これでコロナウイルスの起源が特定できたわけでもなく、その感染拡大経路が判明したわけでもありません。市場に持ち込まれたタヌキがウイルスを運んで来たのか、市場に出入りする他の生物(人間を含む)が持ち込んだのかもわからないのです。同じ場所にあった、というだけなのですから。

その意味で、ウイルスの起源に関する他の仮説、すなわち武漢の研究所からの漏洩説やコウモリ起源説等が否定されたわけでもありません。実質的にはあまり変わらず、従来説にタヌキ起源説が追加された程度でしょうか。強いて言えば、コウモリ起源説がいくらか弱まる位でしょうね。

証拠は既に中国政府により隠滅され、それを検証する術はほとんどない事にも変わりありません。今更言うまでもない事ですが、それらを知ることができれば、どれほどの知見が得られ、将来の被害への備えが出来たことでしょうか。おそらく、真実が明らかになる事はこれから先もないのでしょう。それら全ての喪失、それこそが中国政府の犯した過ちであり、取り返しのつかない罪であると、改めて最大限の無念と非難を込めて断言せざるを得ません。

今回の話にしても、単にタヌキがコロナウイルスと結び付けられ、ほとんど無意味に忌避されるだけで終わるのではないでしょうか。タヌキが悪いわけではなく、単なる被害者の一つに過ぎないのにも関わらず。虚しい事です。

New Evidence Supports Animal Origin of COVID Virus through Raccoon Dogs 


3/09/2023

[pol] 虎を失った狐

高市早苗氏が公文書記録を捏造と主張している件ですが、見るに耐えませんね。

詳細は今更繰り返すまでもありませんが、大まかにまとめると次の通り。同氏が総務相であった際の、省内で特定のテレビ放送局に関係して放送に対する公権力の中立性に抵触する氏の発言、有り体に言えば暴言と言うべき類のものが記録された文書が公表され、国会の質疑の中で追求を受けた際にその文書自体が捏造だと断言し、後にその文書が総務省により行政文書、すなわち公文書である事が確認された後も、内容が不正確だ、等と言い方を変えつつもなお捏造と主張し続けている、というものです。

内容自体は、周知の通り故安倍氏と同じく右翼の中でも最強硬派の代表として知られる高市氏の過去の発言を踏まえれば、まあそれ位の事は普通に言うだろう、というようなもので、逆に言えば今更それが判明したところで驚くにはあたらない程度のものです。おそらく当初から氏が本文書の記載を事実と認めていたとして、言い過ぎだったと陳謝撤回すればそれで済んだでしょう。実際に圧力がかかっていなければ、ですけれども。

が、公文書と判明する前に、もし文書が本物であれば議員辞職する旨明言してしまい、その辞職を回避する、すなわち保身のために、文書自体が捏造であったとの主張を撤回出来なくなってしまったのですね。

状況は以上の通り。次に、氏の主張の真偽について検討してみましょう。

まず、氏の主張するところの本文書(及びその記載事項)が捏造である旨については、その主張を裏付ける客観的な根拠は何もなく、従って考慮に値しないと言わざるを得ません。氏の主張も、"そんなレクを受けた筈はない"等、根拠は自身の記憶のみ、しかも"筈だ"とか曖昧な部分すら残っています。証拠性というか、第三者に対する説得力は一切ないわけです。明らかに覚えているだろう事柄についてすら都合よく覚えていないと主張する政治家が記憶にないと言ったところで、何の意味もありません。

一方、文書の内容、すなわち氏の発言等については、捏造を疑わせるような点は見当たらないわけですね。仮に捏造であるとしてみましょう。公文書である事ははっきりしているのだから、その作成者は官僚、しかも大臣とのやり取りに同席する程度の高官です。文書の正確性は間違いなく高いでしょうし、その重要性からして省内の多数の部署間で共有もされ、多数の目に晒されていたでしょう。そのような文書の、それも最も重要な部分である大臣の発言、しかも行政としては何ら必要性も必然性もない類のものを、総務省の高官がわざわざ創作捏造してねじ込んだ、という事になります。有り得ません。

氏の修正された主張であるところの、文書の不正確性についても、あったとしてせいぜい軽微な表記ミス程度でしょうし、発言の主旨に影響を与えるほどのものとは到底考えられません。

結局のところ、氏の主張には根拠がなく、一方の文書の真性については根拠は十分でありかつ否定する根拠もない。高市氏は本件の争点に関してはもう詰んでいると言わざるを得ません。にも関わらずなおも自身の主張を通そうとする氏の試みは無謀という他ないでしょう。

意図的なのか、それとも忘れているのかは不明ですが、解せません。積極的に過激な主張を行う事で知られ、従ってこの種の舌禍への対処については慣れている筈の高市氏が、何故こんな無謀な振る舞いに及んでしまったのでしょうか。

多分に、高市氏は強力な後ろ盾だった安倍氏がいた頃のやり方を忘れられないのではないでしょうか。本件文書は、故安倍首相による官僚の統制が強力に作用していた時期のものです。おそらく、安倍首相が存命であれば、その統制によって文書自体が外部に出る事もなかったでしょうし、外部に出たとしても、安倍氏の威光により総務省の側が公文書と認める事もなく、捏造との主張が通っていたのかもしれません。森友学園関係の一連の事件のように。

しかし安倍氏はもういないのです。当然、その威を借りる事は出来ず、しかしその代わりになる後ろ盾を得る事も出来ず。にも関わらず、虎がいた頃の生き方を変えられなかったために、容赦なく外敵に淘汰されようとしている、孤独で愚かな狐。今の氏は、そういうものなのかもしれません。

3/08/2023

[pol] 東谷とその支持者、無知と無責任が招いた惨事

やっと一区切り、なんでしょうか。東谷義和参院議員(通称ガーシー)の国会法違反の件、除名処分が確実な見込みとなりました。

本件は、前回の参議院選挙で比例当選した同議員につき、当選後半年以上に渡り一度も議会に出席せず、国会法第五条の集会義務違反に問われたものです。これに伴い国会法の規定に従い懲罰委員会にて国会法122条第二項の"公会議場における陳謝"を課され、同氏はこれに同意の旨返答したにも関わらず、期日にそもそも帰国せず、履行拒否となりました。

これを受けて、当然に陳謝よりもさらに重い懲罰を課される運びになったのですが、国会法122条に定められた懲罰の方法の内、陳謝よりも重いものは登院停止と除名の2つしかなく、うち登院停止は登院懈怠者であるところの同氏には懲罰としての意味をなさないため、もはや除名する他ない、というわけです。

同氏は懲罰に応じないだろうという見込みは当初からありました。周知の通り、同氏は暴露系と言われるその活動に伴い、名誉毀損や業務妨害、さらには詐欺や脅迫等の刑法犯の容疑者として多数の告発を受けており、帰国すれば逮捕・訴追を受けるだろう事はほぼ確実で、それを回避たるために帰国しないだろうと見られていたためです。

ただ、国会議員には不逮捕特権があり、少なくとも会期中は原則として逮捕されません。すなわち会期中であれば帰国の可能性もないではないとも考えられるため、一足飛びに除名にはせず、念の為に陳謝処分が課されたのですが、これも無視された、というわけです。逮捕の恐れはないにも関わらず何故同氏が帰国しなかったのか、いささか理解し難いようにも思われますね。

これは推測ですが、同氏は本件に関わる国会法及び憲法の規定を理解しておらず、そのために今回のような対応になったのではないでしょうか。まず国会法を軽くでも読んでいれば、国会議員がどのような義務を負い、実際に議院がどのように運営されているかが分かるし、議員が議会に出席する事がおよそ全ての活動の前提になっている事が理解できた筈です。陳謝の懲戒への対応についても、出席の代わりに動画を送りつけたそうですが、国会法の規定上"公会議場における"と明記されている事から、動画を送りつけたところで意味がない事も明らか。法を理解しているとは到底思えない振る舞いです。議院側も話が通じないと困惑したことでしょう。

大抵のことがオンラインで事足りるようになって来た昨今にあって、登院・出席を前提とした国会運営のあり方は時代にそぐわない、という考え方はあり得るでしょうけれども、実際にオンラインの方式を議院運営に組み込むのは容易な事ではなく、少なくとも国会法の全面改正と各種規則の改定、各種設備の導入、何より現在議院を中心に運営されている各省庁はじめ行政との連携のあり方すなわち政府中枢の運営の形態等も根本から変更が必要になります。

そもそも、新しい方式がメリットばかりをもたらすわけはありません。デメリットも小さくはないでしょう。ビデオ会議では必ず生じる遅延からして影響は甚大です。絶対に必要となる議員の本人確認及び議員以外の排除も困難を極めるでしょう。末端の事務程度ならいざ知らず、事は国権の最高機関の運営すなわち国家運営の根幹に関わるものです。その是非も含め、広範囲に渡って慎重かつ詳細な検討と判断が必要になります。民法や憲法の改正ほどではないにせよ、それに準じる程度の困難なプロセスになるでしょう。

それだけの労力を払い、デメリットを受け入れてでもその制度変更が必要だと主張するなら、その主張はまさに国民の代表たる議員が法に則って行うべき事であって、当たり前ですが現在の制度を無視する言い訳にはならないのです。現状がそうなっていない事を批判するなら、その対象はまず第一に議員である筈なのですし、議員でありながら議院運営を妨げている東谷氏は最も責任が重いと言うべきでしょう。それが法の無知によるというなら、そもそも同氏に議員の資格がなかったものと断ぜざるを得ません。立候補などするべきではありませんでしたね。やれやれです。

もっとも、同氏の人となりやその活動を少しでも知っていれば、氏に議員の職責を果たすに足る資質があると考え得る筈もなかったでしょうけれども。投票は権利であり自由でもありますが、他の権利と同様、相応の責任が伴うのです。この事態を招いた、すなわち国会運営の妨害に加担したに等しいところの、氏に投票した20数万の愚かな有権者達には深く反省を求める次第です。一定期間選挙権の剥奪、位してもいいくらいだと思いますよ。不可能ですけれども。

なお、同議員は比例区選出につき、除名後の後任について補欠選挙は実施されず、同名簿中の次順位以降の候補者が繰り上がり当選という事になります。同党の候補者は基本未経験者しかおらず、しかも知名度等の議員としての能力とは全く関係ない事柄のみによって選定されている筈ですから、期待など出来よう筈もありませんが、せめて国会運営の邪魔だけはしないで頂きたいと思う次第です。

3/07/2023

[note] 失敗を失敗と認めなかったJAXAの必然

H3ロケットが打ち上げ失敗だそうで。

延期に延期を重ねた末に先日打ち上げを実行したものの、噴煙を上げながらも不具合が検知され打ち上がらなかった本機ですが、周知の通り運営体であるJAXA(及びその下請けで実質的な開発担当である三菱重工)は失敗ではなく中止であると強弁していた本件。

打ち上げを任意でやめたのではなく、実行しながらも機器の問題で遂行できなかったのですから、それはまごうこと無き失敗であり、当然ながら、本来ならその障害となった技術的問題を解決すべく、その原因究明がなされ、その上で対策が行われるべきものでした。それをせず、そのまま再チャレンジなど無謀という他ないでしょう。

しかしその失敗をそもそも認めず、従って機器に問題はないとして対策もないままに漫然と再実行した結果が今回の失敗というわけです。今度は途中で自動停止もせず打ち上がってしまい、あえなく爆破となりました。中止と強弁する余地はありません。完全に失敗です。

この失敗は、単なる偶然による失敗ではありません。前回の失敗を失敗と認めなかった、そのJAXAの運営、意思決定のプロセスにこそ原因がある、すなわちJAXAのロケット事業自体の構造的な機能不全を示している事は明らかです。平たく言えば、JAXAには少なくとも新型ロケット事業を行う能力がないという事でしょう。

本事業を巡っては、予算の都合等でこれ以上延期は出来ないとかそういう内部の事情があったのでしょうが、その種の社内政治的な事情を優先し、技術面のプロセスを軽んじた時点でこの失敗はほとんど決まっていたのでしょう。

これから後始末という形でJAXAと三菱重工はじめ担当各所が責任のなすり合いやらを始めるんでしょうが、無惨なものです。救いはありません。今回の失敗が今後の糧になる事すらないのですから。本当に最低ですね。